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高齢者の肥満が増えている?肥満の特徴やリスク、予防方法についても解説
肥満の高齢者は、約40年で大きく増えています。
高齢者の肥満で注意したいのは、さまざまな病気や認知症を引き起こすリスクがあることです。
本記事では、高齢者肥満の特徴や引き起こすリスク、予防方法について解説します。
ご自身が肥満かどうか判断できる基準も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
高齢者肥満の推移
高齢者肥満の推移を厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果から見ていきます。
60歳以上の男女における肥満の割合を1980年と2019年で比較すると、高齢者の肥満が増えていることがわかりました。
結果は以下のとおりです。
- 男性60~69歳:14.7%⇒35.4%
- 男性70歳以上:11.4%⇒28.5%
- 女性60~69歳:24.3%⇒28.1%
- 女性70歳以上:21.4%⇒26.4%
特に男性肥満の割合は、それぞれの年代で2倍以上も増えていることがわかります。
女性は男性ほどではないものの、増加傾向にあることがわかりました。
【参考】
厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要
厚生労働省 国民健康・栄養調査 94-1 肥満及び低体重(やせ)の者の割合の年次推移(20歳以上、性・年齢階級別)
高齢者の肥満が増えている原因
高齢者の肥満が増えている原因は以下のとおりです。
- 加齢によって内臓脂肪が増加しやすいから
- 生活習慣が変化してきたから
高齢になると代謝が悪くなるため、摂取カロリーが少ない場合でも、エネルギーの消費が少なくなります。そのため、内臓脂肪が蓄積しやすくなります。
また、高齢者の寿命が延びていることも要因のひとつです。
生活習慣と肥満にも密接な関係があり、運動不足や食事の嗜好変化などが肥満の原因となっています。
特に食事の欧米化により、動物性食品の摂取量が増え、脂質を多く摂取するため内臓脂肪が蓄積しやすくなるのです。
【参考】
厚生労働省 高齢者における栄養の特性と課題、フレイルと栄養の関係
高齢者肥満の特徴
高齢者の肥満は、若年者とは異なる特徴があります。
- 内臓脂肪を反映するウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比
- 肥満と死亡リスクの関係
- 筋力量が減ることによる弊害
上記の項目から、高齢者肥満の特徴を見ていきましょう。
ウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比も要確認
肥満かどうかを判断するために用いられるのが、BMIという体格指数です。
BMIは体重[kg]÷(身長×身長[m])で算出し、25以上の場合、肥満と判断されます。
しかし高齢者においては、BMIの数値だけで肥満か否かを判断するのは難しい場合があります。
内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」も存在するからです。
そのため「ウエスト周囲長」や「ウエスト・ヒップ比」などの数値も確認しておきたい指標と考えられています。
ウエスト周囲長では、男性で85cm、女性で90cm以上になると、内臓脂肪の面積が100cm2を超えていると判断され、内臓脂肪型肥満が疑われます。
ウエストヒップ比では、男性で1.0、女性で0.9以上になると同様に内臓脂肪型肥満が疑われます。
【参考】
e-ヘルスネット 肥満と健康
e-ヘルスネット W/H比
死亡リスクが低下する場合がある
肥満になると、死亡リスクが上がると思われがちです。
しかし高齢者の肥満においてはリスクが低下すると報告されており、心疾患やがん、肺の疾患にかかりにくくなるといわれています。これを肥満パラドックスといいます。
一方で、BMIの数値が低い高齢者の方が、上記の疾患による死亡リスクが高いのです。
痩せは低栄養であることが示唆され、身体に必要な栄養素が不足していると考えられます。
そのため、病気による不調をきたしやすいのです。
筋肉量が減るとサルコペニアを合併する場合がある
高齢者の筋肉が痩せて減少し、筋力や身体機能が低下することを「サルコペニア」といいます。肥満に筋肉の痩せが加わった「サルコペニア肥満」の高齢者も存在します。
サルコペニアによる日常生活への影響は、以下のとおりです。
- 歩行速度が低下する
- 階段の昇り降りが大変になる
- バランスが悪くなる
筋力が衰えて上記のように支障が生じると、運動量が減り、身体機能の低下がより顕著となります。さらに転倒によるけが、骨折などから要介護状態になってしまう恐れもあるのです。
【参考】
e-ヘルスネット サルコペニア
高齢者肥満のリスク
高齢者が肥満になると、以下のようなリスクが生じます。
- 健康を損なう
- 認知症を発症する危険性がある
肥満による影響を知るためにも、参考にしてください。
肥満が関係する健康障害
肥満が関係する健康障害には、以下の11種類があります。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
- 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)
- 月経異常、不妊
- 睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群
- 運動器疾患:変形性関節症(膝、股関節)・変形性脊椎症、手指の変形性関節症
- 肥満関連腎臓病
これらの健康障害は単一の疾患として発症するだけではなく、それぞれが相互に影響しあうこともあります。
たとえば、脂質異常症により心筋梗塞や脳梗塞を起こしたり、運動器疾患による運動量の低下によって、糖尿病が悪化したりすることもあるのです。
【参考】
日本肥満学会
認知症の発症
肥満によって起こるメタボリックシンドロームは、認知症の発症と深い関係があります。
メタボリックシンドロームは、軽度認知障害(認知症の前段階)から認知症へと悪化させる要因になるという研究結果があります。
また、内臓脂肪の蓄積によって脂質異常症になると起こりやすくなるのが脳梗塞です。脳梗塞によって、血管性認知症を発症する可能性もあります。
糖尿病で血糖が高くなると、認知機能が低下しやすいともいわれています。糖尿病のある方では、ない人と比較して認知症リスクが上がり、アルツハイマー型認知症で1.5倍、血管性認知症で2.5倍も多くなるといわれているのです。
認知症を発症すると規則正しい生活が難しくなり、より病気が悪化することも考えられます。そのため、発症前の予防が大切です。
【参考】
糖尿病情報センター
高齢者の痩せもリスクがある
高齢者の痩せは、基礎疾患が悪化する原因となります。
また、痩せによるエネルギー不足は以下の体調変化を起こしやすく、抵抗力を弱めてしまいます。
- 倦怠感
- 疲労感
- めまい
- 不眠
- 体温の低下
結果として、感染症にかかりやすくなってしまうのです。
痩せるとサルコペニアも進行しやすく、筋力が衰えて運動量が低下します。それによる活動量の低下が身体機能をより衰えさせ、虚弱な状態をつくってしまうのです。
高齢者肥満の予防方法
高齢者の肥満を予防するためには、以下2つの対策が推奨されています。
- 食事による肥満予防
- 運動による肥満予防
肥満の予防方法を知り、健康障害や認知症、死亡リスクなどに備えましょう。
それぞれ解説していきます。
食事による肥満予防
肥満の予防には、食生活の改善が重要です。
太らないようにすることを意識するあまり、低栄養になってはいけません。
一日三食規則正しく食べ、以下の栄養素を中心にとりましょう。
- タンパク質
- ビタミン
- ミネラル
炭水化物と脂肪は、あまりとりすぎないようにしてください。
食べ方にも注意が必要で、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。
ゆっくり食べた方が満腹感を得られやすいだけでなく、食後の血糖値上昇を緩やかにする効果もあるからです。
運動による肥満予防
適度な運動も、肥満予防には大切です。
定期的に運動して、代謝の改善と筋肉量の維持につとめましょう。
主に以下の運動を行ってください。
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング
有酸素運動は、ウォーキングや水泳などを一日30~60分実施します。これを週にして、150~300分行いましょう。負荷は「楽~ややきつい」と自覚できる程度がよいといわれています。
筋力トレーニングは、足腰を鍛えることが大切です。
高齢者が手軽に行える運動は、スクワットや仰向けでのお尻上げなどがよいでしょう。
8~12回を1セットとし、2~4セット行います。これを週2~3回やると効果的です。
まとめ
高齢者の肥満は増加傾向にあり、高齢化や生活習慣の変化などが背景として考えられています。
肥満はさまざまな健康障害や認知症の発症とも関連があるため、できる限り予防していきたいものです。
食事や運動を適度に行い、いつまでも健康でいられる生活習慣を身につけましょう。