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スライディングボードの使い方とおすすめ商品|安全な移乗介助について解説
「スライディングボードを移乗介助に活かしたいけど、うまくできるか心配」「スライディングボードを導入したものの使い方がイマイチわからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。
スライディングボードは移乗介助をスムーズに行える便利な介護用品です。しかし使い方を誤ると、介護を受ける方のずり落ちや、介助者の腰を痛める原因となります。
本記事では、スライディングボードを使った効果的な移乗介助の手順や注意点を紹介しているので、ぜひ実際の移乗介助で活かしてみてください。
移乗介助とは?
移乗介助とは、介護を受ける方がベッドから車いすや、車いすから普通のいすなどに乗り移るサポートをすることです。
介護を受ける方は自力で移動することが難しい場合、寝たきりの生活になってしまう可能性があります。
ベッドから離れることで血流が良くなり、昼夜逆転しにくい効果があるため、規則正しい日常を送る上でも、移乗介助は必要不可欠です。
ただし、移乗介助は双方にとってリスクがあります。介助者にとっては腰痛、介護を受ける方にとっては恐怖感や痛み、怪我などのリスクです。
そのため「ノーリフト」という持ち上げない介助が推奨されています。ノーリフトでは、座位姿勢での対応や、機械を使った移乗介助を実践します。
これにより、介助者の腰痛と介護を受ける方の痛みや怪我のリスクを減らすことが可能です。
移乗がQOLに大きく影響する理由
移乗が頻繁に行われることはQOL(生活の質)の向上や身体機能、精神状態に良い影響が与えられます。
なぜなら、移乗を1日の中で何度もしているということは、それだけベッドから起きて生活できている証拠だからです。
もちろん高齢になると体力の低下にともない、ベッドで適宜休むことも大切です。しかし、長時間ベッド上で過ごすことは、心身の機能低下、筋肉や関節の萎縮などが現れる廃用症候群を引き起こします。
そのため、ヤマシタでは移乗機器を使い、寝たきりをつくらず介護を受ける方や介助者の負担を和らげるノーリフティングポリシーを掲げています。
スライディングボードとは?
ノーリフトの実現に役立つのが、スライディングボードです。
スライディングボードとは、木製やプラスティックで作られた移乗用のボードで、座ったまま移乗ができるようにボード上が滑りやすくなっています。
開発された目的は、前述にもあるように、ノーリフトによる介護を受ける方と介助者の負担軽減です。
通常の移乗介助では、どれだけ工夫しても持ち上げる介助になり腰への負担は避けられません。
スライディングボードを適切に使用し移乗介助を行うことは、介護を受ける方と介助者双方の安全を守ることにつながります。
スライディングボードの使い方
スライディングボードが役に立つのは、主にベッドと車いすの間を移乗介助するときです。
簡単に言うと橋渡し的な用具で、摩擦を減らし滑るように設計されているのが特徴です。
基本的な使い方は、スライディングボードをベッドと車いすの隙間を埋めるように配置し、お尻を半分浮かせてボードに乗せて移乗します。
その際、移乗する側の位置を今いる高さより少し低くすることで、斜め下に滑るようなイメージでなめらかな移乗が可能です。
しかし正しい使い方を理解しないと事故や怪我につながるので、次で紹介する移乗介助の手順を確認しておきましょう。
移乗介助の手順
ここではスライディングボードを使った、ベッドから車いすへの移乗介助を紹介します。
- 車いすをベッドの真横にセッティングし状態を確認する
・車いすのアームレストを跳ね上げる(可能な場合)
・車いすのブレーキがかかっているか確認する - ベッドの位置を車いすより少し高くする(滑る力を利用するため)
- 介助者が介護を受ける方の体を支えベッド脇に座っていただき、体を斜め前に倒す
- スライディングボードを置く(ベッドと車いすの橋渡しになるような形)
- ベッドとお尻の間にできた隙間にスライディングボードを差し込む
- そのまま車いす側に滑らせるように移乗する
・介護を受ける方のわきに手を入れ、もう片方の手は介護を受ける方の腰に当てる
・無事に車いすに移れたら移乗した際の進行方向に体重をかけ、介護を受ける方のお尻を半分浮かす - スライディングボードを外して姿勢を整えれば、完了
慣れるまでは難しく感じるかもしれませんが、使いこなせれば非常に便利な介護用品です。
移乗介助の注意点
スライディングボードを使った移乗介助では、介護を受ける方の事故や怪我、介助者の腰痛といったリスクがともないます。
あらかじめそれぞれの注意点を把握し、安全な移乗介助ができるよう準備しておきましょう。
介護を受ける方の注意点
介護を受ける方にとってスライディングボードは便利な反面、滑りやすいことによる車いすやベッドからのずり落ちの危険性があります。
ずり落ちの原因は、お尻の下にスライディングボードをはさむ際、中途半端な位置に差し込むことが挙げられます。
また、足の筋力が衰えておらず立つ能力が残っているにもかかわらず、スライディングボードを頻繁に使うと、逆に機能低下を招いてしまう可能性があることも知っておきましょう。
そのため、介護を受ける方にとってスライディングボードが必要であるかを、事前に見極めることが大切です。
介助者の注意点
スライディングボードは本来、介助者の負担を軽減するものですが、間違った使い方をすると腰痛を招いてしまいます。
たとえば、介護を受ける方に立つ能力があり、スライディングボードを必要としないにもかかわらず無理して使うことで、余計な体力を消耗し腰への負担につながります。
また、スライディングボードを介護を受ける方のお尻にはさむ際、体を持ち上げて乗せることで、腰に負担がかかり腰痛を助長するため危険です。
便利なはずのスライディングボードも、正しい使い方を理解しないと、リスクが増えることを認識しておくことが大切です。
移乗介助に役立つ介護用品
ヤマシタでは移乗介助に役立つ、以下のような介護用品を取り扱っています。
- イージーグライド
- トレイージースライドシート
- 車椅子「ラクーネ3 介助」
- リフト「つるべーBセット」
それぞれの特徴と、どのような方におすすめかを解説します。
イージーグライド
イージーグライドは、もっともスタンダードなスライディングボードです。
主な使用場所として、車いすからベッド、ベッドから車いすなど平らな場所の横移動で役立ちします。
商品名 | イージーグライド |
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特徴 | ・ボードの端が折れ曲がるため移乗時の突起物から身も守ってくれる ・SS、S、M、Lサイズがある |
おすすめの利用者 | ・ベッドと車いす間の移乗介助がある方 ・足に力は入るが立てない方 |
トレイージースライドシート
トレイージースライドシートは、ベッド上での体の移動を助けるスライディングシートです。
主にベッド上での移動に使用し、摩擦軽減による床ずれ予防の効果があります。
商品名 | トレイージースライドシート |
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特徴 | ・素材は滑りの良いナイロンを使用 ・上下左右だけでなく回転動作も可能 |
おすすめの利用者 | ・ベッド上で過ごす時間が多い方 ・体が大きくベッド上で体勢を直すのが大変な方 |
車椅子「ラクーネ3 介助」
車椅子「ラクーネ3 介助」は、移乗用のボードが備え付けられたタイプの車いすです。
ベッドやポータブルトイレへの移乗の他、外出先でも便利に使用いただけます。
商品名 | 車椅子「ラクーネ3 介助」 |
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特徴 | ・サイドガードにトランスファーボードが付属 ・横からの移動が簡単 |
おすすめの利用者 | ・車いすを使っている方 ・ベッドと車いす間の移乗機会が多い方 |
リフト「つるべーBセット」
リフト「つるべーBセット」は、リフトタイプの移乗機器です。
横への平行移動が難しい方の移乗、拘縮や床ずれ予防にも効果的です。
商品名 | フト「つるべーBセット」 |
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特徴 | ・操作が簡単 ・アームが360度回転 ・ベッドに固定でき安心 |
おすすめの利用者 | ・立てない方 ・体重が重く介助者の負担も大きい方 |
下記記事では、介護用移動リフトの選び方やおすすめ商品についても解説しています。あわせてご覧ください。
介護の移動用リフトとは|種類や選び方、介護保険レンタルを紹介
まとめ
スライディングボードは、移乗介助による利用者本人と介助者の双方の負担を軽くしてくれる便利な介護用品です。
また便利なだけでなく、安全な移乗介助の実現により、利用者本人のQOL(生活の質)を高める効果も期待できます。
ヤマシタでは、基本タイプのスライディングボード以外にも、シートタイプや車いす型のものもあります。また、介助者の負担がほとんどないリフトタイプの移乗介護用品もあり、介護保険を利用したレンタルが可能です。
移乗に関する用具のご提案が可能です。お気軽にお問い合わせください。
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津島 武志
介護福祉士
介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、さまざまなWEBメディアでライターとして活動しています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。