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便失禁はなぜ起こる?便漏れ対策や治療方法など詳しく紹介
自宅で介護をする際に便失禁によって衣類や布団が汚れると、着替えや洗濯などの手間が増えて大変という方は多いのではないでしょうか。だからといって排便をなくしたり減らしたりはできません。
そこで本記事では、便失禁が起こる原因や便失禁対策に役立つ介護用品などを紹介します。自宅の介護で便失禁に困っている方や、これから介護をする方は、ぜひ参考にしてください。
便失禁が起こる原因
便失禁が起こる原因には、以下のようなことがあります。
- 肛門括約筋の衰えによるもの
- 肛門や直腸の病気によるもの
- 内科疾患によるもの
排便は、便をためる直腸機能と、便を出す肛門機能がともに働くことで正常に機能します。
しかし、どちらか一方でも障害があると正常に働かず、便失禁が起こります。
まずは便失禁の原因を知ることが効果的な対策につながるので、介護を受ける方がどの原因に当てはまるかを考えてみてください。
肛門括約筋の衰えによるもの
肛門括約筋は長年にわたる排便の繰り返しで衰えるため、多くの高齢者の便失禁を引き起こす原因の一つとなります。
排便時に過剰な力みを繰り返すことで筋肉が緩くなるほか、神経にも障害が生じるため、肛門括約筋は徐々に衰えていきます。
緩くなるだけでなく、自分で肛門の締まりをコントロールできないことも、無意識な排便につながります。
肛門や直腸の病気によるもの
肛門や直腸の病気が便失禁につながるケースもあります。
ここでは直腸がんと、その手術を例に、便失禁の原因を考えていきましょう。
直腸がんの手術の種類と、それぞれの便失禁の原因は、以下のとおりです。
手術の種類 | 便失禁の原因 |
---|---|
肛門括約筋間切除術(ISR) | ・神経損傷が起こる可能性がある ・便を貯留する能力が減少する |
低位前方切除術(および超低位前方切除術) | ・肛門の締まりが緩くなる ・神経損傷が起こる可能性がある |
高位前方切除術 | ・肛門の締まりが緩くなる ・神経損傷が起こる可能性がある |
肛門や直腸の病気が便失禁の原因となり、手術により改善される可能性はありますが、排便機能への影響をゼロにすることはできないでしょう。
内科疾患によるもの
糖尿病や過敏性腸症候群などの疾患にも便失禁のリスクが存在します。
糖尿病は慢性的な下痢を合併することがあります。消化管の自律神経障害によるものと言われていますが、明らかな原因はわかっていません。
過敏性腸症候群は、主に精神的なストレスが原因で腸が敏感になる状態の病気です。
便秘と下痢を繰り返す特徴があり、何度も便が出ることで肛門のまわりが擦り切れていきます。
またストレスにより排便の機能を鈍感にさせることで、便失禁を引き起こす原因の一つになっています。
便失禁の対策|治療編
便失禁を改善する方法として、以下の3つが挙げられます。
- 食生活の改善
- 排便習慣の改善
- 骨盤底筋訓練
それぞれの具体的な方法を解説していきます。
食生活の改善
便失禁は便が軟らかすぎると起きやすくなります。
そのため、排便に影響を及ぼす以下のような食事を知っておきましょう。
積極的に食べたほうがいい食材 (不溶性食物繊維) |
・大豆 ・玄米 ・さつまいも ・ごぼう ・人参 など |
---|---|
避けたほうがいい食材 | ・コーヒー ・紅茶 ・アルコール ・かんきつ系の果物 ・香辛料の多いもの など |
不溶性食物繊維を積極的に食べることで、便が軟らかくなりすぎるのを防げます。
逆にカフェインやアルコールなどは、腸の働きを活発にし、下痢になりやすいので、摂取しすぎには注意しましょう。
排便習慣の改善
便意を感じたらすぐにトイレに行き排便するようにして、規則正しい排便習慣を送ることが大切です。
そのためにも、外出先ではトイレの場所をあらかじめ把握しておきましょう。
また便意がなくても毎朝トイレに行くことを習慣化したり、外出前や就寝前に排便したりすることも対策の一つです。
直腸に便がたまらなければ便失禁のリスクを減らせるという仕組みを知っていると、排便をする意識をもちやすくなるので、毎日の排便の習慣化につながるでしょう。
骨盤底筋訓練
骨盤底筋訓練も、便失禁の改善に効果的です。方法は以下のとおりです。
- お尻をすぼめるイメージで尿道と肛門を締める
- お尻の筋肉に力を入れすぎない
- 骨盤底(肛門周辺)を頭のほうに引き上げるイメージで5〜8秒間キープする
- 肛門を強く締める動きを3回行い、同じ時間休む
目安としては、以上の動きを10回で1セットとし、1日3セットほどしましょう。
腹筋に力を入れすぎると、便が漏れる可能性があるため注意が必要です。
おなかに手を当てながら、腹筋に力が入っていないかチェックしながら行うといいでしょう。
下痢を改善する薬の服用
以下のような下痢を改善する薬を内服することで、便失禁を防ぐ方法もあります。
下痢を改善する薬 | 効果 |
---|---|
ポリカルボフィルカルシウム | 便の水分を吸収し便を固まりにする |
ロペラミド塩酸塩 | 腸のぜん動運動を抑制する |
ラモセトロン塩酸塩 | 過敏性腸症候群による下痢を防ぐ |
薬の内服に関しては、ご自身で判断せず、必ず肛門科や消化器外科などの専門医の診察を受けてから指示を受けましょう。
便失禁の対策|オムツ対策編
便失禁による漏れをオムツで防ぐには、下記点に注意しましょう。
- オムツのサイズを適切なものにする
- 日中と夜間でオムツのタイプを変える
- オムツの当て方に注意する
それぞれ詳しい内容を紹介します。
オムツのサイズを適切なものにする
オムツのサイズがあっていないと、オムツがずれて便が漏れやすくなります。
適性よりも小さいサイズであれば、排便を吸収できず許容量を超えることがあります。
逆に大きいサイズの場合は、隙間ができやすく、そこから便が漏れる恐れがあります。
オムツを選ぶ際は、表記されている体のサイズや吸収量などをチェックすることが大切です。
また、使用してみてフィットしないと感じた場合は、別のサイズやメーカーに変えることも検討しましょう。
日中と夜間でオムツのタイプを変える
日中と夜間でオムツのタイプを変えることにより、便失禁の漏れを防げます。
日中は脱ぎはきしやすいようパンツタイプを使用し、毎日同じ時間になったらトイレに行くことで、パンツ内での便失禁を予防しましょう。
パンツタイプは、オムツと同じように水分を吸収してくれる仕様になっているので、万が一便失禁をしてもすぐに漏れる心配はありません。
夜間は横になった状態で交換しやすいテープタイプを使用すれば、寝たまま便失禁をしたとしても、漏れるリスクを軽減できます。
状況に応じたオムツの選択で、便失禁を防ぎやすくなるでしょう。
オムツの当て方に注意する
オムツの当て方を注意することで、便失禁による漏れを防げます。
パンツタイプとテープタイプ、それぞれの便失禁に対する効果的な当て方は、以下のとおりです。
オムツのタイプ | 便失禁に効果的な当て方 |
---|---|
パンツタイプ | ・オムツの後ろ側をしっかり引き上げる ・漏れ防止ギャザーを押し込まない ・肌着をオムツに挟み込まない |
テープタイプ | 体形にあわせた漏れにくいクロス止め ・おなかまわりが細い場合 →上のテープを斜め下向きに止める ・脚まわりが細い場合 →下のテープを斜め上向きに止める ・体全体が細い場合 →上下のテープを交差させて止める |
そのほかにも、ギャザーを立てる、軟便用のパッドを使うといった方法もあります。
漏れるからといってオムツやパッドを何枚も重ねて使う方法は、かえって隙間を作ってしまい逆効果なのでやめておきましょう。
便失禁対策に役立つ介護用品
便失禁対策に役立つ、以下の介護用品を紹介します。
- テープタイプのオムツ
- 尿とりパッド
- ポータブルトイレ
Gテープタイプ 袋
テープタイプのオムツである「Gテープタイプ 袋」は、立体ギャザーの高さが業界トップクラスの63mmでギャザー間も広く、漏れにくい作りになっています。
オムツを開くと自然に当てやすい形になるので、オムツに慣れていない方でも楽に装着可能です。
サイズもS〜XLまで取りそろえているため、お身体にあったサイズを見つけやすいでしょう。
やわらかぴったりパッド レギュラー
尿取りパッドタイプである「やわらかぴったりパッド レギュラー」は、ズレを防ぐテープが付いているため、パンツタイプのオムツとあわせて使うと効果的です。
オムツ内の湿気を逃して、ムレにくくなっているため、長時間付けていても肌に優しい点も魅力の一つです。
高さのある立体ギャザーで体にフィットするので、横漏れを防いでくれます。
おむつの購入は介護用品の専門通販サイト「ヤマシタオンラインストア」をご利用ください。
家具調トイレコンパクト
便意があるけどトイレに着くまでに便が出てしまう場合は、ポータブルトイレである「家具調トイレコンパクト」の使用がおすすめです。
お部屋にマッチするデザインとコンパクトなサイズ感で、お部屋の隅における安心の一台です。
ポータブルトイレは介護保険の利用で、1割負担で購入できます。
ヤマシタでもご相談を承っていますので、お気軽にお問い合わせください。
営業所は安心の365日体制。
お客様のご相談、ご要望にスピーディーに対応します。
メールは365日24時間受付
受付時間 9:00~18:00 (土日祝年末年始を除く)
まとめ
便失禁は身体的な衰えだけでなく、精神的なストレスによっても引き起こされます。
そのため、ひとりひとりにあった適切な対策が必要です。
また便失禁による漏れを防ぐために、効果的に介護用品を使うことが大切です。
本記事で紹介した、便失禁の漏れ対策や、効果的な介護用品の利用を検討してみるといいでしょう。
津島武志
介護福祉士
介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、さまざまなWEBメディアでライターとして活動しています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。