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介助とは?介護との違いやそれぞれの支援内容、介護保険の利用についてポイントを解説!
「介助」と「介護」は同じように使われることがありますが、適切なケアを行うためには、介助と介護の違いを理解しておくことが重要です。
この記事では、介助と介護の違いや具体的な内容を目的別に解説します。
介護保険を利用できるサービスについてもポイントを絞って紹介します。
介助とは?
介助とは、日常生活を送る際に必要な動作に対して、利用者の「できないこと」を支援し、快適で安心して過ごせるようにサポートすることです。
介助する際は、要介助者の内容や動作レベルに合わせることが大切です。単に「できないこと」を補助するのではなく、本人の「やりたい」「できる」という気持ちを尊重し、心身の状態に応じた適切な支援が求められます。
利用者が少しでも自立した生活ができるように促しながら、柔軟に対応しましょう。
介助と介護の違い
介助と介護は、それぞれの目的や支援内容が異なります。
介助は、一時的な支援をおもな目的とし、日常生活の「できないこと」だけをサポートするものです。
一方で介護は、長期間にわたり介助が必要で、要介助者の身体機能の低下を防ぎ、自立した生活を維持・回復することを目的としています。
介助は日常生活動作の1つのサポートが終われば役割は終わりますが、介護は日常生活全体のなかから介助を組み合わせることで目的を達成できるものです。
そのため、介助は介護の一部として捉えられ、介護は日常生活全般を手助けする行為だといえるでしょう。
介助レベルは4段階に分けられる
介助は利用者の必要な支援の度合いに応じて段階に分類されます。次の表は分類をまとめたものです。
自立 | 自分で日常生活動作ができるため、介助は必要がない状態。 |
---|---|
一部介助 | 1つの動作に対して、部分的なサポートが必要な状態。 安全に動作ができるか見守りし、必要に応じて声かけや介助をする。 |
半介助 | 動作の一部分は自分でできるものの、介助する割合が多い状態。 できることは自分でしてもらい、介助しすぎないことが重要。 |
全介助 | 動作のすべてを自分ですることが難しく、全面的なサポートが必要な状態。 |
介助レベルには、動作の見守りから部分的なサポート、すべての動作を支援する方法があります。利用者が自分で「できる」という達成感をもってもらいながら、適切な介助を行うことが大切です。
介助の必要なレベルを知っておけば、利用者ができることまで先回りして介助する「過介助」を防げるでしょう。
介助の主な内容
介護現場で行われている介助の主な内容は、次の7つです。
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 歩行介助
- 更衣介助
- 移乗介助
- 寝返り介助
介助は利用者の心身の状態に合わせて行うことを基本としています。次からそれぞれの介助内容と手順を解説します。
食事介助
食事介助とは、加齢や病気などにより咀嚼や嚥下機能が低下し、上手く食事が摂れない利用者に対して行う介助です。利用者の健康状態を維持し、食事を楽しんでもらうことを目的としています。
【ポイント】
高齢者には誤嚥性肺炎のリスクや、窒息といった重大な事故につながる可能性が高いため、介助者は利用者の体調や姿勢、ひと口の量やサイズ、食べるペースへの配慮が必要です。
【手順】
- 食事をする前は体調を確認し、食事の内容や量を決めます。座る前に排泄をすませておきましょう。食べ物が自然に喉を通るように、あごを引いた状態で食べられる姿勢に座らせます。
- 食事を開始するときは、水やお茶、汁物で口の中を湿らせます。適切な大きさに切り分けてから口元に運び、飲み込んだことを確認してから、次のひと口を食べさせましょう。要介助者のペースに合わせ、食事を楽しんでもらうことが大切です。
- 食事が終わった後は口の周りを清潔にし、口の中に食べ物が残らないように、水分補給を忘れずに行いましょう。
入浴介助
入浴介助とは、自力で入浴が困難な方を対象に、利用者の身体機能に応じた方法で入浴を手助けすることです。
手すりやシャワーチェアなど、介護用品があれば自力で入浴できる場合もあります。施設で入浴する場合、車いすのまま入れる「リフト浴」や寝たままでも入れる「機械浴」があり、利用者の身体機能に合った方法で入浴をサポートできます。
【ポイント】
入浴は、身体の清潔を保つことやリラックス効果、褥瘡や感染症の防止などの効果があり、体調や皮膚の状態のチェックにも役立ちます。
【手順】
- 入浴前は利用者の体温や血圧などをチェックし、入浴できるかを判断します。浴室と脱衣所の温度差を少なくし、ヒートショックのリスクを防ぎましょう。
- 体にシャワーをかけるときは、まず介助者が温度を確認し、次に利用者にも確認してもらいます。足元からお湯をかけ、少しずつ慣れてもらいましょう。
- 髪→顔→上半身→下半身の順に洗います。髪を洗うときは介助者が片耳を押さえながらお湯を流し、片側ずつ洗います。体は末端から体の中央に向かってマッサージするように洗いましょう。肛門や陰部は、なるべく自分で洗ってもらいます。
- 体を流すときは、転倒のおそれがあるためしっかり洗い流しましょう。浴槽をまたぐときは、手すりやバスボードを利用すると安全です。浴槽の中に滑り止めマットを敷くと転倒防止になります。
- 入浴中は体調が変化しやすいため、浸かる時間は5分を目安にすると良いでしょう。
- お風呂から出たら、髪や体を拭き取ります。入浴後は体が疲れやすいため、座って着替えてもらうようにしましょう。
排泄介助
排泄介助とは、自分でトイレに行くことや排尿排便の動作が難しい方のサポートをすることです。
排泄介助は要介助者の身体状況に合わせて、次の4つの介助を選択します。
- トイレ誘導:トイレまで誘導し、排泄前後の処置の後、部屋まで誘導する
- ポータブルトイレ誘導:部屋に設置したポータブルトイレまで誘導、排泄処置の後、ベッドサイドまで誘導する
- 尿器、便器:ベッド上で尿器や便器を用いて排泄処置を行う
- 大人おむつ:座位が取れない寝たきりの方のためにベッド上でおむつ交換を行う
【ポイント】
排泄介助をする際は、プライバシーの配慮や着衣の汚れ、体調の変化などに注意が必要です。
排泄のタイミングは個人によって異なります。落ち着きがなくなる、そわそわするときは、トイレに行きたいサインかもしれません。タイミングをつかむことが難しいときは、食事や入浴の前後など、時間を決めて誘導すると良いでしょう。
ここからは、自分でトイレまで移動できる方の介助手順を解説します。
【手順】
- トイレに行くことを伝え、誘導します。
- トイレ内の手すりなどを握って立ってもらい、姿勢が安定してからズボンを脱がせます。
- 腰を支えながらゆっくり座ってもらいます。座位が保てないときは、背中や肩を支えて、体が倒れないようにしましょう。座位が安定していれば、排泄中は個室から離れ、排泄後に声をかけてもらいます。
- 排泄後の拭き取りは、可能であれば自分でしてもらいます。難しいときは、前から後ろに汚れが残らないように拭き取ります。
- 排泄が終わったら脱いだときと同様に、手すりなどを握って立ってもらいましょう。体や衣類に汚れが残っていないか確認し、ズボンをはきます。手を洗ったら、部屋まで誘導しましょう。
歩行介助
歩行介助は、利用者の歩行をサポートし転倒などの事故を未然に防止する介助です。
歩行介助も入浴介助や排泄介助と同様に、要介助者利用者の身体状況によって介助方法が異なります。
歩行介助の種類は次のとおりです。
- 寄り添い介助
- 手引き介助
- 杖歩行の介助
- 階段の昇降介助
【ポイント】
歩行介助の際は、利用者の歩行速度に合わせて歩き、転倒リスクやふらつきを想定した介助が必要です。スリッパやサンダルは避け、歩行しやすい介護用の靴を選びましょう。通路に配線コードや床濡れなどがないか確認することも大切です。
【手順】
- 寄り添い介助
要介助者のきき手の反対側(麻痺のある方は、麻痺側)の斜め後ろに立ち、身体を支えながら歩行します。 - 手引き介助
要介助者の両手を持ち、向かい合った状態で歩行します。要介助者の肘の下に手のひらを添え、介助者の腕をつかんでもらうと歩行が安定します。介助者は後向きに歩行するため、足元や周囲に注意しながら歩行するようにしましょう。 - 杖歩行の介助
杖を持つ反対側のやや後方に立ち、脇の下と肘を支えるように介助します。杖→患足→健足の順に歩きます。要介助者が出す足と同じ足を後方から踏み出し、歩幅や歩行ペースを合わせて介助しましょう。 - 階段の歩行介助
杖または階段の手すりを使って、階段の上り下りを介助します。介助者は、階段を上るときは要介助者の斜め後ろに立ち、降りるときは要介助者の斜め下に立つと体を支えやすくなります。杖歩行をする場合、上るときは杖→健足→患足の順に、下りるときは杖→患足→健足の順に歩行しましょう。
歩行補助杖の種類や選び方を詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
歩行補助杖の種類と選び方|ヤマシタ すぐきた
更衣介助
更衣介助とは、病気や加齢が原因で自分一人で着替えができない方に対して、起床時や入浴時、就寝時の着替えを補助することです。
【ポイント】
麻痺や関節の拘縮・けがなどで腕や足の動きに制限がある方もいるため、体に痛みがないように介助するようにしましょう。伸縮性のある衣類を選び、肘や手首を支えながら行えば、体に負担なく着脱しやすくなります。
【手順】
- 衣類を脱ぐときは利用者を前屈みにし、背中部分をまくりあげます。麻痺がある場合は、麻痺のない腕から袖を抜き、次に頭を抜きます。最後に麻痺側(患側)の腕を抜きます。
- 衣類を着せるときは、脱ぐときとは反対に、麻痺のある腕から袖を通します。肩までしっかり袖を通し、頭を通してもらいます。患側の袖を通すときは袖口から介助者が腕を通し、利用者の手首を支えるようにすると、楽に腕を通せます。
- 衣類を腰まで下ろし、肩や腕・裾の位置が乱れていないかチェックします。袖がねじれたり下着の裾が上がったりするため、気持ち悪いところはないか聞きながら更衣しましょう。
移乗介助
移乗介助は、介護ベッドから車いす、車いすからトイレの便座などに利用者を安全に移すことです。
介助者の動作や姿勢・身体の動きによって負担感は大きく異なります。
【ポイント】
移乗する際は、介護ベッドや車いすのストッパーがかかっているか確認します。車いすのフットレストが上がっていることや移乗しやすい位置に車いすを配置するなど、介助がしやすいように準備をします。動作をするごとに声かけをし、利用者とタイミングを合わせながら移乗しましょう。
【手順】
- 利用者の脇の下から腕を入れ、背中まで腕を回します。片足を利用者の間に入れ、立ち上がってもらいます。可能であれば利用者にも首や背中に手を回してつかまってもらいましょう。
- 介助者は体を密着させ、重心を近づけて立ち上がります。
- 腕の力に頼らず、体全体を使って体をひねり、移乗先へ体を動かしましょう。移乗の際は水平移動を心がけ、利用者の足の動きに合わせて移乗させます。膝を痛めてしまうため、足がねじれていないか注意が必要です。
- 座れたら体の傾きがないか、深く座れているか確認しましょう。
寝返り介助
寝返り介助とは、ベッド上で寝返りができない利用者を定期的に体位変換することです。
長時間寝返りができない状態が続くと、身体の一部に体圧が集中し血流が悪くなるため、褥瘡などの皮膚トラブルの原因になります。
【ポイント】
寝返り介助は一般的に2時間毎に行うことがよいとされています。ただし、利用者の身体状況によっては、時間を変更することも必要です。動作の前には必ず声かけを行いましょう。
【手順】
- 枕を体を向けたい方向にずらしておきます。利用者の膝を立て、肩と腰を支えながら寝返りを打ちたい方向へ体を倒します。可能であれば胸の前で腕を組んでもらい、体を横に倒したときに腕が体の下に入らないようにしましょう。
- 横向きになったら下になっている肩を手前にひき、無理のない寝姿勢に整えます。横向きの寝姿勢が保てない方には、必要に応じて足の間や背中にクッションを入れ、体に負担がないようにしましょう。
寝返り介助(体位変換)の詳しいやり方や便利な道具を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
体位変換はなぜ必要?流れや注意点、介助に便利な道具もご紹介|ヤマシタ すぐきた
介護の主な内容
介護の主な内容は、日常的に介助や支援が必要な方に対して、身体的・精神的・社会的なサポートを提供するものです。
介護の内容を大きく分類すると、「身体介護」と「生活援助」の2つに分けられます。
身体介護
身体介護とは、利用者の身体に直接触れて支援するサービスで、専門的な知識と技術が必要です。
具体的には、食事や入浴、排泄といった日常生活に必要な動作や、寝返りといった基本的な動作を対象としています。
ただし、過剰な身体介護は利用者の自立心を損なうとともに、自立した生活の促進を阻害する原因にもなります。
利用者の意思を尊重し、コミュニケーションをとりながら、適切なサポートを見つけ出すことが大切です。
生活援助
生活援助とは、身体介護以外の日常生活全般で利用者をサポートするサービスです。
具体的には、掃除や洗濯・料理などの基本的な家事を利用者の代わりにすることが一般的です。
身体介護と異なり、生活援助は利用者に直接触れることはありません。
生活援助は利用者本人の生活を補助するものであり、家族や生活に支障のない範囲の支援は対象外となるため、利用の際には注意が必要です。
介護保険を使えば費用負担を抑えられる
身体介護や生活援助を受けたい場合は、介護保険を使用すれば費用負担を抑えられます。
介護保険の対象者となる条件は次のとおりです。
- 第1号被保険者
65歳以上の高齢者で、介護や支援が必要になった人 - 第2号被保険者
医療保険に加入している40~64歳で、16の特定疾患で介護や支援が必要になった人
なお、介護度は要支援1・2と要介護1〜5の7段階あり、介護度によって利用できるサービスやレンタルできる福祉用具が変わります。
介護保険を利用する際には、介護サービスの内容をしっかり確認しておくことが大切です。
介護保険の概要、使用基準などを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
介護保険とは|仕組み・サービス・利用の流れを解説 | ヤマシタ すぐきた
まとめ
介助と介護は目的の違いはあるものの、利用者の手助けをするという観点では同じだといえるでしょう。
介助の種類や介護との違いを知れば、介助や介護が必要になった場合の適切なケアにつながります。
また、さまざまな介助方法を理解し実践できれば、利用者の事故リスクが防げるとともに、自立度も向上します。
介護保険を利用すれば、介助や介護が必要になったときに、自己負担額を減らして、適切なサービスを受けることも可能です。