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連載 豊かさを届ける福祉用具サービス
「問題ありません」を推し測る力

福祉用具大手ヤマシタ(静岡県島田市、山下和洋社長)の「豊かさを届ける福祉用具サービス」をテーマに現場の実践を紹介する本連載。杤本育美さん(所属:中京ブロック)は、言葉には表れない課題や変化に常に目を配っている。「サービス担当者会議は単なる報告の場だけではない」と話す杤本さん。情報の共有はもちろんのこと、本人の潜在的なニーズや変化を見つける場でもあることを意識して会議に臨んでいる。

6年ほど前、杤本さんが担当していたAさん(80代男性)は廃用症候群が進み、ほぼ寝たきりの状態だった。週3回はデイケアにも通っていたが、Aさんの状態は徐々に悪化。離床しての食事が難しくなると、差し込み式のベッドサイドテーブルに切り替えるなど、状態にあわせて福祉用具を変更しながら、Aさんは自宅で生活を続けることができていた。

ある日、訪問介護のサービス提供中にAさん宅を訪れた杤本さん。ヘルパーがベッドから車いすへと移乗させる時に、抱え上げられたAさんの表情が強張っているのがわかった。Aさんから直接要望や不満はなかったが、「抱え上げを怖がっているようにみえました」と振り返る。「してもらっている」という気持ちから、遠慮して言い出せないのではないかと考えた。

そこで認定更新のサービス担当者会議において、杤本さんは移乗用具の利用を提案。「抱え上げの時にAさんが辛そうだった」ことも理由のひとつだったが、「座位姿勢の保持も次第に難しくなっており、介助者が身体を支えながら同時に車いすも移動させることに大きな負担がかかっているため」と理由を挙げた。チームが連携してAさんによりよいケアを提供することが大切だと考えているからだ。

また、Aさんの状態だとリフトの導入でもよいと思ったが、介助者の奥さんらは、あまり大きな変化を好まないことを踏まえ、移乗ボードを提案した。おそらくリフトを見ただけで、「そこまでは…。このままで大丈夫です」と引いてしまうのではと杤本さんは考えた。まずはAさんにとって、今よりも適切な移乗方法になることを優先した。

杤本さんが提案したのは、仰臥位のままでティルトリクライニング車いすに移乗できるボード。「問題ないと思っていたが、少しでも安全に移乗ができるのなら」と会議参加者からも賛同を得ることができた。デモは、Aさんと奥さん、ヘルパーにも参加してもらい行った。奥さんもヘルパーからも「楽だ」との評価を得ることができた。他のヘルパーにも体験してもらい、サービス提供時は常にボード利用での移乗となった。

その後、杤本さん一人でモニタリングへ行き、使用感を尋ねると「怖くない」と満足気の様子で答えるAさん。「抱え上げられるのは辛かったのでは」とそっと聞くと、「バレてた?」といわんばかりにニヤッと笑みを浮かべた。

「サービス担当者会議などで、『問題ありません』といった発言はよく耳にしますよね。ただ同じ『問題ない』でも多少の差があるのだと思います。もちろん本当に問題がないケースもあるのですが」と杤本さんは話す。その「差」にも意識を向けるよう心がけているのだという。「『問題ない』と言っていても、実はご本人やご家族、あるいは事業者が抱える負担が重くなっているかもしれない。会議は単なる報告の場だけでなく、そうした変化を見つけたり、共有できたりする機会でもあります」と説明する。コロナ禍で対面での会議は難しい現在も、杤本さんはサービス担当者間で共有する書面に細かく目を通して状況を確認する。「会議の場では互いを尊重しながらも、よりよい支援を提案できる専門職であり続けたいです」


三重営業所 杤本 育美

提供元:シルバー産業新聞 2021.03.10

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