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連載 豊かさを届ける福祉用具サービス

背上げ角度の変化からすくい取るニーズ

全国でサービスを展開する福祉用具大手のヤマシタ(静岡県島田市、山下和洋社長)は、「からだ、こころ、くらしの豊かさを届け続ける」ことを顧客に約束する提供価値として掲げる。本連載では、同社の福祉用具専門相談員のケースワークに学び、豊かさを届ける福祉用具サービスの実践例を紹介する。ヤマシタでは、変化から気づく力、洞察力、最善策の提案力こそが福祉用具専門相談員の最も大事なスキルとし、新型コロナウイルスの影響で、訪問によるモニタリングが困難な状況の中、電話であっても細かな変化を見逃さないように心がけているという。初回は、練馬営業所所長の松田貴博さんの担当ケースから、福祉用具専門相談員の「気づく力」の重要性について聞いた。

松田さんが2年近く、サービスを提供したAさんのケースだ。いつものようにモニタリングを行っていた松田さんは、介護ベッドの背上げ角度が普段より大きくなっていることに気づいた。話を聞くと胃液の逆流を緩和するために、本人が背上げの角度を調整していることがわかった。Aさんは以前、胃がんで胃を一部摘出していた。Aさんによると、「就寝時も背上げしている」とのことだった。

3カ月後、松田さんが再びモニタリングに訪れると、ベッドの背上げ角度はさらに上がっていた。角度が急すぎて、座位が安定しないのと、臀部に体圧が集中しているためか、松田さんとの会話中もサイドレールに体を預ける場面が何度かみられた。「これだけ座位が安定していないと、夜はぐっすり眠れていないのではないか」と感じ取った松田さん。以前から、Aさんの日中の傾眠傾向はケアマネジャーや他のサービス提供事業者との間でも共有されていた。他人に弱音を吐くことをよしとしない気丈なAさんの性格に配慮し、松田さんは奥さんにそれとなく確認してみた。すると、「以前にも増して、夜は眠れていないみたい。私もなるべく音を立てたりしないように注意している」と話してくれた。やはり夜は熟睡できていないAさんの様子、また奥さんもAさんの睡眠を妨げないようにかなり神経質になっている様子がうかがえた。

そこで、松田さんはケアマネジャーへ報告するとともに、介護ベッドの機種変更を提案。背上げと昇降機能のみだった2モーターのベッドを、3モーターでさらにベッド本体が傾く機能を搭載した機種に変更した。ベッド本体が傾くことで、無理に背上げ角度を上げなくても、胃液の逆流を和らげることができるうえ、ベッドに傾斜がつくことで足側が下がることによる安楽な姿勢の保持、臀部に集中していた体圧も大腿部へ分散できるようになった。ベッドを交換して数日後に行ったモニタリングでは、Aさんの夜間の睡眠が改善されたことで、Aさんだけでなく、奥さんのストレスも緩和され、心なしか二人の関係も以前より良くなったようにみえた。

「Aさんもそうでしたが、ストレートに尋ねると、何か困っていても『大丈夫』と答えてしまう方は少なくありません」と松田さんは説明する。また、本人すら自身の困りごとを自覚していないケースもある。そうした隠れたニーズを丁寧にすくいあげるのが、福祉用具専門相談員の「気づく力」だという。ベッド角度の変化から、「ぐっすり眠れていないのではないか」と直感したように、「変化を見落とさず、その変化が生活へどのような影響を及ぼすのかをイメージするように心掛けています」と松田さん。

また福祉用具導入後のモニタリングも同様だ。同社では、導入後の概ね10日以内にモニタリングを実施しているが、「使う福祉用具が変われば生活も当然変わります。例えば、離床を目的に高機能車いすに変更した結果、その目標通りに車いすでの過ごす時間は増えていたとします。ただ、もしかすると車いすがかさばるので車で外出する機会が減ってしまっているかもしれません。利用目標を達成することも大切ですが、生活全般の変化を俯瞰して見極めながら、ご本人やご家族にとって常に最善な提案を続けていきたいです」(松田さん)。


練馬営業所 松田 貴博

提供元:シルバー産業新聞 2020.06.10

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