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バリアフリーとは?ユニバーサルデザインとの違いや介護事例を解説
現代においてバリアフリーという言葉は広く知れ渡り、街中でもバリアフリー化された設備を多く目にするようになりました。
本記事では「バリアフリーとは何か?」「在宅介護におけるバリアフリーの重要性」「自宅のバリアフリー化の実例」などを解説していきます。
バリアフリーとは?
バリアフリーとは、「障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味です。
もともと住宅建築用語で登場し、段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いですが、「より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的・制度的・心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。」と定義されています。
引用:総務省「バリアフリーとユニバーサルデザイン」
バリアフリーには、次の4つの種類があります。
物理的バリアフリー | 段差をなくしたり、スロープを作ったりして、移動しやすい生活環境を作ること |
---|---|
制度的バリアフリー | 障害を理由に、学校や仕事で制限を受けないようにすること |
文化・情報的バリアフリー | 点字や音声案内など、情報を得やすくすること |
心理的バリアフリー | 障害のある人への偏見をなくし、お互いを理解しあうこと |
バリアフリーにまつわる法律
バリアフリーにまつわる法律は、主に以下の2つです。
- バリアフリー新法
- 障害者差別解消法
バリアフリー新法とは?
バリアフリー新法とは「高齢者、身体障害者などが円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)」と「高齢者、身体障害者などの公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」を統合した法律です。
要するに、高齢者や障害者が、建物や電車・バスなどを使いやすくするためのルールを決めています。例えば、エレベーターを設置したりバスを車椅子でも乗りやすい高さにしたりして、物理的障壁を減らしましょうという内容です。
障害者差別解消法とは?
正式名は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。障害のある方への差別をなくし、障害の有無に関係なく、互いに尊重し合いながら、共に生きる社会をつくることを目指しています。
この法律では「合理的配慮」が求められており、具体例としては車椅子の方が電車に乗る際に、駅員がスロープを使って乗車をサポートするなどが挙げられます。
バリアフリーの問題点
バリアフリーにおける問題点は、以下のようなことがあります。
物理的問題点
- 施設によっては小さな段差がどうしても残ってしまう
- 文化財がある観光地では、伝統を守るためにバリアフリー化が難しい
- まだエレベーターやスロープがなく、階段しかない施設もある
心理的問題点
- 障害者を「かわいそう」だと偏見をもつ
- 他人を助けにくい雰囲気がある
- 障害者とどう接していいのかわからない
心理的な問題点は障害者に対する偏見や先入観・遠慮などの「心の壁」が原因です。日本は海外と比べ、困っている人への声かけを遠慮したり、「余計なお世話かも」と不安を抱えたりする傾向にあります。
文化・情報的な問題点
- 障害者が必要な情報が十分ではない
- 外国人や高齢者にもわかりやすい表示やサインが少ない
文化・情報的な問題点には、障害者に必要な情報が十分提供されていないことが挙げられます。例えば、視覚障害者のための音声案内が不十分だったり、聴覚障害者のための手話通訳や字幕が用意されていなかったりします。
外国人や高齢者にもわかりやすい表示やサインが少ない点も問題です。情報のバリアフリーを進めるには、さまざまな方のニーズに合わせた情報提供の方法を考える必要があるでしょう。
意識的な問題点
- 社会のルールや制度によって均等な機会が得られない
- 人のモラルの問題
- 学校や職場でバリアフリー教育が少ない
意識的な問題点には、多くの人がバリアフリーの重要性を知らなかったり「自分には関係ない」と考えたりすることが関係しています。
障害者がどのようなことで困っているのかを理解できていないため、点字ブロックの上に自転車を置いたり、心ない言葉をなげかけたりするといえます。
具体的な解決策としては、車椅子の利用体験など障害のある方の気持ちを理解する機会や、テレビやインターネットなどのメディアで「合理的配慮」の重要性を継続的に発信していく必要があるでしょう。
一人ひとりがバリアフリーについて正しく理解し、思いやりの心をもつことが大切だといえます。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーとよく似た言葉に「ユニバーサルデザイン」があります。
バリアフリーは、障害によって生まれる障壁(バリア)に対処する考え方です。
一方、ユニバーサルデザインは、最初から「障害の有無」「年齢」「性別」「人種」などに関係なく、さまざまな人が使いやすい都市や生活環境をデザインする考え方のことです。
種類 | 対象者 | 目的 | 普及促進 |
---|---|---|---|
バリアフリー | 高齢者、障害者 | 高齢者や障害者などの障壁をなくす | 行政がメイン |
ユニバーサルデザイン | すべての人 | すべての人が利用しやすい環境づくり | 民間事業がメイン |
ユニバーサルデザインには7つの原則があります。
- 公平性:誰でも同じようにできる
- 自由度:柔軟に使い方が選べる
- 単純性:簡単に使える
- わかりやすさ:必要な情報がすぐに分かる
- 安全性:ミスや危険につながりにくい
- 身体的負担の少なさ:無理なく使える
- 空間性:十分な広さや大きさがある
すべての人が利用しやすいデザインのために、必要な考え方といえるでしょう。
身近にあるバリアフリー
身近にあるバリアフリーには、次の2つがあります。
- 公共施設や交通機関のバリアフリー
- 住宅内でのバリアフリー
次から、詳しく解説します。
公共施設や交通機関でのバリアフリー
公共施設や交通機関には、次のようなバリアフリー設備があります。
- 点字ブロック
- スロープ・エレベーター
- 音声案内
- ノンステップバス
例えば、駅にはエレベーターや点字ブロックがあります。
点字ブロックは視覚障害者がブロックの上を歩くことによって、止まる位置や進行方向を知らせるものです。また、ガイドバスは段差を無くして乗り降りしやすい「ノンステップバス」になっています。
公共施設には車椅子用のスロープや多目的トイレが設置され、街に出れば信号の色を音で知らせたり、音声で今いる場所を案内したりします。
住宅内でのバリアフリー
家の中でも、段差をなくしたり手すりを付けたりするバリアフリー改修が進んでいます。
例えば、お風呂場や階段に手すりを設置したり、開き戸を引き戸に変えたりすることです。引き戸は開閉をスムーズにできるほか、開けた際に壁に収まるため、スペースをとらないメリットもあります。
住宅内のバリアフリーには、高齢者や障害者でも移動しやすいように廊下を広くすることや、床の段差の解消、洗面台やキッチンの高さを調整をするなどの工夫がされています。
在宅介護にバリアフリーは重要
在宅介護をする場合、自宅のバリアフリー化が重要になります。
一般的な住宅環境には小さな段差や開き戸があり、介護が必要な方にとって生活しにくい環境だからです。
バリアフリー住宅の特徴やメリットは、以下のとおりです。
特徴
- 段差を解消する
- 手すりを付ける
- 開き戸を引き戸に変える
- 移動しやすい広さを確保する
- 車椅子でも使える高さにする など
メリット
- 転倒といった事故を軽減できる
- 手すりで安全な動線を確保できる
- スペースが広いため移動しやすくなる
- 介護する方・される方の双方の負担が軽減できる など
バリアフリーへの住宅改修のポイント
住宅をバリアフリーに改修をする際は、以下の3つのポイントが大切です。
介護を受ける方以外のことも考える
バリアフリーへの改修は、介護を受ける人だけではなく、介護をする家族も快適に過ごせるかを考えることが重要です。
介護を受ける方のことだけを考えた住宅改修は、介護をする側の負担を増やす可能性があります。
身体機能が完全に衰える前から準備する
「最近歩くのが辛そうだな」と、少しでも感じたら、バリアフリーへの改修を検討する時期です。転倒による骨折や関節痛の増幅などで、急に歩けなくなる可能性もあるからです。
予防的な住宅改修として、早い段階から手すりを付けたり、段差を解消したりすることも考えましょう。
専門家の意見を取り入れる
バリアフリーへの改修には、次のような専門家がいます。
- 建築の専門家
- 福祉住環境コーディネーター
- 理学療法士
- 作業療法士など
バリアフリー化や住宅改修の内容だけでなく、費用面についても相談できる人がいると、計画をスムーズに進められます。
ご自宅での介護に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
営業所は安心の365日体制。
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バリアフリーへの改修にかかる費用
住宅をバリアフリーに改修する際にかかる費用の目安は、以下のとおりです。(※筆者調べ。あくまで一例で、担当する工事業者によって異なります)
- 10万円以内…手すりの設置
- 20万円以内…開き戸から引き戸への変更
- 50万円以内…トイレを和式から洋式に変更
- 100万円以上…家全体のバリアフリー化
家全体を車椅子対応にするような大きな改修では、さらに費用がかかります。
予算と相談しながら、最低限必要な場所から少しずつ改修を進めていくといいでしょう。
バリアフリーへの改修は介護保険が適用される
バリアフリー改修では、以下の要件を満たせば介護保険が適用されます。
- 要支援または要介護認定を受けている
- その要介護者が住む自宅である
介護保険における住宅改修とは、要介護者が自宅に手すりを設置したり段差を解消したりするときに、改修費用の9割(最大18万円まで)が介護保険から支給される制度です。
申請手順は以下のとおりです。
- ケアマネジャー・住宅改修に対応している会社などに相談
- 必要書類の提出
(支給申請書、住宅改修が必要な理由書、工事費の見積書、住宅改修の完成予定が分かる図や写真など) - 住宅改修の開始・完成
- 住宅改修費の支給申請
関連記事:居宅介護住宅改修費の概要と申請方法を解説|住宅改修でもっと快適な生活を実現
住宅改修を検討しているのであればヤマシタにお任せください。
住宅改修のご相談から申請書類の作成まで、幅広くお手伝いさせていただきます。
また、賃貸住宅にお住まいなど工事ができない場合でも、用具の活用などをご提案いたしますので、お困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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自宅のバリアフリー改修例
介護保険では、住宅改修するだけでなく、スロープや手すりなどをレンタルすることが可能です。レンタルはレンタル料の1割(一定以上の所得がある方は2〜3割)の自己負担ですみます。
それでは実際に改修した床、浴室、トイレ、階段のバリアフリー内容や改修によるメリット、費用の相場を見ていきましょう。
※費用相場は実費です。ここから介護保険の住宅改修費の9割相当額を償還払いによって支給されます。
①床のバリアフリー改修
以下、床のバリアフリー改修の一例です。
改修の内容 | 改修によるメリット | 改修費用(相場) |
---|---|---|
段差解消のため玄関出入り口にスロープを新設 | ・杖歩行でも出入りがしやすくなる ・車椅子でも出入り可能になる ・段差解消による転倒予防 |
10万円 |
床のバリアフリーは、主に段差の解消が目的です。費用は、改修の範囲や手すりの設置などによって異なります。
早めの改修で転倒を防ぐことで、現在の身体機能を維持する効果も期待できるでしょう。
ケアスロープ
ケアスロープは、玄関の段差を解消できます。70cmの幅があり、アルミ製の脱輪防止エッジがついているので、安心して操作ができます。
サイズ | 幅70×長さ200×高さ6.4cm |
---|---|
重量 | 10kg |
価格(税込) | ・介護保険利用時 負担額:714円/月 ・レンタル料:7,140円/月 ・販売価格:149,600円 |
②浴室のバリアフリー改修
以下、浴室のバリアフリー改修の一例です。
改修の内容 | 改修によるメリット | 改修費用(相場) |
---|---|---|
浴槽の交換と手すりの設置 | ・浴室内の転倒予防 ・浴槽に入る際の補助 ・利用者本人の安心感につながる |
40万円 |
浴室内のバリアフリーでは、浴槽の交換と手すりの設置が一般的です。
具体的には、浴槽を跨いで入る際の負担を減らすため、床から浴槽の縁までの高さを低くする方法があります。浴槽自体も浅くすることで、溺れる危険も低くなり、浴槽から出る際も楽になるでしょう。
費用を抑えたい場合は、手すりだけを付ける選択もありますが、身体機能の低下も予測できるため、将来を考えて住宅改修を利用すると良いでしょう。
自在手すり ツインディ 水廻り用 プロテクター付
自在手すりツインディは、台所や脱衣所などの水回りでも使用できる手すりです。手すりの角度調整ができるため、力が入りやすく立ち座りがしやすいです。
サイズ | 幅58×長さ58cm |
---|---|
重量 | 16.4kg |
価格(税込) | ・介護保険利用時 負担額:594円/月 ・レンタル料:5,940円/月 ・販売価格:164,560円 |
③トイレのバリアフリー改修
以下、トイレのバリアフリー改修の一例です。
改修の内容 | 改修によるメリット | 改修費用(相場) |
---|---|---|
トイレの入り口の扉の交換 (段差の解消も含む) |
・トイレの出入りの負担軽減 ・トイレ入り口での転倒予防 ・車椅子でも出入りしやすくなる |
17万円 |
トイレのバリアフリー改修では、入り口の段差解消や手すりの設置、扉を開き戸から引き戸にするケースが多数みられます。
トイレは夜中も利用するため、入り口の段差解消は転倒予防において非常に重要です。
そのほか、便器を和式から洋式に変える場合もあります。
ダンスロープミニ
ダンスロープミニは、室内の段差を解消できます。傷がつきにくい素材を使用しており、サイドはなだらかな形状となっているため、滑りにくくずれない設計です。
サイズ | 幅76×長さ12.1×高さ3cm |
---|---|
価格(税込) | ・介護保険利用時 負担額:52円/月 ・レンタル料:520円/月 ・販売価格:5,610円 |
④階段のバリアフリー改修
以下、階段のバリアフリー改修の一例です。
改修の内容 | 改修によるメリット | 改修費用(相場) |
---|---|---|
階段の滑り止め設置と手すりの設置 | ・階段の上り下りの補助 ・階段での転倒予防 ・階段利用時の恐怖感の軽減 |
6万円 |
階段の手すり設置は、大切な改修です。なぜなら、階段での転倒は大きな事故につながり、寝たきりになるリスクも高いからです。
手すりとあわせて、滑り止めを設置することで、より安全性が高められるでしょう。
歩行サポート手すり スムーディ ステップ伸縮タイプ 片手すり
玄関や庭などの段差のある家にも使用できます。端から端まで手すりを使用できるため、安全な歩行が可能です。
サイズ | 幅45×長さ80×高さ70~85cm(高さ2cm間隔7段階) |
---|---|
価格(税込) | ・介護保険利用時 負担額:940円/月 ・レンタル料:9,400円/月 ・販売価格:265,430円 |
関連記事:階段昇降機の価格はどのくらい?使える制度や補助金・種類や役割についても解説!
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バリアフリー住宅の注意点
バリアフリー住宅に改修する際の注意点は以下の7つです。
- 段差をつくらない
- 適所に手すりを設置する
- 扉は引き戸にする
- 床は滑りにくい材質にする
- 2階建ての場合は1階のみで生活できるよう配慮する
- トイレ、洗面、浴室など水回りは広めにする
- 家全体の温度差をできるだけなくす
新しくバリアフリー住宅を建てる場合は、1階のみの平家建てがおすすめです。
また、できるだけ部屋の数を少なくすることで、家全体の温度差を減らしたり、部屋との移動を減らしたりできるので、利用者の負担も軽くなります。
バリアフリーは、単に段差をなくして手すりを付ければ良いというものではないことを覚えておきましょう。
まとめ
バリアフリーは障害のある人だけでなく、すべての人が安心して生活できる社会を作るための大切な考え方です。
住宅のバリアフリー改修では、介護保険を活用することで費用負担を軽くできます。大掛かりな工事をする前に、レンタル商品を試してみることも一つの方法です。
置き型タイプであれば、必要な場所・タイミングに合わせて移動できるだけでなく、高さも調節できるため、体の状況に合わせて変更できる点もメリットといえます。
ルーツロングタイプ
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津島 武志
介護系WEBライター
介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、介護系のWEBメディアでライターとして活動したり、介護士さん応援メディア(介護士さんの働き方改革)の運営や、SNS(@otake_kaigo)で介護職の働き方について情報発信しています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。