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居宅介護支援事業所とは?利用方法や選び方を解説!
介護サービスを受けるためには「ケアプラン」と呼ばれる介護サービス計画書が必要になりますが、そのケアプランを作成してくれる事業所が「居宅介護支援事業所」です。
この記事では、居宅介護支援事業所の利用方法や選び方について解説します。
居宅介護支援事業所とは
「「居宅介護支援事業所」とは、介護保険法に基づいて要介護者が介護サービスや福祉用具などを利用しながら生活ができるように支援する事業所です。
主に「利用者からの相談を受ける」「サービスの計画を作成する」「サービス事業者との連絡調整を行う」などを実施します。
介護サービスを利用するための介護サービス計画書をケアプランというため、居宅介護支援事業所は別名「ケアプランセンター」とも呼ばれています。
地域包括支援センターとの違い
居宅介護支援事業所と地域包括支援センターとは、後に詳しく説明する「ケアプラン」と呼ばれる「介護サービスを利用するための計画書」を作成する業務を担うという点で似ていますが、両者は担当をする利用者の範囲に違いがあります。
居宅介護支援事業所は、「自立・要支援1・要支援2・要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5」の8段階に分かれた介護度のうち、要介護1以上の利用者に対して相談や支援を行います。
一方、地域包括支援センターは、自立・要支援1・要支援2と判定された利用者を含む、該当地域に住む65歳以上の高齢者全員に対して相談・支援を提供します。
地域包括支援センターについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
居宅介護支援事業所で受けられるサービス
居宅介護支援事業所は、要介護者である利用者が可能な限り自宅または施設で生活を送ることができるようにケアプランを作成します。
また、事業者と連絡・調整を行い、そのプランで適切なサービスを受けられるように、モニタリングを行います。
以下では、居宅介護支援事業所が実施しているサービスについて解説します。
ケアプランの作成
介護保険を用いて介護サービスを利用するためには、「ケアプラン」と呼ばれる介護サービス計画書を作成する必要があります。
ケアプランには「居宅サービス計画書」「施設サービス計画書」「介護予防サービス計画書」の3種類があります。
ただし、居宅介護支援事業所は要介護1以上の方を対象としているため、「介護予防サービス計画書」以外の、「居宅サービス計画書」「施設サービス計画書」を作成します。
ケアプランの作成は、以下の5つの工程に分かれています。
- アセスメント
(利用者の現状や希望などを把握し、医療関係者からの情報を加味して課題を分析する) - ケアプラン原案の作成
- サービス担当者会議
(ケアマネジャーが作成したケアプランの内容を各サービス担当者が集まって検討する) - ケアプラン原案の修正・再提案・同意
- ケアプランの交付
モニタリング・プランの練り直し
モニタリングとは、ケアプランによって提供されているサービスが予定通りに提供されているか、利用者本人や家族のニーズからずれていないかなどを定期的にチェックすることです。
ケアプランはサービス利用前に作成しますが、サービス利用後に利用者の身体状況の変化が見られることもあるでしょう。
その際に、提供されているサービスが過剰になっていないか、サービスが不足していないかなどをモニタリングによって検討します。
必要に応じてケアプランの見直しを行うと、より利用者に適したサービスの提供が行えます。
関係機関との連携
居宅介護支援事業所に従事するケアマネジャーは、作成したケアプランに沿ってサービスを提供できるように各関係機関との連絡や調整を行っています。
また、モニタリングやサービス担当者会議などもケアマネジャーが関係機関と調整をします。
そのため利用者・家族はサービスの利用について連絡・調整を行う必要はありません。
居宅介護支援事業所を利用できる対象者
居宅介護支援の対象者は、要介護1以上の認定を受けた方となっています。
要介護度は8段階に分けられていますが、そのうち「要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5」のいずれかの段階の方が、居宅介護支援事業所からの居宅介護支援を受けることができます。
居宅介護支援については、以下の記事をご参照ください。
関連記事:介護保険対象者と要介護レベル
居宅介護事支援事業所の特徴
居宅介護支援事業所には、運営方針・人員基準と資格・設備基準の3つの特徴があります。
以下では3つの特徴について解説していきます。
運営方針
居宅介護支援事業所は厚生労働省にて定められた運営基準に基づいて、適正な運営をすることが義務付けられています。
運営主体は介護事業を行う法人であることが必須要件です。主に経営母体は社会福祉法人、医療法人、NPO法人などが多いです。
人員基準と資格
人員基準は、常勤の主任ケアマネジャーである「管理者」と利用者35人に対して1人の「ケアマネジャー」の配置が必須となっています。
厚生労働省の公表している「居宅介護支援1事業所あたりのケアマネジャー人数(常勤換算)」によると、令和元年度の1事業所あたりのケアマネジャーの平均人数は2.7人となっています。
参考:厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援」
設備基準
設備基準に関しては、専用の事務室や相談室、洗面所やトイレなどの衛生設備が必要となっています。
居宅介護支援事業所に必要な設備基準は都道府県によって異なりますが、基本の設備基準は以下のような内容になります。
- 事務室:専用区画であり、机や書庫などの備品が収容できる程度の広さがあること
- 相談室:個室が望ましい(プライバシーが保護できるならパーテーションでも可能)
- 衛生設備:感染症予防のため洗面所の確保、石鹸・消毒液などが必要
居宅介護事支援業所の利用方法・流れ
居宅介護支援事業所を利用する方法と流れについて解説します。
①要介護認定を受ける
居宅介護支援を利用するためには、要介護認定を受けることが必要です。
要介護認定を受ける条件は、65歳以上の第1号被保険者、または、40歳以上64歳以下で特定疾病に該当する第2号被保険者です。
要介護認定を受けるために、市区町村の介護保険の担当課もしくは地域包括支援センターにて申請をします。
申請後は、被保険者の身体状況や生活環境などを把握するため認定調査員が調査を実施します。その後、調査結果をもとに要介護の認定をする流れになっています。
②居宅介護支援事業所を選ぶ
要介護認定後、居宅介護支援事業所を選びましょう。
市区町村窓口から、都道府県の指定を受けた居宅介護支援事業所リストが送られてきます。リストの中から居宅介護支援事業所を選びます。
③事業所と契約を結ぶ
居宅介護支援事業所を選んだら、その事業所と契約書を交わします。
契約書に同意後、居宅介護支援事業所のサービスを受けることが可能になります。
④ケアマネジャーを決める
担当するケアマネジャーを決めます。
多くの場合、事業所が担当ケアマネジャーを決定しますが、利用者がケアマネジャーを選ぶことも可能です。
特定のケアマネジャーの指定がなくても、担当者になってほしい人の性別などを伝えることもできます。
⑤ケアプランの作成を開始する
介護サービスを利用するには、介護サービスを利用するための計画書であるケアプランが必要です。
ケアプランがなくても介護サービスを利用することが可能ですが、介護保険を用いることができなくなるため全額自己負担となってしまいます。
ケアプラン作成時には、利用者が担当のケアマネジャーに希望を伝えることが可能です。
自身の希望を伝えて必要なサービスを受けられるようにしましょう。
⑥モニタリングの開始
ケアプランを作成し、介護サービスの利用が開始されると、ケアマネジャーが定期的に訪問し、サービスが予定通りに提供されているか、利用者本人や家族のニーズからずれていないかを定期的にチェックするモニタリングを実施します。
事業所(ケアマネジャー)を選ぶポイント
居宅介護支援事業所を決める際には、地域包括支援センターや病院の地域連携室の担当者が事業所をあらかじめ選んで提案してくれることが多いでしょう。
ご自身で事業所を一から選ぶというケースはほとんどありません。
そして、決定した事業所に所属するケアマネジャーが担当につくという流れとなります。
そのため、どのようなケアマネジャーがよいか(明るい人、経験豊富な人など)を、地域包括支援センターや病院の地域連携室の担当者に事前に伝えておくと良いでしょう。
以下では、事業所(ケアマネジャー)を決める際の3つのポイントについて解説をします。
①自宅からの距離
地域の生活環境の理解や周辺の関係機関との連携が求められるため、地域の介護サービスの情報が入手しやすい自宅から近い事業所がおすすめです。
②特定事業所加算を受けている事業所であるか
特定事業所加算とは、質の高いケアマネジメントを実施している居宅介護支援事業所に対して、市区町村から支払われる介護報酬が増額されることです。
そのため特定事業所加算を受けている事業所を選ぶと、質の高いサービスを受けることができる可能性が高まるといえるでしょう。
③要介護者本人や家族との相性
ケアマネジャーは、介護を受ける方やその家族などと直接接したり話をしたりする機会が多いです。
そのため要介護者本人や家族とコミュニケーションが密にとれ、信頼関係を築けることが大切です。
事業所が決定した後に担当のケアマネジャーが決まります。密なコミュニケーションとる必要があるケアマネジャーだからこそ、「明るい性格のケアマネジャー」などご自身がコミュニケーションをとりやすいと考えるケアマネジャーを希望すると良いでしょう。
ケアマネジャーについて、詳しくは以下の記事をご参照ください
居宅介護支援に自己負担は必要?
介護サービスを利用できるようにケアプランやモニタリング、関係機関との連絡、調整を行う居宅介護支援は、介護保険から全額が給付されるため自己負担の必要はありません。
ただし給付を受けるためには、受けられるサービスによって決められた「要介護度」の認定を受けておく必要があるため注意が必要です。
まとめ
介護サービスを受けるためにはケアプランと呼ばれる介護サービス計画書が必要になります。
ケアプランはご自身でも作成することは可能ですが、専門知識が必要なためケアマネジャーに任せると良いでしょう。
居宅介護支援事業所はご自身で選ぶことができます。質の高いサービスを受けるためにも事業所を選ぶポイントを参考にしてください。
酒井 康輔
作業療法士
正しい健康の知識を届けたい。そんな想いから医療系Webライターとして活動を開始。 作業療法士として臨床業務で学んだ 「正しい情報を患者さまにわかりやすく伝える」ことの経験を通じて、 記事を読んだ方が、介護福祉分野・医療分野に関する情報を正しく理解し、明日からの行動が変わる後押しができるような記事執筆をしています。