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介護予防|フレイルとは?原因となるサルコペニアとの違いや予防方法を解説
「フレイル」という言葉を医師から聞いたり、メディアで耳にしたりすることも増えてきたのではないでしょうか。フレイルは加齢に伴う体の衰えを表しており、介護予防の観点からも正しい理解が大切です。
本記事では、フレイルの基本的理解から原因、効果的な予防方法などを紹介します。
自分や家族の方がフレイルを予防し、要介護状態を防ぐためにも、ぜひ参考にしてみてください。
フレイルとは?
フレイルとは、かんたんに言うと「加齢による心身の衰え」を表します。
衰えといっても、運動機能や心肺機能の低下、それらの原因となる脳や神経の病気など、さまざまな要素が関係しています。
フレイルにおいて大切なのは、ただ年齢を重ねたから衰えは仕方ないと考えるのではなく、健康寿命を少しでも伸ばすために生活習慣を変えることです。
そのためには、まず自分自身がフレイルであることを自覚することが必要になります。
ここでは、フレイルであるかを見極めるための判断基準と、フレイルの原因となるサルコペニアについて解説します。
フレイルの基礎的な理解と、効果的な予防のためにわかりやすく紹介しているので、ぜひご覧ください。
フレイルの判断基準
フレイルの判断基準は、以下の5つの症状で、これらのうち3つ以上が該当するとフレイルと評価されます。
1つまたは2つ該当する場合も、プレフレイル(フレイル予備軍)となります。
症状 | 内容 |
---|---|
歩く速度が遅くなった | ・心肺機能低下や消耗性疾患などが原因となる ・活動能力の低下を含む移動能力全般を障害される ・老衰を総合的に反映している |
疲れやすくなった | ・心の病気にも関連している ・不適切な薬の組み合わせで引き起こす場合もある (6種類以上の薬を飲んでいる人は主治医と要相談) |
活動意欲が減った | ・意欲の低下や抑うつなどが原因となる ・社会的な付き合いの変化による場合もある ・まずは活動機会の減少を自分自身が自覚する |
筋力が衰えた | ・筋肉を使わないことにより衰える ・病気や薬により衰える ・栄養不足により衰える |
体重が減った | ・意図しない体重の減少は注意が必要となる ・具体的には半年で5%以上の体重減少がある ・消耗性疾患や悪性腫瘍などが潜在する場合もある |
出典:国立長寿医療研究センター
5つの症状は互いに関連し悪循環を形成するので、ひとつひとつの特徴を早期発見し予防することが重要です。
フレイルとサルコペニアの違い
サルコペニアは、主に筋力の低下を示す言葉で、高齢者の転倒リスクの要因とされています。一方フレイルは、加齢に伴う心身全体の低下を示す言葉で、虚弱状態を指します。
具体的には以下のような点が異なります。
症状名 | 症状の違い |
---|---|
フレイル | ・体重減少 ・疲労感 ・筋力の低下 ・歩行速度の低下 ・日常生活活動量の低下(活動意欲の低下も含む) |
サルコペニア | ・骨格筋量の減少 ・筋力の低下 ・歩行速度の低下 |
フレイルをセルフチェック!
現在はフレイルをセルフチェックするため、厚生労働省が出しているチェックリストがあります。
「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル」という名称で、内容は以下のとおりです。
No. | 質問項目 | 回答(いずれかに○をお付け下さい | |
---|---|---|---|
1 | バスや電車で1人で外出していますか | 0.はい | 1.いいえ |
2 | 日用品の買物をしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
3 | 預貯金の出し入れをしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
4 | 友人の家を訪ねていますか | 0.はい | 1.いいえ |
5 | 家族や友人の相談にのっていますか | 0.はい | 1.いいえ |
6 | 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか | 0.はい | 1.いいえ |
7 | 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか | 0.はい | 1.いいえ |
8 | 15分位続けて歩いていますか | 0.はい | 1.いいえ |
9 | この1年間に転んだことがありますか | 0.はい | 1.いいえ |
10 | 転倒に対する不安は大きいですか | 0.はい | 1.いいえ |
11 | 6ヵ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか | 0.はい | 1.いいえ |
12 | 身長 cm 体重 kg (BMI= )(注) | ||
13 | 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか | 0.はい | 1.いいえ |
14 | お茶や汁物等でむせることがありますか | 0.はい | 1.いいえ |
15 | 口の渇きが気になりますか | 0.はい | 1.いいえ |
16 | 週に1回以上は外出していますか | 0.はい | 1.いいえ |
17 | 昨年と比べて外出の回数が減っていますか | 0.はい | 1.いいえ |
18 | 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか | 0.はい | 1.いいえ |
19 | 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
20 | 今日が何月何日かわからない時がありますか | 0.はい | 1.いいえ |
21 | (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない | 0.はい | 1.いいえ |
22 | (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった | 0.はい | 1.いいえ |
23 | (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる | 0.はい | 1.いいえ |
24 | (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない | 0.はい | 1.いいえ |
25 | (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする | 0.はい | 1.いいえ |
(注) BMI(=体重 (kg) ÷身長 (m) ÷身長 (m) )が18.5未満の場合に該当とする。
引用:厚生労働省「介護予防のための 生活機能評価に関するマニュアル (改訂版)」
上記の基本チェックリストを行い、以下のいずれかに該当する者はフレイルになる恐れがあり、特定高齢者の候補者に選定されます。
(特定高齢者とは、要支援・要介護状態になるおそれのある高齢者のこと)
- 1から20までの項目のうち10項目以上に該当する者
- 6から10までの5項目のうち3項目以上に該当する者
- 11及び12の2項目すべてに該当する者
- 13から15までの3項目のうち2項目以上に該当する者
引用:厚生労働省「介護予防のための 生活機能評価に関するマニュアル (改訂版)」
ぜひフレイルのセルフチェックに使ってみてください。
フレイルの原因
フレイルは、以下の3つの要因があわさることにより起こります。
- 身体的要因
- 精神的要因
- 社会的要因
それぞれの詳しい内容を解説します。
まずは自分がフレイルの要因になるような状態であるかを確認してみましょう。
要因を自覚することで、その後の予防にもつながっていきます。
身体的要因
フレイルの最大の要因の一つが、身体的要因である筋肉の衰えです。
具体的な症状は、加齢や病気により全身の筋力が低下し、歩くスピードが遅くなることが挙げられます。
また先述にもあったように、筋肉の衰えによる身体機能の低下をサルコペニアと言い、プレフレイル(フレイル予備軍)の状態を指します。
筋肉の衰えは転倒による骨折のリスクを高め、活動量の低下を招きます。その結果、意欲の低下である精神的要因や、人との交流の減少といった社会的要因にもつながってきます。
そのため、フレイルの予防には、筋力の衰えを防ぐことが非常に大切です。
精神的要因
フレイルの主な要因である筋肉の衰えにより、歩くスピードが遅くなったり転倒したりすることは、活動意欲の低下を招きます。
活動意欲が低下すると、外出の機会が減少するだけでなく、食事や洗濯など日常生活に対してもおっくうな気持ちが出てきます。
さまざまな活動量が低下すると、認知機能の低下にもつながり、うつ状態になるリスクも高まり危険です。
具体的な症状は、加齢による物忘れからはじまり、計画通りに物事を進められないといった遂行機能障害も見られます。
またうつ病の兆候として、ボーッとしたり落ち着きがなくなったりといった変化が見られる場合もあります。
社会的要因
フレイルのリスクとなる社会的要因の代表例は、人や社会とのつながりが減少していくことです。
他人の目に触れないため閉じこもりがちになり孤立することで、心の健康にも悪影響を及ぼします。
また外出の機会が減り、身体的要因である筋力の低下を加速させるので注意が必要です。
高齢者の場合、定年退職や配偶者との死別など、人や社会とのつながりがなくなるライフイベントがやってきます。
心身の健康のためにも、社会や人とのつながりが持てるような生活を維持していくことが大切です。
このように、フレイルの3つの要因は、それぞれが互いに関連しており、何か一つの要因が出てくるとほかの要因を助長するため、早めの予防が重要です。
フレイルの予防方法
フレイルにならないための、効果的な予防方法は以下の6つです。
- 持病のコントロール
- 運動療法
- 栄養療法
- 口腔ケア
- 社会参加
- 感染症対策
それぞれの具体的な内容を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
持病のコントロール
高齢者になると、高血圧や糖尿病、呼吸器疾患などさまざまな慢性疾患に悩まされます。
フレイルの予防において、これら持病のコントロールは必要不可欠です。
なぜなら持病の状態が悪いと、活動する気持ちになれず、後に紹介する運動療法や社会参加などの予防法にも影響するからです。
持病がある方は、定期受診や医師の指導のもと、適切に薬を飲むなど、持病のコントロールをすることがフレイル予防の土台になるでしょう。
運動療法
運動療法は、フレイルの要因である筋力低下に対して非常に有効です。
また運動をすることで、活動意欲の低下を防ぎ、外に出たくないといった社会的要因の解消にもなります。
運動といっても、ひとりひとりの状況に応じて無理のない範囲で行うことが大切です。
具体的には、以下のような負担の軽いものから始めるといいでしょう。
- ベッドの上で足を動かす
- 椅子に座ったり立ったりする
- 歩く距離を少しずつ増やす
体を動かすことを体に慣らしながら、徐々に強度を上げていきましょう。
急に立ったり、長い距離を歩こうとしたりすると、転倒の危険性がありフレイルのリスクを高めてしまうかもしれないため、注意しましょう。
カーボン四点可動式スモールタイプ
「カーボン四点可動式スモールタイプ」は、支柱が前後に動くので、ベースが路面に設置しやすい四点式の杖です。
四点できちんと接地するため、坂道などでも使用できます。
また、ご自宅の中での杖の使用も効果的です。
栄養療法
栄養療法は、先ほどの運動療法とあわせて行う予防法です。
低栄養状態で運動をしてもエネルギーが足りず、より低栄養のリスクを上げるだけです。
運動をする前には必ず食事をしてエネルギーを補給し、運動後もタンパク質やビタミンミネラルなど、筋肉を形成し体を整える必要があります。
フレイルの予防には筋力の維持が大切であり、タンパク質や炭水化物をはじめとした栄養素が非常に重要な要素です。
運動療法と栄養療法は、ふたつでひとつであることを、あらためて頭に入れておきましょう。
口腔ケア
「固いものが食べにくい」「口の渇きが気になる」「よくむせる」といったことがある人は、口の中の働きが低下しているオーラルフレイルの可能性があります。
オーラルフレイルは、口腔機能の低下だけを指していますが、進行すると心身の低下にもつながるため、フレイルの前段階と言えます。
そのため、以下のような対策を行い、オーラルフレイルを予防しましょう。
- 食事前の口腔体操(顔面や舌を動かしたり発声したりする)
- 食後の正しい歯みがきの継続
- 定期的な歯科検診
- 入れ歯の適切なケア
口の中の健康は、体全体の健康に大きく関係しているので、あらためて口腔内のケアを見直すことが大切です。
社会参加
高齢者の社会参加は、心身機能の低下であるフレイルの予防に効果的です。
具体的な社会参加として挙げられるのは、定年後も働き続けることです。
内閣府が発表したデータによると、65歳以上の人のうち30.2%が、収入を伴う仕事をしていると回答しています。
そして、仕事をはじめとした社会活動に参加して良かったと思うことについて、65歳以上の人の48.8%が「生活に充実感ができた」という回答結果です。
このように社会とつながることは、生きる意欲につながります。
そのほかにも、人とかかわることによる充実感だけでなく、生活リズムを整え生活習慣病の予防効果が期待できます。
逆に社会とのつながりを失うと生活リズムが乱れ、心身機能の低下にもつながるので、高齢者を孤立させない周囲のサポートも重要です。
出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」
ミシェル
「ミシェル」は、軽量でコンパクトな女性でも扱いやすい歩行器です。
車体幅は業界最小クラスの48cmで、折りたたみサイズもコンパクトに収納可能です。
ネジの先端が太く、抜け落ちない仕様で安心して使えます。
家にいる時間が長い方の場合、フレイルの予防として買い物やお散歩で外に出ることが効果的です。そういった外出の場面に歩行器はおすすめです。
感染症対策
高齢者は若年層比べ免疫力が低く、さまざまな感染症にかかりやすい状態にあります。
感染症は人それぞれ症状の程度は違いますが、ひどい場合は重症化して入院することも考えられます。
入院するとベッド上での生活時間が増え、その結果活動量が少なくなり筋力が低下します。
筋力の低下は、フレイルの大きな要因であるため、感染症への適切な対策は大切です。
具体的な対策は、運動や食事による免疫力向上だけでなく、早い段階でのワクチン接種が効果的な予防方法と言えます。
まとめ
フレイルは加齢により筋肉が衰え、さまざまな心身機能に障害をもたらすことで、誰もがなる危険性があります。
そのため、健康なうちから効果的な予防方法を理解し、実践することが非常に大切です。
ぜひ本記事で紹介した予防法を参考にフレイルを防ぎ、要支援・要介護状態を予防していきましょう。
ヤマシタでは福祉用具利用の際にAIの歩行解析アプリで歩行診断ができ、介護予防に役立ちます。
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津島 武志
介護福祉士
介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、さまざまなWEBメディアでライターとして活動しています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。