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入浴介助とは|手順や注意点、おすすめの介護用品を紹介
「入浴介助が大変」「体力的にきつい」など、入浴介助にお困りの方もいるのではないでしょうか。
入浴時はすべったり溺れたりする危険性があるほか、体調不良による急変などの危険性も高くなります。そのため、安全な入浴介助の方法を知っておくことが、けがや事故を防ぐうえで非常に大切です。
本記事では入浴介助が安全でスムーズに行えるできるように、手順や注意点、おすすめの介護用品などを紹介します。
入浴介助とは
入浴介助とは、一人で入浴ができない方に対して、体を洗ったり着替えを手伝ったりするなど、入浴の一連の動作をサポートすることです。
入浴介助の目的は、主に以下の3つです。
- 体を清潔に保つ
- 床ずれや感染症を防ぐ
- 爽快感によりリラックスする
また、以下4種類の入浴方法があります。
- 一般浴
- シャワー浴
- 中間浴
- 機械浴
中間浴はリフト浴とも呼ばれ、座位を保てる方がリフトに座ることで安全に入浴できる方法です。
機械浴は、寝たきりでも横になった状態で入浴できます。
このようにさまざまな方法で、介助を受ける方が安全に入浴できるよう介助することが大切です。
さまざまな入浴方法があるため、介助を受ける方の体の状態に応じて適切な方法を選択することが大切です。
入浴介助前に確認すべきポイント5つ
入浴介助前に確認すべきポイントは、以下の5つです。
- 適切な入浴方法を把握する
- 体調を確認する
- 浴室と脱衣所を温めておく
- 入浴前に十分な水分補給を行う
- 皮膚状態を確認する
入浴介助は事故の危険性が高いため、介助前の準備が非常に重要です。
1.適切な入浴方法を把握する
適切な入浴方法は、介助を受ける方の介護度や好みなどによって異なります。
たとえば歩行に不安がある方は、シャワーキャリー(入浴用車いす)の利用がおすすめです。
また、お湯の温度や体を洗う順番なども、人によってこだわりがあります。
一人ひとりにあった適切な入浴方法が、疲労回復やリフレッシュ効果などをより高めてくれます。
逆に不適切な入浴方法は、事故の危険性やかえって疲れてしまう可能性があることを理解しておきましょう。
2.体調を確認する
入浴介助前には、介助を受ける方の体調を確認しましょう。
なぜなら、体調が悪い状態で入浴すると、容体が急変する可能性があるからです。
たとえば、発熱や下痢などによって脱水傾向にある方が入浴すると、さらに体内の水分が失われ、めまいを起こしたり意識消失を起こしたりする危険性があります。
そのため、風邪をひいている場合は入浴を中止して清拭に変更したり、血圧が普段より高い場合はシャワー浴にしたりするなど検討しましょう。
体調確認のチェックポイントは、以下のような点です。
- バイタルサインに普段と大きな違いはないか
- つらそうな表情をしていないか
- 睡眠は十分にとれているか
- 食事や水分の量は十分か
- 普段と違う言動はないか
体調不良時の入浴判断に悩まないように、事前に主治医や看護師などに相談しておくことも大切です。
3.浴室と脱衣所を温めておく
浴室と脱衣所をあらかじめ温めておくことで、ヒートショックを予防できます。
ヒートショックは、急激な温度差で血圧が上下し、心臓や血管に負担がかかる症状です。最悪の場合、命の危険がともないます。
ヒートショックをはじめとした入浴時の死亡者数は、交通事故死者数の2倍といわれており、死因の中でも身近なものと考えられます。
とくに高血圧の場合は急激な温度変化による血圧変動が大きく、心臓に大きな負担がかかるため、浴室と脱衣所の温度差を小さくすることが大変重要です。
出典:政府広報オンライン「交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」
ヒートショックについてはこちらをご覧ください。
関連記事:ヒートショックとは|症状や入浴時、トイレ時の対策を分かりやすく解説
4.入浴前に十分な水分補給を行う
入浴前には、必ず十分な水分補給を行いましょう。
体内の水分が不足すると血液がドロドロになり、循環不全を引き起こして脳梗塞や心筋梗塞などが起こりやすくなります。
水分補給するタイミングの目安は、水分が体内に行き渡るまで時間がかかることを考慮し、
入浴の15〜30分前がよいでしょう。
入浴中の急変につながらないように、普段から水分をとる習慣をつけることが大切です。
5.皮膚状態を確認する
入浴介助は全身観察できる数少ない機会であるため、皮膚の状態をしっかり確認しましょう。
とくに寝たきりの人の場合は、仙骨部(お尻)や太ももの外側などにある骨の突出した部分に褥瘡ができやすいため、注意深い観察が大切です。
皮膚の乾燥や湿疹などあれば、皮膚科に相談して軟こうを処方してもらいましょう。
また皮膚の状態を観察することで、普段の介助方法を見直すきっかけにもなります。
たとえば褥瘡があるなら、排泄や体位交換が適切に行えていないかもしれません。あざや内出血は、介助者が介助の際につかんだり、どこかにぶつけたりしている可能性も考えられます。
可能であれば入浴介助のたびに全身の状態を記録し、いつ皮膚に変化が起きたかわかるようにしておくのがおすすめです。
入浴介助時に必要なもの
入浴介助時に必要なものと使用用途は以下のとおりです。
必要物品 | 使用用途 |
---|---|
フェイスタオル | 顔や髪の毛を拭くため(体を洗う場合もある) |
バスタオル | 体を拭く、着替える際に体にかけるため |
転倒防止マット | 浴室や浴槽に設置し、転倒を防止するため |
シャワーキャリー | 歩けない方が乗ったまま体を洗うため |
保湿剤や軟こう | 乾燥や湿疹のある方に塗って皮膚トラブルに対処するため |
オムツやパッド | 入浴後すぐに清潔な下着を身に付けるため |
着替え | 清潔な衣服へ着替えるため |
ゴム製のサンダル | 浴室内で滑らないため |
防水エプロン | 介助者が濡れないため |
手袋 | 排せつ物や感染症に対応するため |
すのこ | 浴室の段差解消や浴槽の深さを調節するため |
これら以外にも、介助を受ける方の状態によって必要なものが異なります。事前に確認してから入浴介助を始めましょう。
入浴介助の手順
入浴介助は以下の手順で行います。
入浴前
まずは介助を受ける方の疾患や必要な介助の内容、バイタルサインなどの体調確認をしましょう。
とくに問題がなければ入浴可能です。
浴室は寒くなりすぎないように暖房を使うなどして温度調整し、ヒートショック対策をしましょう。
あわせて、入浴後には冷えないように、着替えやタオルを準備しておきます。
転倒防止のために、床の滑りやすさも確認しておきましょう。
準備ができたら、入浴の声かけと浴室までの誘導をします。
とくに認知症の方の場合、入浴を拒否する方もいるため、事前に声をかけて気持ちの準備をしておくことが大切です。
浴室までの移動は、手を引いて歩いたり車椅子を使用したりして、安全性に配慮しましょう。
入浴中
必要に応じて洗身や洗髪を介助します。
背中や腰など手の届きにくいところや、足元などのバランスを崩しやすいところは、介助するとよいでしょう。
また、入浴中も入浴前と同様に体調を確認しておきます。
皮膚に傷やあざがないか、褥瘡はできていないかなどもみておきましょう。
いつ体調不良が起きても対応できるように、近くで見守ることが大切です。
入浴後
入浴後はタオルでしっかりと全身の水気をとり、冷えないようにしましょう。
バスタオルでくるんで脱衣所へ移動したら、必要に応じて保湿剤や軟こうを塗布します。
乾燥肌やアトピー性皮膚炎の方などは、念入りに保湿剤を塗りましょう。
保湿が済んだら、身体が冷えないうちに速やかに着替え、脱水症状を起こさないように水分補給をします。
再度体調を確認し、入浴後の不調を見逃さないようにしましょう。
また以下の点を意識すると入浴介助がスムーズに行えます。
- あらかじめお湯を出して浴室を温めておく
- 入浴介助に使う道具を手の届く範囲に置く
- こまめに片付けながら介助する
- 介助を受ける方ができることは可能な限りやっていただく
- 必要な場合はほかの人の手も借りる(家族や介護職員など)
事前準備をしっかり行うことで介助者と介助を受ける方の負担を軽くできるため、ぜひ参考にしてみてください。
入浴介助における注意点
入浴介助には、以下のような注意点があります。
- プライバシーに配慮する
- できることは自分でやってもらう
- シャワーのお湯を直接当てない
それぞれ詳しく解説します。
プライバシーに配慮する
入浴介助では、介助を受ける方は裸になりますが、介助者は服を着ています。そのため、介助者が思っている以上に介助を受ける方は恥ずかしさを感じます。
プライバシー保護の観点から入浴介助の際は以下の点に注意しましょう。
- カーテンやドアは必ず閉める
- 服の着脱の際はタオルで肌を隠しながら行う
- 声かけしながら一つひとつの介助を丁寧に行う
- 入浴後は速やかに体を拭いて服を着られるように手伝う
- 可能であれば同性が介助する
できるだけ裸になる時間を短くすることがポイントです。
できることは自分でやってもらう
プライバシーに配慮して素早く行うことは大切ですが、介助を受ける方ができることを奪いすぎないことが重要です。
なぜなら、自分で行うことがリハビリとなり、生活機能の維持につながるからです。
たとえば、以下のような行為は、介助を受ける方にできるだけやってもらいましょう。
- 手の届く場所は自分で洗ってもらう
- 手の届く場所は自分で拭いてもらう
- 時間がかかっても自分で服を着てもらう
ただし、必ずしも手伝ってはいけないわけではありません。
疲労感やその日の体調などを見ながら、必要に応じて介助の手を差し伸べましょう。
シャワーのお湯を直接当てない
介助を受ける方は、寝たきりや老化などによって皮膚が弱っている場合があります。
そのため、直接シャワーのお湯を肌にあてないようにしましょう。
急にお湯がかかると驚くだけでなく、水圧によって肌が傷つく恐れもあるからです。
そのため、シャワーを使う際には介助者の手を介してお湯をかけましょう。
手を介することで、水温を確かめつつ水圧を弱められ、安全にシャワー浴が行えます。
はじめは違和感がありますが、意識して続けていくと自然にできるようになります。
入浴介助を嫌がる理由を知っておこう
入浴介助で課題に挙がるのが、介助を受ける方の入浴拒否です。
入浴を嫌がる場合、以下のような理由が考えられます。
- 入浴することを理解できていない
- 脱衣に抵抗がある
- 体調がすぐれない
入浴を嫌がられても対応できるように、参考にしてください。
入浴することを理解できていない
認知症の症状により、入浴することを理解できないことが考えられます。
前回の入浴日を覚えていないことや、入浴はすでに済んでいるという思い込みなどがよくある事例です。
こういった場合、まずは丁寧に状況を説明し、これから入浴することを伝えましょう。
認知症があるからといって、説明が不要だととらえてはいけません。
理解できるように、何度も説明しましょう。
それでも断られるときは、時間を変えたり声をかける人を変えたりすることが大切です。
脱衣に抵抗がある
服を脱いで裸になることへの抵抗感から、入浴介助を嫌がられている可能性があります。
裸を見られることに抵抗があるのは人間誰しもあるため、その気持ちを理解しましょう。
また、服を脱ぐと盗られてしまうという不安を感じている場合もあります。
このように脱衣に抵抗がある方に対しては、介助者は介助を受ける方の味方であり「スムーズに入浴できるように手伝います」という意思表示が必要です。
どうしても嫌がる場合は無理せず、時間を空けたり翌日に振り替えたりして、臨機応変に対応しましょう。
体調がすぐれない
体調がすぐれないと入浴する気は起きません。
しかし、認知症や加齢によって体調不良をうまく伝えられない方もいます。
介助を受ける方の体調を見極めるためには、以下の点を参考にしてください。
- 落ち着きがない
- イライラしている
- 表情が険しい
- 普段できることができない
- テーブルに伏せたり横になったりすることが多い
体調がすぐれないかどうかを見極め、必要に応じて代替手段を用いて入浴したり、時間や日をあらためたりして対応しましょう。
入浴時に介護用品を使うメリット
介護用品を使うと、スムーズに入浴できます。
入浴用の介護用品を使うメリットは、以下のとおりです。
- 事故を防ぎ安全に入浴できる
- 浴槽に負担なく入れる
- 介助者の負担が軽くなる
- 浴槽の深さを調節できる
- 立ち座りが楽になる
ヤマシタではさまざまな入浴用の介護用品を取り扱っております。
介護保険を利用すれば、10万円を上限に購入費の1~3割の自己負担で購入できるので、お気軽にお問い合わせください。
営業所は安心の365日体制。
お客様のご相談、ご要望にスピーディーに対応します。
メールは365日24時間受付
受付時間 9:00~18:00
一人で入浴する際におすすめの入浴用具
バスボード
浴槽のまたぎが不安な方におすすめです。ボードの上に腰掛けてから浴槽内に足を入れられるため、ゆっくりと安全に入浴できます。
シャワーチェア
浴室での立ち座りが楽になる福祉用具・介護用品です。肘掛けが跳ね上がったり座面が回転したりするタイプもあり、用途に応じて選べます。折りたたみができるタイプはコンパクトにして収納も可能です。
浴槽内いす
浴槽が深くてまたぎが大変な際に使用します。そのまま浴槽内で腰掛けることで、立ち座りも楽になります。
浴槽用手すり
浴槽の縁に取り付ける手すりです。浴槽内で姿勢が不安定な方は内グリップが付いたタイプをおすすめします。
商品選びに迷ったら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
営業所は安心の365日体制。
お客様のご相談、ご要望にスピーディーに対応します。
メールは365日24時間受付
受付時間 9:00~18:00
介助されて入浴する際におすすめの入浴用具
座面シートが昇降するリフト
浴槽に設置するタイプの入浴用リフトです。シート部分が昇降するため、浴槽内の立ち座り動作が楽になり、浴槽への出入りが安全にできるようになります。
つり具が必要なリフト
介護保険で利用できる入浴用リフトは、床や壁にネジや釘を使用しないので、自宅へ簡単に設置できます。
シャワーキャリー
居室で服を脱いでから浴室に移動し、そのままシャワーを浴びられる福祉用具・介護用品です。シャワーキャリーを使えば、浴室での車いすからの乗り換えが不要になるため、介助負担が軽減されます。
入浴用介助ベルト
持ち手のついたベルトを介助を受ける方に装着することで、立ち上がりや移動の介助が楽になります。
簡易浴槽
浴室まで移動するのが難しい場合は、お部屋の中で入浴できる簡易浴槽という福祉用具・介護用品もあります。
商品選びに迷ったら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
入浴介助は介助者にとって負担が大きいだけでなく、介助を受ける方にとっても事故や急変などのリスクがあります。
そのため、正しい手順や注意点を理解したうえで介助しましょう。
また入浴用の介護用品を使うことで、安全で負担のない介助ができます。
ぜひ本記事で紹介した介護用品を使い、安全に入浴介助をしてください。
津島武志
介護福祉士
介護業界17年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、各種メディアでWebライターとしても活動しています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。