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ヒートショックとは|症状や入浴時、トイレ時の対策を分かりやすく解説
冬になるとヒートショックという言葉を耳にする機会が増えます。
ヒートショックとは急激な寒暖差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる状態のことをいいます。
ヒートショックは脳卒中や心筋梗塞を発症する原因となっており、ヒートショックが原因で亡くなる高齢者の数は、年間数千人に上ります。その人数は交通事故死亡者の数より多く、毎年、非常に多くの高齢者がヒートショックを原因として亡くなっていることがわかります。
この記事ではヒートショックとは何か、ヒートショックを起こさないために、家で対応できることや対応方法について紹介をしています。
ヒートショックとは
ヒートショックとは、急激な気温差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかった状態のことをいいます。
軽度な症状であれば立ちくらみ程度で少し休むと回復しますが、重度になると、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離など、命にかかわる病気を発症します。
ヒートショックは寒暖差によって起こることから、冬場の入浴中に多発する傾向があり、毎年数千人がヒートショックで亡くなっているのではないかといわれています。
厚生労働省の人口動態調査では、高齢者の入浴中の浴槽内での不慮の溺死、溺水の高齢者の死亡者数は4,900人(令和元年)との報告があります。
特に冬場にかけて死亡人数が増えていることから、入浴中に死亡した高齢者の大部分がヒートショックによるものだろうと推測されています。
出典:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」
ヒートショックが起こるメカニズム
ヒートショックとは、急激な寒暖差による血管への負荷や血圧が乱高下することによって起こる健康障害です。
人間の体温調整と血管は深い関係にあります。
寒い場所では血管を収縮させ、温かい場所では血管を拡張させることで、人間の体温は常に一定に保たれてます。
そのため、体が激しい寒暖差にさらされると、血管は急激に拡張と収縮を繰り返し、血圧は乱高下します。
ヒートショックによって血圧が乱高下することで、心臓や脳に強い負担がかかると心筋梗塞や脳梗塞を誘発します。
ヒートショックが起こりやすい場所
特に冬場のお風呂とトイレでヒートショックが起こりやすいため注意しましょう。
トイレには、暖房を設置していない家庭も多いため、ヒートショックが起こりやすい場所です。
また、入浴は最もヒートショックに気を付けなければいけないタイミングです。
なぜなら、脱衣所と浴室、浴室と湯船には大きな寒暖差があるからです。そのため、短期間で血管の収縮と拡張が繰り返され、ヒートショックが起こりやすくなります。
特に冬場は入念にヒートショック対策を行いましょう。
ヒートショックが起こりやすい人の特徴
以下の特徴を持つ人は、ヒートショックが起こりやすいとされていますので、特に注意が必要です。
●65歳以上の高齢者
●生活習慣病を患っている人
●睡眠時無呼吸症候群・不整脈がある人
●熱いお風呂を好む人
●30分以上お湯に浸かる人
それぞれ解説します。
65歳以上の高齢者
65歳を過ぎると、より体のさまざまな機能が低下していきます。
心臓の機能も低下しているので、急激な温度差による血圧の変動に心臓が耐え切れず、ヒートショックが起こりやすくなります。
また、65歳を過ぎると体温調節機能も低下していきます。
熱さや寒さをあまり感じなくなるので、脱衣所の寒さや湯船の熱さの差にも鈍感です。
本人が思う以上に脱衣所と湯船には大きな寒暖差が生じていることも多いため、ヒートショックが起こりやすくなってしまいます。
生活習慣病を患っている人
糖尿病や高血圧、肥満、脂質異常など生活習慣病の持病がある人は、ヒートショックのハイリスク群となっています。
生活習慣病の持病がある人は動脈硬化を合併していることが多く、血管が細く、つまりやすい状態です。
そのため、寒暖差によってヒートショックが起こると血圧が一気に急上昇し、血管が閉塞したり、破れたりして心筋梗塞や脳卒中が起こる可能性が高まります。
生活習慣病を患う65歳以上の方はもちろんですが、65歳以下の方でも生活習慣病の治療中の方はヒートショックに注意しましょう。
睡眠時無呼吸症候群・不整脈がある人
睡眠時無呼吸症候群や不整脈がある人は、高血圧も合併しているケースが多くみられます。
不整脈や高血圧の人は血圧の調整機能が低下しているため、血圧の急激な変動に耐え切れません。そのためヒートショックによって心筋梗塞や脳卒中発症のリスクが非常に高くなります。
熱いお風呂を好む人
熱いお風呂を好む人もヒートショックが起こりやすいと考えられます。なぜなら、熱いお風呂に入ると、血圧は一気に上昇するからです。
また熱いお風呂は入浴中に脱水状態になりやすく、血液に血栓ができやすい状態です。
脱水状態の体に急激な血圧上昇が起こると、心筋梗塞・脳卒中を誘発してしまいます。
30分以上お湯に浸かる人
お風呂は気持ちが良いものですが、入浴中は血圧が低下し、心臓には大きな負担がかかることで、ヒートショックも起こりやすくなります。
血圧が低下すると全身に十分な血液がまわらず、意識障害や心不全、脳卒中の原因となります。
ヒートショックを避けるためにも、30分以上の長湯は避けましょう。
ヒートショックの代表的な症状
ヒートショックは軽度であれば、立ちくらみやめまい程度で、少し休めば元気になることがほとんどです。
しかし、見えないところで病気が進行していることもあるため、注意が必要です。
寒暖差の激しい場所を行き来したあとや入浴後に立ちくらみやめまいを感じたら、念のためかかりつけ医に相談しましょう。
以下の症状がある際には、ヒートショックが疑われるため、すぐに受診が必要です。
● 失神(気を失って倒れる)
● 頭痛
● 吐き気、嘔吐
● 胸の痛み
● 手足に力が入らない脱力感
● 体の動きにぎこちなさがでる
● ろれつが回らない
無理に自分で動かないほうが良い場合もありますので、場合に応じて救急隊の要請も検討しましょう。
ヒートショックにならないための対策7つ
ヒートショックにならないために、以下の7点について対策しておきましょう。
● 脱衣所と浴室を温めておく
● お風呂の温度はぬるめの38~40度にしておく
● 湯船につかる前にかけ湯をする
● 湯船からゆっくりあがる
● 家族に声をかけてから入浴をする
● トイレにも暖房器具を設置する
● いきみすぎないようにする
脱衣所と浴室を暖める
激しい寒暖差はヒートショックの原因になるため、入浴の前には、脱衣所と浴室の気温差がないように、入浴前から浴室のストーブなどを利用して暖めておきましょう。
そのほかにも入浴前にシャワーをかけ流しておくと、浴室内がよく暖まりますので、ヒートショック対策におすすめです。
また、浴室の床はひんやりとしていて意外と冷えます。
浴室マットやすのこを敷くと、底冷えを防いで浴室内が暖かくなるため、お風呂場の対策の一つとして検討してみてください。
お風呂の温度は低めの38~40℃にする
ヒートショックは寒暖差を小さくすることで予防ができます。対策として、お風呂の温度は38~40度の低めの温度に設定して、脱衣所との寒暖差をなるべく小さくしましょう。
41度以上になるとヒートショックによるめまいやたちくらみによる浴室内での転倒や失神などの事故が増え、42度以上の熱いお風呂では、心不全や脳卒中が起こりやすくなります。
38~40度程度のお風呂ではぬるすぎると感じるかもしれません。
しかし40度程度のぬるめのお風呂は、リラックス効果を高め、ストレス解消や熟睡効果があるといわれています。
ヒートショック防止のためにも、お風呂は38~40度にしましょう。
お湯に浸かる前にかけ湯をする
お湯につかる前にかけ湯をして、お湯の温度に体を慣れさせてから入浴しましょう。
すぐに湯船につかると、急激な温度差で血圧変動が大きくなるのでヒートショックのリスクが高まります。
かけ湯はいきなり肩からお湯をかけるのではなく、心臓への負担を減らすために足元からお湯をかけ、何回かに分けてしだいに胸や肩に移行させます。
心臓から遠い部分からかけ湯をはじめて、少しずつお湯の温度に慣れてから湯船につかるように心がけましょう。
かけ湯の際には、シャワーチェアがあると便利です。お風呂は床からの底冷えの影響も強く、床に座ってのシャワーはヒートショックの原因となってしまいます。
安寿の折りたたみシャワーベンチは、折りたたむことができるので、収納のスペースを取りません。
折りたたみはボタン一つの簡単操作で、非常に使い勝手の良い、便利なシャワーチェアです。
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介護用のシャワーチェアについての詳細は、下記をご覧ください。
介護用シャワーチェアって何?選び方とおすすめを紹介
湯船に入る際にも勢いよくつかるのは厳禁です。ゆっくりと体を沈めて、心臓への負担を減らしましょう。
首までしっかりつかると心臓への負担が大きくなるので、胸あたりまでつかる半身浴がおすすめです。
ゆっくりお風呂から出る
入浴中は血圧が低下します。お風呂から出る際には、ゆっくりと立ちあがり、血圧の変動を少なくしましょう。
血圧が低下した状態でお風呂から勢いよく立ちあがると、血圧が急激に変動し、失神やめまい、立ちくらみが起きて、入浴中の事故やヒートショックの原因となります。
浴槽に手すりがあると、体に負担をかけずに、ゆっくりとお風呂から出ることができます。
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かんたんに高さ調節ができるので、体格に合わせて、使い勝手の良い高さでの利用が可能です。
浴槽をまたぐときにも安全にまたぐことができるため、もしもというときにも安心です。
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家族に声を掛けてから入浴する
ヒートショックが起きても、早期に発見できれば重大な事故を回避できます。
65歳以上になると浴室内での溺死が増加しますが、これはヒートショックによる立ちくらみや失神が原因ではないかとされています。
早めに発見し適切な対処ができれば、浴室での溺死を防ぐことができます。
お風呂に入る際には必ず家族に声をかけて、5分おきに様子をみてもらえるようにお願いしておきましょう。
トイレに暖房器具を設置する
トイレに暖房を設置することで、ヒートショックを予防できます。
トイレは家の中でも日当たりの悪い場所に設置されることが多く、家の中でも特に寒い部屋です。
換気のために窓を開けたままにしておく家庭も多く、冬場のトイレは非常に冷え込みます。
ヒートショックを予防するために、トイレにも小さな暖房を設置し、居間との寒暖差がないようにしておきましょう。
いきみすぎないようにする
排便時に強くいきむと血圧があがるので、ヒートショックの原因となってしまいます。
便秘がちな方は軽い運動や水分摂取、食物繊維の積極的な摂取など、生活習慣から便秘の改善に取り組みましょう。
ひどい便秘の方は、かかりつけ医に便秘薬を処方してもらうのも良いでしょう。
現在ではおなかが痛くならない、自然な排便を促してくれる便秘薬もあります。
また、浴室の環境整備について介護保険適用の特定福祉用具の利用が安心です。ご利用される方の身体状況やご自宅の環境に合った商品を提案させていただきます。ぜひヤマシタまでご相談ください。
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ヒートショック症状のある人への対処法
ヒートショックを起こして浴室で倒れているのに気づいたら、以下のように対応しましょう。
● 浴室で倒れているのに気づいたら、まずはすぐに救急車を呼ぶ
● 浴槽の水を抜いて、もし人手があれば浴槽から引き上げる
● 声をかけて、意識があるかどうかを確認する
● 意識がなく、脈が触れない場合には人工呼吸を行う
● 意識があっても、ろれつが回らない、体が動かない場合には救急車で受診をする
● 激しい吐き気やめまいがある場合、胸の痛みがあって動くのがつらい場合には無理に動かさない
● 安静にする
浴室は濡れているので、滑りやすい場所です。
ヒートショックに気づくととても慌ててしまいますが、救助する人も転倒しないように気を付けて対応しましょう。
「ヒートショック予報」の活用がおすすめ
日本気象協会が提供している「ヒートショック予報」を活用しましょう。
「ヒートショック予報」とは気温や気象に応じて、室内でのヒートショックリスクの予報を提供するサービスです。
ヒートショック予報では、警戒レベルを5段階でお知らせしてくれます。
冷え込み警戒レベルが高い日は、特に注意が必要です。
脱衣所やトイレをしっかり暖め、居間との寒暖差がないように気を付けて過ごすようにしましょう。
警戒レベルが低い日であってもヒートショックが起きないわけではありませんので、油断は大敵です。
冬場は常にヒートショック対策をしながら過ごすことが大切です。
まとめ
ヒートショックは寒暖差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかることで起こります。
重症のヒートショックになると、脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる病気を誘因します。
脱衣所やトイレにも暖房を付けて暖めておくことや、ぬるめのお湯で短時間の入浴にするなど、ヒートショックを起こさないように対策をしておくことが大切です。
ヒートショック予報も活用しながら、寒い冬期間も元気に過ごしましょう。
ヤマシタでは介護用品の購入・レンタルのご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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川口晴美
看護師・助産師
紹介文:助産師、看護師として総合病院にて産婦人科や消化器内科、内視鏡室で勤務。 退職後は開業助産師として地域での子育て支援を中心に活動。WEBライターとしても活動し、医療や子育てに関する記事を多く手掛けている。