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サルコペニアとは?フレイルとの違いや予防方法を解説
「高齢になって食べる量が減ってしまった」「手足が細くなった気がする」と、感じることはありませんか。
しかし「歳のせいだから仕方がない」と思っていると、取り返しのつかないけがや病気につながるかもしれません。
加齢に伴い筋肉が減少し、身体が虚弱になることを「サルコペニア」と呼ばれています。
サルコペニアは気づかないうちに進行するため、ぜひこの記事を読んで、サルコペニアの対策を始めてみましょう。
サルコペニアとは?
サルコペニアは、ギリシャ語の「サルコ(筋肉)」と「ペニア(喪失)」の2つを組み合わせた言葉です。
サルコペニアは、歳を重ねるごとに全身の筋肉量や筋力がしだいに減少し、身体能力が低下する状態のことを指します。
65歳以上の高齢者の約15%がサルコペニアといわれており、女性よりも男性の割合が高い傾向です。
細かく分けるとサルコペニアには一時性サルコペニアと二次性サルコペニアの2種類があります。
一次性サルコペニアは、加齢以外に明らかな原因がわからないものを指し、二次性サルコペニアは、以下の3つの原因があるものに分類されます。
- 活動量低下:寝たきりなど
- 病気:がんなど
- 栄養バランスの崩れ:摂取エネルギーやタンパク質不足など
高齢者は加齢するにしたがって筋力が低下するとされています。そのため、一次性サルコペニアの影響を少なからず受けている方が多い傾向です。
サルコペニアになると筋力が低下し、日常生活で必要な動作が難しくなります。そのため、転倒リスクも高くなり、要介護状態につながると考えられています。
健康寿命が短くなるという研究結果も出ており、健康で長生きするためにはサルコペニア対策が欠かせません。
サルコペニアの判断基準
サルコペニアは以下の3つを測定して診断します。
- 筋肉の力
- 筋肉の機能
- 筋肉の量
筋肉の力は、握力で判断します。男性は28kg未満、女性の場合18kg未満だとサルコペニアの可能性があります。
筋肉の機能を判断する方法は、歩行速度、5回椅子から立ち上がるのにかかった時間、簡易身体能力バッテリー(SPPB)テストのいずれかです。
たとえば歩行速度テストでは、6mの距離のうち1m地点から5m地点までの4mを歩く時間が、秒速1.0m以下になる場合です。
立ち上がりテストでは、椅子から5回立ち上がる時間が12秒以上かかった場合に、サルコペニアの可能性があると判断されます。
筋肉の量は、体脂肪率を測れる体重計の原理を利用して、体に微弱な電気を流して測定します。
ほかにも、BMI (体格指数)が18.5未満の場合や、ふくらはぎの周りの長さが男性であれば34cm未満、女性は33cm未満の場合は、筋肉の量が減っているかもしれません。これらを目安にして、メジャーなどで測れる場合はチェックしてみましょう。
ここでは、機械や道具を用いて検査する方法を解説しました。自宅で簡単にチェックする方法は、後ほど紹介します。
出典:日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診断基準の改訂(AWGS2019 発表)」
サルコペニアとフレイルの違い
サルコペニアと似たような状態にフレイルがあります。
フレイルは身体機能に加えて、認知症や住環境なども考慮した、広い範囲の状態で使われます。
一方、加齢による筋力の低下など、身体機能のみを指しているのがサルコペニアです。
フレイルとサルコペニアは密接なかかわりがあるため、身体機能だけでなく生活環境全般に配慮しながら双方の対策をしていきましょう。
フレイルについては、下記の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
サルコペニアをセルフチェック!
サルコペニア対策の第一歩として、自分自身の状態を知ることからはじめましょう。
握力計といった特殊な機械がなくても自分でできる方法を紹介します。
指輪っかテスト
指輪っかテストは、ふくらはぎの太さを指で囲って、チェックする方法です。
まず、両手の親指同士・人差し指同士をくっつけて輪っかを作ります。
利き足でないほうのふくらはぎを囲み、指輪っかよりもふくらはぎが太ければ、サルコペニアの可能性は低いでしょう。
ふくらはぎを囲む指同士がくっつく場合は、サルコペニアの可能性が高くなります。
5回立ち上がりテスト
5回立ち上がりテストは、椅子から立ち上がり、また椅子に座る動作を5回行うテストです。12秒以上かかった場合は、サルコペニアの可能性が考えられます。
テストの仕方は以下の通りです。
- 膝が約90度に曲がる高さの椅子を用意して座る
- 両足を肩幅程度に広げる
- 腕を体の前で交差させて腕組みの形にする
- 素早く5回立ち座りを行う
立位になったときには、背筋と膝を伸ばしてください。また、背筋を伸ばしたまま座るようにしましょう。
立ち座りに時間がかかるときは、サルコペニアの特徴である筋力の低下が疑われます。
日常生活の変化を見る
先に紹介したようなテストをしなくても、日常生活の変化を見ることで、サルコペニアを疑う目安になります。次のような症状がないか、チェックしてみましょう。
- ペットボトルのふたを開けにくくなった
- 交差点を渡り終わる前に信号が赤になり、焦った
- 手すりにつかまらないと階段を上がれない
このような特徴はただの加齢ではなくサルコペニアだと考えられます。
歳のせいだと諦めずにしっかりと対策を始めましょう。
サルコペニアの原因
サルコペニアは運動量の低下と低栄養、もしくは栄養バランスの崩れが原因とされています。筋肉量の減少や筋力が低下することで、サルコペニアが進行します。
加齢とともに身体機能が低下し、筋肉を使う運動が不足する傾向です。
筋肉量は20代がピークで、その後年齢を重ねるごとに筋肉量は低下します。
筋肉は「使わなければ減少する」特性があり、座ることが多い生活や日常的な運動不足の方は、筋力の低下を加速させるでしょう。
さらに、高齢になると食欲が減少したり、消化機能が低下したりすることも考えられます。それに加えて、食事の準備が大変で、パンといった簡単な食事で済ませる方も少なくありません。
カロリーは摂取できていても体を作るために必要な栄養が摂取できなければ筋肉は減ってしまいます。筋肉の生成や維持に必要な、青魚や卵・大豆製品などのタンパク質を意識して摂取することが大切です。
一度サルコペニアになると、さらに活動量や食事量の減少につながるという悪循環になりやすいため、早い段階での対処が必須です。
サルコペニアの予防方法
サルコペニアを予防するためには、適切な運動と栄養摂取を継続する必要があります。
どちらかを一時的に頑張ってもすぐに効果が出ることは難しく、運動習慣や栄養管理を日常生活で無理なく実施することで、サルコペニアの予防と健康維持ができるようになります。
食事:タンパク質の摂取
サルコペニアを予防には、まず食事でタンパク質を積極的に取り入れることが大切です。
筋肉の維持に不可欠な栄養素であるタンパク質は、肉や魚などの動物性タンパク質と、豆類などの植物性タンパク質に分けられます。とくに動物性タンパク質は、フレイル予防に効果的といわれています。
しかし、肉や魚に食べ慣れていないと、必要な栄養素だとわかっていても抵抗がある方もいるでしょう。
その場合は、卵や牛乳・チーズなど取り入れやすい食品から始めましょう。デザートとしてプリンやヨーグルト、アイスクリームを加えることもおすすめです。
甘いものが苦手な方は、チーズや冷奴などを活用して、食べやすい食品から無理なく続けていくことが大切です。
小食の方で品数を増やすことが難しい場合は、白米やパンなどの主食の一部を減らし、タンパク質を多く含む食品に置き換えることで、栄養バランスが保たれます。
日本文化の「三角食べ」を意識することで、少量でもバランスの取れた食事内容になります。食事や栄養については下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:栄養管理の目的や効果|介護における食事のポイントも解説
運動:筋肉量・身体機能の増加
サルコペニア予防には、タンパク質の摂取とあわせて運動を取り入れると効果的です。軽い運動でも継続することでサルコペニアの進行を予防できます。まずは、簡単な運動から始めてみましょう。
運動も栄養管理と同様に、継続しなければサルコペニア予防の効果は激減します。栄養を摂ったら運動もセットでおこない、筋肉を増やしていきましょう。
筋肉はすぐに増えるわけではないため、焦らず、少しずつ日常生活に運動習慣を定着させることが大切です。
運動を生活リズムに取り入れるためには、一定の時間やタイミングで運動時間を決めるとよいでしょう。
たとえば、テレビのラジオ体操を日課にする、トイレに立ったら戻る前に5回立ったり座ったりする運動をプラスする、などです。
より効果的にサルコペニア予防をしたければ、以下の2つの運動を参考に足の大きな筋肉を動かすことをおすすめします。
何歳になっても筋肉を鍛える効果はあります。1分ほどでできますので、ぜひ今から一緒に実施してみましょう。
膝の曲げ伸ばし運動
膝の曲げ伸ばし運動は、前ももの大きな筋肉を鍛えます。
椅子に座って3秒かけて右足の膝を伸ばし、3秒かけてゆっくりと下ろします。前ももに力が入るのを確認しましょう。
反対側も同様におこないます。
空気椅子運動
空気椅子運動は、体幹・お尻・太ももと広範囲の筋肉を鍛えます。
椅子から立ちあがろうとしてお尻が離れた瞬間の姿勢で10秒キープします。おなかに力を入れるとさらに効果的です。
キープするときに息を止めないように気をつけてください。
気合を入れて運動するだけでなく、天気の良い日には散歩に出る、近隣の人と外で会話をするなど、小さな活動を積み重ねることもサルコペニア予防になります。
ほかにも自宅でできる体操を下記の記事で紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
サルコペニアが引き起こす症状・けが
万が一、サルコペニアになった場合、筋力が低下し身体のバランスを維持することが難しくなり、転倒のリスクが高まります。とくに危険なのは、転倒による骨折です。
サルコペニアは骨粗しょう症の合併も多く、骨が折れやすい状態のため、転んだ際に腕や太ももの骨折につながります。
加えて、サルコペニアにより活動量が下がると、サルコペニア肥満になる可能性も高まります。
サルコペニア肥満は筋肉量より内臓脂肪が多い肥満で、見た目ではわかりにくい点が特徴です。
サルコペニア肥満により、糖尿病や心疾患などの病気の原因になるかもしれません。また、サルコペニアによって肺炎や認知症のリスクも高まるでしょう。
サルコペニアが引き起こす病気やけがは、介護が必要な状態に至る大きな原因となります。サルコペニアを予防して、健康で自分らしい生活を続けましょう。
サルコペニアの方をサポートする介護用品
サルコペニアが進行すると、筋肉の低下により歩行や日常生活の動作が難しくなります。適切な介護用品を選ぶことで、身体の負担を軽減し、安全に生活が送れるようになります。
歩行補助つえ|かるがもE伸縮S・M兼用
サルコペニアにより筋力が低下すると、歩行時にバランスをとるのが難しくなります。歩行補助つえは、歩行時の体を安定させ、転倒のリスクを軽減できるでしょう。
「かるがもE 伸縮S・M兼用」は、1本杖でスタンダードなタイプの歩行補助つえです。グリップにシボ加工がされており、手が滑
りにくい点が特徴です。グリップが握りやすく疲れにくいため、外出時でも安心して使用できます。
そのほかの特徴は、以下のとおりです。
- 杖の先ゴムの角度を地面に合わせて調整され、安定している
- 杖の長さを73〜95.5cmの10段階調整ができる
- 軽量で持ち運びがしやすい
軽量で高さ調節も可能なため、小柄な方でも安定した歩行ができるでしょう。
歩行補助つえの選び方や利用方法は次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:歩行補助杖の種類と選び方!介護保険の利用方法も解説
歩行器|リトルターンⅡ 抑速プラス
歩行器は両手で身体を支えられるため、体の安定性が高く、筋力低下による転倒予防に役立ちます。
「リトルターンⅡ 抑速プラス」は、歩行中に急に加速したときでも自動で速度を抑える機能がついている点が特徴です。
そのほかにも、次のような特徴があります。
- 4段階の抑速力の調整ができる
- 持ち手の高さを74〜96.5cmまで調整できる
- 折りたたみができる
抑速力を4段階、持ち手の高さを10段階に調整できるため、幅広い体格の方に対応しています。コンパクトに折りたためる点も特徴で、日常的に外出する方に特におすすめです。
歩行器の選び方や種類を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:歩行器の選び方とは?種類や介護保険を利用したレンタルも紹介
関連記事:歩行支援とは|症状別に介護用品の選び方やおすすめ商品を紹介
手すり|あがりかまち用たちあっぷ 両手すり
サルコペニアによる筋力の低下が進行すると、立ち上がりや階段の昇降でバランスをとるのが難しくなります。手すりはこれらの動作を支え、転倒リスクを軽減します。
「あがりかまち用たちあっぷ 両手すり」は、両側に手すりがあり、玄関の段差を安全に昇降できる点が特徴です。
そのほかにも、次のような特徴があります。
- 屋内・屋外問わず使用できる
- 工事をしなくても置くだけで設置できる
- 同じシリーズで片手すり用もある
手すりを使うことで段差を安全に越えやすくなります。利用者自身が自分で体を支えられるため、介護者の負担も軽減できるでしょう。
手すりの選び方や設置場所を詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:手すりを選ぶ際のポイントと設置場所
まとめ
もし本人や介護者が「サルコペニアかな?」と感じたときは今からでも少しずつ運動を始め、食事のバランスを整えることが大切です。小さな積み重ねが、今後の健康と生活の質の維持につながります。
その一方で、自分自身の体の状態を自分で判断するのは難しいかもしれません。
そのような方のためにヤマシタでは福祉用具の相談に加え、AIを用いた解析アプリ「トルト」で歩行診断を行っています。
トルトは、5m歩行する様子を動画に撮影するだけで、わずか2分後にはAIが歩行動画を解析し、分析結果が分かるアプリです。利用者の歩行の特徴や転倒リスクが点数化され、結果が分かりやすく表示されます。ヤマシタのスタッフが、歩行状態や改善点について詳しく説明します。
予防のためにも早めにプロに相談して今後の健康生活にぜひお役立てください。
営業所は安心の365日体制。
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森田亮一
理学療法士・ケアマネジャー
理学療法士10年目。山梨県内で新卒時点から介護業界で働き続けています。経験したことのある事業形態は、通所系・訪問系・入所系などさまざまであり、管理に携わったこともあります。 2021年から、資格と経験を活かして文筆業に挑戦し始めました。多岐にわたる経験から得た知見を活かし、悩みを抱えた方の問題解決のお役に立てたら嬉しく思います。
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