歩行補助つえとは？

歩行補助つえとは、高齢者や歩行に不安のある方がふらつきや転倒を防ぎ、歩行をサポートするための杖のことです。

歩行補助つえを使う目的

歩行補助つえは、歩行に不安を感じる方が安心して歩けるように作られています。
具体的には、以下のような効果が期待できます。

• 歩く際のふらつきを防ぐ
• 足腰への負担を軽減する
• 歩行によいリズムを生み出す

歩行補助つえを使うことで、歩行への自信がつき、生活に対する意欲も向上します。
そのため、外出の機会が増え、社会活動へ参加するといった効果も期待できるでしょう。

歩行補助つえの特徴

歩行補助つえには、以下のような特徴があります。

• 一本杖や多点杖など、さまざまな種類が存在する
• 種類によってそれぞれ用途が異なる
• 使用する方の状態によって細かく調整できる

歩行補助つえは一本杖だけでなく、地面に当たる部分が複数の足に分かれた多点杖もあります。多点杖は一本杖よりも安定した歩行が可能です。ほかにも椅子や傘と兼用できる特殊杖などがあります。
歩行補助つえは、使う方の状態にあわせて選べる分、試しに使ってみて調整する必要があるでしょう。
歩行をサポートする福祉用具には「歩行器」もあります。歩行器は両手で持つタイプの歩行補助器具で、4つの脚または車輪が付いており、歩行時の体重移動をバランスよく支えます。
歩行補助つえは、歩行が比較的安定している方に適しており、片手で使える点が便利です。
一方で歩行器は、杖だけでは歩行が難しい方に適しています。それぞれの使用者の状態や歩行能力に合わせて、最適な介護用品を選ぶことが大切です。

歩行補助つえの使い方

歩行補助つえは、杖の中心のシャフトを人差し指と中指で挟む形で握ります。

片麻痺といった、身体の一部に制限がある方は、反対側の手で持つことが基本です。
また、杖の高さは真っすぐ立った状態で杖を握り、肘が軽く曲がる程度が適切です。
杖を使用する際は、両脚と杖の3点で歩くのが最も安定します。ただし、介護者のサポートが必要な場合もあるため、福祉用具専門相談員やケアマネジャーに相談しましょう。

歩行補助つえの種類

歩行補助具には、歩行補助つえや歩行器、歩行車などがあります。次の表は、それぞれの種類や特徴をまとめたものです。

歩行補助つえの種類には、以下のようなものがあります。

• 一本杖
• 多点杖
• 特殊杖

また杖だけでは歩行が不安定な方に向けて、以下のような歩行補助具もあります。

• 歩行器
• 歩行車

以下では、種類ごとにおすすめの歩行補助つえを紹介します。

歩行補助つえの商品選びに迷ったら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

かるがもファムⅡ 伸縮 (1本杖)

一本杖は最もスタンダードなタイプで、シャフトにT字型のグリップが付いていることから、T字杖とも言われています。

そのほかの特徴は、以下のとおりです。

• 色やデザインの種類が豊富
• 軽量でシンプルな設計
• 折り畳みや伸縮が可能

一本杖は、杖がなくても自力で歩ける方をサポートするもので、自力歩行ができない方や、手に痛みがある方などは使用が難しいといえます。

「かるがもファムⅡ 伸縮」は、小ぶりなグリップ設計の歩行補助つえで、女性でも使いやすい点が特徴です。カラーバリエーションが豊富で、日常使いに適しています。

アルミ製四点杖 (多点杖)

多点杖は、地面と設置する杖の先が、3〜4点になっているタイプで、一本杖よりも安定感があります。

そのほかの特徴は、以下のとおりです。

• 体重をかけても倒れにくい
• 背骨が曲がっているなど姿勢が悪い方に適している
• 段差の多い場所には向いていない

多点杖は地面に付く部分が複数あるため、平らな場所以外では転倒のリスクがあることを理解しておきましょう。

「アルミ製四点杖 」は、一本杖よりも不安定な歩行をサポートする設計です。4つの脚でしっかりと支え、軽量でありながら安定感があります。ベース部分がコンパクトで、10段階の高さ調整ができる点が特徴です。

ロフストランドクラッチ (特殊杖)

特殊杖は、ロフストランド杖や松葉杖などがあり、体重を乗せやすい設計です。

そのほかの特徴は、以下のとおりです。

• 手と肘で支えることで安定する（ロフストランド杖）
• 握力が弱くても安心して使える（ロフストランド杖）
• 脇に挟んで使用することで安定する（松葉杖）
• 1本または2本で使用する（松葉杖）

松葉づえは、骨折といったケガだけでなく、下半身のまひや股関節症などの方にも適しています。
使用者の身体の状態にあわせて選ぶといいでしょう。
「ロフストランドクラッチ」はO型カフを採用した杖で、握力の弱い方や手首に力が入りにくい方に適しています。カフとグリップで体重を支えるため、T字杖よりも安定した歩行が可能です。

MgウォーカーⅣ型 M (歩行器)

歩行器は、4脚のフレーム構造でできている歩行補助製品のことです。

そのほかの特徴は、以下のとおりです。

• 支持基底面積（体重を支えるために必要な床面積）が広く安定性が高い
• 下半身への負担が杖よりも軽い
• 4脚の先にゴムが付いており滑りにくい

歩行器の使い方は、歩行器を持ち上げ前方に置き、体重を歩行器にかけながら足を踏み出します。
持ち上げる動作があるため、上半身の機能がある程度維持できる方が対象です。
「MgウォーカーⅣ型 M」は、マグネシウム合金製で軽量な歩行器です。重さはわずか1.5kgのため、歩行器を持ち上げる力が少ない方にも便利です。サイズ調整が可能で、利用者に合わせて適切な高さに調節できる点が特徴です。

ジェミノ M スローダウンブレーキ付き(歩行車)

歩行車は、4つの車輪が付いており、前輪は360度回転可能な自在輪で、後輪は固定されています。

そのほかの特徴は、以下のとおりです。

• サークル型や四輪歩行などのタイプがある
• 荷物入れや座るための台が付属しているタイプがある
• 車輪が付いているため進みすぎないよう注意が必要である

サークル型は、腕や肘をアーム部分に乗せて、体重をかけて使えるタイプです。
四輪歩行車はブレーキ付きで幅が広く、タイヤが4つあります。体重をかけられるだけでなく、歩行車に座ることもできるタイプです。
「ジェミノM」は、降臨タイヤに抵抗をかけて速度調整ができる歩行車です。握りやすく滑りにくい押手ハンドルや自立可能な折りたたみ機能も備えており、収納にも便利な点が特徴です。

歩行車と似たような用具としてシルバーカーがありますが、歩行車とシルバーカーはそれぞれ以下のように定義されています。

• 歩行車：自立して歩行できない方が対象で体重をかけて使用する
• シルバーカー：自立して歩行できる人が対象で荷物を運ぶ際や休憩の椅子代わりに使用する

ほかにどのような歩行支援用具があるのか知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事：歩行支援とは｜症状別に介護用品の選び方やおすすめ商品を紹介
関連記事：歩行器の選び方とは？種類や介護保険を利用したレンタルも紹介

お身体に合った歩行補助つえ・歩行器を選定します。どうぞお気軽にお問い合わせください。

歩行補助つえを利用するメリット

歩行補助つえを利用するメリットについて紹介します。

内容は、以下の3つです。

• 足裏にかかる負担を減らせる
• 安定して歩行できる
• 安全な歩行が実現する

それでは、1つずつ解説します。

足腰にかかる負担を減らせる

歩行補助つえを利用する最大のメリットは、足腰への負担が軽減できる点です。
杖や歩行器を使うことで、足にかかる体重を支える負担を分散でき、安定した歩行が可能になります。

高齢者の場合、足腰への負担が膝や腰の痛みにもつながることもあり、食欲低下など日常生活に対する意欲の低下を引き起こします。
歩行補助つえを使用することで足腰への負担を減らし歩く機会を増やすことで、生活全般の意欲向上に効果的といえるでしょう。

安定して歩行できる

2つ目のメリットは、安定して歩行できることです。
足腰への負担軽減と同様に歩行補助つえや歩行器の使用により、地面に接する箇所を増やせるため、安定した歩行ができます。
また、高齢者の場合は、以下のような原因で歩行が不安定になる傾向です。

• 筋力の衰え
• バランス機能の低下
• 足腰の痛みやまひなど

歩行補助つえは、不安定な歩行の原因をサポートし、リズムよく歩けるようにします。
リズムよく歩けることは、歩行時のストレス軽減にもつながり、精神的な安定ももたらすでしょう。

安全な歩行が実現する

3つ目のメリットは、安全な歩行の実現です。
歩行補助つえを使用することで足腰への負担を減らし、安定した歩行ができます。歩行補助つえを使っていれば、つまずきや段差での転倒を防げるでしょう。

利用者本人も、歩行補助つえの安全性を感じられれば、歩くことへの意欲向上にもつながります。
利用者の歩行に対する安心感は、歩行時のストレスを減らすため、歩行補助つえの役割の1つといえるでしょう。

歩行補助つえを使う際の注意点

歩行補助つえは便利ですが、使い方を間違えるとけがなどにつながります。

ここでは、歩行杖を使う際の注意点を2つ紹介します。

• 杖のメンテナンスを欠かさない
• 正しい歩き方を意識する

どちらも大切なことなので、使う前に必ず確認しておきましょう。

杖のメンテナンスを欠かさない

歩行補助つえは、定期的なメンテナンスが必要です。介護保険を使って歩行補助つえをレンタルした場合、定期的な点検を実施します。

おもに、以下のような箇所を点検します。

• 杖の先のゴムが破損していないか
• 杖の関節部分は問題なく固定されているか
• ネジが緩んでいないか
• キャスターの動きは正常か（歩行車の場合）
• ブレーキは問題なく使えるか（歩行車の場合）など

点検後は必要に応じて、ゴムの交換やネジの締め直しなどを行います。万が一、自力で修理することが難しい場合は、業者に依頼することも検討してください。

正しい歩き方を意識する

歩行補助つえを使う際には、正しい歩き方を意識することが大切です。間違った歩き方をすると、逆に足腰への負担が増え、転倒のリスクが高まります。
例えば、一点杖を使う場合の正しい歩き方は、次のとおりです。

1. 健側の手（健康な手）で杖を持つ
2. 歩く際は、杖を前に出す
3. 次に患側（まひや痛みがある）の足を出す
4. 反対の足を前に出しそろえる

そのほかにも、歩く場所がぬれていたり、杖の先がくぼみに挟まったりする危険性も考えられます。
正しい歩き方を意識するとともに、周囲の安全面も確認してから歩行しましょう。

歩行補助つえを選ぶポイント

歩行補助つえを選ぶ際のポイントを紹介します。
具体的には、以下の2つです。

• 身体の状態・大きさにあった杖を選ぶ
• 使う場所にあった杖を選ぶ

前述した正しい歩き方を心がけ、利用者本人の状態にあった歩行補助つえを選ぶことで、安全かつ安心できる歩行ができるでしょう。

身体の状態・大きさにあった杖を選ぶ

歩行補助つえを選ぶ際は、利用者の足腰の状態や左右のバランスを考慮しましょう。
利用者の体格に合わない杖は、かえって足腰を痛める原因になります。特に、杖の長さは重要なポイントで、長すぎても短すぎても適切ではありません。

歩行補助つえの高さの目安は、まっすぐ立った状態で杖を持ち、杖が地面についたときに肘が軽く曲がる程度です。

歩行補助つえを使用する際は、自分だけで判断せず、事前に福祉用具専門相談員に相談しましょう。

使う場所にあった杖を選ぶ

歩行補助つえは、使う場所によって適切な種類が異なります。

例えば、外出先で使う場合は持ち運びしやすい折りたたみ式や長時間使っても疲れない軽量型の歩行補助つえが便利です。
段差の多い場所では多点杖よりも一点杖の方が使いやすいため、それぞれの場所に合った歩行補助つえを選ぶようにしましょう。歩行補助つえの使う場所についても、専門家の意見を参考にすることがおすすめです。

歩行補助つえの使い方

歩行補助つえは、バランスを保ち、歩行をサポートするための道具です。歩行補助つえの種類や体の状態に合わせて適切な杖を選び、正しく使うことが大切です。

• 一本杖
• 多点杖
• 特殊杖

歩行補助つえは、適切な使い方をすることで、安全かつ安定した歩行をサポートします。次から、それぞれの杖の使い方を解説します。

一本杖

一本杖は、最も一般的な杖です。片手で使うタイプの杖で、比較的軽量で扱いやすい点が特徴です。使用する際は、まひや痛みのある足と反対側の手で杖を持ち、人差し指と中指の間にシャフトを挟んで握ります。歩行時は杖を前に出してから、痛みのある足を一歩踏み出します。次に、反対側の足を出して杖と足を合わせ、この動作を繰り返して歩行します。杖を前に出す時は、つま先から15cm〜20cmが良いでしょう。姿勢が悪くなったり杖を自分で蹴ったりしないように注意が必要です。

多点杖

多点杖は4点杖や3点杖など、複数の足を持つタイプの杖です。複数の足があるため、一本杖よりも安定感があります。多点杖も一本杖と同様の使い方ができますが、上から体重をかけるように動かすと歩きやすいでしょう。そのため、多点杖は、足の力の弱い方や姿勢が安定しない方でも使いやすい杖だといえます。ただし、多点杖は先が分かれているため、段差のある場所での使用は転倒に注意が必要です。自宅や病院などの平坦な場所で使用することがおすすめです。

特殊杖

特殊杖は、目的や症状に合わせて作られた杖です。例えば、ロフストランドクラッチのような前腕を支えるカフがついているものや、松葉杖のような肩や腕で体重が支えられる杖です。ロフストランドクラッチはカフに腕を通し、手のひら全体でシャフトを握ります。歩行方法は、一本杖や多点杖と同じです。松葉杖は、両手でグリップを握り、脇の下で支えます。歩行時は、両側の松葉杖を同時に出し、重心を松葉杖にかけて、痛みのある足を動かすと良いでしょう。

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まとめ

歩行補助つえは、高齢者や歩行に不安がある方にとって、安全で安心した歩行をサポートする福祉用具の1つです。種類には一本杖や多点杖・特殊杖があり、利用者の身体の機能や使用場所に応じて最適な杖を選びましょう。
歩行補助つえは正しい使い方をすることで、安定かつ安心して歩けるようになります。歩行や足腰の負担で不安がある方は、一度専門家に相談してみてください。

ライター

津島 武志

介護系WEBライター

介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、介護系のWEBメディアでライターとしての活動や、介護士さん応援メディア（介護士さんの働き方改革）の運営、SNS（@takeblog23）で介護職の働き方についての情報発信などをしています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。