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手の震えがでる高齢者に多い症状とは?本態性振戦の症状や原因、他の病気との違いについて解説
大きな病気があるわけでもないのに、手の震えが常にあり、日常生活でお困りの方はいませんか。
その手の震えは高齢者に多い本態性振戦かもしれません。
本態性振戦は生命にかかわる病気ではありません。
しかし、手の震えの原因や他の病気との違いを知っていれば、適切な治療につながります。
この記事では本態性振戦の症状や原因、他の病気との違いについて解説します。
手の震えが気になり、日常生活でお困りの方は、確認していただきたい内容です。
本態性振戦とは
本態性振戦とは、持病などはっきりとした原因があるわけでもないのに、本人の意思に関係なく、手が震える症状をいいます。
本態性とは原因が分からない、振戦とは自分の意志とは無関係に震えるということです。
本態性振戦は主に手に症状が現れ、日常生活に支障をきたします。
症状が現れるタイミングとしては次のとおりです。
- 字を書く時に上手く書けない
- 手が震え、物が持てない
- スプーンは箸が上手く使えず、食事がとれない
- 飲み物を上手く飲めない
- 携帯電話やテレビなどのリモコン操作ができない
一方で、力を抜いて安静にしている状態では震えがなく、飲酒によって症状が軽くなることも特徴です。
高齢者に多い症状ですが、若い人でも発症する可能性があります。
本態性振戦が起きる原因
本態性振戦が起きる原因は、他の病気や外的要因による震えではなく、単独で起きる症状ですが、医学が発達した現代でも分かっていません。
精神的な緊張が強く続き、身体的な疲労やストレスが蓄積したときに強く症状が出るという傾向にあります。
震えを起こす原因となるパーキンソン病やレビー小体型認知症などの病気が認められない方に発症しているため、遺伝的な要因が関与している可能性も考えられています。
いずれにしても、本態性振戦が起きる具体的な原因は未だ解明されていないのが現状です。
震えの種類
震えといっても、動作のタイミングによって次のように4つの種類に分けられます。
安静時振戦
筋肉が動いておらず安静にしている状態で起きる震えです。
姿勢時振戦
一定の姿勢を保っている状態で起きる震えです。
特に座位姿勢で多く、他者から指摘されるまで気づかない場合が多いようです。
企図振戦
目的を持って動くことが引き金となり起きる震えです。
なお、動くことを止めると、震えは収まります。
動作時振戦
身体の一部を自分の意思で動かす際に起きる震えです。
振戦はどのような状態で起きるか、本人や周囲の人の気づきが大切です。
本態性振戦とパーキンソン病の違い
本態性振戦とパーキンソン病の代表的な症状は震えですが、詳細に分けると、次のような違いがあります。
本態性振戦 | パーキンソン病 | |
---|---|---|
発症する年齢 | 中年以降に多く発症しますが、若い人も稀に発症します | 中年以降の方の発症が多い傾向にあります |
震えの速さ | 速く小刻みに震えます | ゆっくり震えます |
震えの特徴 | 特定の動作で震えます | 安静時に震えます |
震えが出る部位 | 手、頭、声に震えがあります | 手、足に震えがあります |
症状の進行 | ゆっくりと進行するが、症状は震えだけです | 震えや筋肉のこわばりが続き、次第に症状が強くなります |
震え以外の症状 | 特になし | 手や足の筋肉の柔軟性が減り動作が緩慢になり、次第に歩行が困難になってきます |
本態性振戦は震えの症状が見られる病気ですが、パーキンソン病は震え以外にも様々な症状が見られる病気です。
本態性振戦とレビー小体型認知症の違い
本態性振戦とレビー小体型認知症の大きな違いは、認知機能障害の有無による症状です。
本態性振戦 | レビー小体型認知症 | |
---|---|---|
発症する年齢 | 中年以降に多いが、稀に若い人も発症します | 50歳以降に発症が多い傾向にあります |
発症原因 | 不明 | 脳の神経細胞にタンパク質が異常に蓄積することで起こる認知症の一つです |
震えの特徴 | 特定の動作で手の震えが見られます | 主に静止時に手や足に震えが見られます |
症状の進行 | ゆっくり進行するが、症状は手の震えだけです | 手の震え以外に様々な症状が現れます。 (初期)幻聴や妄想さらに症状 (中期)歩行困難やひどい物忘れ (末期)転倒、嚥下機能低下となり寝たきりで介護が必要 |
本態性振戦は特定の動作で手の震えが起きますが、レビー小体型認知症は静止時での手や足の震えに加え、認知機能障害などさまざまな症状が見られます。
手が震える他の原因
本態性振戦以外で考えられる手が震える他の原因には種類がいくつかあり、病気で起こる震えもこともあるため、注意が必要です。
手が震える他の原因としては次のようなものがあるため、日常生活に支障がでている場合はチェックが必要です。
アルコール依存症
アルコール依存症とは、大量のアルコールの摂取や摂取の中断による禁断症状として、手の震えが現れることが特徴です。
適量なアルコールの摂取では問題ありませんが、自分でコントロールできずに飲み続けた後に禁酒すると、手の震えや、異常な発汗、動悸などの離脱症状が現れます。
重症の場合、けいれんや幻覚などの症状も現れる可能性があり、また大量のアルコール摂取によって肝機能障害や不眠症などの合併障害も起こりえるため、早期の治療が必要になります。
生理的振戦
生理的振戦とは、寒い場所で全身に力を入れた時や、重いものを持った時にわずかに手が震える状態です。
特に精神的な緊張や不安な気持ちがある場合は、振戦が増します。
しかし、緊張する状況が終わったり、寒い場所から暖かい場所に移動する、重いものをおろした後は震えは収まります。
震えが起きる代表的な振戦が生理的振戦であり、生理現象は日常生活では誰にでも起こるため、病気ではありませんので、安心してください。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌している状態にある甲状腺に起こる病気です。
男性に比べて女性の発症率が高く、比較的患者数が多い病気です。
バセドウ病の主な症状は、手先の細かい震えが止まらないという症状の他に甲状腺の腫れや動悸、眼球の突出があります。
また、甲状腺ホルモンの過剰分泌による異常な発汗や体重の極端な増減、慢性的な疲労、下痢といった症状が出る場合もあります。
重症の場合は意識を失うこともあるため、適切な治療が必要です。
薬剤性振戦
薬剤性振戦とは、薬剤が原因で起きる手の震えで、胃腸薬や抗うつ薬などで用いられるメトクロプラミドやスルピリドという薬剤の副作用で起こります。
脳から運動神経に出す物質が減ることによって起こる筋肉のこわばりや転倒といったパーキンソン病に似た症状があるのが特徴です。
手の震え以外に手足の固縮や転倒、歩行困難などの症状も起こる可能性もあります。
薬の服用により手の震えが起きる場合は、服用を止めることで症状を改善させることが期待できます。
介護用品は介護保険レンタルで負担1~3割に
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要介護認定とは?
要介護認定とは、利用者の介護度合いや介護状態について客観的な判定を受け、介護サービスの利用につなげる介護保険制度の仕組みとして位置づけられています。
要介護認定は、市町村長の窓口で要介護の認定に関わる申請を行い、介護状況など訪問調査を受け、判定後に介護度の認定を受ける流れが一般的です。
要介護認定の判定区分は、利用者の心身の状態や介護状況などによって自立、要支援1・2、要介護1~5の8段階に分かれ、利用限度額やサービスが変わります。
要介護認定を詳しく知りたい方は、介護用品・福祉用具紹介サイト『ヤマシタ、シマシタ。』で確認しておきましょう。
要介護認定とは?8段階の認定基準や認定までの流れを解説 | ヤマシタ、シマシタ。
まとめ
高齢者に多い手の震えが起きる本態性振戦。
しかし、震えの症状が本態性振戦とは限らず、他の病気が関わっている可能性もあるため、専門的な治療が必要になる場合もあります。
また、手の震えで日常的にストレスを感じていれば、外出する機会が減るなど、自らの生活範囲を狭める可能性もあるのです。
本態性振戦で日常的に支障が生じている重篤な場合や大きなストレスを抱えている場合は、早めに医師の診察を受け、治療することが大切です。