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高齢者に多い麻痺の種類|原因や症状・福祉用具を紹介
麻痺と一言で言っても、症状や重症度まで幅広く、判断に迷う方もいるでしょう。
麻痺は、運動麻痺一つを例にとっても多くの種類があります。また、原因もさまざまであるため、介護を受ける方や介助者にあったサポートを選ぶことが重要になります。
この記事では麻痺の説明に加えて、生活のサポートに必要な福祉用具の選び方について解説した後、おすすめ商品を紹介します。
身体に発生する運動麻痺とは
麻痺の種類は、大きく分けて運動麻痺と感覚麻痺の2つがあります。
運動麻痺とは、手や足などの力の調整がしにくくなったり、動きをコントロールしにくくなったりすることを指します。
感覚麻痺とは、身体の感覚が鈍くなったり、無くなったりすることを指します。触られている感覚や痛み、温度などが感じられにくくなります。
今回は、福祉用具の利用が有効となる運動麻痺を中心に解説します。
運動麻痺は、運動ニューロンが損傷を受けることで生じます。運動ニューロンとは、筋肉をコントロールしている神経細胞です。運動ニューロンが障害されると、筋肉の収縮力や運動能力が低下し、筋肉が十分に動かなくなるため、正常な動作ができなくなります。
運動麻痺の原因は単純ではありません。脳卒中や外傷性脳損傷、神経筋疾患などの疾患や、筋肉の疾患、筋萎縮性側索硬化症などの神経疾患など、さまざまな原因によって引き起こされます。
運動麻痺は、一部の筋肉のみに影響する場合もありますが、障害の程度によっては半身、あるいは全身の筋肉に影響することもあります。
運動麻痺には、痙性(けいせい)麻痺、弛緩(しかん)性麻痺、失調性麻痺など、多くの種類があります。力が入りすぎてしまったり、反対に力がまったく入らなかったりと症状は原因によってさまざまです。
麻痺の種類と麻痺が起こりやすい身体の部位
障害される部位によって、麻痺の起こりやすい身体の部位は変わってきます。また、麻痺の種類も部位によって変わります。以下に解説しますので参考にしてください。
片麻痺
片麻痺(へんまひ)とは、脳卒中などで左大脳半球または右大脳半球の一部、とくに内包(ないほう)と呼ばれる部分の近くが損傷した場合によく見られます。半身の身体が麻痺する状態です。
麻痺した側の手足は動かしにくくなり、しびれや力の入りにくさ、手足の感覚の異常などが表れます。また、顔にも影響が出ることがあり、口が開かなくなったり、言葉が発しにくくなったりすることもあります。症状の程度は、障害部位や重症度によって大きく変わります。
以下に左片麻痺と右片麻痺に現れやすい症状の特徴についてまとめました。
共通 | 運動麻痺:手や足などの力の調整がしにくくなったり、動きをコントロールしにくくなったりする。 感覚麻痺:身体の感覚が鈍くなったり、無くなったりする。 構音障害:舌や口が動かしにくくなり、言葉を発しにくくなる。 同名半盲:麻痺側の視野が失われる。 |
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左麻痺 | 失認:目では見えているのに、それが何か分からない、認識できなくなってしまう。 失行:頭では理解できるのに、正しい運動や動作ができない。 性格変容:怒りやすくなるなど、性格が変わる。 半側空間無視:見えているものの左側半分を無視してしまう。 |
右麻痺 | 失書:字を書くことが難しくなる。 失算:計算することが難しくなる。 失語症:言葉を理解したり、発したりすることが難しくなる。 観念運動失行:手順のある複雑な動作や、動きをまねすることが難しくなります。 |
おおまかに示すと、右片麻痺を引き起こす左脳は、言語理解や論理的な思考を司っています。左片麻痺を引き起こす右脳は、空間認知や直感的な判断を司っています。
脳の右半球と左半球では、役割が異なるため、障害された場所によって現れる特徴も異なってきます。
交叉性麻痺
交叉性麻痺は、脳の橋(きょう)という部位の損傷により、半分の顔面と、その顔面と反対側の身体の片側麻痺が生じる症状です。
顔の表情を支配する神経は、脳の橋という場所で交叉するとされており、その部位を損傷することで交叉性麻痺が生じます。
右半身もしくは左半身だけの片麻痺については、片麻痺で説明した症状と同様ですが、橋は顔面の運動・感覚や呼吸調整、運動調整などにかかわっているため、麻痺のある部分が動かしにくかったり、感覚がわかりにくくなったりする以外にもさまざまな症状が生じる可能性があります。
対麻痺
対麻痺(ついまひ)は、両下肢に起こる麻痺です。胸や腰の脊髄の障害で生じることが多いとされています。
一般的な脊髄の障害として挙げられる脊髄損傷では、障害された直後は弛緩(しかん)性麻痺が生じ、その後に痙性(けいせい)麻痺が生じるとされています。
弛緩性麻痺とは、下肢に力が入らず、体がぐにゃっとなるような状態を指します。痙性麻痺は、下肢に力が入ってしまい、痙攣が起こるような状態を指します。また、対麻痺では、尿失禁や便失禁、性機能障害が起こることもあります。
対麻痺になる原因としては、主に脊髄障害ですが、脳の障害が原因となる場合もあります。
四肢麻痺
四肢麻痺は、両腕・両脚の四肢全体が麻痺する症状を指します。原因としては、脳の一部である脳幹や延髄という部位の障害によることが多いとされています。そのほか、遺伝子の異常や、事故による首の損傷、脳幹の病変なども原因として考えられます。
脳幹や延髄の障害が原因となる場合、片麻痺と同様の麻痺が表れます。しかし、脳幹や延髄は呼吸や体温調節など、生命にかかわる重要な働きを担っているため、障害された場合には重篤な症状を引き起こす可能性があるでしょう。
また、脊髄損傷による四肢麻痺では、損傷される脊髄の部位や範囲によって麻痺症状が異なります。筋肉疾患の場合、筋肉が正常に機能しなくなり、徐々に四肢麻痺を引き起こすことがあります。
単麻痺
単麻痺は、片腕や片脚など、いずれかの一肢に麻痺が生じる状態を指します。たとえば、右上肢のみに麻痺が生じたり、左下肢のみに生じたりするケースです。
単麻痺は、大脳皮質運動野や腕神経叢(そう)、腰神経叢の損傷・病変によって引き起こされることがあります。
また、大脳皮質運動野の局所病変によって単麻痺が起こることもあります。この場合、麻痺の生じる部位は顔面から下肢まで、病変部位によってさまざまです。麻痺は痙性(けいせい)麻痺になります。
一方、腕神経叢や腰神経叢などに代表される下位運動ニューロン障害による単麻痺では、病変部位に対応する部位に麻痺が生じます。麻痺は弛緩(しかん)性麻痺になります。
たとえば、上肢の単麻痺を引き起こすものとして、尺骨神経麻痺、橈骨(とうこつ)神経麻痺、肩甲上神経麻痺などが挙げられるでしょう。
介護時に注意!麻痺に伴い生じる症状
麻痺が生じている場合、症状は麻痺のみにとどまるとは限りません。障害された部位によっては注意するべき症状が出現する場合があります。
失認(しつにん)
失認とは、身体のある部位や物体や人物などを認識できなくなる症状のことを指します。
麻痺がある状態においては、しばしば麻痺側の身体や手足の感覚が障害され、うまく認識できなくなることがあります。
また、脳の一部である側頭葉という部位が障害されることによって聴覚に障害が生じたり、後頭葉という部位が障害されることによって視覚に障害が生じたりすることもあるでしょう。
障害によって失認が生じた場合、見えなくなったり聞こえなくなったりするわけではありません。
視覚失認は、見えていても、それがなんなのかを認識できなくなります。聴覚失認は、音が聞こえていても、なんの音か認識できなくなるのです。
ほかにも、左半側空間無視とも呼ばれる症状が生じるケースがあります。左側の空間を認識できなくなってしまい、ご飯を食べていても左側にあるご飯だけ認識できずに食べないことも症状として挙げられるでしょう。
麻痺がある場合、さまざまな感覚の障害によって失認が生じることがあるため、日常生活に大きな障害を引き起こす可能性があります。
性格変容
性格変容は、脳の一部である前頭葉や側頭葉などの損傷によるものが多いと考えられています。脳の障害によって麻痺が生じている場合、性格変容を起こすこともあるでしょう。
具体的には、前頭葉が障害されることで、意欲や理性などの調節機能に障害が生じ、性格が変化することがあります。たとえば、思慮深い性格だった人が子どもっぽい性格に変容することもあるでしょう。
性格変化は人によって異なり、程度もさまざまですが、生活に支障をきたすこともあるため、周囲の人々が理解し、支援することが必要になります。
失行(しっこう)
失行は、運動障害によって複雑な動作や図形を書く程度の簡単な作業を行う能力が障害され、一連の動作を行えないか、動作の順序を覚えられなくなる状態を指します。
失行は、脳の一部である頭頂葉や前頭葉などの損傷によって引き起こされます。
たとえば、歯を磨くといった日常生活動作でも、歯ブラシ自体の使い方や動作の順序を覚えることが難しくなることがあるでしょう。また、料理や手芸などの細かい作業でも、道具や材料の扱い方や手順を覚えられないことがあります。
失語症
失語症は主に以下の5種類があります。
ブローカ失語 (運動性失語) |
話すことが困難で、文法的な誤りがみられる。言葉の理解力は比較的保たれている。 |
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ウェルニッケ失語 (感覚性失語) |
言葉の理解が困難で、文章を理解することが難しくなる。話し方は流ちょうで、意味のない音声や単語を発話することがある。 |
失名詞失語 | 名詞の理解が困難で、代名詞や動詞を多用して話す。自分の言葉に対する理解力が低下することがある。 |
伝導失語 | 言語理解や発話に問題がないにもかかわらず、単語の音のつながりや発音が正確でないことがある。 |
全失語 | 話すことも理解することもできない。 |
失語症は、脳の特定の部位が損傷することによって引き起こされます。原因や症状によって種類が異なります。
麻痺に必要なADLサポート
ADLとは、個人が日常生活を送る上で必要になる基本的な動作のことを指します。
たとえば、食事・入浴・着替え・排せつ・移動など、日常生活を送るために必要な動作のことです。
身体に麻痺が生じた場合、日常生活でのサポートが必要になることが考えられます。以下に例を挙げます。
- 身体を支えて移動するために杖や歩行器を使用する
- 車いすを利用して移動する
- 日常生活で必要な動作の補助(例:食事、入浴、着替え、トイレなど)
- 住宅環境の改善(例:手すりの設置、段差の解消など)
- 家事や買い物、薬の管理などのサポート
- 治療やリハビリテーションの支援
日常の生活で行われる動作であっても、麻痺が生じている場合は困難になるケースが多いでしょう。すべての動作にサポートが必要とは限りませんが、部分的にサポートが必要になる状況は十分に考えられます。
日常生活をサポートするために、介助者が介護することも手段の一つです。しかし、すべてをサポートすることは難しいことや、介助者のみでサポートすることが難しいこともあるでしょう。
サポートが難しいと感じるときは、福祉用具を活用することをおすすめします。詳しくは以下で解説します。
麻痺のサポートには福祉用具の活用がおすすめ
身体に麻痺が生じた場合、介助やリハビリも重要になりますが、福祉用具を活用することで、多くのメリットが得られます。
麻痺の種類によってメリットの得られやすい福祉用具は異なりますが、たとえば、右片麻痺で運動麻痺が生じているケースであれば、手すりを使用して動作が安全に行える可能性があるでしょう。
また、対麻痺で両下肢の動かない方が車椅子を使うことで、移動の身体的負担を軽減することができるケースがあるかもしれません。
以下に詳しく説明します。
- 自立促進:杖や歩行器、車いすなどの福祉用具を使用することで、安定した移動ができ、外出や買い物などの日常生活を自立して行える
- 身体的負担の軽減:福祉用具を使用することで、活動時の身体の負担を減らし、疲れにくい生活を送れる
- 安全性の確保:手すりなどの福祉用具を設置することで、転倒や転落などの事故を予防できる
- リハビリの促進:福祉用具を適切に使用することで、筋力増強や持久力の強化などにつながる
このように、福祉用具を活用することで、麻痺がある人でも自立した生活を送ることができるようになるでしょう。以下に生活動作に役立つ福祉用具について解説します。
これから紹介する福祉用具はヤマシタでご相談可能です。福祉用具専門相談員がお身体・環境に合った用具をご提案いたしますので、お気軽にご相談下さい。
営業所は安心の365日体制。
お客様のご相談、ご要望にスピーディーに対応します。
メールは365日24時間受付
受付時間 9:00~18:00 (土日祝年末年始を除く)
特殊寝台
特殊寝台は、身体の機能が制限されている方が自力で動きやすくなったり、介護を受けやすくなったりするのに役立つ特殊なベッドのことです。介護ベッドとも呼ばれています。
運動麻痺によって自力でベッドから起き上がるのが大変な方の場合、リモコンで背もたれの角度が調節可能な電動式の特殊寝台を用いれば、自力で起き上がれたり、介護する方が起き上がりの介助をしやすくなったりします。
ただし、便利である反面、適切な使い方をしなければ、かえって介護を受ける方と介助者の双方に負担がかかるケースは十分に考えられるでしょう。
よくある例としては、ベッドの高さを調整せずに立ち上がったり、乗り移ったりしてしまい、転倒につながるケースが挙げられます。
福祉用具専門相談員などの専門家に相談した上で適切な特殊寝台を選ぶようにしましょう。また、特殊寝台は介護保険の給付対象となっていますが、要介護度などによっては対象外になってしまいますので、専門家と相談しながら導入を進めると良いでしょう。
特殊寝台のレンタルについてはこちら
介護ベッドのレンタルについては下記の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
介護ベッドを自費レンタルする方法|メリット・デメリットや介護ベッドの選び方を紹介
介護ベッドはレンタルと購入どっちがおすすめ?
手すり
手すりは、住居内で安全かつ快適に生活するために必要な福祉用具として導入しやすいでしょう。しかし、一口に手すりと言ってもさまざまな種類があります。
工事を必要とする手すりもありますが、置き型の手すりはレンタル可能です。
運動麻痺のある方であれば、一般的に麻痺がない健側に手すりを設置して、立ち上がりや着座のときのサポートとして使うことが想定されます。
上記は一例であり、手すりはトイレ用や玄関用など、さまざまな場面にあわせたタイプがあります。
手すりの設置には、介護を受ける方の身体状況や住宅の構造、設置場所などを考えた上で、適切な物を選ぶ必要があります。また、設置方法や設置場所を選定することも重要です。
専門家に相談しながら適切なタイプを選択するようにしましょう。
手すりのレンタルについてはこちら
手すりを選ぶ際のポイントなどは下記の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
手すりを選ぶ際のポイントと設置場所
車いす
麻痺がある方は、歩行による移動が難しくても、移乗などは可能な場合もあります。このような場合、車いすを使うことで生活の質の向上が望めるでしょう。
車いすには、折り畳み式、電動車いす、自走式車いす、リクライニング式車いすなど、さまざまな種類があります。介護を受ける方の身体状況や生活の様式に応じて、適切なタイプの車いすを選択することが重要です。
おすすめは、モジュールタイプの車いすです。身体の状態や環境にあわせて、肘掛け(アームレスト)や座面の高さが調整できたり、足台(フットレスト)の取り外しが可能であり、身体に合わせて調整ができるタイプの車いすになります。
片麻痺の場合、足台が取り外せることで、麻痺側の足を乗せて健側の足で車いすをこぐという動作ができます。また、車いすからベッドなど、移乗するときも楽に乗り移れます。
車いすも身体にあわないタイプを使用していては、負担がかかってしまうことでしょう。専門家に相談しながら選択することをおすすめします。
車いすのレンタルについてはこちら
車いすの選び方や、レンタルと購入の違いなどについては下記の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
車いすの種類と失敗しない選び方|介護保険レンタルについても解説
車いすのレンタルと購入の違いとは?そのポイントは介護保険にあり
まとめ
麻痺と福祉用具の選び方について解説しました。麻痺はさまざまな症状があり、重症度やその他の障がいまで考慮すると、非常に複雑です。
麻痺が生じている部位や麻痺の重症度によって、できる生活動作は異なります。さらに、麻痺以外の障がいによって、生活動作が行えても、失認や半側空間無視といった症状がみられるのであれば、動作の安全性は低いといったケースも存在します。
介護を受ける方の状態を総合的に吟味した上でサポート方法を検討するようにしましょう。
介護を受ける方と介助者の状態にあったサポートを選択できると安心です。サポートの一つとして、福祉用具を使用するのも良いでしょう。
たとえば、特殊寝台を利用して起き上がりやベッドへの乗り移りを行いやすくしたり、車いすを使用して移動や外出をしやすくしたりできます。
福祉用具にはさまざまなタイプがあります。まずはレンタルで、どのタイプが介護を受ける方にあうかを試してみるのが良いでしょう。ただし、麻痺の生じた方をサポートする方法の選択肢は幅広く、介護を受ける方にあった方法を選ぶことは簡単ではありません。
福祉用具でわからないことや疑問点は、ぜひヤマシタにご相談ください。
経験豊富な福祉用具専門相談員が福祉用具の選定をさせていただきます。
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森田亮一
理学療法士・ケアマネジャー
理学療法士10年目。山梨県内で新卒時点から介護業界で働き続けています。経験したことのある事業形態は、通所系・訪問系・入所系などさまざまであり、管理に携わったこともあります。 2021年から、資格と経験を活かして文筆業に挑戦し始めました。多岐にわたる経験から得た知見を活かし、悩みを抱えた方の問題解決のお役に立てたら嬉しく思います。