自宅での介護を希望する人は多い

人生の最期は病院や施設ではなく自宅で過ごしたい、と考える高齢者や家族が増えています。

「2018年版高齢社会白書」によると、自分の介護が必要になった場合に「自宅で介護を受けたい」と回答した方の割合は全体の73.5％であり、多くの方が在宅介護を希望していることがわかりました。

一方で、日本では少子高齢化の影響で労働力人口の減少しており、介護業界では人手不足が深刻な課題となっています。

出典：内閣府「平成30年版高齢社会白書（全体版）」

在宅介護で受けられるサービス

自宅介護をする場合にも、介護保険サービスが利用できます。

ここでは、在宅介護で受けられるサービスを紹介します。

介護予防のためのサービス

介護保険で「要支援1・2」と認定された方が利用できるサービスには、ヘルパーが自宅を訪問して調理や掃除などを手伝う「訪問型サービス」や、施設に通ってリハビリを受ける「通所型サービス」があります。

介護予防サービスは、現在の状態を維持・改善して介護状態にならないようにすることを目的としています。

関連記事：介護予防とは？自分でできる予防と介護予防サービスを解説

通所サービス

通所サービスは、デイサービスやデイケアなど、日帰りのサービスが受けられます。施設に通い、入浴や排せつ、食事などの支援が受けられます。

本人にとっては社会との交流や楽しみの機会となり、介護する家族にとっては、休息や自分の時間を確保できる点がメリットです。

このように、自宅介護の大きな問題の一つである、家族の身体的・精神的な負担を軽減できます。

関連記事：デイサービスとは？利用するメリットやサービスの料金・種類を解説

訪問サービス

訪問サービスは、ホームヘルパーが利用者の自宅に訪問して、入浴や排せつ、食事などの身体介助や、掃除や洗濯、料理などの生活援助を提供します。

訪問サービスのなかには、通院時の降車や乗車、移動の介助、受診の手続きなどのサービスがあり、これらを提供しているかどうかは事業所によって異なります。

ある程度、自立した生活を送っている方であれば、訪問介護サービスを利用しながら、1人暮らしを続けることも難しくないでしょう。

短期入所サービス

短期入所サービスは、数日間施設に入所し、入浴や排せつ、食事などの介護が受けられます。一般的には「ショートステイ」と呼ばれており、短期的な利用に限られます。

介護する家族にとっては、一時的に介護から離れられ、介護負担の軽減や休養の時間にあてられます。また、介護者の急病や冠婚葬祭など、一時的に介護が難しくなった場合にも利用可能です。

関連記事：ショートステイを利用できる条件とは？滞在可能日数や費用相場を解説

福祉用具の活用

車椅子や介護ベッドなどの福祉用具は、介護を受ける方が自立した生活を支えるとともに、介護者の介護負担の軽減にも役立ちます。

介護保険では、要介護度の区分ごとの限度額内で福祉用具をレンタルできます。ポータブルトイレや入浴用いすなど「特定福祉用具」と呼ばれるレンタルにふさわしくない福祉用具は、介護保険で購入することも可能です。

関連記事：介護用品はレンタルできる！品目、流れなどを解説します

在宅介護のメリット

在宅介護には、以下のようなメリットがあります。

• 住み慣れた自宅で生活できる
• 施設への入居費用を抑えられる

以下で詳しく解説します。

住み慣れた自宅で生活できる

在宅介護の最大のメリットは、住み慣れた自宅で生活を続けられることです。

介護を受ける方の生活環境が変わらないため、ストレスが少なく、家族がそばにいる安心感も得られます。

また、介護する家族にとっても、近くで家族を見守れるため、万が一、体調に変化が起きたときでもすぐに駆けつけられるメリットもあります。

施設への入居費用を抑えられる

施設へ入居する場合には、毎月の利用料のほか、入居一時金といった初期費用が必要となるのが一般的です。

それに対して在宅介護は、必要な介護サービスを選択しながら利用できるため、施設へ入居するよりも費用を抑えやすいメリットがあります。

在宅介護のデメリット

在宅介護にはメリットがありますが、その一方で、次のようなデメリットもみられます。

• 要介護度によっては家族の負担が大きい
• 要介護度が高い場合は自宅のリフォーム費用がかかる

要介護度によっては家族の負担が大きい

ある程度自立した方の介護と、要介護度が高い方の介護とでは、家族にかかる介護負担は大きく異なります。

要介護度が高くなるほど、日常生活の全面的な介護や常時見守りが必要となります。

介護は重労働かつ長時間におよぶため、介護中心の生活になることで、精神的に追い込まれるケースも少なくありません。

在宅介護を続けるには、介護保険を利用して、周囲の協力を得ながら家族だけで抱え込まないことが大切です。

要介護度が高い場合は自宅のリフォーム費用がかかる

要介護度によっては、住宅リフォーム費用がかかる点もデメリットの1つです。在宅介護では、必ず住宅リフォームが必要になるわけではありません。しかし、これまでの生活環境とは異なる環境整備が必要となるでしょう。

たとえば、要介護度が低い方の場合は、手すりの設置といった安価で簡単なリフォームで済むことが一般的です。

一方、要介護度が高い場合には、車椅子の出入りを考慮したスロープやドアの改修など、大規模な工事が必要なケースもみられます。

これらのリフォーム費用が、家計の負担となる点はデメリットといえるでしょう。

介護保険を利用すれば介護用品や住宅改修の自己負担は1〜3割に

介護保険を利用すれば、介護用品や住宅改修の負担を1〜3割に抑えられます。介護保険を使用するためには、要介護認定が必要です。

ここでは、介護保険の申請方法やその流れを解説します。

介護保険とは？

介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えるための制度です。40歳以上の方が加入し、保険料を納めることで、介護が必要になったときにサービスを利用できる制度です。

介護保険サービスは、訪問介護やデイサービスなどの利用のほか、介護用具の購入や住宅改修の費用を一部負担してもらえます。自己負担は原則1割から3割となっており、残りは介護保険から給付されます。

たとえば、対象の福祉用具の購入費の場合、支給される年間上限額は10万円です。10万円使用した場合、自己負担1割の方は支払い金額は1万円になります。

住宅改修費については、段差の解消や扉の取り替えなどの工事費用を20万円を上限に支給されます。手すりやスロープには、工事不要で設置できるタイプもあるため、レンタルを検討しても良いでしょう。

要介護認定の申請方法

自宅で介護サービスを利用するには、介護の必要度を判定する「要介護認定」を受ける必要があります。

65歳以上の高齢者を第1号被保険者、40歳から64歳までを第2被保険者と呼び、第2被保険者は国が指定した特定疾病の方を対象にしています。

認定を受けるには、利用者が住んでいる市区町村の介護保険の担当課、もしくは地域包括支援センターで申請します。本人、または家族が申請することが可能です。

要介護認定の申請の際は「要介護・要支援認定申請書」のほかにも、介護保険被保険者証やかかりつけの病院の診察券を準備しておくと手続きがスムーズです。詳しくは、市区町村のホームページや窓口で確認しておきましょう。

また、すでに認定を受けている方でも、心身の状態に変化があり、介護が必要となった場合は、再申請で認められれば、要介護度の変更が可能です。

介護保険サービスを利用する流れ

介護保険サービスを利用するまでの流れは次の通りです。

1. 要介護認定の申請
2. 認定調査
3. 一次判定
4. 二次判定
5. 認定

要介護認定の申請後、市区町村の調査員が自宅を訪問し、心身の状態の確認や本人、家族の聞き取りをします。

認定調査と主治医意見書の内容を基にコンピューターで判定するのが、一次判定です。

その際、主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要となります。一次判定の結果と主治医意見書から、介護認定審査会による二次判定が実施されます。

申請から要介護認定の通知までは、30日程度かかるため、早めに準備しておくことがおすすめです。

基本的には要介護認定が出てから、ケアプランが作成されたあとに、介護サービスの利用が開始します。

自宅の介護に便利な介護用品

在宅介護に便利な介護用品を紹介します。

シルバーカー

シルバーカーとは、自立歩行が可能な方の歩行を補助する手押し車のことです。支えがあれば自分で買い物に行けるくらいの介護レベルの方に適しています。

外出の際には、シルバーカーを押して歩くことで歩行距離を伸ばせるほか、荷物の持ち運び、歩き疲れたときには座れる機能も備わっています。

デュオST

デュオSTは、多機能で使いやすいスタンダードタイプのシルバーカーです。

座面が広いため、座り心地が良く、休憩時も快適に座れます。また、上部には買い物かごを載せるスペースがあり、買い物も外出も便利に活用できます。

U字型のハンドルは操作しやすく、安定した歩行が可能です。

歩行サポート手すり

歩行サポート手すりとは、玄関先の段差や屋内の移動が不安な場所に設置する手すりのことです。

歩行サポート手すりは、置くだけで設置できるタイプのため、設置費用がかからない点がポイントです。

手すりの設置は、介護を受ける方の体力的な負担の軽減できるほか、介護する家族の負担も減らせます。

歩行サポート手すり スムーディ ステップ伸縮タイプ 片手すり

スムーディステップ伸縮タイプ手すりは、玄関先が公道に面している家や、門扉がある家にも設置可能です。

手すり部分は端から端までつかみやすく、手すりから手を離さず移動できるため、安定感のある動作ができます。

入浴グリップ

入浴グリップとは、浴槽に取り付けられる手すりのことです。工具不要で取り付けが可能で、設置場所や使用者に合わせて、グリップの高さや幅の調整も簡単です。

浴槽への出入りや浴槽内での姿勢保持に利用できるため「自分で体は洗えるけど、出入りには転倒が心配」という方や、家族が入浴介助をするときに役立ちます。

入浴グリップ [ユクリア] ユニットバス専用 コンパクト130脚付

ユクリアは工事不要で、浴槽のふちに設置できる入浴グリップです。浴槽のコーナー部分がカーブ状になっている場合でも取り付けできます。

エプロン部（側面のカバー）を押し込まない構造のため、ユニットバスにも取り付けが可能です。

入浴グリップはさまざまなタイプがあります。福祉用具の専門スタッフがご自宅の浴槽に合った商品を提案します。

投薬カレンダー

投薬カレンダーは、薬の管理をサポートする介護用品です。

カレンダーには、曜日と薬を飲むタイミングごとに収納ポケットが分かれており、1週間分の薬を小袋のまま整理して収納できます。

どの薬をいつ服用するかがひと目でわかるため、飲み間違いや飲み忘れを防ぐのに効果的です。薬の管理をするのに不安がある方におすすめです。

週間投薬カレンダー 1日4回用

週間投薬カレンダーは、文字が大きく服薬管理がしやすい壁掛け式のカレンダーです。

1日4回、1週間分の薬を整理して収納し、薬の出し入れがしやすい点が特徴です。壁掛け式のため、場所を取らず、目の届く場所に設置することで、服薬習慣の定着にも役立つでしょう。

センサーマット

センサーマットは、ベッドからの転倒や転落を予防できる介護用品です。

介護を受ける方がベッドから起き上がったり、ベッドから降りて動き出そうとしたりするときにセンサーが反応し、介護者に通知される仕組みです。そのため、介護者は介護を受ける方を常に見守る必要がなくなり、介護負担を軽減できます。

とくに、認知症の高齢者は、認知機能だけではなく、身体機能も低下しやすく、転倒や転落のリスクが高い傾向です。高齢者の転倒・転落は骨折や寝たきりの原因となるため、センサーマットを使用した対策が有効です。

家族コール4B・ポータブル

このセンサーマットは、介ベッドから起き上がるとセンサーが反応し、受信機に報知してくれます。

受信器は持ち運びが可能で、別の部屋で過ごしていても通知が届くため、見守り介助の助けになります。

介護用ベッド

介護用ベッドは、介護者が介護しやすい機能が備わっています。

たとえば、ベッドの高さを調節できる機能は、おむつ交換や体位変換時の腰への負担が軽減できます。

背上げや脚上げ機能があるベッドもあり、介護を受ける方の快適性も向上します。介護度によって必要度は異なりますが、介護用ベッドは、在宅介護を続けるうえで必須となる介護用品だといえるでしょう。

クオラONE 2モーター 91cm幅 レギュラー/ミニ

クオラONE2モーターは、背上げ時のずれを軽減する「ストレッチ背あげ機能」を備えたスタンダードベッドです。使用者の体格に合わせて、サイズを変更することも可能です。

また、スマートフォンへ通知できる「家庭内呼び出し機能」も付いています。

まとめ

在宅介護は、住み慣れた自宅での暮らしを続けられ、施設入所と比較して介護にかかる費用を安く抑えられるメリットがあります。

その一方で、介護を受ける方の状態によっては、家族の介護負担が大きくなり、自宅の介護環境を整備するためのリフォーム費用が生じるケースもあります。

在宅介護をする家族の身体的・精神的負担を軽減するためには、介護保険のサービスや在宅介護に便利な、介護用品を上手に取り入れながら、無理のない介護を続けていくことが大切です。

介護でお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。