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ヒートショックとは?症状や入浴時・トイレ時の対策を解説
冬になるとヒートショックという言葉を耳にする機会が増えます。
ヒートショックとは、急激な寒暖差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる状態のことをいいます。
ヒートショックは脳卒中や心筋梗塞を発症する原因となっており、ヒートショックが原因で亡くなる高齢者の数は、年間数千人に上ります。
その人数は交通事故死亡者の数より多く、毎年、非常に多くの高齢者がヒートショックを原因として亡くなっていることがわかります。
この記事では、ヒートショックが起こるメカニズムや具体的な症状についてわかりやすく解説します。
ヒートショックを起こしやすい人の特徴や、効果的な対策法、ヒートショックを起こした際の対処法にも触れますのでぜひ最後までお読みください。
ヒートショックとは
ヒートショックとは、急激な気温差により血圧が大きく変動することに伴って生じる健康被害を指します。
軽度であれば立ちくらみを感じる程度で済み、少し休めば治ります。重度になると、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離など、命にかかわる病気を発症するリスクがあり、油断は禁物です。
寒暖差によって起こるヒートショックは、特に冬場の入浴時に多発する傾向があります。
厚生労働省の人口動態調査によれば、令和3年に浴槽内で亡くなった高齢者の数は4,750人(令和3年)です。
毎年11月~4月の寒い時期に入浴中の死亡事故が増えることから、その大部分にヒートショックが関係していると推測されます。
出典:政府広報オンライン 消費者庁「交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」
ヒートショックが起こるメカニズム
ヒートショックは、急激な寒暖差により、心臓や血管に負荷がかかることで発生します。
人間の体は体温を一定に保つようにできており、寒い場所では血管は収縮し、温かい場所では血管が拡張します。
体が激しい寒暖差にさらされると、血管は急激に収縮したり拡張したりするため、血圧が乱高下します。
その結果、心臓や脳に強い負担がかかり、重篤な場合は心筋梗塞や脳梗塞を誘発してしまうのです。
ヒートショックが起こりやすい場所
ヒートショックが起こりやすい場所として、お風呂やトイレが挙げられます。
脱衣所やトイレには、暖房設備がない家庭も多いため、冬には暖房が効いている部屋より寒く、大きな温度差が生じるためです。
入浴はヒートショックに最も気を付けなければいけないタイミングです。
寒い脱衣所で服を脱ぎ、冷えた身体で急に熱い湯船に浸かると、その温度差により、身体に大きな負担がかかってしまうのです。
また、身体が温まり、自律神経が整うと人気のサウナも、ヒートショックが起こりやすい場所です。熱いサウナ室から冷たい水風呂に入ることで、身体は入浴するよりも急激な温度変化にさらされます。
汗をかき脱水症状になっている場合は、さらにヒートショックのリスクが高まり危険です。体調の悪い時はサウナの利用を控え、持病のある方はかかりつけ医に相談するようにしてください。
ヒートショックが起こりやすい人の特徴
以下の条件に該当する人は、ヒートショックが起こりやすいとされていますので、特に注意が必要です。
- 65歳以上の高齢者
- 生活習慣病を患っている人
- 睡眠時無呼吸症候群・不整脈がある人
- 熱いお風呂を好む人
- 30分以上お湯に浸かる人
それぞれ解説します。
65歳以上の高齢者
65歳を過ぎると、身体のさまざまな機能が低下していきます。
心臓の機能も低下しているので、急激な温度差による血圧の変動に耐え切れず、ヒートショックが起こりやすくなるのです。
また、熱さや寒さをあまり感じなくなることも、高齢者がヒートショックを起こしやすい理由の1つです。
ヒートショックの予防として、気温をできるだけ一定に保つ工夫が有効ですが、寒暖差に気づきにくい高齢者は、対策が不十分になりがちです。
生活習慣病を患っている人
糖尿病や高血圧、肥満、脂質異常などの生活習慣病にかかっている人は、ヒートショックのハイリスク群です。
ヒートショックによる急激な血圧の変化に耐えきれ血管が閉塞したり、破れたりして心筋梗塞や脳卒中が起こる可能性が高いと言われています。
生活習慣病の持病がある人は動脈硬化を合併していることが多く、血管が細く、つまりやすい状態になっているからです。
65歳以下の方でも生活習慣病の既往がある方はヒートショックに注意しましょう。
睡眠時無呼吸症候群・不整脈がある人
睡眠時無呼吸症候群の人は、睡眠不足から自律神経が乱れやすく、ひいては血圧の調整機能も不安定になりがちです。
不整脈の人は、血圧を調整する力が弱く、急な外気温の変化に順応できず、血圧が乱れることでヒートショックを起こす可能性が考えられます。
熱いお風呂を好む人
熱いお風呂を好む人もヒートショックが起こりやすいと考えられます。なぜなら、熱いお風呂に入ると、血圧は一気に上昇するからです。
また、入浴中は脱水になりやすく、血液に血栓ができやすい状態です。
脱水状態で急激な血圧上昇が起こると、血管がつまり心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが高まります。
30分以上お湯に浸かる人
長風呂が好きな人も注意が必要です。
お風呂は気持ちが良いものですが、上昇した体温を下げるために血管が拡張して、血圧低下を招くことがあります。
あまりに血圧が下がると、全身に十分な血液が行き届かず、意識障害や心不全、脳卒中の原因となります。
ヒートショックを避けるためにも、30分以上の長湯は避けましょう。
ヒートショックの代表的な症状・疾患
ヒートショックは軽度であれば、立ちくらみやめまい程度で、少し休めば元気になることがほとんどです。
しかし、重大な病気が隠れている可能性もあるため、油断は禁物です。
次のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 失神(気を失って倒れる)
- 激しい頭痛や吐き気
- 胸の痛み
- 手足に力が入らない
- 体が動かしにくい
- ろれつが回らない
ヒートショックにより、以下のような症状や疾患を発症する可能性があります。
不整脈(めまい・胸痛など)
不整脈とは、脈拍の乱れを指します。脈が不規則になると全身に血液が行き届かず、動悸やめまい、胸の痛みなどの症状が現れます。さらに、不整脈が原因で脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気を併発する可能性もあるため、軽視できません。
寒暖差の激しい場所では、血圧が急激に変化することで不整脈の症状が出現します。めまいや胸痛を感じたら、医療機関を受診するようにしましょう。
失神
失神とは、一時的に意識がなくなる状態を指します。ヒートショックにより血圧が下がると脳の血流が不足し、気を失ってしまうのです。長時間の入浴や、浴槽から急に立ち上がった際に起こりやすいとされています。
意識を失って倒れる際に大怪我をする可能性や、入浴中であれば溺れてしまう危険性もあるため、注意すべき症状です。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで、脳の組織が酸素や栄養を受け取れなくなり、損傷を受ける疾患です。脳梗塞を発症した部位によって、手足の麻痺や言語障害、嚥下障害などの重大な後遺症が残る可能性があります。
ヒートショックによる急激な血圧の変動は、血管に大きな負担をかけるため、脳梗塞を引き起こす要因となります。特に、高血圧や動脈硬化のある方は注意が必要です。
心筋梗塞
ヒートショックにより心臓の血管が詰まると心筋梗塞が起こります。心臓の組織が酸素不足になり、壊死してしまうのです。
ダメージが大きいと命に関わるため、迅速な治療が重要です。
心筋梗塞の主な症状として、強い胸の痛みや呼吸困難、冷や汗、吐き気が挙げられます。とくに高齢者の方は、動脈硬化が進んでいることが多く、ヒートショックにより心筋梗塞を発症するリスクが高いと言えます。
入浴時にヒートショックにならないための対策
入浴中のヒートショックを予防するために、以下の5つの対策をしておきましょう。
- 脱衣所と浴室を温めておく
- お風呂の温度はぬるめの38~40度にしておく
- 湯船につかる前にかけ湯をする
- 湯船からゆっくりあがる
- 家族に声をかけてから入浴をする
それぞれ詳しく解説します。
脱衣所と浴室を暖める
大きな気温差が生じないように、入浴前に脱衣所と浴室を暖めておきましょう。
暖房器具の設置が難しい場合は、浴室のドアを開けておく、入浴前にシャワーをかけ流しておくなどの対策がおすすめです。
また、浴室の床はひんやりとしていて意外と冷えるものです。
浴室マットやすのこを敷くと、底冷えを防いで浴室内が暖かくなるため、設置を検討してみてください。
オーバルリンク マットタイプ M
浴槽と洗い場兼用の滑り止めマットです。防カビ加工が施されており、衛生的です。
はさみやカッターで簡単にカットできます。
サイズ | 幅38×長さ55×厚さ0.2cm |
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重量 | 860g |
※Lサイズもあります。
お風呂の温度はぬるめの38~40度にしておく
お湯は38~40度の低めの温度に設定して、脱衣所との寒暖差をなるべく小さくしましょう。
41度以上になるとヒートショックが発生しやすく、転倒による怪我や、心不全・脳卒中などの重大な疾患を引き起こすリスクが高くなります。
ぬるいと感じるかもしれませんが、40度程度のお風呂はリラックス効果を高め、ストレス解消や熟睡に効果的だと言われています。
ヒートショック予防のためにも、お湯の温度は38~40度に設定しましょう。
お湯に浸かる前にかけ湯をする
お湯につかる前にかけ湯をして、お湯の温度に身体を慣れさせてから入浴しましょう。
すぐに湯船につかると、血圧が急に変動するためヒートショックのリスクが高まります。
かけ湯はいきなり肩から浴びるのではなく、心臓への負担を減らすために足元から行い、しだいに胸や肩に移行させます。
かけ湯の際には、シャワーチェアがあると便利です。お風呂は床からの底冷えの影響も強く、床に座ってのかけは身体が冷えてしまい、ヒートショックの原因になりかねません。
折りたたみシャワーベンチ 楽おり Fシリーズ FS
手すり・背もたれがついた安定感のあるシャワーチェアです。
片手でコンパクトに折りたため、自立するためすっきり収納できます。
サイズ | 幅51×長さ40~48×高さ67~77cm |
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折りたたみサイズ | 幅45×長さ33×高さ67~77cm |
重量 | 4kg |
カラー | レッド・ブルー・グリーン |
なお、介護用のシャワーチェアの選び方については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:介護用シャワーチェアって何?選び方とおすすめを紹介
ゆっくりお風呂から出る
入浴中は血圧が低下します。急いで立ち上がるとめまいや立ちくらみを起こす可能性があるため、お風呂から出る際には、ゆっくりとした動作を心がけましょう。
浴槽から立ち上がるのにひと苦労する方は、安全のため手すりを設置しましょう。工事をしなくても取り付けられるタイプもあります。
高さ調節付浴槽手すり
工具なしで浴槽に取り付けられる手すりです。
グリップの高さや幅の調整も可能で、安全な入浴をサポートします。
サイズ | 幅18×長さ29~38×高さ27~42cm |
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手すりの高さ | 11~26cm(6段階) |
重量 | 3.8kg |
適合浴槽縁幅 | 4.5~13cm |
適合浴槽高さ | 4.5~13cm |
カラー | レッド、ブルー、グリーン |
家族に声を掛けてから入浴する
お風呂に入る時は、かならず家族に声を掛けておきましょう。
65歳以上になると浴室内での溺死が増加しますが、これはヒートショックによる立ちくらみや失神が原因ではないかとされています。
早期に適切な対処を受けられれば、重大な事故を防ぐことができます。
お風呂に入る際には必ず家族に声をかけて、10分おきなど定期的に様子をみてもらえるようにお願いしておきましょう。
食後・飲酒後すぐの入浴は避ける
食後は1時間以上空けてから入浴しましょう。食後は消化のために血液が胃腸に集まるため、血圧が低下しやすい状態です。その状態ですぐにお風呂に入ると、血圧が急激に低下する可能性があり危険です。
また、飲酒する場合は事前に入浴を済ませておくのが望ましいでしょう。お酒は血圧を下げるだけでなく、利尿効果から脱水状態を引き起こす可能性があります。
意識を失ったり、心不全を起こしたりするリスクが高くなるため、食後・飲酒後すぐの入浴は避けましょう。
また、浴室の環境を整えるには、特定福祉用具の利用がおすすめです。
ヤマシタでは、ご利用される方の身体状況やご自宅の環境に合った商品を提案させていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。
営業所は安心の365日体制。
お客様のご相談、ご要望にスピーディーに対応します。
メールは365日24時間受付
受付時間 9:00~18:00 (土日祝年末年始を除く)
トイレ時にヒートショックにならないための対策
トイレもヒートショックを起こしやすい場所の1つです。面倒だと感じても、以下のような対策を行いましょう。
トイレに暖房器具を設置する
トイレに暖房器具を設置しましょう。
トイレは家の中でも日当たりの悪い場所に設置されることが多く、家の中でも特に寒い部屋です。
換気のために窓を開けたままにしておく家庭も多く、冬場のトイレは非常に冷え込みます。
居間との寒暖差がヒートショックの原因となるため、予防するために、暖房便座やパネルヒーターなどトイレに設置し、トイレを暖かくしておきましょう。
いきみすぎないようにする
トイレでヒートショックを起こさないためにも、排便コントロールは重要です。
排便時に強くいきむと血圧が上がるので、ヒートショックを起こしやすくなります。
便秘がちな方は軽い運動や水分・食物繊維の積極的な摂取など、生活習慣から便秘の改善に取り組みましょう。
ひどい便秘の方は、かかりつけ医に便秘薬を処方してもらうと良いでしょう。
現在ではおなかが痛くならず、自然な排便を促薬もあります。
高齢者の便秘対策については以下の記事を参考にしてください。
関連記事:高齢者に起こる便秘の原因とは?症状や予防法について解説!
ヒートショック症状のある人への対処法
ヒートショックを起こして浴室で倒れている人には、以下のように対応しましょう。
- 倒れているのに気づいたら、まずはすぐに救急車を呼ぶ
- 溺れないように浴槽の水を抜いて、もし人手があれば浴槽から引き上げる
- 声をかけて、意識があるかどうかを確認する
- 意識がなく、脈が触れない場合には人工呼吸を行う
- 意識があっても、ろれつが回らない、身体が動かない場合には救急車で受診をする
吐き気やめまい、痛みなどがある場合は、無理に動かさず、安静にするのもポイントです。寒くないように衣類や毛布をかけて、救急隊の指示に従いましょう。
なお、浴室は濡れて、滑りやすい場所です。
倒れている人を見ると慌ててしまいますが、救助する人も転倒しないように気を付けましょう。
なお、転倒してしまった場合の対処法については以下の記事も参考にしてください。
「ヒートショック予報」の活用がおすすめ
特に高齢者の方は、ヒートショックのリスクを把握するための目安として「ヒートショック予報」を活用しましょう。
日本気象協会が提供しているサービスで、冷え込みの程度を5段階の警告レベルでお知らせしてくれます。
警戒レベルが高い日は対策を念入りに行いましょう。
脱衣所やトイレをしっかり暖める、寒い廊下に出る時は上着を羽織るなどの対策が必要です。
なお、警戒レベルが低い日であってもヒートショックが起きる可能性はあるため、油断は大敵です。
冬の間は、「ヒートショック予報」をチェックし、対策を忘れないようにしましょう。
参考サイト:日本気象協会 ヒートショック予報
まとめ
ヒートショックは寒暖差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかることで起こります。
めまいや立ちくらみだけでなく、脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる病気のリスクもあるため、注意が必要です。
ヒートショックが起こりやすい脱衣所やトイレにも暖房を付けて暖めておくことや、入浴はぬるめのお湯で短時間で済ませるなど、対策を徹底しましょう。
ヒートショック予報も活用しながら、寒い冬を元気に過ごしましょう。
ヤマシタでは介護用品の購入・レンタルのご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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川口晴美
看護師・助産師
紹介文:助産師、看護師として総合病院にて産婦人科や消化器内科、内視鏡室で勤務。 退職後は開業助産師として地域での子育て支援を中心に活動。WEBライターとしても活動し、医療や子育てに関する記事を多く手掛けている。
介護保険レンタルや
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