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アルコール性認知症とは?初期症状や治療方法、福祉用具を紹介
認知症とは、脳の認知機能が低下することで日常生活に支障を及ぼす状態になることをいいます。
認知症はさまざまな種類があり、アルツハイマー型認知症がよく知られていますが、アルコール性認知症もそのひとつです。
適度な飲酒は血行を良くしストレスを解消するといった効果がありますが、過度な飲酒は認知症を発症する可能性もあるのです。
この記事では、アルコール性認知症の症状や治療方法を解説するとともに、認知症の方に適した福祉用具も紹介します。
アルコールとの付き合い方を見直す機会として、ぜひご一読ください。
アルコール性認知症とは
アルコール性認知症とは、長期間にわたりアルコールを多量に摂取することで脳が委縮し、認知機能障害が発生することで起こる認知症です。
アルコールを多量に摂取すると、脳内のビタミンB1が不足し、脳の栄養障害を起こすことで発症します。
加齢により脳機能が低下しているにもかかわらず、アルコールの多量接種によって脳の萎縮が進むことで、認知機能の低下が進み、注意力や記憶力の低下が起こります。
とくに高齢者の場合は、退職後は家に引きこもることでストレス発散の場がなくなったり、配偶者との死別による孤立感という環境の変化などが引き金となり、アルコールで気を紛らわせるケースもあります。
日常的な多量のアルコール摂取は老化を早め、認知症のリスクを高めます。
ウェルニッケ脳症
ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1の不足により脳がダメージを受けることで発症します。
原因は次のとおりです。
- 多量のアルコール摂取
- 胃の全摘手術や食事の偏りによる栄養不足
- 摂食障害
- 低栄養の患者へのビタミンB1を含まない高カロリーの点滴
主な原因はアルコールの多量摂取ですが、他にもインスタント食品による栄養の偏りや日常生活においての過食や拒食といった摂食障害も原因のひとつになります。
日常生活における食生活の乱れが原因といえるでしょう。
コルサコフ症候群
コルサコフ症候群とは、ウェルニッケ脳症の後遺症となる認知症で、総称してウェルニッケ脳症・コルサコフ症候群ともいわれます。
主な原因は、ウェルニッケ脳症を治療せずに放置され、重症化した病気です。
ウェルニッケ脳症の発症を経てコルサコフ症候群を発症する場合とウェルニッケ脳症を発症せずにコルサコフ症候群と診断される場合もあります。
ウェルニッケ脳症は早期の治療で改善が期待されるのに対し、コルサコフ症候群に有効な治療法はありません。
アルコール性認知症の症状
アルコール性認知症の特徴的な初期症状については次のとおりです。
- 時間や場所、人が分からない
- 眼球運動が異常に起こる
- 歩く時のふらつきや手足の震えがある
- 無意識に作り話をする
- 記憶力の低下や注意力が散漫になる
- 感情がコントロールできず、暴力や暴言が見られる
このような初期症状は、ウェルニッケ脳症・コルサコフ症候群によって発生しますが、アルコールの摂取だけでなく、栄養障害や脳血管障害でも起こります。
初期症状が見られたら、早期に受診し、原因を確かめることが大切です。
見当識障害
見当識障害とは、季節や日時、場所、状況が正確に分からなくなるといった症状です。
初めに時間の感覚が薄れ、約束した時間を忘れたり、同じ場所で長時間待つことが困難になります。
また、季節感がなくなり、季節に合わせた服装ができなくなります。
さらに症状が進行すると自宅付近で迷子になったり、家族や知人の名前や顔が分からなくようになるなど、日常生活に支障を生じる危険な症状です。
眼球運動障害
眼球運動障害とは、本人が無意識の状態で目が揺れるといった眼振や眼球の向きを外側に向きを変えられない外眼筋麻痺が起こる症状です。
寄り目になる内斜視や眼球が全く動かない、目の細かい震え、物が二重に見えるといった症状も見られます。
眼球運動障害は、ウェルニッケ脳症の半数以上の患者に多く見られる神経障害です。
運動失調
運動失調とは、運動麻痺がないにもかかわらず、脳と筋が協調できずに動かないことで、姿勢維持や運動・動作ができなくなる障害です。
身体の平衡感覚がなくなり、歩行時のふらつきや手足の震えが止まらない症状が見られます。
とくに歩行障害が顕著に現れ、歩幅が狭くて不安定になり、脚は開き気味で動きは緩慢になるため、杖などに頼る必要が生じてきます。
作話
作話とはコルサコフ症候群の特徴的な症状で、忘れてしまった記憶と覚えている記憶をつなぎ合わせて話を作り上げることです。
実際に経験していないことを経験したことのように作り話をしますが、本人は嘘をついている自覚はありません。
騙そうという気持ちで話していないため、初対面で話す時には、作話であることに気づかないこともあります。
記憶障害
記憶障害とは、自分が経験または体験した過去の出来事についての記憶が抜け落ち、思い出せないという障害です。
覚えたのにすぐに忘れてしまう、新しい事が覚えられないといった最近の出来事から忘れていくといった症状が顕著に現れます。
初期症状は、覚えられない状況が続き、さらに症状が進むと、覚えていたことまで忘れるといった記憶力の低下が見られます。
感情を制御できない
感情を抑制できなくなることもアルコール性認知症の特徴のひとつです。
意欲の低下や幻覚、異常な興奮、暴力、暴言などの行動が抑制できなくなるといったアルコール性依存症と同様の症状が見られます。
欲しい物を盗んだり、他人の食べ物を食べたりするなど、自分の思うままに行動する問題行動も特徴的な症状です。
アルコール性認知症の治療方法
アルコール性認知症の主な治療方法は、次の3つです。
- 断酒
- 薬物療法
- 食事療法
基本的にはアルコール依存症の治療方法と大差なく、医師の指導のもとで日常生活の改善と入院や通院による薬の服用による治療となります。
断酒
断酒によって症状を改善させる方法です。
飲酒の期間が長引くほど症状は重くなっていくため、アルコールの摂取から抜け出す生活を目指すことが大切です。
ただし、自制が困難な方は入院や断酒会への参加などを検討する必要があります。
薬物療法
薬物療法は大きく分けて2つの方法があります。
- 抗酒薬や飲酒欲求を抑える薬の服用
- 点滴によるビタミンB1の補給
お酒を身体が受け付けなくなるジスルフィラムという抗酒薬やナルメフェンという飲酒欲求を抑える薬が代表的です。
医師の診察を受けて、抗酒薬や飲酒欲求を減らす薬を服用し、場合によっては不足したビタミンB1を点滴で補うといった治療方法です。
食事療法
食事療法で生活習慣を見直すことも大切な治療方法です。
生活習慣の中でも、食生活に重点を置き、脳に必要な栄養を補う食事に心がけることが大切です。
ビタミンを多く含む豚肉やレバー、ホウレン草などの食材を意識してとり、バランスの良い食事に見直すことも治療方法のひとつになります。
アルコール性認知症の方に適した介護用品・福祉用具
アルコール性認知症の方に適した介護用品・福祉用具を使用することで、自立した日常生活をサポートできます。
認知症の症状に合わせて、使いやすい介護用品・福祉用具を選択しましょう。
おすすめしたい介護用品・福祉用具は次の3つです。
【見守りSENSEα 赤外線タイプ】
赤外線で人の動きを検知して無線で受信機にお知らせします。
人の動きを赤外線で検知、信号を発信し、介護者の受信機に知らせるもので、付属している台座やアタッチメントによりベッドやドアに設置できます。
無線式で面倒な配線はなく、検知範囲も使用状況に応じて設定できます。
サイズ | センサー:幅13.5×φ4.5cm |
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警報の方法 | 液晶表示・アラーム・メロディ・振動・LED表示 |
電波の見通し距離 | 約100m |
【お散歩コール】
お散歩タグ」を持った利用者が屋外へ出るとアラームでお知らせ。
お手持ちのスマートフォンに位置情報をお知らせするオプションサービスもあります。
利用者が持つお散歩タグと介護者が持つ見守りガイドがセットになった、利用者の居場所を確認できる福祉用具です。
お散歩タグを取り付けた杖や歩行器を利用者が使用し屋外に出ると、見守りガイドのアラームで知らせます。
また、オプションサービスのGPSを利用すればスマートフォンに利用者の位置を知らせることもできます。
サイズ | 見守りガイド:幅7.6×長さ2.7×厚さ13.5cm お散歩タグ:幅2×長さ3.5×厚さ6cm |
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重量 | お散歩タグ:38g 見守りガイド:270g |
警報の方法 | アラーム音 |
電波の見通し距離 | 約80m |
【週間投薬カレンダー 1日4回用】
壁掛け式で出し入れしやすく、飲み間違いや飲み忘れが一目で分かります。
薬を小袋のまま収納ポケットに入れ使用します。
1週間分、一日4回用です。
サイズ | 60.5×43.5cm |
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まとめ
多量のアルコールを長期間に渡って摂取すると、アルコール性認知症を発症する可能性が高まります。
とくに高齢になり生活環境が大きく変化したことがきっかけで、飲酒する量が増えれば、アルコール性認知症のリスクは高まる一方です。
しかし、認知症の症状に早めに気づき適切な対応をとれば、症状の改善が見込まれます。
また、飲酒量が少ない方でも、予防をかねて生活習慣を見直せば、アルコール性認知症のリスクが減ることも意識しておきましょう。