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介護用トイレ(ポータブルトイレ)の種類と選び方を紹介
介護の中でも排泄(排泄時の付き添いやおむつ交換)に関することは、家族にとって入浴や食事よりも、負担が大きいものです(参考 内閣府:介護ロボットに関する特別世論調査2013) 。
介護用トイレは、トイレまでの移動が難しい方のための福祉用具で、利用者だけでなく介護者の負担も軽減できます。一方で、介護用トイレにはシンプルなものから多機能なものまでさまざまな製品があり、どれが良いのか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。
この記事では介護用トイレの機能や、メリットと注意点、選び方を解説します。また、介護保険を利用して購入する方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
介護用トイレとは
介護用トイレは一般的にポータブルトイレとも呼ばれます。その名前のとおり、持ち運びが可能な簡易型のトイレです。ここからはポータブルトイレとします。
ベッドのそばに設置すれば、歩行が不安定で寝室からトイレまでの移動が難しい方も、オムツを使わずに排泄できる場合があります。夜間に何度もトイレに起きる方にもおすすめです。
一口に介護用トイレといっても、その見た目や機能はさまざまです。手入れが簡単なプラスチック製のシンプルなものだけでなく、部屋に置いても馴染みやすい家具調のものもあります。
また、便座の暖房機能や温水洗浄機能、消臭機能がついた高性能な商品もあるため、利用する方の状態に合わせて選ぶことができます。
ポータブルトイレの機能や使うメリット、注意点について、詳しく見ていきましょう。
ポータブルトイレの機能
ポータブルトイレの機能には主に以下のようなものがあります。商品によって備わっている機能は異なります。
- 座面の高さの調整機能
- 肘掛けの調整機能
- 温水洗浄機能
- 便座ヒーター機能
- 水洗機能
- 脱臭機能
- ソフト便座機能
- 排泄物個包装機能
座面やひじ掛けの高さを調整すれば、安定した姿勢を保ちやすく、ベッドからの移乗が容易になります。
また、ポータブルトイレをベッド近くに設置する場合は、脱臭機能があると就寝中も臭いが気にならないでしょう。
さらに、温水洗浄や便座ヒーターの機能が搭載されているものは、水洗トイレと同じように快適に使用できます。
日中のみの使用かといった使用する頻度や状況により、機能を選ぶことで、排泄の際の負担を軽減することができます。選ぶポイントについては後述します。
こうした機能については、福祉用具専門相談員が詳しいです。
ポータブルトイレを使うメリット
ポータブルトイレはベッドのすぐ側に設置できるため、移動によって転倒する危険のある方にとっては、寝室からトイレまでの転倒リスクを避けることができます。
夜間だけ、あるいは家族が不在な日中だけ使うというように、状況に合わせた使い方をすることで、気持ちの良い排泄という点で、排泄の自立を促し、また、介護する方の負担を軽くすることにもなります。
歩行が不安定な場合、ポータブルトイレを使うことによって、安全に排泄動作ができます。
ポータブルトイレを使うときに注意すること
ポータブルトイレは、使用に当たって、衛生を保つという点が大切です。
バケツ汲み取り式のポータブルトイレの場合、使用後の排泄物を処理した上でバケツをキレイに洗わないといけません。戸建てで、庭用に水道がある場合は、それを使う方が、室内に臭いがこもらないと言えます。
排泄物の処理が遅れてしまうと、臭いが広がってしまうこともあるので、留意ください。
集合住宅・マンションの場合は、浴室でバケツを洗うことになり、どうしても臭いがこもります。衛生を保つためには、使い捨ての袋を使って排泄物を処理したり、消臭剤を活用したりするなどの方法があります。
ポータブルトイレの種類によっては、脱臭機能や水洗機能があるので活用ください。
また熱圧着によって、排泄物等を1回ごとに個包装(ラップ)して密封する機能を持つポータブルトイレもあります。個包装なので臭いやバケツを洗う必要はありません。
ポータブルトイレを選ぶポイント
ポータブルトイレを選ぶ際は、介護を受ける方と介護する方の双方にとって使いやすいかを検討する必要があります。
機能や性能に注目する前に、まずは材質に着目してみましょう。
ポータブルトイレは材質により、木製とプラスチック製の2つに分類できます。
木製のメリットは、重く安定感があること、周囲の家具に馴染みやすく見た目が良いことが挙げられます。
プラスチック製のメリットは、安価で運びやすいこと、丸洗いができてキレイに保ちやすいことが挙げられます。
それぞれのご家庭にあう材質の介護用トイレを選びましょう。併せて、以下3つのポイントについてもチェックしてみてください。
①利用者の体格にあったもの
座面や肘掛けの高さが、利用者の体に合っているものを選ぶようにしましょう。
座面の高さは、低すぎても高すぎても良くありません。
座面が低すぎる場合、介護用トイレからの立ち上がりが難しくなってしまいます。逆に、座面が高すぎる場合は座っている姿勢が安定しづらく、トイレから転落する可能性があります。
肘掛けの高さについても、身体に合わない位置だとかえって立ち上がりにくくなってしまいます。
自身の体格や身体機能の変化に合わせて適宜調整したい場合は、座面や肘掛けが何段階かに分けて調整できる機能のあるポータブルトイレを選ぶと良いでしょう。
②乗り移りがしやすいもの
立ち上がりのしやすさや座位の安定性のみでなく、乗り移りのしやすさにも注目する必要があります。
たとえば、介護を受ける方がポータブルトイレに体重を強く預けながら乗り移りをするのであれば、トイレ本体があまり動かないようにする必要があります。
そのためには、トイレ本体の重量や高さ、脚が床に触れている面積の広さ、滑り止めの有無などを確認しましょう。
さらに、介護を受ける方の身体機能のみでなく、ポータブルトイレの設置場所や介助方法などによって必要な機能は異なります。
設置環境のスペースが狭い場合は、コンパクトサイズのポータブルトイレを選ぶ必要がありますし、前方から介助をするのか、後方から介助をするのかによっても選ぶべき機能は異なってきます。
たとえば、後方から介助する場合、便座のフタが外れて後方から介助するスペースが確保できる機能のあるものを選ぶのも良いでしょう。
ただし、介護を受ける方の身体機能によっては、前方に掴まるものがあれば十分に後方のスペースを確保できることもありますので、総合的に考えて機能を選ぶ必要があります。
③パーツの着脱・調整ができるかどうか
ポータブルトイレの機能の一つに、パーツの着脱や調整があります。
前述のように、肘掛けを着脱したり、座面の高さを調整したりする機能もあります。
そのほかにも、肘掛けの着脱・はねあげができるタイプは、乗り移りがしやすくなるメリットがあります。
利用する方が転倒・転落しにくいことという「安全」を考えた上で、介助する方の負担を軽減したりできるとよいでしょう。
高齢者の身体機能は一定のまま保たれるとは限りません。年齢や疾患の変化と共にポータブルトイレの機能があわなくなる可能性も考えられます。
そのような変化に対応するために、パーツの調整機能を検討するのも良いでしょう。
ポータブルトイレは介護保険を利用して購入できる
ポータブルトイレは、介護保険を利用して購入できます。
具体的には「特定福祉用具購入(または特定介護予防福祉用具購入)」という名称で、購入費用は年額10万円を上限に利用でき、自己負担は購入金額の1割~3割です。ポータブルトイレも該当します。介護保険では「腰掛便座」と言います。
歩行器や車いすなどの福祉用具とは異なり、ポータブルトイレは購入のみです。レンタルはできないことを知っておきましょう。
直接利用者の肌が触れる福祉用具については、衛生面の観点からレンタル不可とされているからです。ポータブルトイレ以外にも、入浴用の椅子など介護保険を利用できるものがあります。
購入するときには、事前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談するとよいです。手続き等、教えてくれます。
関連記事:介護用品はどこで買える?購入場所とレンタルについて解説
介護保険を利用した購入方法
ポータブルトイレの購入に介護保険を利用するためには、都道府県の指定を受けた事業者を利用する必要があります。「どこに頼んでよいかわからない」と事業者の選択に困る場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。
購入するポータブルトイレを選定したら、一旦費用の全額を支払います。その後、特定福祉用具購入の申請が認められれば、支払った費用のうち7~9割が返金される仕組みです。介護保険のレンタルと同様に、自己負担は1割~3割だからです。
なお、お住まいの地区によっては、購入時に費用の全額を支払うことなくポータブルトイレを購入できる場合もあります。詳細は市区町村の窓口やケアマネジャーにご確認ください。
また、介護保険を利用するためには、前提として要支援1以上の要介護認定を受けている必要があります。まだ要介護認定を受けていない方は、申請手続きを行いましょう。
介護保険の申請方法については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:介護保険の申請手続きの流れ|窓口・条件・必要書類を解説
ポータブルトイレの価格の目安
介護保険を利用すれば、シンプルなタイプであれば4,000円程度の自己負担で購入が可能です(利用者負担1割の場合)。
ただし、高機能なポータブルトイレは、それだけ価格も高くなります。
ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談しながら、必要な機能と負担する金額との双方を考えてみてください。
詳しくは、福祉用具専門相談員に問い合わせるとよいでしょう。
ポータブルトイレはどこで買える?
ポータブルトイレは、福祉用具販売を取り扱う事業所のほか、ホームセンターやインターネットなどでも購入できます。
ただし、介護保険を利用するのであれば、都道府県の指定を受けている事業所から購入してください。申請手続きの関係です。
ポータブルトイレの機能を比較、商品を紹介
ポータブルトイレは前述したように多くの機能があり、選ぶのに困ってしまうかもしれません。
ここでは介護用トイレを5つ紹介します。それぞれの機能や費用を比較してみてください。
さわやかチェアPT 肘掛けはねあげ
「さわやかチェアPT 肘掛けはねあげ」は、木製タイプで、肘掛けのはねあげや高さ調整などが選べる安全性の高い介護用トイレです。
安全性を高める機能として、ベッドと介護用トイレのすきまを埋める「スペーサー」というパーツが付属しています。
さわやかチェアPTは、後方に移動用の車輪が付いており、木製タイプで重量がありながらも持ち上げずに移動できる点もメリットです。
| サイズ | 幅53.5×奥行59.5×高さ81.5〜90.5cm (便座までの高さ37〜46cm) |
|---|---|
| 重量 | 19kg |
| 自己負担額(1割負担) | 6,875円(税込) |
アロン化成 安寿 ポータブルトイレFX-CP
プラスチック製で、用途にあわせた付属品を付けることができる多機能な介護用トイレです。
便座や肘掛けの高さ調整機能、暖房便座や脱臭機能など、用途にあわせてさまざま種類を選ぶことで快適に利用することができます。
| サイズ | 幅55×奥行55×高さ71〜87cm (便座内寸:19×29cm) |
|---|---|
| 重量 | 10.5kg |
| 自己負担額(1割負担) | 3,795円(税込) |
ポータブルトイレ〈座楽〉ラフィーネ プラスチック便座
「ポータブルトイレ〈座楽〉ラフィーネ プラスチック便座」は、プラスチック製でありながら、家具と馴染むような色合いのデザイン性が高い介護用トイレです。
ひじ掛けを便座と同じ高さまで下げられるため、ベッドからトイレへスムーズに移乗できます。便フタもバネの力で簡単に開けられるようになっています。
足の高さは利用者の体格に合わせられるよう、13段階に調整可能です。
特徴的な機能を安全に使えるかについては、専門家の助言を受け、しっかりと検討すると良いでしょう。
| サイズ | 幅53×奥行57×高さ75〜87cm (便座内寸:19.5×2cm) |
|---|---|
| 重量 | 9.5kg |
| 自己負担額(1割負担) | 3,520円(税込) |
ポータブルトイレ FX-30 自動ラップ 暖房・快適脱臭
「ポータブルトイレ FX-30 自動ラップ 暖房・快適脱臭」は排泄物をフィルムで密封する機能が搭載されており、排泄物の後処理が容易な介護用トイレです。
強力な脱臭機能もあり、臭いが気になる方におすすめです。
また、身体を支える側面ガードがあり、不意に身体を傾けた際の転倒を予防します。暖房便座タイプで、冬場も快適に使用できます。
| サイズ | 幅53×奥行60×高さ76〜90cm |
|---|---|
| 重量 | 19.3kg |
| 自己負担額 | 97,000円(税込) |
家具調トイレ AR-SA1ライト<シャワピタ>
「家具調トイレ AR-SA1ライト<シャワピタ>」は、木製の介護用トイレで、シャワー機能が付いています。
シャワー機能付きの介護用トイレは、一般的にサイズの大きい製品が多く、家の構造によっては置きにくい場合がありますが、この製品であれば設置場所に困りません。
シャワピタは、シャワポッドのようなスパイラル洗浄機能はありませんが、その代わりにシャワーノズル位置の細かな変更ができ、座る位置がずれてしまってもシャワーノズルで調整できる点が優秀です。
| サイズ | 幅54×長さ71×高さ81〜87cm (便座内寸:35.5×39cm) |
|---|---|
| 重量 | 20kg |
| 自己負担額 | 70,600円(税込) |
まとめ
ポータブルトイレを利用すれば、介護を受ける方と介護する方の双方の負担を軽くできます。
ポータブルトイレの種類は豊富であり、室内の環境や身体に合わせた製品を選ぶのは簡単ではありません。
「どのような製品を選べば良いかわからない」「介護保険を使って購入したい」とお悩みの場合は、介護保険での販売ができる指定事業所の福祉用具専門相談員に相談してください。
ポータブルトイレはもちろんですが、それ以外の排泄用品、福祉用具に関する相談に、応えてくれます。
東畠 弘子
国際医療福祉大学大学院 福祉支援工学分野 教授
全国福祉用具専門相談員協会(ふくせん)理事
日本福祉用具供給協会顧問
2011年国際医療福祉大学大学院入職、2016年から現職。2023年度ふくせん老健事業「福祉用具専門相談員指定講習カリキュラムの見直しに向けた調査研究事業」の委員長をはじめ、数々のふくせん老健事業で委員長や委員を務める。 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の構成員でもある。












【監修者からのコメント】
排泄は一日に複数回ある行為です。それだけに、安全で気持ちの良い排泄は、重要です。同時に、介護者にとっては、排泄介助は、介護の中でも食事や入浴に比べて、日中や夜間など時間を問わないだけに、大きいものです。 ポータブルトイレと自宅トイレの併用、あるいは、夜間だけおむつとの併用など、利用場面や、使うご本人の身体状況と家族の状況、室内環境に合わせて、活用してください。 臭いの問題は、介護の負担を大きくするだけでなく、ご本人の羞恥心、尊厳に関わります。