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高齢者のいびきの原因とは?種類や病気との関連・対策について解説!
いびきはその種類によって、健康への影響が異なります。
高齢になるとさまざまな原因でいびきをかくようになり、中には重篤な病気の原因になることもあるのです。
本記事では、高齢者のいびきの原因や種類について解説したうえで、いびきと関連のある病気や対策について解説していきます。
高齢者のいびきの原因
高齢者のいびきには以下の原因があります。
- 筋力の衰え
- 気道の弾力性の低下
- 肺活量の低下
- 気道の狭まり
- 病気による影響
それぞれ見ていきましょう。
気道を広げる筋力の衰え
気道を広げる筋力が衰えて狭くなり、空気がうまく通らなくなっていびきになります。
主に以下の筋肉が関わります。
- 舌の骨についている筋肉
- 舌の筋肉
- 口蓋垂(のどちんこ)を持ち上げる筋肉
女性は特に閉経後、舌の筋肉のひとつである「オトガイ舌筋」が弱まるため、高齢になるにつれいびきをかきやすくなります。
舌や口の筋力の衰え
高齢になると足腰の筋力が衰えやすいように、舌や口の中の筋力も衰えます。
- 食事が飲み込みにくい
- お茶を飲んでむせる
上記の症状がある方は睡眠中に舌がのどに落ち込んでしまい、いびきが起こりやすくなります。
舌の落ち込みは、起きているときには気になりません。
しかし、寝ていると舌がゆるんで落ち込んでしまうのです。
気道の弾力性の低下
気道が弾力を失って固くなると、いびきが起こります。
気道の弾力にはコラーゲンが関わっていますが、高齢になると減少してしまいます。
そのため、気道が固くなって広がらず、いびきをかくのです。
肺活量の低下
肺活量とは、肺の大きさの目安のことです。
肺活量が低下すると肺の容量が小さくなるため、上気道と下気道が狭くなります。
上気道とは、口・鼻からのどまでの部分であり、下気道は気管から肺までの部分を指します。
肺活量が低下して気道が狭くなるため、空気が通りにくくなっていびきが起こるのです。
気道の狭まり
以下のさまざまな理由によって気道が狭まるといびきが起こります。
- 肥満:舌の肥大・のどの周りにある脂肪などにより狭くなる
- アルコールや睡眠薬:寝る前の飲酒や服薬の影響により筋肉がゆるみ、舌がのどへ落ち込む
- ホルモンの影響:女性ホルモンの減少によって気道を広げるオトガイ舌筋の働きが弱まる
- 構造による影響:小さい顎・大きい扁桃腺など
体形や生活習慣、ホルモンや構造などによって気道が狭まるのです。
病気による影響
病気の影響からいびきが起こることもあります。
いびきに関連する病気は以下のとおりです。
- 咽頭扁桃(いんとうへんとう:のどの上部)の腫れ
- 風邪や鼻炎による鼻づまり
- 舌やのどのがん
- 脳梗塞などの呼吸中枢の障害によるコントロール不良
以下で詳しく解説する「睡眠時無呼吸症候群」も、いびきを起こす原因といわれています。
高齢者のいびきの種類
高齢者のいびきの種類について解説していきます。
- 単純性いびき症
- 睡眠時無呼吸症候群
上記はどちらもいびきではあるものの、健康への影響の有無という点で異なります。
ご自身のいびきがどちらに該当するのかを知るためにも、以下を参考にしてください。
単純性いびき症
一時的に起こるいびきのことをいいます。
病的なものではなく、体調や健康には特に影響を及ぼしません。
周囲の方はうるさいと感じるかもしれませんが、本人は特に睡眠不足になることもなく、日中の眠気などにもつながりません。
疲労や風邪、アルコールの飲みすぎなどにより起きやすいといわれています。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることで、体内が低酸素状態になる病気です。
以下3つの型に分類されます。
- 閉塞型:気道の狭まりによって起こる
- 中枢型:脳による呼吸調整の働きが低下して起こる
- 混合型:両者が混合して起こる
単純性いびき症と異なるのは、体調に影響を及ぼす点です。
- 夜間に息苦しくなって目が覚める
- 日中に強い眠気におそわれる
- 体がだるくなる
上記のような特徴から体調を崩しやすく、QOL(生活の質)が低下してしまう深刻な病気です。
高齢者のいびきは脳卒中の原因にもなる
高齢者のいびきは、脳卒中の原因になることがあります。
脳卒中とは、脳の血管に障害が起こって、必要な酸素や栄養の供給ができなくなる病気のことです。
脳卒中は、以下3種類に大別されます。
- 脳梗塞:脳の血管がつまる
- 脳出血:脳の血管が破れる
- くも膜下出血:脳を覆っている「くも膜」という膜と脳の間にある血管が破れる
以下では、いびきと脳卒中の関連性や、発症したときの見分け方を解説します。
いびきが脳卒中を起こす理由
脳卒中と関連があるいびきには、前述の睡眠時無呼吸症候群があります。
呼吸が止まったり浅くなったりするため、夜間に何度も目が覚め、十分な睡眠がとれません。
また、全身の酸素不足は脳の血管にダメージを与え、もろくしてしまいます。
もともと高血圧や動脈硬化を患っている方は、より血管に負担がかかりやすいため、脳卒中を起こしやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群によるいびきで睡眠障害を起こしている方は、脳卒中の危険性が高くなるため、早めに受診して医師の指示をあおぎましょう。
脳卒中の見分け方
日中の活動時に脳卒中を起こすと、以下のような兆候が見られます。
- その場で倒れる
- 麻痺が出現する
- ろれつが回りにくくなる
これらの症状があらわれるため、脳卒中を起こしていると判断しやすいでしょう。
しかし、睡眠中ではそれらの確認ができないこともあります。
睡眠中に脳卒中を起こしているかどうかを見分けるには、以下を参考にしてください。
- いびきがより大きい:口や舌が麻痺し、気道がふさがる
- 呼吸状態が普段と異なる:徐々に呼吸が大きくなった後、小さくなり、止まることをくり返す(チェーンストークス呼吸)
- 起こしても目を覚まさない:意識を失っている可能性がある
- けいれんを起こす:身体全体または一部がビクビクとふるえる
もし睡眠中に上記の症状があらわれれば、脳卒中を起こしているかもしれません。
高齢者のいびきの対策
高齢者のいびきへの対策を以下で紹介します。
- 舌やのどの筋肉を鍛える
- 道具を使う
- 生活習慣を見直す
上記に取り組んでみましょう。
舌やのどの筋肉を鍛える
繰り返しになりますが、いびきは舌やのどの筋力が衰えて起こる場合があります。
そのため、以下の運動を実践し、筋肉を鍛えてください。
- 舌を前後・上下に動かす:1回あたり5~10秒かけて動かし、3回行う
- 舌を口の中で回転させる:ゆっくり3回行う
- 口と顔の筋肉を動かす:大きな口で「あ・い・う・え・お」と3回発声する
- 頬の運動をする:頬を5秒ふくらませた後、5秒すぼめることを3回行う
はじめはひとつのメニューを1回からでもよいので、徐々に習慣づけられるようにしましょう。
CPAPやマウスピースを使う
CPAP(シーパップ)とは「持続陽圧呼吸療法」といい、鼻に装着したマスクから圧力をかけて、空気を気道へと強制的に送り込む治療法です。
睡眠時無呼吸症候群に対する治療効果が証明されており、標準的な治療法と位置づけられています。
マウスピースは、睡眠時無呼吸症候群の症状が比較的軽い場合に使用されます。
症状の重症度に応じて、どの治療法を選択するかが決まるため、医師に相談してご自身にあった方法で治療しましょう。
生活習慣を見直す
生活習慣によっていびきが起こっている場合、以下を意識すれば改善できる可能性があります。
- 寝具を変える
- 寝酒をやめる
- 減量する
いびきはあおむけになると出やすいため、横を向いて寝やすいまくらを選んでください。
寝る前の飲酒は舌がゆるみ、のどに落ち込みやすくなるため、控えるとよいでしょう。
肥満は、のどの脂肪によって気道が狭くなることがあります。減量してすっきりさせましょう。
まとめ
いびきはさまざまな原因で起こります。
健康への影響はいびきの種類によって異なりますが、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中の危険性が高くなるため、早期の治療が推奨されます。
重篤な病気につながらないように、ご自身のいびきがどの種類であるか知っていただき、適切に対処できるようにしましょう。