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高齢者の寝具はベッドと布団どっちが安心?寝具の選び方と注意点とは
高齢者の寝具選びは安全に起き上がれるかがカギです。ベッドと布団の違い、転倒を防ぐ工夫、介護保険で使える福祉用具まで実用的に解説します。
転倒事故が多い「就寝・起床時」の実態
自宅での転倒事故が起きやすい場所は、居室や玄関・階段です。とくに、就寝・起床時のタイミングは、転倒事故が起きやすい時間帯の1つといえるでしょう。
転倒の原因として多いのが、就寝・起床時の立ち上がり動作です。寝具につまずいたり、バランスを崩したりすることで、骨折やけがなどの事故につながることも少なくありません。
そのため、寝具を選ぶことは使いやすさだけではなく、高齢者の安全性に直結する重要な役割だといえるでしょう。ベッドと布団では、立ち上がりや転倒リスクが異なります。要介護者の身体状況や住宅環境に合った寝具を選ぶことが大切です。
ベッドのメリット・デメリット
ベッドは利便性や安全性の高さから、多くの家庭や施設で使用されています。そのメリットは次の4つです。
- 起き上がり・立ち上がりがしやすい
- 安全性と利便性が高い
- 介護者の負担が少ない
- 布団を片付ける手間がない
介護用ベッドは、ベッドの高さや背もたれの角度の調整機能があり、サイドレールの取り付けができます。そのため、起き上がりや立ち上がり動作の安全性と利便性を兼ね備えた機能が充実しています。
一方でベッドは、次のようなデメリットがあります。
- 転落リスクが高い
- 設置スペースが必要
介護用ベッドは高さがある分、転落した際に骨折やけがをするリスクがあります。また、設置スペースが必要な点もデメリットといえるでしょう。
布団のメリット・デメリット
布団には、次のようなメリットがあります。
- 転落リスクが少ない
- 部屋のスペースを活用できる
布団は床に直接敷くため高さがなく、ベッドのような転落による骨折やけがのリスクがありません。
使わないときは畳んで収納できるため、部屋を広く使えます。とくに和室であれば、畳を傷める心配もなく、空間を有効活用できる点はメリットといえるでしょう。
一方で、布団は次のようなデメリットがあります。
- 膝や腰への負担が大きい
- 転倒リスクが高い
布団は高さがない分、立ち上がる動作はベッドより難しくなります。膝や腰への負担が大きく、介助が必要となると家族の協力が求められます。また、布団に足を取られて転倒するリスクがあり、立ち上がりや歩き出しに注意が必要です。
選び方の判断基準
高齢者の寝具を選ぶ際は、本人の好みや慣れだけでなく、身体の状態や住環境などから判断することが大切です。
とくに重要なのが、下肢筋力やバランス感覚などの身体の状態です。起き上がりや立ち上がりに不安のある方は、身体の状態に調節できる介護ベッドがおすすめです。介護ベッドは手すりを取り付けられるため、体を支えたり立ち上がりの補助も可能です。
一方、布団は毎日上げ下ろしができる自立している方や家族に手伝ってもらえる方におすすめです。布団は部屋の空間を有効に使えますが、本人や家族の身体的負担も考慮する必要があります。ベッドを設置するにはスペースが必要となるため、部屋の広さや生活のしやすさなどを考えて寝具選びをしましょう。
ベッドを選ぶ場合のおすすめ機能
介護ベッド選びは、利用者の安全性と快適性を左右します。適切な機能を選ぶことで、利用者が自立した生活を送れるうえに、介護者の負担も軽減できるでしょう。具体的には、次の機能がおすすめです。
高さ調整・背上げ機能
介護ベッドを選ぶ際には、高さ調整や背上げ機能付きがおすすめです。利用者の体格に合わせて高さを調整できるため、無理なく立ち上がりができます。また、背上げ機能は背もたれの角度を調整できるため、食事やテレビ鑑賞、家族との会話も楽になります。
介護ベッドの高さ調整や背上げの機能は、1モーターから3モーターまでのタイプがあります。日常的に介助が必要な方には、背上げ・脚上げ・高さ調整を個別に操作できるタイプが良いでしょう。
サイドレール・転落防止策
介護ベッドにサイドレールや転落防止策が備わったタイプもおすすめです。サイドレールは、ベッドの両側に取り付けることでベッドからの転落を防ぐだけでなく、寝返りや起き上がりの支えとしても活用できます。夜間にトイレに起きたときも、安心して移動できるでしょう。
しかし、サイドレールを使用しても完全に転落を防ぐことは難しいかもしれません。ベッドサイドの床にマットを敷けば、万が一ベッドから転落してもけがを最小限に抑えられます。
布団を選ぶ場合の注意点と工夫
布団を選ぶ際は、利用者が快適で安全に使えるための注意や工夫が必要です。具体的には、次の2点です。
- 敷布団の厚みと硬さの選び方
- 起き上がり補助の道具
敷布団の厚みと硬さの選び方
敷布団は、利用者の身体への負担を軽減し、快適な睡眠をするために重要です。敷布団には厚みがあり、弾力性があるタイプを選びましょう。
柔らかすぎる敷布団は体が沈み込み、寝返りが打ちにくくなります。そのため、腰痛の原因となることがあり、注意が必要です。
一方、硬い敷布団は体の圧力が分散されにくいため、お尻や肩など骨の出ている部分に床ずれ(褥瘡)が発症しやすくなります。
加えて、敷布団の硬さは寝起きのしやすさにも影響します。敷布団に適度な厚みと硬さがあることで体が沈まず、起き上がる際に手足に力を入れやすくなるでしょう。
起き上がり補助の道具
布団から安全、かつスムーズに起き上がるには、補助道具の活用が有効です。起き上がり補助具にはサイドレールや手すりがあります。
サイドレールは介護ベッドに付けられるタイプが多くみられます。手すりはベッドの下や布団に差し込むだけで使える置き型タイプや天井と床を支えて使える突っ張りタイプがおすすめです。ほかにも、電動で体を起こしてくれるマットレスもあります。
これらの起き上がり補助の道具を活用し、安全に起き上がりできる工夫をすると安心です。
介護保険を利用して介護ベッドや手すりをレンタルできる
介護が必要になった際、介護ベッドや手すりを使用すれば、一人でも安全に寝起きができるため、介護者の負担も軽減します。
介護ベッドや手すりは、介護保険を利用すればレンタルすることが可能です。ここでは、介護保険でレンタルできる介護ベッドと手すりを紹介します。
介護保険でレンタルできるおすすめの介護ベッド
楽匠プラス Hタイプ 3モーション 91cm幅レギュラー/ミニ
楽匠プラスはベッドの傾斜を利用し、起き上がり動作を楽にできる点が特徴です。
サイズ | 幅99.4×長さ201.4(212.4)×高さ61.6~105.1cm |
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背上げ角度 | 0~75度 |
脚上げ角度 | 0~30度 |
価格(非課税) | ・介護保険利用時 負担額:1,100円/月 ・レンタル料:11,000円/月 ・販売価格:520,000円 |
クオラONE 2モーター 91cm幅 レギュラー/ミニ
クオラONE 2モーターは、背上げ単独、背上げ・脚上げの連動が可能な電動ベッドです。体のずれを抑える構造で、起き上がりの動作が楽にできます。
サイズ | 幅99.9×長さ190.7/209.6×高さ65〜100cm |
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背上げ角度 | 0~75度 |
脚上げ角度 | 0~12度 |
価格(非課税) | ・介護保険利用時 負担額:604円/月 ・レンタル料:6,040円/月 ・販売価格:320,000円 |
関連記事:介護ベッドはレンタルと購入どちらがおすすめ?メリットや費用などを解説!
介護保険でレンタルできるおすすめの手すり
ルーツサイドタイプ
ルーツサイドタイプは、布団やベッドの下に差し込むだけで使用できる手すりです。立ち上がり動作や立ち姿勢の保持に適しています。
サイズ | ベースサイズ:幅50×長さ105cm 手すりサイズ:幅33×高さ70~80cm(3段階に調整可能) |
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重量 | 21.6kg |
価格(税込) | ・介護保険利用時 負担額:204円/月 ・レンタル料:2,040円/月 ・販売価格:67,518円 |
ルーツ センタータイプ
ルーツセンタータイプは、ソファやベッドの間に置いて使用できる置き型の手すりです。座位からの立ち上がりをサポートします。
サイズ | ベースサイズ:幅50×長さ60cm 手すりサイズ:幅33×高さ70~80cm(3段階に調整可能) |
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重量 | 12.9kg |
価格(税込) | ・介護保険利用時 負担額:204円/月 ・レンタル料:2,040円/月 ・販売価格:58,322円 |
まとめ
家庭内での転倒は就寝時や起床時に多く、事故を防止するためには寝具選びが大切です。ベッドで寝るか布団で寝るかは、高齢者の身体の機能や住環境、介護者の有無によっても異なります。
介護ベッドにも布団にも、それぞれメリットとデメリットがあります。どちらの寝具を使うとしても、起き上がりや立ち上がりに不安があるときは、補助具の使用を検討しましょう。
介護保険を利用すれば、介護ベッドや手すりのレンタルができます。まずは、市区町村の窓口で相談してみてください。