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経管栄養とは?概要や対象者、種類ごとのメリット・デメリットを解説
経管栄養とは、脳卒中やパーキンソン病などの重い病気や高齢者といった口から食事を摂るのが困難な方の栄養不足を補う方法です。
口から食べることなく体に必要な栄養を摂ることで低栄養を予防し、生活の質を維持するために行います。
しかし、疾患の程度に合わせた適切な方法で行わなければ、十分な栄養がとれません。
この記事では経管栄養の概要や目的、種類ごとの特徴を解説します。
医師や栄養士の管理のもとで行えば、口から食べられない方の最適な栄養摂取の選択となるでしょう。
経管栄養とは
経管栄養とは、重い病気などによって口から食べられなくなった方が必要な栄養を直接消化器官から摂る人口的な栄養補給方法です。
口から食べられないことで起こる栄養不足を解消することで、筋力低下・気力低下・筋肉量低下などの弊害を防止するために行います。
胃や腸といった消化器官で栄養を直接消化、吸収することで体力を回復させるなどの効果が期待できます。
経管栄養の主な目的は次のとおりです。
- 生きるために必要な栄養分や水分の摂取
- 体の免疫機能の維持による新たな疾病の予防
- 誤嚥による肺炎の発症リスクの低減
経管栄養は胃や腸といった消化器官の機能を維持しながら、体に必要な栄養分や水分を補い、栄養不足を解消するため、チューブ等で栄養剤を注入するのが特徴です。
さらには栄養状態を維持しながら体力を回復し、本来の口から食べられる状態に戻すことも期待できます。
経管栄養の対象者
経管栄養の対象者は、口から食べられないなど十分な栄養を摂ることが困難な方です。
経管栄養が必要となる対象者は一般的に次のとおりです。
- 病気などで口から食べるまたは飲み込む力がなくなった方
- 高齢者の方で口から食べるまたは飲み込む力が衰えている方
- 誤嚥により肺炎の発症を繰り返している方
- 手術によって口から食べられない方
経管栄養は、口から食べられないまたは食べると誤嚥による肺炎の可能性がある方の対応といえます。
経管栄養のメリット
経管栄養の大きなメリットは、確実に栄養がとれることです。
また次のようなメリットもあります。
- 栄養不足や脱水状態を防げる
- 誤嚥による肺炎の発症リスクを低減させられる
- 胃や腸といった消化器官の運動や機能を促進でき、栄養状態を維持できる
- 体の免疫力の低下を防ぐことで感染症を予防できる
- 栄養法の選択によっては嚥下機能回復訓練も並行して行える
口から食べられない、飲み込めない状況が続くと栄養状態が悪くなり、体にさまざまな弊害が起こります。
しかし経管栄養はメリットばかりでなく、デメリットもあります。
経管栄養のデメリット
経管栄養は栄養が確実にとれる一方で、いくつかのデメリットもあります。
- 定期的にカテーテルやチューブを交換する必要がある
- 栄養量を適切に管理しないと栄養不足や栄養過多になる可能性がある
- カテーテルやチューブを故意に抜いてしまうと再度の挿入や再手術が必要になる
- カテーテルやチューブを衛生的に保つ必要がある
- 口腔内の唾液が減少するため、定期的な口腔ケアが必要になる
経管栄養はデメリットもあることを知ったうえで、適切な管理に努めることが大切です。
経管栄養法の種類
経管栄養法は患者の状態に合わせていくつかの種類があります。
カテーテルを鼻に挿入する経鼻栄養法やチューブを口に挿入する経口栄養法、手術により胃や腸に穴を開け栄養剤を注入する胃ろう、腸ろうという4つが経管栄養法の種類です。
次からは4つの経管栄養法について解説します。
経鼻栄養法
経鼻栄養法とは、鼻の穴のカテーテルを挿入し胃に直接栄養を補給する方法で、嚥下機能が一時的に低下した方に使用されます。
経鼻栄養法は、胃や腸の消化器官の働きに問題がなく、上手く口から飲み込めない場合の栄養法で、比較的短期間で嚥下機能が回復する見込みのある方に使われます。
経鼻栄養法のメリット
- 手術の必要がない
- 嚥下機能が回復するまでの一時的な栄養補給ができる
- 嚥下機能が回復すれば簡単にカテーテルは外せ、食事ができる
- 誤嚥による肺炎の発症リスクを低減できる
経鼻栄養法のデメリット
- 4週間以上の長期にわたり経管栄養が必要になる場合には使用できない
- カテーテルの挿入箇所を間違える可能性があるため、介護技術が求められる
- カテーテルが細いため、カテーテル内に栄養剤が詰まる可能性がある
- 定期的なカテーテル交換の際に不快感がある
- カテーテルが不快なため、患者自らが引き抜く可能性がある
- 施設によっては入居が困難な場合もある
経鼻栄養法は短期間の栄養補給としては有効ですが、カテーテルの取り扱いには細心の注意が必要な栄養法です。
経口栄養法
経口栄養法は間歇的口腔食道経管栄養法ともいわれ、栄養を摂る場合のみ口から食道までチューブを飲み込み、栄養剤の注入が終わればチューブを抜く栄養法です。
経口栄養法は本人の意識がしっかりあり経口栄養に協力的な患者が対象ですが、発声ができないまたは食道や胃の手術歴のある患者は対象外になる場合もあります。
経口栄養法は口から栄養を取る自然な食事方法で近年注目されている栄養法でメリットが多いように感じられますが、デメリットもあります。
経口栄養法のメリット
- 栄養を摂る時以外はチューブの飲み込みはないため、日常生活を過ごしやすい
- チューブの飲み込みが嚥下機能訓練になる
- 手術の必要がないため、患者本人の経済的、心理的負担が少ない
経口栄養法のデメリット
- 嘔吐反射がある患者にはチューブの飲み込みが難しい
- チューブの挿入に手間がかかる
- チューブを誤飲する可能性がある
- 発声できないまたは食道や胃の手術歴のある患者には使用できない可能性がある
患者本人にとって負担の少ない栄養法ですが、デメリットを考慮し適切な対応が必要とされます。
胃ろう
胃ろうは、お腹から胃にかけて穴を開けてチューブを挿入し、直接栄養剤を胃に注入する栄養法です。
嚥下機能に問題があっても、胃や腸の消化器官に異常がなく、栄養剤を問題なく消化できる患者に使用されます。
胃ろうはメリットの多い栄養法となっている一方で、デメリットもあります。
胃ろうのメリット
- 誤嚥による肺炎の発症リスクを低減できる
- 経鼻栄養法に比べ、注入時の不快感や負担感が少ない
- 栄養剤の量を調整できるため、必要な栄養量がとれる
- 日常生活が制限されない
- 嚥下機能訓練も可能になる
- 対応する施設が多い
胃ろうのデメリット
- チューブを挿入するための手術が必要になる
- チューブ挿入部分に肉芽など皮膚に炎症がおきる可能性がある
- 定期的なチューブの交換(6か月ごと)が必要になる
- 胃や食道からの栄養剤の逆流を防ぐため、栄養剤注入から一定時間はベッド上で姿勢を保持する必要がある
- 患者が誤ってチューブを引き抜いた場合、再手術が必要になる
胃ろうは長期的にチューブが使用でき、体力が回復すれば嚥下機能訓練も行える一方で、定期的な口腔ケアが必要になることにも注意が必要です。
腸ろう
腸ろうは、腹部に穴を開けてチューブを挿入し、直接栄養剤を腸に注入する栄養法です。
腸ろうの対象者は、胃の病気や切除によって胃ろうによって栄養がとれない患者ですが、胃ろうによる栄養法でも誤嚥や嘔吐が続く症状の方でも対象になります。
腸ろうにもメリット・デメリットがあります。
腸ろうのメリット
- 誤嚥による肺炎の発症リスクを低減できる
- 栄養剤注入時の不快感や負担感が少ない
- 必要な栄養量がとれる
- 胃や食道からの逆流が少ない
腸ろうのデメリット
- チューブを挿入するための手術が必要になる
- チューブ挿入部分に肉芽など皮膚に炎症がおきる可能性がある
- 定期的なチューブの交換(6か月ごと)が必要になる
- チューブが細いため、チューブ内に栄養剤が詰まりやすい
- 栄養剤の注入に時間がかかるため、介護者の負担が大きい
- 対応できる施設が少ない
腸ろうは胃ろうに比べると取扱いが難しいため、介護者には負担感の大きい栄養法です。
まとめ
経管栄養は、嚥下機能が低下し口から食べられない、飲み込めない患者や高齢者の栄養不足を解消するための栄養法です。
本人や家族、介護者にとって生活の質を維持するためには、経管栄養の種類や対象者、メリット・デメリットを知ることは大変重要です。
また、さまざまな種類の中から本人の状態によって経管栄養法を選択する必要があるため、医師や栄養士と相談しながら最適な選択を行うことが大切になります。
しかし、経管栄養の特徴や種類、メリットやデメリットを知っておけば、自宅での生活や在宅介護、施設入所などの検討の際の一助になるでしょう。