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介護保険で杖のレンタル・購入を選べる!介護保険制度の改定内容を解説
要介護または要支援認定を受けた方が自立した生活を送るために、福祉用具を介護保険レンタルすることで利用者の費用負担を軽減できます。
さらに、2024年度介護保険制度改定により介護保険を利用して杖など福祉用具の購入も可能となり、利用者がレンタルまたは購入を選択できるようになりました。
この記事では、2024年度介護保険制度改定内容の概要や杖のレンタル・購入選択制に伴うおすすめな選び方を解説します。
杖のレンタルや購入でお悩みの方は、ぜひご一読ください。
2024年度介護保険制度改定で杖のレンタル・購入を選べるようになった
2024年度介護保険制度改定で杖といった一部の福祉用具でレンタルまたは購入を利用者が選べるようになりました。
なお、介護保険を利用して購入できる杖は、ロフストランド・クラッチ等のクラッチ系の単点杖と多点杖に限られます。
改定前の介護保険制度では、福祉用具は利用者の身体状態に合わせて福祉用具をレンタルし、必要に応じて都度変更していく方法で利用していました。
しかし、今回の改定では杖など一部の福祉用具を自己負担1~3割で購入可能になり、利用者の自己負担も軽減できることがポイントです。
利用者が福祉用具を利用する期間が長期化した場合、レンタルより購入した方が自己負担額が少なくなるケースが多い傾向にありました。
2024年度介護保険制度改定では、利用者が杖などの福祉用具をレンタルまたは購入を選択することで、利用者の負担軽減や介護給付の抑制を図っています。
杖はレンタル・購入どちらが安い?
杖は比較的低価格で、購入後も故障する可能性が低く、メンテナンス費用もかからない福祉用具のため、使用期間によっては合計のレンタル料が購入金額より高くなるケースもあります。
杖をレンタルし、購入金額と比較した場合の例を紹介します。
単点杖の場合(平均利用月数:14.6月、ロフストランドクラッチS使用)
※1割負担の場合
介護保険を利用してレンタル:132円/月
介護保険を利用して購入:1,030円
で計算すると、1,030円÷132円/月=7.8か月となり、約8か月で合計レンタル料が販売価格を上回ります。
多点杖の場合(平均利用月数:14.3月、Day’s3点支持杖(小)使用)
※1割負担の場合
介護保険を利用してレンタル:152円/月
介護保険を利用して購入:1,520円
で計算すると、1,520円÷152円/月=10か月となり、10か月で合計レンタル料が販売価格を上回ります。
参考となる利用月数はあくまで平均値のため、利用者の状況によってレンタルまたは購入を検討する必要があるでしょう。
杖はレンタル・購入どちらがおすすめ?
介護保険制度改定により、杖はレンタル・購入の選択制となりましたが、実際の所、レンタルと購入のどちらがおすすめなのでしょうか。
購入の課題は2つあります。
- 杖を使用する期間が想定できない
- 利用者の身体状態の変化やメンテナンスに即対応できず、買い替えが必要になる
また、レンタルまたは購入を選択する場合、福祉用具相談員やケアマネジャーに相談し、費用面も考慮し、適切な杖を使用することになります。
続いて、杖のレンタルまたは購入がおすすめなケースを見てみましょう。
レンタルがおすすめな人
レンタルがおすすめな人のタイプは次のとおりです。
- 福祉用具の出費を一時的でも抑えたい
- 使用期間が比較的短い
- 使用する必要がなくなればレンタルを解約できるなど気軽に使いたい
- 身体状態に変化があった際のアフターフォローを手厚く受けたい
- メンテナンスを定期的に受けたい
購入がおすすめな人
購入がおすすめな人のタイプは次のとおりです。
- 使用期間が比較的長い
- 中古品の使用に抵抗がある
- 傷や汚れを気にせずに使いたい
- メンテナンスを気にせず、定期的に新品に買い替えても良い
杖をレンタルするメリット
杖をレンタルするメリットは次のとおりです。
- 月々の出費を抑えられる
- お試し期間があるため、商品選びに失敗しない
- 使用して自分に合わなければ変更できる
- 修理やメンテナンスに対応している
- 使用場所など必要に応じて複数をレンタル、使い分けができる
- 使用する必要がなくなれば返却できる
杖をレンタルするデメリット
杖をレンタルするデメリットは次のとおりです。
- 使用期間が長くなれば、購入した方が安くなることもある
- 新品は基本的に使えず、中古品を使うことになる
- 選択できる種類が限られる
- 汚れや傷がつけば、修理費用を求められる場合もある
杖を購入するメリット
杖を購入するメリットは、次のとおりです。
- 新品を使える
- 使用後の傷など気にせず、気兼ねなく使える
- メーカーや色合いなどこだわって使える
- 使用期間によっては、レンタルよりも費用が安くなる可能性がある
- 修理など補償する必要がない
- 外出時などでも積極的に使おうとする意欲が出る
杖を購入するデメリット
杖を購入するデメリットは次のとおりです。
- 一時的に高額な出費が発生する
- 使用感が合わなくても返品できない
- 修理やメンテナンスは実費になる
- 破損して使えない場合、再度購入しなければならない
- 利用者の身体状態によっては買い替えが必要になり、出費が増える
- 消耗部品の交換に即対応できない
杖のおすすめ商品
杖にはさまざまな種類があるため、利用者の身体状態によっておすすめの商品は変わります。
杖の種類
- 単点型:杖の先端が1点でシンプルな形状となっているため、自力で歩ける人向けです。
- 多点型:杖の先端が3つまたは4つあるため、歩行時に安定性を求める人向けです。
- ロフストランド型:腕全体で身体を支えるため、握力が弱いまたは麻痺のある人向けです。
- 肘支持型:肘全体で身体を支えるため、リウマチなど手首や肘を自由に伸ばせない人向けです。
杖は足腰の負担を減らし歩きやすくするための福祉用具であるため、利用者の身体状態に合った形状を使用しましょう。
介護保険を利用してレンタル・購入できる杖
介護保険を利用してレンタル・購入できる杖を多点型、ロフストランド型に分けて紹介します。
多点型
四点で支える支柱が前後に動くため、路面に接地しやすい杖です。
平地はもちろんのこと、坂道でも安定した歩行ができます。
こちらの商品は介護保険を利用して購入することもできます。
長さ | 長さ 62.5~88cm(11段階)/ベース:幅10×長さ11cm |
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重量 | 440g |
四点式よりもコンパクトで歩行時の妨げを防ぐ杖です。
またプッシュボタン式伸縮型のため、身長や体調に合わせて杖の長さを変えられます。
こちらの商品は介護保険を利用して購入することもできます。
長さ | 67~92.5cm(約2.55cm間隔11段階) |
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重量 | 650g |
ベース | 幅16×長さ12cm |
ロフストランド型
カフとグリップで支えるため、安定した歩行が可能です。
体重を分散する形状のため、握力や弱いまたは手首に力が入りにくい人向けです。
サイズ | 長さ:70~103cm グリップの高さ:52~77cm カフの内径:7cm |
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重量 | 510g |
まとめ
2024年度介護保険制度改定により、福祉用具の杖はレンタル・購入の選択が可能になりました。
しかし、介護用杖のレンタルや購入は、利用者の生活スタイルやメリット・デメリットを考慮して選ぶ必要があります。
選択制となったことで介護保険の利便性が増える一方で、利用者にとって損得勘定も考慮する必要があります。
福祉用具を利用の際には、レンタルまたは購入のメリット・デメリットを知ったうえで、福祉用具専門相談員やケアマネジャーともよく相談し決めていくことが大切です。