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認知症の方に効果が期待できるレクリエーションとは?種類や効果・目的、注意点まで解説
認知症の方にレクリエーションを行うことで、さまざまな効果が期待できます。
しかし、どのように行えば楽しんでもらえるか、介護現場では悩みの種のひとつでしょう。
そこでこの記事では、認知症の方向けに無理なく実践できるレクリエーションを紹介します。
また、レクリエーションの効果や目的、利用者に合った選び方、行う際の注意点まで解説しています。
介護施設の職員の方や介護する家族の方には、ぜひ参考にして欲しい内容です。
効果が期待できるおすすめのレクリエーション
認知症に効果が期待できるおすすめのレクリエーションを6つ紹介します。
認知症はレクリエーションにより症状を緩和することが期待されるため、医療や介護現場ではさまざまなメニューで行われていますが、単に楽しむだけでなく、さまざまな効果が期待できる重要な活動です。
単調になりやすい日々の生活の中で、症状だけでなく、前向きな気持ちにさせて、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を向上させることも可能です。
ただし、レクリエーションの内容は定期的に変更し、また安全に配慮した活動でなくてはなりません。
身体を動かすレクリエーション
身体を動かすレクリエーションは、心身機能の維持・向上に役立つだけでなく、脳の活性化にも効果があります。
病気や怪我などで衰えた身体の機能を回復させるリハビリとは異なり、楽しみながら身体を動かして、運動不足を解消し、食欲増進や睡眠など生活リズムを整えるという目的があります。
一例としては次のとおり。
- 体操(ラジオ体操・リズム体操)
- ダンス
- 風船バレー
- ウォーキング
身体を動かすことで、血行促進や便秘などの身体の不調を改善できるというメリットもあります。
頭を使うレクリエーション
頭を使うレクリエーションは、脳の働きを改善する効果が高いとされており、脳トレともいわれます。
思考・記憶・判断など脳内を活性化することを目的で行いますが、認知症の方が理解しやすいゲームやパズルなど簡単なルールで行うレクリエーションがおすすめです。
一例としては次のとおり。
- 文字・数字並び替えゲーム
- ジグソーパズル
- ジェンガ
- オセロ
ただし、複雑なルールで行うとゲームが進まないことがあるため、参加者の判断能力や心身状態を考慮しながら行うことが大切です。
手先を使うレクリエーション
手先を使うレクリエーションは、脳に刺激を与えるだけでなく、身体を使うことが困難な人でも道具を使わず気軽にできるのが特徴です。
また、認知症の方の趣味や特技に合わせて、手先を使うレクリエーションを行えば、飽きることが少なく、個人だけでも楽しめるため、過去を思い出す良い経験になります。
一例としては次のとおり。
- 後出しジャンケン
- 折り紙
- 塗り絵
- あやとり
なお、後出しジャンケンで手先を動かした後に、個人が好むレクリエーションを行うことで、さらに効果が高まるでしょう。
回視レクリエーション
回視レクリエーションは、写真や音楽などで過去の記憶を辿りながら、当時を思い出しながら語り合うことで、脳の活性化や認知症の進行を緩和するのが目的です。
また当時を振り返る機会ができ、楽しい思い出を他人に話すことで、記憶を呼び覚まし、コミュニケーションの場にもなります。
用意するものを一例紹介します。(すべて当時のもの)
- 写真
- 音楽
- 新聞
- 本
- 映像
注意したい点としては、認知症の方の年齢や性格、コミュニケーション力などを考慮して対応する必要があります。
趣味を用いたレクリエーション
趣味を用いたレクリエーションも認知症の方に効果的です。
興味のないレクリエーションは、脳の活性化を阻害する可能性があるため、個人の趣味に合わせて負担の少ない内容にすることが大切です。
一例としては、次のとおり。
- 料理
- 音楽
- 囲碁、将棋
- 編み物
- 絵画
- 彫刻
楽しめる趣味を活かしたレクリエーションは、過度なストレスを受けることがなく、積極的に参加してくれることが期待できます。
ただし、本人が嫌がるまたは興味がなくなった場合は、内容を変更するなどの配慮が必要です。
自然や動物に触れるレクリエーション
自然や動物に触れるレクリエーションは、季節や動物の温もりを感じるなど五感で刺激を受けるため、効果のある取組みとして注目されています。
花や野菜を育てることで季節や土の感触を楽しめたり、動物と触れ合うことで手に伝わる暖かさを感じることは、心地よい刺激を受け、癒しになります。
また、花や野菜を育てる、動物の世話をすることで、自分の役割を見出せるなど動きや表情にも変化が期待できるのです。
なお、すべての方が自然や動物と触れることに抵抗がないとは限らないため、周囲で見守ることが必要です。
レクリエーションで期待できる効果と目的
レクリエーションで期待できる効果と目的をまとめると、次のような内容になります。
レクリエーションで期待できる効果
レクリエーションで期待できる効果は次のとおり。
- 否定的な感情の緩和
- 自信を取り戻す
- より良い人間関係の構築
- QOL(生活の質)を高める
自分が抱えている不安や絶望感を取り除き、「楽しく明るく前向きに生きる」きっかけづくりといえるでしょう。
レクリエーションの目的
レクリエーションの目的は次のとおり。
- 五感を使った脳の活性化
- 身体を動かすことによる心身機能の維持、向上
- コミュニケーションの場を作る
- やりがいや自信を持たせる
五感や身体を使いながら認知症の進行を抑えることも大切ですが、他人とのコミュニケーションを通じて、自分の居場所や心地よさを感じる精神的な効果も期待しています。
レクリエーションには3種類ある
介護現場で使われるレクリエーションには3種類あります。
しかし、認知症の症状や身体状態によって対象となるレクリエーションは異なるため、注意が必要です。
ここでは、3種類のレクリエーションの対象者となる方を具体的に紹介します。
集団レクリエーション
集団レクリエーションとは、大人数の利用者が参加するレクリエーションです。
介護施設で行うレクリエーションのほとんどは集団レクリエーションで、ひとつのグループとなり、ゲームや体操、合唱などを皆で楽しみます。
集団レクリエーションは、仲間とのコミュニケーションをとりながら楽しめるため、生きがいや目標、仲間との絆を深められるなどのメリットがあります。
しかし、他の人とのコミュニケーションが苦手な方への配慮が必要になるでしょう。
個別レクリエーション
個別レクリエーションとは、個人または少人数で行うレクリエーションです。
利用者の趣味や特技、要望に合わせて、囲碁や将棋、編み物、折り紙、塗り絵などを行います。
集団レクリエーションが楽しめない、他の人とのコミュニケーションが苦手な方向けでも楽しめ、介護職員とのコミュニケーションの機会が増えるといったメリットがあります。
ただし、認知症が進行している方には、介護職員が個人と積極的にかかわる必要があるレクリエーションです。
基礎生活レクリエーション
基礎生活レクリエーションとは、特別に時間を作るのではなく、日常生活を過ごす中で心地よさや楽しさを感じる機会を見出すレクリエーションです。
入浴や食事の際に好きな音楽を流したり、部屋の模様替えや季節に合った花を飾るといった工夫を考えながら、QOL(生活の質)を高められます。
集団および個別レクリエーションの参加が困難な重度の認知症の方でも行えるレクリエーションです。
利用者に精神的な負担がかからないレクリエーションともいえます。
レクリエーションを行う際の注意点
認知症の方にレクリエーションを行う際の注意点としては、次のような配慮が必要になります。
- 認知症や要介護レベルが同程度の方同士で行う
- ルールが簡単な内容で実施する
- メンバーは固定する
- 時間を決めて行う
- 周囲の安全に気を配る
- 介護職員も楽しんで参加する
- レクリエーションの記録を動画や写真で残す
ただし、利用者の意思を尊重し、参加を無理強いさせるレクリエーションは禁物です。
魅力や興味を持つレクリエーションを考え、思考を凝らしながら参加者が楽しめる内容を行うことが大切です。
まとめ
認知症の方向けのレクリエーションはさまざまな種類がありますが、利用者が楽しく参加できることを優先にすることが基本です。
認知症の症状や趣味、人生の背景などを考慮し、その方に合ったレクリエーションに参加してもらうことも大切です。
また、介護職員の方も楽しんで参加することも、利用者を安心させることにつながります。
利用者と介護職員がお互いにコミュニケーションをとるための場として、レクリエーションの種類や活用範囲を広げることも考えておきましょう。