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要支援1とは?受けられるサービスやかかる費用について解説
「両親が『要支援1』と認定されたけどどういう状態なの?」「どんなサービスが利用できるの?」と、疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では要支援1で受けられるサービスや入居施設の種類、費用について解説します。
これから介護サービスを利用する方は、ぜひ参考にして下さい。
要支援1とは?
要支援1とは「日常生活を送るうえで、多少支援が必要な状態」で、要介護度ではいちばん軽い状態です。日常生活の基本的な動作は自分で行えますが、立ち上がりや歩行など、一部の動作で支援が必要な状態を指します。
要介護認定の分類は「自立」「要支援」「要介護」の3つです。さらに心身の状態や必要とされる介護の必要量によって、7段階に分類されます。
「要支援」の認定は介護予防の観点が含まれており、要介護状態にならない支援を受ける必要がある段階です。各市区町村主導で行われる総合支援事業と、要介護状態を防ぐことを目的とした介護予防サービスを利用できます。
要介護度の違いにより、利用できる介護サービスの種類や介護保険の給付額が異なります。
要介護度はどうやって決まる?
要介護度を決定する過程には、一次判定と二次判定があります。
一次判定では、調査結果をもとにコンピュータによる判定を行います。
その際、判断基準として算出されるのが、介護に必要な時間を示した要介護認定基準時間です。
以下は、介護度ごとの要介護認定基準時間です。
区分 | 要介護認定基準時間 |
---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
二次判定では、保険・医療・福祉分野の学識経験者による介護認定審査会が開催されます。
最終的に一次判定の結果と主治医意見書の内容から要介護度が決められます。
要支援2とは何が違う?
要支援2の認定を受けるのは、身の回りの世話や立ち上がりなどに見守りや一部介助が必要ではあるものの、維持や改善の見込みがある方です。
要支援1よりも支援ガ必要な場合に認定されます。
どちらも要支援認定であるため、受けられるサービスは総合支援事業と介護予防サービスで変わりありません。
両者の違いは、介護保険給付額です。
要支援2は要支援1より給付額が高く設定されています。
また、要支援2以上になるとグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の入居が可能になります。
要介護1とは何が違う?
要介護1は、排せつや食事は自立しているものの、立位や歩行に不安定さがみられ、身の回りの動作に見守りや一部介助が必要な段階です。
要介護は、要支援よりも身体介護や生活援助が必要な場合に認定されます。
要介護以上になると、必要な身体介護の量が増えたり、認知症などの影響から理解力の低下がみられたりする場合があります。
介護保険給付額は要支援よりも高く設定されており、利用できるサービスの種類が多いです。
要支援1でも自立して生活できるのか
2022年の国民生活基礎調査によると、在宅生活される要支援または要介護認定者の世帯構造は、核家族世帯が42.1%(うち夫婦のみの世帯が25.0%)、単独世帯が30.7%、三世代世帯10.9%、そのほかの世帯が16.4%となっています。
また、単独世帯を要介護度別に内訳した場合、要支援2の割合がもっとも多く26.1%となっています。
次に多いのが要介護1で18.9%です。
要支援2の方が単独世帯で約26%、暮らしています。要介護1の約18.9%の方が自立した生活をしていることを考えると、要支援でも自立した生活は可能といえるでしょう。
必要に応じて、手すりの設置や段差解消などの住宅改修、家事援助などの体制を整えれば自立した生活の継続も可能です。
要支援1で受けられるサービスは?
介護保険サービスは、要介護度によって受けられるサービスが異なります。
以下は、要支援1で受けられるサービスです。
- 介護予防訪問入浴介護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問介護
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
- 介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
- 介護予防入所療養介護(医療型ショートステイ)
- 介護予防特定施設入所者生活介護
- 介護予防福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
介護予防サービスの目的は、要介護状態になるのを防ぐことです。
要支援の場合には介護予防サービスが適用されます。
介護予防サービスを利用したい場合は、地域包括支援センターのケアマネジャーへ相談するとサービス利用の支援が受けられます。
福祉用具のレンタルができる
介護予防サービスのなかには福祉用具貸与サービス(レンタル)があり、日常生活を送るうえで必要な福祉用具に、保険給付が適応されます。
福祉用具は、心身の機能が低下して日常生活を送ることが難しく、介護や介助が必要な方が使用します。
福祉用具の使用は、日常生活のサポートや機能訓練に役立つでしょう。
以下は、要支援1の場合にレンタルできる福祉用具です。
手すりやスロープは、後述する住宅改修サービスを利用する方法もありますが、賃貸など取りつけ工事が行えない場合はレンタルが有効です。
以下は要介護2以上から利用可能な福祉用具です。特別な理由があれば、要支援でも例外給付の対象になります。
例外給付を受けるためには自治体ごとに定められた手続きが必要です。
担当のケアマネジャーまたは、地域包括支援センターに相談しましょう。
ヤマシタでもご相談を承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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福祉用具の購入ができる
2024年度の介護保険制度の見直しで、要支援1の方も利用できる福祉用具の選択肢が広がりました。これまで貸与のみだった固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)や多点杖といった福祉用具を、介護保険を利用して購入できます。
購入することで、サイズや機能、デザインなど、ご自身にぴったり合った福祉用具を選べます。また長期的に利用する場合には、レンタルするよりも安価になる場合もあります。
購入する場合は、利用者一人あたり年間10万円までが支給限度額で、購入費の1〜3割が自己負担になります。
デイサービスが利用できる
デイサービスとは、通所介護とも呼ばれる介護サービスのことです。
自宅から事業所または施設などに通い、日常生活全般(食事、入浴、排泄)などの介護を受けられます。
専用車両による送迎もあるため、車いすが必要な方の利用も可能です。
日中の身体介護のほか、他者との交流の機会を増やす目的で利用される方も多く、介護者の介護負担軽減につながるのが特徴です。
要支援の場合、デイサービスは平成29年度からは市町村ごとの総合支援事業として利用しなければならなくなりました。
そのため、自治体をはじめNPO法人や民間企業が提供するサービスを自費で利用する形になります。
自費とはいえ、一般的に要支援1の方が1回の利用でかかる費用は1,000~2,000円と、それほど負担は大きくありません。
施設に入所できる
要支援1の方が入所できる施設は5つあります。
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
要支援1でいちばん入居している割合が多い施設。生活の自由度が高く、外出や外泊を自由に行えるシニア向け賃貸住宅。 - 住宅型有料老人ホーム
軽度者から医療的ケアの多い方を受けいれる施設まで、さまざまな施設があり、費用も低料金から高額な料金まで幅広い。 - 健康型有料老人ホーム
介護を必要としない方の施設 - 自立型ケアハウス
ひとり暮らしが不安な60歳以上の方が入居する施設で入所費用はほかに比べ安い。 - 養護老人ホーム
介護が不要な方が対象で養護と社会復帰を目的とした施設。
その他のサービス
そのほかのサービスには、介護予防入浴介護・介護予防訪問リハビリテーション・介護予防訪問介護・介護予防居宅療養介護指導などがあります。
内容は以下のとおりです。
サービス名 | 内容 |
---|---|
介護予防入浴介護 | 介護職員と看護職員が入浴車に積まれた簡易浴槽で入浴介助を行う |
介護予防訪問リハビリテーション | 医師の指示により専門職が機能訓練を行う |
介護予防訪問介護 | 訪問支援員が家事介助・身体介護を行う |
介護予防居宅療養介護指導 | 通院が難しい利用者や家族に、専門職が自宅療養や介護に関する指導や助言を行う |
要支援1の支援サービスを利用する方法
要支援1の方が介護保険サービスを利用するためには、介護予防ケアマネジメントと呼ばれる支援を受けながら、介護予防サービス支援計画をたてなければなりません。
そんな介護予防ケアマネジメントを担うのが、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターには、介護予防ケアマネジメントを行うケアマネジャーが配置されており、介護サービスの利用支援が受けられます。
ケアマネジャーが自宅を訪問し、身体状況や生活環境などからその人にあわせた支援計画を立てます。
もし、要介護認定を受けていない状態であっても、地域包括支援センターに相談すれば介護認定の申請からサービス利用までの支援が受けられるでしょう。
要支援1の支給限度額は?
介護保険では要介護認定ごとに、1カ月あたりの保険給付の上限額が定められています。
保険給付の上限額を区分支給限度額といい、介護度ごとで以下のように設定されています。
区分 | 支給限度額基準(1カ月あたり) |
---|---|
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
要支援1は支給限度額が一番低く設定されているため、サービスの利用頻度が限られます。
また、介護保険ではそれぞれの所得に応じて1~3割の自己負担額が設定されていたり、1カ月間で利用した介護サービスが支給限度額を超えると、超過分は全額自己負担となったりするため注意が必要です。
要支援1で入れる施設は?
介護施設の場合、介護度の違いによって入居できる施設が限られます。
以下は、要支援1の場合に入居できる施設です。
分類 | 施設名 |
---|---|
有料老人ホーム | 介護付き有料老人ホーム(施設により異なる) |
住宅型有料老人ホーム | |
高齢者向け住宅 | サービス付き高齢者向け住宅 |
高齢者向け賃貸住宅 | |
シニア向け分譲マンション | |
軽費老人ホーム | |
介護保険施設 | 介護療養型医療施設【2024年3月を以ってサービス終了】 |
株式会社LIFULL seniorの「介護施設入居に関する実態調査(2020年)」によると、要支援1の場合には、高齢者向け住宅や有料老人ホームの利用が多いことがわかります。
施設入居時に要支援1だった人は、有料老人ホームでは14.1%、高齢者向け住宅では18.4%です。
この結果から、要支援1でも施設入居されている方は一定数いることがわかります。
出典:株式会社LIFULL senior「介護施設入居に関する実態調査」(2020年11月19日)
要支援1の人が施設に入居したときかかる費用
いざ施設入居を検討するとなった場合、やはり気になるのは費用面ではないでしょうか。
要支援1の場合、所得に応じて費用が設定されている介護老人保健施設や特別養護老人ホームの対象にはならず、施設の入居費用が高くなる傾向にあります。
以下は、要支援1の方が施設入居した際にかかるおおよその費用です。
施設 | 介護サービス費用 (1割負担の場合) |
月額費用相場 | 合計 |
---|---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 5,460円 | 20万円 | 205,460円 |
住宅型有料老人ホーム | 5,032円 | 20万円 | 205,032円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 5,032円 | 15万円 | 155,032円 |
施設の費用は、立地や設備、サービス内容によって大きく変わります。
また、特定入居者生活介護サービスを行っていない施設の場合、介護サービスを受けるためには個別で居宅介護サービスを利用しなくてはなりません。
その場合、実際に利用したサービスの合計金額が介護サービス費用になります。
要支援1は施設に入居すべきなのか?
施設入居の考え方は人それぞれです。
身体状況や持病の有無、介護者が同居など判断する材料に決まりはありません。
要支援1の場合にはご自身でできることが多くあります。
自宅で生活を継続する場合は、介護サービスの利用で生活の継続ができるか検討するのもひとつの方法です。
本人や家族だけでの判断がつかない場合、担当のケアマネジャーと相談するとよいでしょう。
専門的な視点で自宅の生活が継続可能か助言してくれます。
要支援1のケアプランと費用
要支援1の認定を受けると介護保険利用でサービスを利用できます。
要支援の1ヶ月当たりの介護保険から給付される上限額(支給限度額)は50,320円です。
家族と同居している場合と施設に入居している場合の、ケアプランと費用を解説します。
介護サービスの概算料金試算には以下のサイトを参考にすると概算できます。
家族と同居している場合
家族と同居している場合、要支援1の方のケアプランは、週2~3回程度訪問サービスや通所サービス利用を組み込むのが一般的です。
要支援1の方のケアプランには以下のものが組み込めます。
- 介護予防訪問介護
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問入浴
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護予防福祉用具貸与
サービス内容 | 使用回数 | 費用額 |
---|---|---|
予防訪問看護 | 4回 | 18,080円 |
介護予防訪問リハビリテーション | 8回 | 25,200円 |
介護予防福祉用具貸与 | 5,800円 | |
1ヶ月の介護サービス費用試算額 | 49,160円 | |
自己負担額 | 1割負担の方 4,916円 2割負担の方 9,832円 3割負担の方 14,748円 |
施設に入居している場合
要支援1で施設に入所している場合、自己負担の費用は以下のようになります。
施設入所の場合、「区分支給限度支給額」は適用されません。
介護予防特定施設とは利用者が可能な限り自立した日常生活ができるよう、指定を受けた軽費老人ホーム・有料老人ホームをいいます。
サービス内容 | 費用額 |
---|---|
介護予防特定施設入居者生活介護護 | 66,160円 |
1ヶ月の介護サービス費用試算額 | 66,160円 |
自己負担額 | 1割負担の場合 6,616円 2割負担の場合 13,232円 3割負担の場合 19,848円 |
※居住費・食費・日用品費は別途必要になります。
デイサービスに通う目安の頻度は?
要支援1の場合、デイサービスの利用目安は週1回、多くて2回と想定しておくとよいでしょう。
要支援1の段階では、必要な身体介護の量も多くないため、デイサービス事業所で行われる機能訓練やレクリエーションを目的に利用される方も少なくありません。
高齢になり外出の機会が減って人づきあいが減ってしまった方など、他者との交流を目的にデイサービスに通う方もいます。
もし、何らかの事情で週3回以上の利用が必要な場合は、担当のケアマネジャーへ相談しましょう。
まとめ
この記事では、「要支援1」で利用できるサービスや費用について解説しました。
要支援1のポイントは次のとおりです。
- 要支援1は、日常生活動作は問題ないものの、家事や身支度などの生活援助を必要とする状態
- 利用できるサービスは、介護予防サービスと市区町村主導で行われる総合支援事業
- サービスを利用するには、地域包括支援センターへ相談する
本記事にて紹介した内容を参考に、ご自身にあった介護サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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横井 康佑
医療・介護ライター・社会福祉士
1989年生まれ。福祉系大学を卒業後、現役の医療ソーシャルワーカーとして10年以上医療機関に勤務。現在も医療・介護に関わる相談を受けながら、さまざまな生活問題を支援。webライターとしても活動しており、医療・介護記事の執筆を行うほか、電子書籍の出版プロデュースも行っている。