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認知症の症状|初期段階の行動や周りがとるべき対応を解説
認知症は進行によって徐々に認知機能が低下し、生活自立度も低下していきます。家族が認知症を発症したことを考えると、どうしたら良いのかわからず不安になってしまうのではないでしょうか。
今回は認知症の症状について、また家族が認知症を発症してしまった場合の対応について説明します。
認知症とは
認知症とは、一度獲得した正常な認知機能が何らかの原因により低下し、日常生活が阻害される状態となった場合に診断される病気のことです。
認知機能とは、記憶力や判断力などの知的な能力を指しますが、認知症は認知機能の低下のみでは診断をされずに、低下した認知機能が日常生活に影響を与えているということが診断として重要になります。
そのため老化によるいわゆる「物忘れ」とは区別をされます。
認知症を発症するとさまざまな症状が現れますが、原因疾患によって、初期症状や進行して出現する症状が異なります。
認知症の種類
認知症と診断されるには、アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性型・前頭側頭型の大きく分けて4つの原因があります。以下では、それぞれの原因について説明をしていきます。
アルツハイマー型
アルツハイマー型は認知症の原因として最も多いと言われています。
脳の海馬と呼ばれる記憶をつかさどる部分を中心に、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が溜まることで神経細胞が壊死することで発症します。
症状は記憶障害から始まりだんだんと進行し、未治療だと10年ほどの期間にて寝たきりとなると言われています。
アルツハイマー型認知症には発症を高める危険因子があることが最近の研究で発表されています。糖尿病や高血圧などの生活習慣病は発症を高める危険因子とされています。
レビー小体型
レビー小体型はアルツハイマー型に次いで2番目に多いとされる認知症です。女性よりも男性に発症が多い傾向があると言われています。
レビー小体と呼ばれるタンパク質が脳内に溜まることで発症しますが、なぜレビー小体が脳内に生じるのかはいまだに判明していません。
レビー小体型には特有の症状があることが特徴です。
幻視、歩行が難しくなる運動症状(パーキンソン症候群)、睡眠中に大声を出したりするレム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症の特徴として知られています。
個人差がありますが発症してから初期のころは、物忘れなどの症状が見られにくいことも特徴として挙げられます。レビー小体型の進行は緩やかに進みますが突然進行することもあります。
脳血管性型
脳血管性型は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因となって発症する認知症です。
脳細胞の損傷部位によって発症する症状が異なると言われています。
症状の特徴として、物忘れをするようになったが判断力が保たれているなど、失われた能力と残存する能力が混在する状態である「まだら認知症」や、感情のコントロールが上手にできずに突然泣き出したりしてしまう「感情失禁」といった症状があります。
脳血管性型は脳血管障害によって段階的に悪化していくため、進行しない状態が続くが、再び脳血管障害を発症すると急激に悪化する、といった経過をたどることが多くあります。
前頭側頭型
前頭側頭型は名前のとおり、前頭葉・側頭葉を中心に神経細胞の障害が見られます。
脳にある前頭葉は思考や感情、理性にかかわる領域となっています。また側頭葉は言語や記憶にかかわる領域になっています。
症状の特徴としては、言葉が出にくくなる言語症状や、人格変化と、店頭にある物を勝手に持っていくなどの行動症状があります。
疾患の進行は緩やかですが、対応が困難となる症状が出現する可能性が高いと言われています。
認知症の症状
認知症には、中核症状と行動・心理症状の2つの症状があります。以下では、それぞれの症状について説明をしていきます。
中核症状
中核症状は、認知症によって認知機能が低下したために直接起こる症状のことをいいます。
具体的には、出来事を記憶できなくなる記憶障害、時間や場所がわからなくなる見当識障害、言葉の理解が難しくなったり言葉を発することができなくなったりする失語、一つの目標に向かって順序だてて計画して実行していく機能が難しくなってしまう実行機能障害、道具を適切に扱うことが難しくなる失行があります。
行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は、以前は周辺症状とも呼ばれていました。
行動・心理症状は、徘徊や暴言・暴力などの行動症状と、幻覚や妄想、不安、抑うつなどの心理症状に分けられています。
本人の元々の性格や現在の環境・心理的状態などの要因も影響して発症するため、認知症の症状として必ず出現する症状ではなく個人差があります。
初期症状の特徴
認知症の初期症状の特徴は、認知症の原因によって異なります。
アルツハイマー型は、軽い物忘れが見られるようになります。本人も物忘れがひどくなってきたと自覚症状がある場合が多く、周囲の人に物忘れを悟られないように、言い訳をして取り繕う様子が見られることがあります。
レビー小体型は、幻視や手足の震えを伴う運動症状、睡眠障害が見られることが多くあります。
脳血管性型は、脳血管障害が起こる度に進行していく認知症ですので、脳の損傷部位によって、運動障害や感情のコントロールが上手にできなくなることがあります。
前頭側頭型は、言葉を発することが難しくなる失語や、店の商品を盗んでしまうなどの反社会的行動が見られます。
認知症の治療方法
アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性型・前頭側頭型認知症は、いずれも脳の神経細胞が変化してしまう病気のため、現代医療では根本的に治療することができません。
そのため認知症の治療の目的は病気の進行をできるだけ遅らせることにあります。
治療方法は薬物療法と非薬物療法の2種類に大別されます。
薬物治療
薬物療法は、認知機能障害など中核症状の進行を抑制するものと、行動・心理症状(BPSD)の改善・抑制を目的とするものに分けられています。
対象者ひとりひとりの症状にあわせて薬を服用します。
国内で使用されている抗認知症薬には、ドネペジルやメマンチンなどがあります。
行動・心理症状に対しては、抗不安薬や睡眠導入剤などを使用することが多くあります。
非薬物治療
認知症治療の薬物療法以外の治療方法のことを、非薬物療法といいます。
非薬物療法には、写真などを見て過去の想い出を語り合い心理的安定を促す回想法や、ラジオ体操などの軽い運動、計算問題や漢字学習などのドリルを解く認知機能訓練、音楽を聴く・楽器を演奏する音楽療法などがあります。
これらの非薬物療法を実施する際には、対象者の好みや志向を考えてから実施をすると良いと考えられています。
家族が認知症になったときの対応
ここまで認知症とは何か、認知症の症状などについて説明をしてきましたが、もしも家族が認知症になってしまった場合にはどのように対応すれば良いのでしょうか。
以下では、3つの対応について説明をします。
初期症状が見られたら病院を受診
先述した認知症の初期症状が見られた段階で、老化によるものなのか認知症によるものなのかを調べるために病院を受診しましょう。
認知症は現代医学では根本的な治療はできませんが、早期発見により適切な治療を受けられると進行を遅らせることができます。
認知症はストレスによっても悪影響を受けると考えられています。病院を早い段階で受診しておくと、症状に対してどのように対応をすれば良いのか生活上の対応方法を具体的に教えてくれることがあります。
初期症状が見られたら病院を受診しましょう。
一人で抱え込まず周りに相談
認知症の家族を介護する場合は、介護する側も辛く苦しい経験をする場合が多くあります。
一人で介護の悩みを抱えているとうつうつとした気持ちになってしまい、元気がなくなって介護疲れの状態になることもあります。
そのため一人で抱え込まず、家族や親戚など周囲に相談すると良いでしょう。
また身内以外にも、地域の福祉関係や介護施設などにも相談して協力して介護をすると、介護する側も介護される側も苦しむことが少なくなります。
介護保険などのサービス利用を検討
介護を24時間365日していると介護疲れとなってしまいます。
そのような状態を回避するためにも介護保険サービスの利用を検討すると良いでしょう。
介護保険サービスには、自宅に訪問して身体介護を担ってくれるヘルパーや、対象者が施設に通所して食事や入浴などができるデイサービスなどがあります。
そのほかにも、介護を助けてくれる福祉用具のレンタルなどの制度があります。
福祉用具の一例を挙げると、「徘徊感知機器」は床に敷いたセンサーを対象者が踏むことで作動する機械です。
センサーが作用することで、事前に行動を感知することができるため一人で外出してしまい家に帰ることができなくなることなどを防ぐことにつながります。
これらのサービスを利用するためには費用がかかりますが、介護認定を受けて要介護や要支援の認定が下りると、介護にかかる金額を一部負担してもらえます。
ヤマシタでも福祉用具のレンタルについてのご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
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介護保険については、以下の記事も参考にしてください。
介護保険で受けられるサービスにはどんなものがある?
まとめ
認知症の症状や原因についてまとめ、家族が認知症にかかった場合にどのように対応をすれば良いかについて説明をしてきました。
認知症は認知機能の低下によって日常生活に支障が出る病気ですので、必ず介護が必要になります。
しかし24時間・365日休みのない介護はたいへん苦労も多く辛いこともあります。
現在は介護サービスも充実しているため、一人で抱え込まずに積極的に活用してみると良いでしょう。
まずは介護保険について地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当課に相談に行かれることをお勧めします。
酒井 康輔
作業療法士
正しい健康の知識を届けたい。そんな想いから医療系Webライターとして活動を開始。作業療法士として臨床業務で学んだ「正しい情報を患者さまにわかりやすく伝える」ことの経験を通じて、記事を読んだ方が、介護福祉分野・医療分野に関する情報を正しく理解し、あすからの行動が変わる後押しができるような記事執筆をしています。