更新日:
居宅介護住宅改修費の概要と申請方法を解説|住宅改修でもっと快適な生活を実現
「廊下に手すりがあれば転倒を怖がることなく、トイレにいけるのに。」
「5㎝の敷居が無ければ、車いす移動が容易になるのに。」
こうした悩みはありませんか。
じつは、介護保険の対象となる工事ならば、工事総額の一部を保険者(市区町村)から受け取ることができます。
こうした介護保険を利用した工事を居宅介護住宅改修といいます。
本記事では、居宅介護住宅改修の概要をくわしく解説していきます。
居宅介護住宅改修費とは?
利用者様が今まで住み慣れた自宅で安全に暮らしていくために、手すりの取付などの工事が必要になる場合があります。この手すりの取付などにかかる工事の費用は、介護保険から一部支給を受けることができます。このサービスを居宅介護住宅改修費(要支援の利用者様は介護予防住宅改修費)といいます。
居宅介護住宅改修費の利用限度額は、20万円(税込)です。居宅介護住宅改修は介護保険のサービスなので、利用するためには条件があります。
制度が複雑ですので
- 居宅介護住宅改修費の対象者
- 対象となる改修
- 居宅介護住宅改修費の負担割合
- 居宅介護住宅改修費の支給方法
この4つの項目で分かりやすく解説していきます。
居宅介護住宅改修費の対象者
介護保険の要介護認定で要支援、もしくは要介護の認定を受けている人が対象となります。ただし、居宅介護住宅改修費の上限は20万円であるため、すでに20万円以上の工事を行った人は対象外になります。
さらに、工事できる住宅は、住民票の住所地に限られます。
ちなみに、介護認定を受けたご夫婦の場合、それぞれ居宅介護住宅改修費の対象者となります。居宅介護住宅改修に回数制限はないので、同一住居であっても2人分の居宅介護住宅改修費を利用することができます。
対象となる改修
居宅介護住宅改修費の対象となる改修は、一般的なリフォームと異なり介護保険によって定められています。
対象工事は以下の通りです。
- 手すりの取り付け
廊下やトイレ内、玄関、浴室、ポーチ等に手すりを取り付ける工事が対象 - 段差の解消
敷居を低くする、スロープを設置するなど段差又は傾斜を解消させる工事が対象 - 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
畳からフローリングにする床材の材料を変更する工事が対象 - 引き戸等への扉の取替
開き戸・折れ戸やドアノブの変更などの工事が対象 - 洋式トイレ等への便器の取替
和式便所から洋式トイレへの変更、トイレの向きの変更などの工事が対象 - 上記の工事の付帯として必要な工事
手すり取付時の下地の補強など付帯としてかかる工事が対象
「この工事は居宅介護住宅改修に該当するのかな」と疑問に感じましたら、担当ケアマネージャーに相談しましょう。
居宅介護住宅改修費の負担割合
居宅介護住宅改修費の利用者負担の割合は、利用者様の負担割合により異なります。
65歳以上の第1被保険者は1割~3割負担で工事を行うことができます。
例えば、居宅介護住宅改修に20万円の費用がかかった場合
- 1割負担の人は自己負担額「2万円」で支給金額が「18万円」
- 2割負担の人は自己負担額「4万円」で支給金額が「16万円」
- 3割負担の人は自己負担額「6万円」で支給金額は「14万円」
20万円の工事を「2万円〜6万円」で行うことができるということです。
40〜64歳の第2号被保険者は、1割負担になります。
1回の工事が居宅介護住宅改修費の20万円に満たなかった場合、残金は次の工事に利用することができます。
工事内容が20万円を超過した場合、超過した金額は自費となります。
居宅介護住宅改修費の支給方法
居宅介護住宅改修費の支給方法は「償還払い」と「受領委任払い」の2つの方法があります。原則は償還払いとなり、受領委任払いは採用していない保険者(市区町村)もあります。
償還払いは事業者に工事費用を全額支払い、のちに利用者様の負担割合に応じて工事費総額の7割〜9割のお金が戻ってくる制度です。
受領委任払いは、利用者様が支払う工事費用は自己負担額になります。住宅改修の申請完了後に事業者に対して、保険者(市区町村)から工事総額の7割〜9割分が支払われる制度です。
利用者様側からすれば、償還払いは1度大きなお金が必要になり、受領委任払いは1割から3割の自己負担分を支払うだけなので、一時的な出費を抑えることができます。
しかし、受領委任払いには、いくつか利用できない条件があります。担当ケアマネージャーと確認を取りながら進めていきましょう。
居宅介護住宅改修の申請方法
保険者(市区町村)に申請するタイミングが2回あります。居宅介護住宅改修前と改修後にそれぞれ必要な書類をそろえて保険者(市区町村)に提出します。
居宅介護住宅改修の申請の流れは以下の通りです。(保険者(市区町村)により多少異なります。)
- ケアマネージャーへ相談
- ケアマネージャー及び福祉用具専門相談員が現地調査・ヒアリング訪問
- 見積りの作成
- 利用者様へ見積り提示、ご承認いただけたら事前申請書類に署名
・住宅改修費支給申請書(事前)
・住宅所有者の承諾書(賃貸)
・受領委任払い承認申請書(支給方法を受領委任払いにしたい場合提出) - 保険者(市区町村)へ事前申請
- 保険者(市区町村)の返答・承認ならば工事着工
- 施工業者(福祉用具事業所)へお支払いと事後申請書類に署名
・住宅改修完了報告書 - 保険者(市区町村)へ事後申請
- 住宅改修費の支給(償還払いなら、利用者様の指定口座に入金)
利用者様は、4・7の工程で事前・事後申請の書類に署名をします。
このように申請手続きは複雑です。担当ケアマネージャーなど代行申請できるので、委任することをおすすめします。
賃貸の居宅介護住宅改修は注意が必要
居宅介護住宅改修費には、原状回復に関する費用は含まれていません。
とくに賃貸物件の場合、退去時に原状回復を求められるケースが多いです。そのため、トラブル防止のために、工事前に管理者やオーナーに原状回復の有無、そもそも工事を行ってよいのかなど確認する必要があります。
原状回復が必要であったり、そもそも工事の着工ができない場合は、介護用品レンタルという選択肢もあります。手すりの取付などは レンタルでも代用できるからです。
介護用品レンタルの利用で改修が不要な場合も
レンタルのメリットは、必要な時に利用し不要となったら取り外せることができるところです。例えば玄関上がり框の昇降が大変だったので、住宅改修で手すりとステップ台を取り付けたとします。工事後に介護度が上がり、車いすの生活となってしまった場合、取り付けた手すりやステップ台が邪魔となり玄関の出入りが困難になる可能性があります。
スロープの造設に関しては、長さなどにもよるが、工事費が高く容易に上限の20万円を超過します。スロープは介護用品のレンタルでも代用できるので、スロープにかかる居宅介護住宅改修費を他の工事に充てることが得策になる場合があります。
レンタルのメリットは、住宅改修の弱点を補うことができます。
介護保険レンタルとは?
65歳以上の介護認定を受けている人は、介護用品のレンタルサービスを利用することができます。(特定の条件に該当すれば40歳~64歳の人でも利用可能)
介護保険を利用してレンタルできる用具は介護ベットや車いすなどの11項目あります。
介護用品レンタルのメリットは
- 必要な時に利用して不要になったら返却できること。
- お体の状態に合わせて、適切な介護用品を利用できること。
この2点を上げられます。
介護用品は高価であり、しかも場所を取ります。くわえて処分する時は処分費もかかってきます。
さらに、ご高齢者様の体調は変化しやすく、その時々に適合した介護用品が必要になります。例えば、転倒により足を骨折したことがきっかけで、寝たきりになったケースの場合。その都度、歩行器や介護ベットを購入するのは、経済的にかなり負担がかかります。
必要な時に必要な介護用具をレンタルできることは、利用者様の身体的負担やご家族の介助負担の軽減、経済的な負担を緩和することができます。
まとめ
居宅介護住宅改修費の上限20万円は、一生涯20万円の定額です。最大限有効活用するには、介護用品レンタルの知識がないと利用者様に適切なアドバイスができません。
当社では福祉用具専門相談員の資格と、居宅介護・予防住宅改修に特化した「住環境コーディネーター2級」の資格を有する職員が在籍しております。住み慣れたご自宅で安心して生活できるように、全力でサポートすることができます。