豊かさを届ける福祉用具サービス スピード対応と寄り添う支援を両立
福祉用具大手ヤマシタ（静岡県島田市、山下和洋社長）の「豊かさを届ける福祉用具サービス」をテーマに現場の実践を紹介する本連載。同社柏営業所の塚本静香さんは、「今すぐに福祉用具が必要」といった、普段よりさらに迅速な対応が求められる中でも、利用者・家族に寄り添ったサービスを実践している。
がん末期「床ずれ防止用具がすぐ必要」
肺がん末期のＡさん（７０代女性）は余命宣告を受け、在宅でターミナルケアを行うことになった。急激な状態悪化とともに強い疼痛が現れ、「特殊寝台と床ずれ防止用具が今すぐ必要」との依頼が、担当ケアマネジャーから塚本さんへ舞い込んだ。
当日対応が必要なケースだったので、塚本さんは電話でケアマネから必要な情報を聞き取った。自力で寝返りなど動くことが難しいため、３モーターの特殊寝台と、疼痛の緩和や体圧分散性に優れたエアマットレスを準備。また、ケアマネの依頼にはなかったが「最近、点滴を開始した」との情報から、イルリガートルスタンド（点滴スタンド）も持っていくことにした。
「家具やカーテンレールにＳ字フックをかけるなどの対応ができる場合もありますが、今回は特殊寝台の設置場所も訪問してみるまでわからなかったので、念のため持っていくことにしました」と塚本さん。結果的にＡさんのケースでは、介護スペースなどを考慮して特殊寝台を配置すると、スタンドが必要でそのまま利用することになった。
「Ａさんのようにターミナルの場合は特にですが、福祉用具を何度も変更したり、自宅への出入りを繰り返したりするのはご本人・ご家族の負担になります」（塚本さん）
的確に情報を聞き取り、依頼された用具以外にも必要になりそうなものがあれば準備するようにしている。
丁寧な説明で家族の不安を払拭
Ａさんのケースでは、エアマットレスを利用することに、家族が初め躊躇している様子だったという。「見慣れない製品で、リモコンにもたくさんのボタンがあるので、自分たちに使いこなせるのだろうかと不安を感じていたのだと思います」と塚本さんは振り返る。
「初期設定さえ終えてしまえば、その後は特に難しい操作は不要なこと」「高い体圧分散性能で、Ａさんや家族の負担を軽減できるかもしれないこと」などを家族へ丁寧に説明し、エアマットレスを使うことになった。営業所へ戻ってから、塚本さんが電話を入れたところ、「最近はいつも苦しそうにしていたのに、今は穏やかな表情で眠っています」とのことだった。
残念ながら、その翌日にＡさんは急逝。家族からは「最後の１日だけだったが、福祉用具を使ってゆっくりと眠ってもらうことができた」と感謝され、ケアマネからも「対応が１日遅れていたら、ご家族にも後悔が残ったかもしれない。本当に助かった」と伝えられた。
「終末期に限らず、福祉用具の依頼を受ける時は、すぐに必要なケースが多いです。状況に応じて、できる限り速やかに、かつ寄り添ったサービスを提供できるように努めていきます」（塚本さん）
柏営業所 塚本 静香
提供元：シルバー産業新聞 2022.5.10
