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認知症が一気に進む原因とは?種類ごとの進行度や遅らせる方法を解説
認知症の進行は緩やかな場合もあれば、一気に進んでしまうことがあります。
本記事では、認知症が一気に進む原因について解説します。
あわせて種類ごとの進行度や症状を遅らせる方法についても紹介しますので、正しく対策できるよう、本記事を参考にしてください。
認知症が一気に進む原因
認知症が一気に進む原因には、主に以下4つ挙げられます。
- 脳への刺激不足
- 死別・引っ越しなどの環境変化
- 周囲から失敗を責められる
- 自身で考えて行動することが減る
それぞれ見ていきましょう。
脳への刺激不足
脳への刺激不足は、認知症が一気に進む原因のひとつです。
刺激不足になると、脳への血流が減るといわれています。
以下の特徴が見られたら、脳への刺激が不足している可能性があります。
- 家事や片付けが億劫になった
- 趣味に興味を示さなくなった
- 昼間に寝てばかりいる
上記の状態が長く続くと、部屋が散らかったり身だしなみに気をつかわなくなったりして、他人との関わりを避けるようになります。
すると、さらに家に閉じこもるようになるため、脳への刺激不足が加速してしまいます。
結果として、認知症が一気に進んでしまうのです。
死別・引っ越しなどの環境変化
死別・引っ越しなどの環境変化をきっかけに強いストレスを受けると、認知症は一気に進むことがあります。
強いストレスを受けると脳の血管が収縮して血流不足になり、脳の働きが悪くなります。
脳の働きが悪くなっている時に見られる症状は、以下のとおりです。
- 記憶力の低下
- 不安や混乱により落ち着かなくなる
- 感情をコントロールできなくなる
これらの症状が見られている時は、強いストレスを受けている可能性があります。
そのため、認知症の方の周囲に変化があった場合は、介護者が寄り添ってあげましょう。
周囲から失敗を責められる
周囲から失敗を責められることも、認知症が一気に進む原因といえます。
認知症になると、以下のような失敗が目立つようになります。
- 少し前に言われたことを忘れる
- 時間の管理ができなくなる
- 着替えに時間がかかったり、排せつに失敗したりする
認知症の方は、責められたり怒られたりすることに対して敏感です。
自尊心が傷つくのを避けるため、行動を控えるようになり活動量が減ってしまいます。
その結果、脳への刺激が低下して血流不足になり、認知症が一気に進んでしまうのです。
介護者はつい失敗を責めたくなってしまいますが、温かく見守る姿勢が大切です。
自身で考えて行動することが減る
自身で考えて行動することが減るのも、認知症が一気に進む原因になります。
認知症になると「危ないから」「時間がかかるから」といった介護者の都合によって、過介護になってしまうことがしばしばあります。
代わりに何でもやってあげる方が、安全かつ早く、物事が進むかもしれません。
しかし、自身でできることまで介護者がやってしまうと、役割を奪ってしまうことになります。
ご本人ができることを尊重し、考えて行動させられるように、介護者もゆとりを持って接することが大切です。
認知症の種類によって進行度は異なる
認知症はいくつかの種類に分けられ、それぞれの種類によって進行度が異なります。
以下で代表的な認知症における症状や特徴、進行度について表にまとめましたので、見ていきましょう。
種類 | 症状 | 特徴 | 進行度 |
---|---|---|---|
アルツハイマー型 | 物忘れ 見当識障害(人・場所・日時などがわからない) 理解力や判断力の低下 |
認知症の約70%(※1) 女性に多い |
ゆっくり進む |
脳血管性 | 物忘れ 手足のまひ 言語障害(ことばを話せない、理解できない) えん下障害(飲み込みしづらい) 感情失禁(怒る、泣くなどの感情をコントロールできない) |
認知症の約20%(※1) 男性に多い 症状がまだら(脳のどの部分で障害が起こるかにより症状が異なる) |
脳の病気をくり返すたびに階段上に進む |
レビー小体型 | 初期では物忘れが目立たない 幻覚(ないものが見える、聞こえない声や音が聞こえる) 妄想 動作緩慢(動きがゆっくりになる) 手のふるえ 睡眠時に突然暴れる 立ちくらみ 便秘や失禁 |
認知症の約4%(※1) 日や時間帯によって症状に波がある |
比較的早いものの個人差が大きい |
前頭側頭型 | 物忘れは軽度 人格の変化 異常な行動 無気力・無関心 常同行動(同じことばかりする) 言語障害 |
認知症の約1%(※1) 65歳以下での発症が多い |
ゆっくり進む |
種類ごとの症状や特徴、進行度を知ることで、介護の方法や注意点、接し方の参考にしてください。
認知症の進行を遅らせる方法
認知症は、正しい方法で対策すれば進行を遅らせることが可能です。
家庭で行える具体的な対策について、以下4つを紹介します。
- 適度な運動
- 頭の体操・脳トレ
- 社会との接点を持たせる
- 生活習慣病の対策
これらを実践する際、ご本人の身体機能や認知症の進行度に応じて、無理しないように行うことが大切です。
それぞれ見ていきましょう。
適度な運動
適度な運動は脳の血流改善を促し、認知症の進行を遅らせる方法として有効です。
おすすめの運動には以下のものがあります。
- ウォーキングや水泳などの有酸素運動
- 胸、背中、脚などの筋力トレーニング
有酸素運動は、一日10分以上の運動を合計30分、週3~5回が目安です。
筋力トレーニングは、マシンやダンベルなどを使用して8~12回の運動を1~4セット、週2~3回行うとよいでしょう(※2)。
認知症の方は、運動量の加減や安全への配慮が難しい場合もあります。
大きな怪我や事故を起こさないように、介護者が運動量や安全面に配慮しながら行いましょう。
頭の体操・脳トレ
頭の体操や脳トレには、脳の血流を改善して前頭前野(記憶、感情、社会性などに関連する脳の部位)の働きを活性化する効果があります。
おすすめのプログラムは以下のとおりです。
- 計算やしりとりなどをしながらのウォーキング
- 習字、絵画、パズルなどの五感へ働きかける活動
- 簡単な計算問題
- 昔からなじみのある活動(家事や趣味)
ポイントは、課題をあまり難しくしないことです。
前頭前野は、簡単な計算や課題を行う方が、難しい課題を行うよりも血流が増加するといわれているからです。
また、難しすぎて意欲が低下してしまうと効果が見込めません。
無理せず、楽しみながら続けられる内容を提供しましょう。
社会との接点を持たせる
社会との接点を持つことは、意欲や活動を維持する意味で重要です。
家に閉じこもりがちになると、家族以外の人と接する機会が減ってしまうため、デイサービスや地域の老人クラブなどに通うことも検討しましょう。
注意点として、外出を苦痛に感じ、強いストレスを受けてしまうと逆効果です。
あくまでも認知症の方が楽しんで交流できるように、場をセッティングすることが大切です。
どうしても外出が難しい場合は、家族以外の親戚や友人などに家を訪れてもらうのも選択肢のひとつです。
生活習慣病の対策
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病があると、認知症の進行が早まるといわれています。
特に起床と就寝時間が大きく乱れると昼夜が逆転し、自律神経の乱れや代謝の悪化などが起こり、病気が悪化してしまうリスクがあります。
睡眠・食事・運動をバランス良く行いましょう。
対策には以下を行ってください。
- 睡眠や食事の時間を定める
- 塩分、糖分、脂質をとりすぎない
- 適度な運動を生活に取り入れる
- 飲酒は適量にする
- 喫煙習慣をやめる
また、かかりつけ医からの指導を守ることが大切です。
まとめ
認知症は、さまざまな原因によって症状が一気に進む可能性のある病気です。
また、認知症の種類によって症状や特徴、進行度も異なります。
大切なのは、ご本人が無理せずに楽しめるようなプログラムや場の提供をすることです。
かかりつけ医からの助言も受けながら、適切に行っていきましょう。