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介護者が知っておくべき介護のトラブル|未然に防ぐ方法を解説
在宅介護では介護未経験の家族が担うことも多くあります。
身体機能が低下している高齢者の介護場面では、事故やトラブルに注意しなければいけません。
そこで今回は、介護者が知っておくべき起こりえる事故やトラブルを紹介し、その対策方法をお伝えします。
超高齢社会における介護問題
超高齢社会である日本では、年々高齢者人口が増え続けています。
まずは高齢社会における介護問題についてお伝えします。
要介護の認定を受けた高齢者の増加
要介護認定とは介護保険制度上の認定です。
なんらかの介護や支援が必要になった際に、市区町村に申請することで要介護または要支援の認定が受けられます。
「令和4年版高齢社会白書」によると、要介護認定者の数は年々増加しており、令和元年では、要介護または要支援認定を受けている方が655.8万人となっています。
また、年齢別の内訳で比較すると、年齢が上がるにつれて認定を受けている方の数が多くなっているのが現状です。
要介護認定については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
■要介護認定とは?8段階の認定基準や認定までの流れを解説
老老介護の増加
老老介護とは、65歳以上である高齢者が高齢者の介護を担うことを指し、現在の日本では深刻な介護問題の一つとなっています。
「令和4年版高齢社会白書」では、老老介護を行っている世帯が相当数存在しているとの報告がありました。
要介護者と同居する主な介護者の年齢では、男性の72.4%、女性の73.8%が60歳以上となっています。
この調査結果から、実際に老老介護が行われているケースが多数存在していることがわかります。
老老介護については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
■老老介護の問題を解決する方法|解決事例や相談先を紹介
介護施設の従業員不足
介護施設の従業員不足も、高齢社会において見落とせない問題の一つです。
「令和2年度介護労働実態調査」による従業員の過不足に関する調査では、介護職員が不足していると感じている事業所は66.2%もいる結果となりました。
さらに訪問介護の場合には、80.1%の事業所が従業員不足を感じている結果となりました。
このように、要介護高齢者が増えていく一方で、介護の担い手が不足している現状があります。
介護によって起こりうる事故・トラブル
要介護者の高齢者が増え、介護の担い手が不足している状況とは、いいかえれば介護者に身体的、精神的負担が増えやすい状態であるとも考えられます。
一歩間違えると、事故やトラブルにつながる危険性も生じます。
ここからは、介護で起こりうる事故やトラブルについて解説します。
転倒・転落
転倒・転落は介護場面で起こりえる事故・トラブルの一つであり、死亡者数や救急搬送者数が多いのが現状です。
足腰の筋力低下がある方のほか、認知症の方など認知機能の低下から危険認識できずに転倒・転落してしまうリスクが高まります。
また、本人の身体状況にかかわらず、介護者の介助方法が原因で転倒・転落につながるケースも考えられます。
骨折や頭部外傷など大きな怪我につながることもあるため、環境整備や正しい介助方法を身につけるなど、転倒・転落には注意しなければいけません。
高齢者の転倒する原因や対処法については下記記事をご覧ください。
■高齢者が転倒する原因は?事故を防ぐ方法や転倒後の対処法を解説
誤薬
誤薬も高齢者の介護場面で多くみられる事故・トラブルの一つです。
誤薬とは、用法・用量を間違って薬を使用してしまうことです。
たとえば、加齢によって物覚えが悪くなったり、認知症によって曜日や時間間隔が失われたりすると、誤薬してしまうリスクが高まります。
また、介護者側で薬の管理をしている場合には、朝・昼・夕・寝る前の薬を間違って渡してしまうなどのミスも起こりえます。
薬は用法・用量を間違えると、副作用が強く現れる可能性があるほか、最悪死に至るケースもあるため、注意しなければなりません。
誤嚥
誤嚥も高齢者の介護場面で起こる、代表的な事故・トラブルです。
誤嚥とは、食物が食道を通らずに気管に入ってしまうことで、窒息や誤嚥性肺炎の原因につながります。
高齢者の場合、食物や唾液を飲み込む力である嚥下機能が弱まることで誤嚥しやすくなってしまいます。
誤嚥の対策方法としては、正しい姿勢で食事を摂るほか、その方の嚥下機能にあわせてペースト食やトロミをつけるなどの食事形態の工夫が必要です。
誤嚥の予防策や、介護の食事については下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
■誤嚥(ごえん)とは?予防策や対処法をわかりやすく解説
■介護食の基本|種類や食材・料理の選び方、介護方法について解説
介護の事故・トラブルを防ぐために
命にかかわることもある介護場面での事故やトラブルですが、どのように対策すればよいのでしょうか。
ここからは事故やトラブルを防止する方法について、有効な福祉用具・ケア用品の紹介もふまえながら解説します。
杖の使用で体の安定性を高める
歩行の不安定さが原因で、転倒・転落につながってしまうケースがあります。
こうした方にとって、いかに歩行を安定させるかが事故やトラブルを防ぐポイントとなります。
その対策として、杖を使用するというのは方法の一つです。
杖にも種類があり、ベーシックな1点杖のほかにも安定性のある4点杖などもあり、歩行状態にあわせた選択が可能です。
導入費用も安く、要介護認定があれば1~3割負担でレンタルもできます。
歩行補助杖のレンタルについてはこちら
歩行用の杖については、下記記事でおすすめの商品などを詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
■歩行補助つえとは?具体的な種類や利用するメリットなどを紹介
■歩行補助杖の種類と選び方
介護度の高い方も使える歩行器で負担軽減
歩行が不安定な方の転倒・転落防止対策として、歩行器を使用するのも方法です。
歩行器は身体を預けながら歩行できるため、足腰にかかる負担を軽減させながら安定した姿勢での歩行をサポートします。
歩行器にもさまざまな種類があり、ちょっとした散歩に適した軽量タイプや、買い物など荷物を運ぶ用途に適したタイプ、砂利道などにも対応したタイプなどがあります。
歩行器についても、介護保険によるレンタルが可能です。
歩行器については、下記記事でおすすめの商品などを詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
■歩行器のレンタルは介護保険が利用可能!レンタルするメリットとは?
■歩行器の選び方|種類や介護保険を利用したレンタルも紹介
滑り止めマットでお風呂の転倒防止
入浴時の事故防止には、滑り止めマットを使用するという方法があります。
高齢者の場合、浴室での事故やトラブルも少なくありません。
お風呂で足を滑らせたり、血圧の上昇でふらついて転倒したりする可能性もあります。
「おく楽 すべり止めマット AR 中」などの滑り止めマットは浴室の床や、浴槽の中に敷くことで簡単に設置でき、転倒リスクを軽減することができます。
置くだけで設置でき、導入費用もそれほど高額ではないため、簡単に行える対策の一つです。
センサーマットで素早く危険を察知
事故やトラブルの防止として、センサーマットを導入するのも方法の一つです。
とくに認知症がある方の場合、認知機能の低下から夜間でも徘徊してしまったり、危険認識力が低下していたりして転倒・転落につながってしまうリスクがあります。
「家族コールワイド Aタイプ」などのセンサーマットを使用すれば、本体を踏んだ際に介護者へ通知してくれるため、常時見守りをしなくても行動の把握が可能です。
購入となれば高額になってしまいますが、介護保険でのレンタルも可能なため、金銭的負担を抑えながら導入できます。
ベッドからの転落防止には柵の設置を
ベッドからの転落防止対策の一つとして柵の設置が有効です。
ベッドからの転落は、高齢者介護の場面でよくある事故やトラブルの一つです。
起き上がりや立ち上がりが不安定な方が、トイレに行く際など一人でベッドを降りようとして、ベッドから転落してしまうケースなどがあります。
こうした事故を防ぐためにも、ベッド柵の使用は有効な手段の一つです。
ベッド柵についても介護保険のレンタルが可能で、月に500円程度で利用できます。
ベッド柵レンタルについてはこちら
家具調のベッドをご利用の方は、ベッド柵以外にも 「ルーツサイドタイプ」 のような手すりでも代用が可能です。ご利用のベットに合わせてベッド柵か手すりを選択することをおすすめします。
ベッド柵については、下記記事でおすすめの商品などを詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
■介護用のベッド柵とは?選ぶ上でのポイントやおすすめ商品をご紹介!
誤嚥性肺炎予防には口腔ケアの徹底を
口腔ケアの徹底は、誤嚥が原因で起こる誤嚥性肺炎の予防に有効です。
なぜなら誤嚥によって口腔内の細菌が気管に入り込むと、誤嚥性肺炎につながるリスクが高くなるからです。
そのため、口腔ケアを行い口腔内の細菌をできるだけ減らしておくことが対策につながります。
口腔ケア用品としては、口腔内の汚れをからめ取る「マウススポンジ」 や、口腔内の乾燥を防ぐための「マウスモイスト」 などがあります。
そのほか、誤嚥そのものを防ぐ方法として「トロミアップエース」のようなトロミ剤の使用も有効です。
飲み物などにかき混ぜるとトロミを付けられるため、嚥下がしやすくなるという特徴があります。
そのほか、口腔ケアについては、下記記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
■高齢者の口腔ケアとは?手順やトラブル対処法まであわせて解説
投薬カレンダーで誤薬防止
誤薬の防止には、投薬カレンダーの導入が有効です。
認知機能の低下のほか、視力低下など薬の判別が難しい方の場合、薬を薬袋にまとめたままでは誤薬リスクが高まります。
「週間投薬カレンダー」を使用すれば、内服が必要な薬を曜日ごと、時間帯ごとに分けて管理することができます。
介護者が週1回事前に薬をセットしておけば、あとは曜日と時間帯でセットされた薬を内服するだけなので、誤薬リスクの軽減につなげられるでしょう。
在宅介護をする場合には、こうしたカレンダーの活用もおすすめです。
上記以外にも、ヤマシタでは事故やトラブルを防止するための、有効な福祉用具・ケア用品を取り揃えています。介護でお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
今回は介護者が知っておくべき介護のトラブルについて、実際に起こりえる事故やトラブルのほか、その防止方法について解説してきました。
- 要介護者数は年々増えており、老老介護を行う世帯も多い
- 介護場面で多い事故・トラブルは、転倒・転落、誤薬、誤嚥などがあげられる
- 福祉用具やケア用品を導入することで、事故やトラブルのリスクを軽減できる
本記事の内容がお役に立ちましたら幸いです。
ぜひ、介護場面における事故・トラブル防止の参考にしてください。
横井康佑
医療・介護ライター・社会福祉士
1989年生まれ。福祉系大学を卒業後、現役の医療ソーシャルワーカーとして10年以上医療機関に勤務。現在も医療・介護にかかわる相談を受けながら、さまざまな生活問題を支援。webライターとしても活動しており、医療・介護記事の執筆を行うほか、電子書籍の出版プロデュースも行っている。