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高齢者の一人暮らしの現状とリスク|対策や支援サービスを解説
高齢社会の日本では、一人暮らしをしている高齢者は少なくありません。
年々、身体機能が衰えていくなか、いつまで一人で生活できるのか不安に感じる方もいるでしょう。
そこで今回は、高齢者の一人暮らしについて現状とリスクを解説し、対策や支援サービスについてお伝えしていきたいと思います。
高齢者の一人暮らしは増加傾向
少子高齢化が社会問題の一つとなっている日本ですが、高齢者の一人暮らしは増加傾向にあります。
まずは、日本の高齢化の現状や、高齢者の一人暮らしの割合についてお伝えします。
日本の高齢化の現状
日本の高齢化率は、年々右肩上がりに増えつづけているのが現状です。
「令和4年版高齢社会白書」によれば、日本の総人口は令和3年10月1日時点で1億2,550万人ですが、そのうち65歳以上である高齢者の人口は3,621万人です。
総人口に占める65歳以上人口の割合は28.9%となっています。
ちなみに、平成12年(2000年)の高齢化率は17.4%、平成22年(2010年)の高齢化率は23.0%でした。
日本の高齢化率は今後さらに増加しつづけると予想され、令和47年には高齢化率38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上の高齢者になると予想されています。
これらの数字が示すとおり、日本の高齢化は深刻な状況にあるといえるでしょう。
出典:内閣府「令和3年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況 令和3年度高齢社会対策」
高齢者の一人暮らしの割合
高齢化が深刻な状況であることをお伝えしましたが、高齢者の一人暮らしについても増加傾向にあります。
「令和4年版高齢社会白書」によれば、令和元年の65歳以上の高齢者がいる世帯のうち単独世帯が736万9,000世帯で、割合は28.8%となっています。
過去を振り返ると、平成12年(2000年)は半数以下の307万9,000世帯でした。
また、高齢者の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあります。
65歳以上人口に占める一人暮らし高齢者の割合は、令和2年時点で男性が15.0%、女性が22.1%で、この先もさらに増えると予想されています。
このように、高齢者の一人暮らしは増加しつづけているのが現状です。
高齢者の一人暮らしが増加している理由
将来的にも増えつづけると予想される高齢者の一人暮らしですが、その要因はどこにあるのでしょうか。
ここからは、高齢者の一人暮らしが増加している理由について解説します。
頼れる家族や知人が近くにいない
高齢者が一人暮らしになる理由の一つとして、頼れる家族や知人が近くにいない場合があげられます。
現在は核家族化が進み、子どもが親と離れた地域で生活しているケースも多くなりました。
また、高齢者の場合には配偶者や兄弟、知人が他界して孤独化してしまうケースも考えられます。
こうした現状が、高齢者の一人暮らしにつながる場合もあるのです。
家族に迷惑をかけたくない
「家族に迷惑をかけたくない」という思いから、一人暮らしを選択する高齢者もいます。
内閣府の「平成27年版高齢社会白書」では、将来について他人に頼りたくないと考える方が、子どもがいる男性で13.1%、子どもがいる女性で9.3%となっています。
こうした理由も、高齢者が一人暮らしになってしまう背景の一つです。
今の暮らしに満足している
現状の暮らしに満足しているために、一人暮らしをつづけたいという方も少なからずいるでしょう。
とくに経済面に不安もなく、社会とのつながりもある方の場合、一人で自由に暮らしたいと思う方も一定数います。
内閣府の「平成27年版高齢社会白書」では、一人暮らし高齢者の幸福度で満点である10点と回答した方は、全体の14.8%というデータもあります。
新しい生活に抵抗がある
高齢になってから新しい生活をするのは抵抗があるというのも、一人暮らしを選ぶ理由の一つにあげられるでしょう。
長年住んできた家や、慣れ親しんだ地域を離れるのは簡単ではありません。
思い出の場所や土地を離れたくないから、いまの生活をつづけていきたいという思いで一人暮らしを選択する高齢者も多いです。
一人暮らしの高齢者が抱える5つの問題点
高齢者の一人暮らしですが、どのような問題が起こり得るのでしょうか。
ここからは、高齢者の一人暮らしで起こり得る問題について、5つに分けて解説します。
介護が必要な状態になる
高齢者の一人暮らしの場合、万が一病気やケガによって介護が必要になってしまうと大変です。
子どもが離れて暮らしている場合は、生活に必要なサポートがすぐには受けられないといったリスクも想定されます。
要介護状態になってしまうと、日常的な家事や買い物が困難になるほか、社会との交流機会が減少し孤立していく可能性もあります。
高齢者が一人暮らしをする場合、将来的に介護が必要になったときの想定も必要といえるでしょう。
介護予防や自分でできる介護予防についても紹介していますので、下記の記事もあわせてご覧ください。
介護予防とは?自分でできる予防と介護予防サービスを解説
認知症の発症や進行
認知症の発症や進行も問題の一つです。
認知症とは、脳がなんらかの障害を受けることにより認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしてしまう状態をいいます。
2020年には、高齢者のうち約600万人が認知症であるといわれており、日本における社会問題の一つです。
認知症はスピードが異なるものの、段階を経て進行するため、同居家族がいないと気づかずに症状が進行してしまうケースもあります。
もし一人暮らしの高齢者が認知症になってしまうと、危険認識力や判断力が低下し事故につながる危険性もあります。
認知症や、認知症の際におすすめの福祉用具については、下記で紹介しています。あわせてご覧ください。
認知症の症状|初期段階の行動や周りがとるべき対応を解説
生活意欲の低下
高齢者の一人暮らしは、生活意欲の低下につながる可能性もあります。
自由に生活できることから生活リズムの乱れにつながったり、外出頻度が少なくなり社会と交流する機会が減ったりして、生活意欲が低下してしまう方も少なくありません。
こうして心身ともに弱ってしまう状態をフレイルといい、高齢社会の日本ではフレイル予防が重要であると指摘されています。
フレイルの予防には、バランスの取れた食事、運動習慣、社会参加が大切です。
フレイルについては下記の記事で詳細を解説しています。あわせてご覧ください。
介護予防|フレイルとは?原因となるサルコペニアとの違いや予防方法を解説
詐欺や犯罪に狙われやすい
高齢者の一人暮らしでは、詐欺や犯罪に巻き込まれてしまう危険性もあります。
すでにお伝えしましたが、高齢者は認知症のリスクが高く、もし認知症になってしまえば判断能力が低下してしまうリスクもあります。
年ごとに件数は異なるものの、高齢者を狙った振り込め詐欺はあとを絶ちません。警視庁の統計では、振り込め詐欺の8割が高齢者であるといわれています。
高齢者の一人暮らしでは、こうした詐欺被害にも気をつけなければいけません。
以下は、代表的な振り込め詐欺の一例です。
- オレオレ詐欺
- 架空請求詐欺
- 融資保証金詐欺
- 還付金等詐欺
孤独死
高齢者の孤独死も、一人暮らしの高齢者にとっては問題の一つとして指摘されています。
孤独死とは、誰にも看取られることなく亡くなり、相当な期間放置されてしまう状態を指す言葉です。
厚生労働省の「令和4年版高齢社会白書」によると、平成23年以降、東京23区内での一人暮らし高齢者の孤独死が年々増えており、令和2年では4,238人と過去最多でした。
孤独死の要因はさまざまですが、家族をはじめ社会との関係が希薄になることが問題の一つとされています。
高齢者が安心して一人暮らしするための対策法
さまざまな問題が起こる可能性のある高齢者の一人暮らしですが、どのように対策すればよいのでしょうか。
ここからは、高齢者が安心して一人暮らしするための対策法をお伝えします。
見守りサービスを利用する
高齢者の一人暮らし対策として、自治体の見守りサービスを活用するのは有効な手段の一つです。
一人暮らしで起こり得るさまざまな問題を深刻化させないために、早期発見と早期対処が重要になります。
自治体によっては、見守り支援を行っていたり相談窓口を設置していたりする場所もあり、気軽に利用が可能です。
また、お弁当の配達とあわせて、安否確認などを行ってくれる配食サービスの利用も手段の一つです。
家族が遠方に住んでいる場合など、なかなか生活の見守りができない場合には、こうしたサービスを活用することで問題解決を図ることができます。
また、福祉用具の見守りカメラを用いて、遠方のご家族の様子を確認することも一つの方法です。見守りカメラについては、下記の記事をご覧ください。
介護用見守りカメラとは?選び方や導入するときの注意点を解説
社会参加の機会を増やす
社会参加の機会を増やすのも、大切な対策の一つです。
フレイルについては前述していますが、社会参加の機会が減ることで心身ともに弱ってしまう場合もあります。
対策法として、地域のサークル活動や町内会行事へ参加するのもよいでしょう。
仲間ができたり運動の機会を得られたりすることで、生活意欲の向上や健康維持にもつなげられます。
また、こうした地域のコミュニティへ所属することで、安否確認にもつなげられるため、家族としても安心です。
地域のサークル活動などの情報を得たい場合には、地域包括支援センターに相談すれば情報提供を受けられます。
下記の記事では、地域包括支援センターで受けられるサービスについて解説しています。あわせてご覧ください。
地域包括支援センターで受けられるサービスとは?事例も踏まえて解説
住み慣れた家の推奨
高齢者の一人暮らしは大変だとわかっていても、住み慣れた家での生活を希望される方は少なくありません。
そこで、自分でできないことが増えてきた際には、介護保険サービスの利用が有効です。
訪問介護を利用すればヘルパーが自宅に訪問し、家事や買い物などの援助をしてくれます。
また、デイサービスを利用すれば、他者との交流機会や運動機会を増やすことも可能です。
そのほか、福祉用具の購入やレンタルも保険適用となり、金銭的負担を抑えながら生活環境を整えられます。
介護保険を利用してレンタルできる種目は、以下の合計13品目があります。
介護用品をレンタルする流れについても解説していますので、あわせてご覧ください。
介護用品はレンタルできる!品目、流れなどを解説します
ヤマシタでは、福祉用具のレンタルを含む介護に関する相談にいつでも対応可能です。お気軽にお問い合わせください。
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受付時間 9:00~18:00 (土日祝年末年始を除く)
バリアフリー物件に引っ越す
一人暮らしは続けたくても、いま住んでいる住宅での生活に限界を感じている場合には、高齢者向けのバリアフリー物件に引っ越すのも方法の一つです。
現在は、高齢者の生活を想定した物件も多く、バリアフリー構造になっていたり手すりが完備されていたりする建物も多くあります。
なかには、緊急通報サービスやセキュリティ対策がしっかりしているところもあり、緊急時の対応や詐欺被害の対策にも有効です。
引越に抵抗がない場合には、こうした選択も方法の一つといえるでしょう。
ただし、サービスが整っている分、月々の費用が高額になる可能性もあるため注意が必要です。
在宅介護におけるバリアフリーについては、下記の記事で詳細を解説しています。あわせてご覧ください。
バリアフリーとは?ユニバーサルデザインとの違いや介護事例を解説
家族や親戚が近くに住む
どうしても本人が住み慣れた自宅や地域を離れたくないという場合には、家族や親戚が近くに住むという方法もあります。
見守りサービスや介護保険サービスの活用も方法の一つですが、生活のすべてを援助できるわけではありません。
やはり家族や親戚が近くにいるほうが、日々の通院や外出の付添いなど、細かな支援も可能になり安心です。
ただし、すでに持ち家に住んでいる場合や、仕事をしている場合には容易に引越できない場合がほとんどでしょう。
こうした場合には、すでにお伝えした方法の検討が必要といえるでしょう。
生活支援サービスを活用する
高齢者の一人暮らしを継続していくために、生活支援サービスを利用するという方法もあります。
生活支援サービスは、ボランティアやNPOなどさまざまな主体が提供する高齢者支援サービスです。
見守り、外出支援、買い物や料理、掃除などの家事支援が受けられます。
一人ではできないことがあっても、こうしたサービスを利用することで自宅生活の継続が可能になります。
利用したい場合には、市町村役場の福祉課や地域包括しセンターへ相談しましょう。
まとめ
本記事では、高齢者の一人暮らしの現状とリスクや、その対策や支援サービスについてお伝えしてきました。
要点は以下のとおりです。
- 高齢者の一人暮らしは男女ともに増加している
- 身体機能の低下や認知症になると、一人暮らしに問題が生じる
- 一人暮らしを継続するには、自治体の見守りサービスや介護保険サービスが有効
ぜひ、一人暮らしをする高齢者の対策として参考にしてください。また、介護でお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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横井康佑
医療・介護ライター・社会福祉士
1989年生まれ。福祉系大学を卒業後、現役の医療ソーシャルワーカーとして10年以上医療機関に勤務。現在も医療・介護にかかわる相談を受けながら、さまざまな生活問題を支援。webライターとしても活動しており、医療・介護記事の執筆を行うほか、電子書籍の出版プロデュースも行っている。