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弄便(ろうべん)の原因と対処法!介護負担を軽減できる福祉用具の紹介
本記事では、弄便の原因と対処方法や、弄便行為の負担を軽減できる介護用品の紹介をします。
弄便を発見した際に、つい感情的に叱ってしまい、関係や症状が悪化する場合もあります。
感情的にならないためにも、なぜ弄便行為をするのか、弄便を発見したときの正しい対処方法を知っておくことが大切です。
弄便とは?
弄便(ろうべん)は、認知症患者に見られることが多い症状のひとつです。
おむつの中の便を素手で触ったり、そのまま衣服や壁などに便をこすりつけてしまう行為です。
また、便と認識できずに、食べ物と思い込んで口に含んでしまうこともあります。
弄便の光景を見ると精神的なショックが大きいでしょう。
しかし、本人は故意や悪意を持ってやっていません。弄便の原因を知り、適切な対処方法を実践していきましょう。
弄便の原因
弄便をしてしまう理由は、主に4つあります。
- 不快感を取り除こうとした
- 便と認識できていない
- 自身で処理しようとした
- 失禁を隠そうとした
順番に解説します。
不快感を取り除こうとした
おむつの中に便が出たとき、認知機能が低下していたとしても、お尻に便が付着した気持ち悪さやおむつの中が蒸れてくる不快感は感じます。
しかし、こうした不快感を取り除こうとしても認知症により正しい対処ができません。
そのため、手で便をかき出すことや手についた便を壁やシーツにこすりつけるなどの不潔行為をしてしまうのです。
便と認識できていない
認知症が原因で便を「汚物」と認識できていない、もしくは誤認していることも考えられます。便が不潔なもの、触れてはいけないものと学習するのは、生まれてからです。
後天的に学習した「常識」などは、認知機能低下により薄れる場合があります。本人としては好奇心から、便をこねくり回し、口に運んでしまっているのです。
便の感触や色が「あんこ」や「おはぎ」などの食品に似ていることから、誤認してしまい食器の上に盛り付けられていたなどのケースもあります。
自身で処理しようとした
認知症の影響で適切な処理方法が分からなかったために弄便行為をしてしまう場合もあります。
おむつの中にある物が便だと認識している場合や、便と認識していないものの「手についたもの」を何とかしようとする場合、家族の手を煩わせないようにするために「自分で後始末しよう」と思うものの、正しい処理のやり方が分からず結果的に便いじりなどの不潔行為をしてしまう場合があります。
失禁を隠そうとした
認知症に限らず誰しも失禁は恥ずかしいものと感じます。家族や親しい人ならばなおさら、自分の失禁を知られたくありません。
そのため、便のついた衣服などを見つけられないようにタンスやフタつきのバケツに隠す行動が見られる場合もあります。
家族としては他の衣服が汚染してしまうため、頭を悩ませる行動ではありますが、本人としては恥ずかしさから弄便行為を引き起こしていると考えられます。
弄便を発見したときの適切な対応方法
弄便を発見したときは、精神的なショックを受けてついカッとなり、叱ってしまいがちですが、叱ってはいけません。
認知症患者は叱られた内容をすべて理解することが難しく「次から気を付けよう」と行動を改められません。
しかし、叱られた相手に対する恐怖心や叱られたときの不快感は残ります。それが介護拒否につながり、介護負担の増大と悪循環になります。
大切なのは、感情的になる前に機械的に後始末に集中することです。
- 感情的に叱らない
- 汚れた箇所が広がらないように、手を拭きとる
- お風呂に誘導して不快感を取り除く
弄便の原因は不快感にあるので、早く不快感を取り除いてあげることが大切です。
弄便の改善方法
弄便は改善することができ、その方法を4つ紹介します。
- トイレでの排泄を誘導する
- おむつの交換頻度を高める
- 自然な排便を目指し、下剤の使用を避ける
- 便に触れられないように工夫する
トイレでの排泄を誘導する
トイレ排泄の誘導を円滑に行うコツは2つあります。
1つ目は、トイレに行きたいサインを見逃さないことです。認知症患者は便意をうまく伝えられません。
しかし、「そわそわしだす」「歩き回る」などトイレに行きたいサインを出します。日頃からサインを見逃さず、声掛けをしてトイレ誘導しましょう。
2つ目は、トイレを習慣化させることです。日頃から排便の時間を記録して、排便のサイクルを把握します。排便の時間が近づいたらトイレに誘導し、排便を促しましょう。
おむつの交換頻度を高める
弄便行為は、自宅トイレを利用している人より、おむつ利用者の方が多く見られるといわれています。
排便を確認できたら不快感を抱く前に、こまめにおむつを交換しましょう。便意をもよおした時のサインを見逃さないこと、排便サイクルの把握をすることも大切です。
くわえて、便が漏れないようにおむつは体に合っているものを使いましょう。おむつのギャザーをしっかり立てて履かせてあげることも大切です。
自然な排便を目指し、下剤の使用を避ける
排便のサイクルを整えるためにも、食事にも配慮することが大切です。
普段から消化のいい食品を食べる、水をたくさん飲む、腸の働きを活発化させるためマッサージやストレッチ、軽い運動をするなどして自然排便を目指しましょう。
高齢者は便秘気味になりやすいですが、必要以上に下剤に頼ると、下痢が多くなり便失禁につながります。
必然的におむつに頼ることとなり、弄便につながるという悪循環を起こしかねません。下剤の使用は極力控えましょう。
便に触れられないように工夫する
便いじりはおむつの中に便が長時間ある不快感から、いじってしまうのが原因の1つです。定期的におむつを確認して、長時間便がおむつの中にないように工夫しましょう。
しかし、それでも弄便が改善しない場合は、物理的に便に直接触れられないよう自分では取り外しができないミトン手袋やつなぎ服の装着を検討する場合があります。
しかしながら、自分で着脱できないミトン手袋やつなぎ服は「身体拘束」にあたることを理解しておかなければいけません。
また、身体拘束は本人に非常に強いストレスを与えることになるので、今まで関係なかった別の問題が表出する恐れもあります。
もし、ミトン手袋などを使用する場合は、一人で抱え込まずに、介護スタッフや医療スタッフとよく相談をしてから実行する必要があります。
トイレ環境を整えるおすすめ介護用品
弄便はおむつ利用者に多くみられ、トイレの利用者には少ないといわれています。
つまり、トイレ環境を整えれば弄便の問題も改善されるといえます。そこで、トイレ環境を整えるおすすめの介護用品を紹介します。
ポータブルトイレ
自宅のトイレまで遠くて歩いていけない、夜間のトイレ移動は転倒の不安があるなど、ベット付近に設置して、転倒や失禁の問題を改善できるのがポータブルトイレです。
おすすめのポータブルトイレを2つ紹介します。
家具調トイレ セレクトR 自動ラップ ノーマル 標準便座
臭いの問題と後始末の負担を解決できる全自動のポータブルトイレです。
排便後ボタン押すだけで、専用ビニール袋を熱圧着し切り取ります。個包装された袋は可燃ごみに捨てるだけ。臭いの漏れを最小限にできて、バケツの洗浄もしなくてよい商品です。
家具調スマートトイレ NEO はねあげ 標準便座
肘掛けをワンタッチではね上げることができるトイレです。
はね上げ操作がワンタッチで簡単なので誰でも操作でき、自分の行きたいタイミングでトイレができます。
トイレの座面とベットの高さを同じにしておけば、お尻をスライドさせるだけでトイレに座ることができます。
介護用トイレの機能や選ぶポイントについては、以下記事で詳しく解説しています。
関連記事:介護用トイレの選び方とおすすめを紹介
手すり
介護用手すりは、立ち座りや移動の時にふらつきを防止し、転倒のリスクを軽減することができます。
床に固定するわけではないので「ここにあれば便利」という場所にセッティングできます。
ルーツ サイドタイプ
今利用しているベットに設置することができます。重量は約21㎏あるため、ぐらつきの心配がありません。
安心して手すりに頼り、ボータブルトイレへの乗り移りも安全にできます。
ルーツ ロングタイプ
手すりが長いタイプの商品は、少しの距離を安全に移動するとき使用します。
あと2・3歩の距離が歩けずトイレまで行けないようなケースを解決してくれる商品です。
介護用手すりの種類や効果については、以下記事で詳しく解説しています。
関連記事:介護用手すりとは|効果や種類、介護保険レンタル、住宅改修を解説
弄便の問題を1人で抱え込まずプロに相談しよう
親しい人が弄便などの不潔行為をすると、精神的ショックは計り知れません。いくら悪意がないとはいえ、感情的になってしまうこともあるでしょう。
1人で抱え込まずに、ケアマネジャーに相談してみてください。
介護保険を利用した介護用品レンタルであれば利用者の負担割合1~3割負担でレンタルできます。
まとめ
弄便は認知症患者に多く見られる症状の1つです。自分の排泄物を手でいじり、口に含んでしまったり、床や壁などにつけてしまう不潔行為です。
弄便の原因としては、不快感を取り除こうとしたが、適切な処理方法が分からず問題行動になってしまうなどさまざまです。
家族は精神的にショックですが、感情的にならず、機械的に後始末をすることに集中することが大切です。
おむつ着用の方が弄便をする傾向があるため、自宅トイレやポータブルトイレを使用できるように誘導することも重要です。
一人で抱えこまずにケアマネジャーなどの専門職と相談しながら対応していきましょう。