更新日:
若年性認知症とは?なりやすい人の特徴や高齢者との違い・症状や予防方法を解説!
若年性認知症は若さゆえの発症によって、高齢者とは異なる悩みや課題に直面することがあります。
本記事では、若年性認知症になりやすい人の特徴や、高齢者の認知症との違いを解説します。
また、症状や予防法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
若年性認知症とは
若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症のことをいいます。
高齢者と同様に、さまざまな種類の認知症が原因となって起こります。
東京都健康長寿医療センターによると、2017~2020年の調査によって若年性認知症の方の数は、約3.57万人と報告されました。
若年性認知症の原因でもっとも多いのはアルツハイマー型認知症です。
ほかにも、以下のようにさまざまな種類の認知症があります。
- 脳血管性認知症
- 前頭側頭型認知症
- 外傷による認知症
- レビー小体型認知症
以下で、若年性認知症について詳しく見ていきましょう。
- なりやすい人の特徴
- 高齢者の認知症との違い
上記について解説していきます。
【参考】
東京都健康長寿医療センター・東京都健康長寿医療センター研究所:若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システム
なりやすい人の特徴
若年性認知症は、脳や身体に負担をかける生活をしたり、ストレスを受けやすかったりする方がなりやすいといわれています。
以下の特徴をもつ方は、要注意です。
- 協調性がない・怒りっぽい・気にしやすい
- 生活習慣が乱れている
他人とうまく関係を作れない方は、コミュニケーションの機会が減り、脳への刺激が少なくなります。
気にしやすい方は、うつ病になったり閉じこもりったりするため、他人と関わる機会が減ります。
また、運動不足や生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)により、脳血管障害になり脳血管性認知症になることもあるのです。
高齢者の認知症との違い
若年性認知症の方は、若さゆえに高齢者の認知症とは異なる問題を抱えることがあります。
- 診断が遅れることがある
- 経済的な問題を抱えることがある
- 配偶者に介護負担が集中しやすい
診断が遅れやすいのは「認知症は高齢者に多い」というイメージが先行しているからです。発症していても、うつ病や更年期障害などと間違えられてしまうことがあるのです。
また、休職・退職などにより金銭面での悩みを抱えることもあります。これは、若年者は働き盛りである人が多いからです。
介護負担の観点からは、配偶者に負担が集中しやすく、親世代の介護と同時になることもあります。
【参考】
若年性認知症ハンドブック 厚生労働省
若年性認知症の症状
若年性認知症の症状について、以下で解説していきます。
認知症には、以下のように2種類の症状があります。
- 中核症状
- 周辺症状
それぞれどのような特徴があるのか見ていきましょう。
中核症状
中核症状とは、脳の神経細胞が減ることで起こる認知症の中心的な症状です。
主に以下のような症状があります。
記憶障害
新しいことを覚えられなくなったり、最近の出来事を忘れたりするようになります。
鍋に火をかけていることを忘れて焦がしてしまったり、買い物に行ったのに何を買うか忘れてしまったりします。
見当識障害
時間や場所、人などの認識ができなくなるのが見当識障害です。
季節に合わない服を着たり、ゴミの日がわからなくなって家に溜まってしまったりします。
ほかにも、場所がわからず迷子になったり、近所の方の顔がわからなくなりトラブルになったりすることもあります。
理解・判断力の低下
物事の理解に時間がかかったり、適切に判断して決定できなくなったりします。
善悪が判断できず、店の物を支払わずに持ち出したり、同じ商品を買いすぎてしまったりすることがあります。
実行機能障害
計画を立てて、目標に向かって段取りを決めて実行する機能が低下します。
たとえば、料理の段取りを見てみましょう。
- 食材を用意する
- 調理器具を用意する
- 切る・調理する・味付けする
- 盛り付ける
これらを順番通りに組み立て、効率よく作業できなくなってしまいます。
結果的に、味のない料理ができたり、いつまでも完成しなかったりするのです。
言語障害(失語)
話す・聞いて理解する・書く・読むなどのことばに関する機能の低下です。
日常生活では、自分の思いを表出できなかったり、相手が言っていることを理解できなかったりすることから、互いにストレスを感じてしまいます。
失行・失認
運動機能には問題がないのに、物の使い方や認識の仕方に障害が起こります。
失行では、物の使い方や服の着方がわからなくなってしまいます。
- お茶の入れ方がわからない:湯呑みに直接お茶の葉を入れる
- 服の着方がわからない:ズボンをシャツのようにかぶろうとする
失認の症状は、見る・聞く・触れるなどの認識を誤ってしまう障害です。
視覚・聴覚・触覚などに問題がないのに、脳の中で処理できません。
代表的な半側空間無視では、見ている空間の半分を認識できなくなります。
そのため、視野の左(もしくは右)半分の食事を食べ忘れたり、歩いているとぶつかったりもします。
周辺症状
周辺症状は「行動・心理症状」ともいわれています。
中核症状や本人の精神状態、まわりの方との関係などの影響を受け、二次的にあらわれる症状のことをいいます。
不安・抑うつ
落ち込み、何事にもやる気がなくなってしまう症状です。
認知症では、あらゆることに無関心になることが多いといわれています。
活動性が下がるため、不安や抑うつが原因で身体の機能が低下することもあります。
幻覚
見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりする症状です。
幻覚をきっかけに、落ちつきがなくなることもあります。
レビー小体型認知症の場合「ほら、すぐ目の前で子供が手招きしている」と、リアルな幻覚があらわれることもあります。
妄想
代表的な物盗られ妄想では、相手が自分の物を盗んだと思い込み、攻撃したり疑ったりします。
たとえば、財布や通帳、服などの本人にとって大切な物を探すことがしばしばあります。
疑いの気持ちは、身近な人に向けられやすいことが特徴です。
暴言・暴力
興奮して乱暴なことばでののしったり、殴る・蹴る・ひっかくなどしたりします。
不意に触れたり近づいたりすると、急に怒り出すこともあります。
また、家に帰りたくなって落ちつかなくなり、目についた人に暴言・暴力を向けることもあるのです。
睡眠障害
昼夜の逆転や、まとまった睡眠がとれないことなどがあります。
見当識障害や日中の活動性が低下していることなどが原因です。
昼夜が逆転すると、日中はウトウト眠っていることが増え、夜間に徘徊してしまうこともあります。
徘徊
記憶障害や見当識障害などを背景に起こります。
たとえば「仕事があるから早く帰る」「親から帰るように言われているから帰る」といった理由から、歩き回ります。
若年性認知症の予防法
若年性認知症は、あくまでも若くして認知症になることです。
「若年性認知症」という病気ではありません。
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などの、認知症になることが原因です。
そのため、それぞれの認知症にならないような生活習慣を意識し、脳を活性化することが予防方法として推奨されています。
生活習慣を見直す
脳梗塞や脳出血などの「脳血管障害」は、以下の病気が原因で起こりやすくなります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
これら「生活習慣病」を予防するために、生活習慣を見直しましょう。
食事は、脂質と糖質のとりすぎに注意し、毎日規則正しく3回食べましょう。
禁煙したり、お酒の量を減らしたりすることも大切です。
また、毎日決まった時間の起床と就寝を意識し、質のよい睡眠をとりましょう。
適度に運動する
身体の活動によって、認知症になるリスクが下がると報告されています。
主に以下2種類の活動が推奨されています。
- 生活活動:日常生活における労働や家事
- 運動:健康増進・体力向上・余暇の楽しみなどを目的とした活動
生活活動では、買い物や犬の散歩、掃除などを毎日60分程度実施しましょう。
運動では、ジョギング・テニス・サッカーなど、普通に歩く程度もしくはそれ以上の負荷で毎週60分以上の活動量がよいとされています。
【参考】
厚生労働省 18歳から64歳の人を対象にした身体活動指針(アクティブガイド)
脳の活性化を図る
生活の中で、脳を刺激する機会をもちましょう。
友人と食事したり、旅行して普段は見られない景色を見たりすることが効果的です。
ほかにも、読書や楽器演奏、ボードゲームなどの活動は、認知症の発症リスクが減ることもわかっています。
脳の活性化には、楽しいと感じることが大切です。
脳の扁桃体(へんとうたい)という部分は、快・不快などの感情に関わります。
扁桃体は、記憶する機能を担う海馬(かいば)と密接に関わっています。
そのため「楽しい」と感じる体験によって扁桃体を刺激すると、海馬も活性化し認知症予防につながるのです。
まとめ
若年性認知症は、脳への負荷やストレスによって、高齢者と同様の認知症になることが原因として考えられています。
しかし、若さゆえの発症により、診断が遅れたり周囲が抱える不安や負担も大きくなりやすかったりします。
予防するためには、高齢者の認知症と同様に生活習慣を整え、脳を活性化することが大切です。
心身にストレスをかけすぎないように注意し、認知症を予防していきましょう。