現場から生まれる科学的介護 包括の健康教室で歩行分析 高リスク者の発見にも
キャッチーさが地域住民の参加意欲に
調布市地域包括支援センターときわぎ国領(運営=社会福祉法人常磐会)は今年4〜5月にかけて、3カ所で地域住民を対象とした体力測定会を開催した。計76人が参加する盛況ぶりだったが、特に好評だったのがヤマシタ調布営業所の協力で行ったAI歩行解析。同社が全営業所で導入しているAI「CareWiz(ケアウィズ)トルト」を活用した。
「長く続くコロナ禍で、地域高齢者の体力低下やフレイルが懸念されています。リスクが高まっている人の早期把握、早期対応に繋げたいという思いから、感染対策を徹底しての実施を決めました」と同センターで社会福祉士の小嶋泰之さんは振り返る。
地域高齢者とのコンタクトを増やすためには、多くの人に参加してもらう必要がある。「どうしたら足を運んでもらえるかと悩んでいる時に、古川さんからトルトを使った歩行解析の話を聞きました」。
ヤマシタ調布営業所の古川瞭美さんから紹介を受け、小嶋さんは早速トルトを体験。スマホで5mの歩行動画を撮影すると、2分ほどでAIが解析結果をフィードバックしてくれる。
「その場で結果もプリントアウトしてもらえて、我々がやりたいことととてもマッチしていると思いました。そこで古川さんにお願いして、健康教室で歩行分析を実施することにしたのです」(小嶋さん)。
歩行をAIが点数化してくれるというキャッチーさが参加意欲に繋がると考えた。
要支援認定、サービス利用に繋がった人も
健康教室は全3会場で76人が参加。想定していた以上の盛況ぶりだったという。同社以外に、調布市社協、調布市薬剤師会の協力も得て、血管年齢や骨密度の測定、服薬相談、栄養相談などのプログラムを用意した参加者はさまざまな測定を受けて、同センター職員の保健師・大関朱音さんが相談やアドバイスを行う。
測定するだけでなく、結果を踏まえた保健師のフィードバックを受けられるのが特長だ。
「トルトの点数が低い人に、詳しく話を聞いてみるとやはり日頃から転倒されていたり、足に痛みを感じていたりしました」と大関さんは説明する。
リスクが特に高く、継続的な支援や関わりに繋がった人も2人いた。そのうち1人は、要支援認定を受けて居宅介護支援事業所のケアマネジャーに引き継ぐこととなった。今は杖利用のほか、予防の訪問リハ、訪問看護などのサービスを受けているという。
健康教室の開催から、日常生活に困りごとを抱えていた人の把握、必要な支援に繋げることができた。また参加者の同意を得て、今回の測定データは同センターでも管理する。
次回以降は、数値の変化なども含めて、本人の気づきやサポートに繋げていく。
地域住民に福祉用具を知ってもらう意義
古川さんは全会場に参加し、トルトでの歩行分析に加え、福祉用具の展示も行った。「多くの方に、普段馴染みのない福祉用具や制度に関心を持ってもらえました」と手ごたえを語る。
小嶋さんも、「介護というと、一般的にはどうしてもヘルパーさんに来てもらったり、デイサービスに行ったりというイメージが強いです。しかし、実は歩行器を使えば、人手のサービスに頼らずともこれまでの生活が維持できるケースもあります。福祉用具で住環境を整えるという方法もあることを地域の皆さんに知ってもらうのはとても大切です」と話した。
提供元:シルバー産業新聞 2022.11.10