更新日:
MCIは早期発見が重要!セルフチェックや症状改善のためにできることを解説
認知症ではないと思うけど、最近の親の様子が少し気になる。例えば、買い物に行って同じ物をよく買ってくることなどはありませんか。もしかしたらMCI(軽度認知障害)と呼ばれる症状かもしれません。
今回はMCIとはなにか・日常生活のなかでできることについて解説します。
MCI(軽度認知障害)とは?
MCI(軽度認知障害)は健康な状態と認知症の中間ともいえる症状であり認知症の前段階として考えられています。65歳以上の4人に1人がMCIであるとされています。
厚生労働省はMCIを以下のように定義しています。
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
- 本人または家族による物忘れの訴えがある。
- 全般的な認知機能は正常範囲である。
- 日常生活動作は自立している。
- 認知症ではない。
引用:厚生労働省「軽度認知障害(けいどにんちしょうがい)」
以上をまとめると、MCIは「物忘れがあるが、日常生活への影響がほとんどない状態」であることがわかります。
MCIの原因
MCIを呈する原因にはさまざまな疾患がありますが、なかでも最も多い原因として考えられているのは「アルツハイマー病」です。
アルツハイマー病は進行性の疾患であり、アミロイドベータという物質が脳内に溜まっていくことで、徐々に記憶能力が低下することが特徴です。
MCIを呈する疾患はほかにも、進行性疾患であるレビー小体病やうつ病、ビタミン・甲状腺ホルモン不足があげられます。
認知機能障害と認知症の違い
認知機能障害は認知症の中核症状になります。
認知症の症状は「中核症状」と「行動心理症状:BPSD」の2つに分けられます。
中核症状とは記憶障害や理解・判断力の低下などの認知機能の障害を指します。行動心理症状は中核症状に伴った、本人の心理的要因・環境の要因の相互作用の結果として生じる症状(例:徘徊・暴言)のことを指します。
MCIのサブタイプと判定の方法
MCI(軽度認知機能障害)には数種類のサブタイプがあります。
以下の図で分類を示します。
MCIには記憶に障害が出る健忘型と、記憶ではなく他の認知機能に障害が出る非健忘型の2種類に分類されます。2種類に分類した後に、単一の機能障害もしくは複数の機能障害によって4通りのMCIに分類されるのです。
MCIになるとどうなるの?
MCIは健康な状態と認知症との中間ともいえる症状であることは上述しました。
MCIは対策をしないと1年で10%、5年で40%の割合で軽度認知症に移行すると考えられています。MCIから健康な状態に回復することはありますが、認知症と診断される状態に移行してからは改善することは難しいと考えられています。
MCIの症状
MCIはいくつかのサブタイプに分かれるためタイプによって現れる症状は異なります。
例えば、健忘型MCIであれば記憶障害、非健忘型MCIであれば計画の管理ができない、複数の動作が同時にできなくなるなどの症状が現れます。
これらの症状は、買い物・食事の準備・服薬管理などに影響し、早期から他者の介助が必要になることが多くなってきます。
あやしいと感じたら!MCIセルフチェックをしよう
MCIは早期から対策をすれば健康な状態に回復する可能性があります。
そのためMCIを早期に発見することは非常に重要になります。
そこで、以下のチェックリストでMCIセルフチェックをしてみましょう。
チェックリスト | ||||
---|---|---|---|---|
財布やカギなど、物を置いた場所がわからなくなることはありますか | 全くない(1点) | ときどきある(2点) | 頻繁にある(3点) | いつもそうだ(4点) |
5分前の聞いた話を思い出せないことがありますか | 全くない(1点) | ときどきある(2点) | 頻繁にある(3点) | いつもそうだ(4点) |
周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われますか | 全くない(1点) | ときどきある(2点) | 頻繁にある(3点) | いつもそうだ(4点) |
今日が何月何日かわからないときがありますか | 全くない(1点) | ときどきある(2点) | 頻繁にある(3点) | いつもそうだ(4点) |
言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがありますか | 全くない(1点) | ときどきある(2点) | 頻繁にある(3点) | いつもそうだ(4点) |
貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは一人でできますか | 問題なくできる(1点) | だいたいできる(2点) | あまりできない(3点) | できない(4点) |
一人で買い物に行けますか | 問題なくできる(1点) | だいたいできる(2点) | あまりできない(3点) | できない(4点) |
バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか | 問題なくできる(1点) | だいたいできる(2点) | あまりできない(3点) | できない(4点) |
自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか | 問題なくできる(1点) | だいたいできる(2点) | あまりできない(3点) | できない(4点) |
電話番号を調べて、電話をかけることができますか | 問題なくできる(1点) | だいたいできる(2点) | あまりできない(3点) | できない(4点) |
セルフチェックの結果が20点以上の場合はMCIの可能性があるので、近隣の医療機関を受診してみてください。
認知機能改善のために日常生活のなかでできること
MCIから認知症への進行を予防するために日常生活でできることがあります。以下では、日常生活でできる工夫について解説します。
健康的な食生活
認知症発症の原因の一つに生活習慣が関係しているのではないかと考えられています。
食生活では以下のポイントを取り入れてみてください。
- 栄養バランスの良い食事
- 抗酸化作用がある野菜・果物を摂取する
- 魚を摂取する
- ワインなどに含まれるポリフェノールを摂取する
適度な運動
生活習慣といえば食事にならび大切なのが運動です。
運動は、酸素を取り込み消費する有酸素運動(散歩、ランニングなど)は血流が良くなり脳の働きが活発になります。週に3日程度取り入れてみてください。
認知機能トレーニング
認知機能を活性化させることは認知機能の低下を予防するために必要です。
パズルやクイズなど思考力を必要とする活動は認知機能を刺激します。
そのほかにも、料理をするときに1品ずつ作るのではなく2品同時に作ってみたり、買い物を効率の良い方法でできるように計画を立てたりすることも良いでしょう。
認知機能トレーニングにこだわらずに、本人が無理なく生活に取り入れ、楽しめる活動を実施してみましょう。
MCIを早期発見するには
MCIは早期に発見し対策をすることで健康な状態に回復する可能性があります。そのためMCIを早期に発見することは非常に重要です。
MCIの診断ではいくつかの検査が実施されています。以下でそれぞれの検査について解説します。
MCIスクリーニング検査
MCIスクリーニング検査では、アルツハイマー病の原因となるアミロイドベータペプチドという老廃物を排除・弱体化する機能をもつ血液中のタンパク質を調べています。
MCIスクリーニング検査によって、MCIのリスクを検査することができます。
検査は採血のみで簡易的におこなうことが可能ですが、検査費用が2万円前後になっています。
ApoE遺伝子検査
こちらの検査は、ApoE遺伝子のタイプを血液検査で判定する検査です。
ApoE遺伝子は、認知症の原因となるアミロイドベータペプチドと関係のある遺伝子です。3種類のタイプがあり、タイプによってはアルツハイマー病のリスクが高まってしまいます。そこでApoE遺伝子のタイプを血液検査で判定するのです。
MCIスクリーニング検査と同様に採血のみで可能な検査です。費用も同様に2万円前後となっています。
医療機関へかかる際のポイント
MCIセルフチェックなどでご自身またはご両親がMCIではないかと考えられる場合は医療機関で受診してみてください。受診の際は、脳神経内科を受診すると良いでしょう。
その際に医師のスムーズな診療のためにも、日常生活で気になることを記録して伝えられるようにすることをおすすめします。
ご自身で診療科を見つけることが難しい場合は、かかりつけ医から紹介してもらうことも一つの方法です。そのほかにも、地域包括支援センターや自治体の医師会への問い合わせも良いでしょう。
MCI診断後はどうすれば良い?
MCIと診断を受けると不安を抱いてしまう可能性がありますが、MCIと診断を受けても日常生活でできることが多くあります。以下では、MCIと診断を受けた後にしたほうが良いことについて解説します。
本人の心のケアが最重要
MCIと診断を受けて一番ショックを受けているのは本人です。そのためまずは何よりも本人の心のケアを考えてください。
MCIの場合、ご自身が日常生活において失敗することが増えてきたと自覚していることも少なくありません。今後どのようになっていくかわからないという漠然とした不安をまずは解消できるように家族をはじめ周囲の人が支えていくことが大切です。
認知機能低下をサポートする介護用品を利用する
MCIは予防対策によっては健康な状態に回復する可能性があります。
そのため認知機能低下をサポートする介護用品を利用してみると良いでしょう。
MCIでは「服薬管理」に制限が起こりやすいと言われています。こちらの「週間投薬カレンダー 1日4回用」を利用することで、飲み忘れを防止することが可能です。
忘れてしまったとしても、次は忘れないようにしようと本人が取り組むことで記憶力や注意力・計画性などの認知機能を活性化することができます。
服薬カレンダーは壁にかけて使用することができるため、部屋のどこでも使用が可能になっています。
コミュニケーションをとる
MCIと診断を受けてしまうとショックで何も手につかないという状況になってしまうこともあるかと思います。そのようなときに家族や友人などとコミュニケーションをとることで、気持ちが回復して、物ごとに前向きに取り組めるようになります。
コミュニケーションをとる方法の一つとして、コミュニケーションロボットの活用も有効的で、リラックス効果も見込めるでしょう。
ペットの世話は多くの方がしてみたいと望む活動の一つです。こちらの「なでなでねこちゃんDX2」は「撫でる」と「触る」の違いを感知して鳴き声を変えるぬいぐるみです。
本当の猫の声で鳴くので、猫を飼っている気持ちになります。
まとめ
今回は認知症の前段階であるMCIについて解説しました。
MCIはいくつかのサブタイプに分かれますが、早期に発見し予防をすれば健康な状態に回復する可能性があります。
MCIが疑わしいと感じたら、セルフチェックまたは医療機関を受診してみてください。
酒井康輔
作業療法士
正しい健康の知識を届けたい。そんな想いから医療系Webライターとして活動を開始。作業療法士として臨床業務で学んだ「正しい情報を患者さまにわかりやすく伝える」ことの経験を通じて、記事を読んだ方が、介護福祉分野・医療分野に関する情報を正しく理解し、あすからの行動が変わる後押しができるような記事執筆をしている。ブログ「作業療法士kousukeのwriter office」でもご家族向けに医療情報を発信。