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要介護認定の更新とは|手続きの流れや入院中の注意点も解説
介護保険の給付を受けてサービスを利用するためには、要介護認定が必要です。
実は認定には期限があり、更新しなければ給付が受けられなくなってしまいます。
本記事では、要介護認定の更新における概要を解説したうえで、更新手続きの流れや入院中の注意点を解説します。
記事後半では、自身で更新の申請が行えない場合の対処法も解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
要介護認定は自動更新されない
要介護認定は自動更新されません。
そのため、更新の手続きが必要です。給付を受けたい場合は、必ず更新しましょう。
要介護認定に関して知っておくべきこと2点を、以下で解説していきます。
- 更新しないとどうなるのか
- 要介護認定の有効期限
それぞれ見ていきましょう。
更新しないとどうなる?
サービスを利用するだけなら、実は更新の必要はありません。
ただし、介護保険からの給付が受けられなくなってしまいます。つまり、利用料金が全額自己負担になるということです。
給付を受けている場合、自己負担額はサービス料金の1~3割で済みます。(※1)
たとえば、デイサービスを一日利用した場合の金額では、1割負担の方であれば自己負担額は約1,000~2,000円です。
しかし全額自己負担になると、10倍近く多く支払わなければなりません。
※1:利用者の所得や65歳以上の人の世帯人数によって異なる
要介護認定の有効期限
要介護認定には、有効期限が定められています。
理由は、要介護高齢者は心身の状態が変化しやすいからです。
期限を設けていないと、状態に応じて必要なサービスを受けられない可能性があります。
そのため、一定の有効期限を設定し、利用者ごとに要介護認定を更新する必要があるのです。
有効期限は、初回の要介護認定と2回目以降(更新)とで異なり、それぞれ原則の有効期限と、変更できる期間の幅が決まっています。
下表にまとめましたので、参考にしてください。
申請区分 | 認定の有効期限(原則) | 設定可能な認定有効期限 |
---|---|---|
初回申請 | 6ヶ月 | 3~12ヶ月 |
2回目以降(更新) | 12ヶ月 | 3~36ヶ月(48ヶ月)(※2) |
※2:前回と同じ要介護度だった場合のみ、48ヶ月まで設定可能
要介護認定の更新手続きの流れ
要介護認定の更新手続きの流れを以下で解説していきます。
主に以下の流れで行います。
- 要介護認定更新申請書を提出
- 要介護認定調査を受ける
- かかりつけ医が主治医意見書を作成する
- 介護認定審査会で要介護度認定を行う
- 自宅に新しい介護保険被保険者証が届く
それぞれ順番に見ていきましょう。
1. 要介護認定更新申請書を提出
まずは、要介護認定更新申請書を市区町村の介護保険担当窓口に提出しましょう。
申請書は、同窓口やインターネットなどから手に入ります。
他に必要な書類は、下記のとおりです。
- 介護保険被保険者証
- 健康保険の被保険者証(第2号被保険者のみ)(※3)
- 個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードや通知カード)
- 顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
- 診察券(主治医の情報が確認できるもの)
本人以外が申請する場合は、下記の書類も必要です。
- 委任状
- 印鑑
- 申請者の身分証明書
書類が不足するとスムーズに手続きが進まないことがあります。漏れなく確認しておきましょう。
要介護認定の更新手続きを行えるのは、有効期間の最終日から60日前〜最終日の間です。
多くの保険者では、最終日の60日前に更新のお知らせが届きます。
お知らせを確認できたら、すみやかに申請手続きを開始しましょう。
※3:第2号被保険者は40~64歳の医療保険加入者
2. 要介護認定調査を受ける
申請書を提出後、要介護認定調査を受けます。
調査は、「74項目からなる基本調査」と「特記事項」で構成されています。
基本調査で確認する内容は下記のとおりです。
- 身体の機能:麻痺の有無、立つ・歩くなど
- 生活機能:移動、排泄、衣服の着脱など
- 認知機能:意思の伝達、記憶、状況理解など
- 精神・行動障害:昼夜逆転、介護への抵抗、ひどい物忘れなど
- 社会生活への適応:薬の内服、金銭管理、買い物など
- 過去14日間に受けた特別な医療:点滴、透析、経管栄養など
上記の結果をコンピュータに入力し、一次判定が行われます。
参考:厚生労働省 要介護認定認定調査テキスト2009(改訂版)
3. かかりつけ医が主治医意見書を作成する
続いて、利用者のかかりつけ医から主治医意見書を作成してもらいます。
記載される項目は下記のとおりです。
- 傷病に関する意見
- 特別な医療
- 心身の状態に関する意見
- 生活機能とサービスに関する意見
- 特記すべき事項
主治医意見書は、次で解説する介護認定審査会において、審査判定に利用されます。
意見書には病状や介護の手間、今後の状態に関する予測などが、専門的な視点から記載されます。
意見書の記載内容が判定を左右する場合もありますので、利用者の普段の状態を正確に伝えておくことが大切です。
できれば、日常の様子を知っている家族にも診察に同席してもらうとよいでしょう。
4. 介護認定審査会で要介護度認定を行う
主治医意見書の作成が終わると、介護認定審査会による要介護度の二次判定が行われます。
審査会では、認定調査の結果からコンピュータで判定された一次判定と、主治医意見書の情報をもとに議論がされます。
介護認定審査会の構成員は、保健・医療・福祉分野の有識者です。
一次判定はあくまでコンピュータによる判定であるため、認定調査結果と主治医意見書の内容を照らし合わせ、有識者が整合性を確認していきます。
5. 自宅に新しい介護保険被保険者証が届く
介護認定審査会による要介護認定が行われると、市区町村より介護保険被保険者証が届きます。通知は、認定の更新手続きから30日以内に届くのが原則です。
被保険者証には、介護認定に関するさまざまな情報が記載されているため確認しておきましょう。下記が主な記載内容です。
- 要介護状態区分(要支援1・2、要介護1~5、事業対象者)(※4)
- 認定年月日
- 認定の有効期間
- 区分支給限度基準額(※5)
※4:市区町村が提供する独自サービスの対象者
※5:介護保険から給付される1ヶ月の上限額
もし認定の結果に納得できない場合は、結果を受け取った日から60日以内であれば、不服申し立てによる再審査も可能です。
入院中でも更新申請が必要な場合がある
入院中に受けるサービスは医療保険の適用であり、介護保険サービスは利用できません。
長期的に入院することがわかっていれば、介護認定は受けなくてもよいでしょう。
しかし、下記の場合は更新申請が必要です。
- 退院後に自宅で介護保険サービスを利用する
- 病院から介護保険施設へ入所する(※6)
退院先での生活をスムーズに再開するためにも、医療機関のソーシャルワーカーや担当のケアマネジャーに相談しておくとよいでしょう。
※6:介護保険施設は「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護医療院」
自身で申請できない場合の対処法
自身で申請できない場合は、家族による申請が可能です。
家族や親戚による支援が何らかの理由でむずかしい場合は、下記へ相談すれば対応してもらえます。
- 地域包括支援センター
- 担当のケアマネジャー
- 介護保険施設の職員
基本的には自身で申請する必要がありますが、さまざまな事情で行えない場合は、上記の代理人いずれかに依頼しましょう。
まとめ
保険給付を受けて介護保険サービスを利用するためには、要介護認定が必要です。
しかし要介護認定は有効期限があるため、引き続き給付を受けたい場合は、更新が必須です。
更新申請に不安がある場合は、市区町村の介護保険窓口や担当ケアマネジャーに相談すれば解決できるため、過度な心配は必要ありません。
介護保険サービスの利用自体をやめるならば更新の必要性はありませんが、急に利用したくなった場合は、あわただしく新規申請をしなければなりません。
そのため、時期がきたら更新申請はしておくのが無難です。