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特別養護老人ホーム(特養)とは?特徴やリハビリ内容を解説
特別養護老人ホームには多くの種類があり、施設を適切に選ぶためにはどのような種類やサービスがあるのかを知った上で選択しなければなりません。
この記事では特別養護老人ホームの種類や提供サービス、メリット・デメリットを解説します。
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が難しくなった要介護3以上の方が利用できる介護保険施設の一つです。介護保険制度上は「介護老人福祉施設」と呼ばれます。
特別養護老人ホームの費用
特別養護老人ホームの費用は、施設のタイプによって大きく異なります。
施設タイプごとに必要な費用は以下の通りです。
要介護3 1割負担の方を対象 |
ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | 従来型個室 | 多床室 |
---|---|---|---|---|
介護保険料 | 793円/日 | 793円/日 | 712円/日 | 712円/日 |
居住費 | 2,066円/日 | 1,728円/日 | 1,728円/日 | 437円/日 |
食費 | 1,445円/日 | |||
月の合計 (30日計算) |
129,270円/月 | 118,980円/月 | 116,550円/月 | 77,820円/月 |
※上記以外に施設独自の料金設定や加算が含まれます。また介護度が上がれば「介護保険料」も増加します。
特別養護老人ホームで受けられるサービス
特別養護老人ホームでは、高齢者が安心して暮らせるよう、日常生活を支えるさまざまなサービスが提供されています。主なサービス内容は以下の通りです。
サービス内容 | 詳細 |
---|---|
日常生活の介助 | 食事・入浴・排泄といった日常生活に必要な介助が受けられます。利用者一人ひとりの状態や希望に合わせたケアが行われ、快適な生活がサポートされます。 |
健康管理 | 看護師や提携医療機関による健康チェックが定期的に行われます。体調の変化があれば速やかに対応し、必要に応じて医療機関と連携します。 |
機能訓練 | 機能訓練指導員が個別にリハビリを行い、身体機能の維持・向上を目指します。利用者が自分らしい生活を続けられるようサポートします。 |
レクリエーション・イベント | 季節ごとの行事や趣味活動、地域との交流イベントなど、社会参加の機会が提供されます。生活にメリハリができ、認知機能の維持や孤立感の軽減を図ります。 |
食事の提供 | 管理栄養士が考えたバランスの良い食事が提供されます。嚥下障害や特別な食事制限が必要な方にも個別対応が可能です。 |
相談支援 | 利用者や家族からの相談を受け、必要に応じてケアプランの見直しや生活面での助言を行います。 |
特養は終身利用できる施設も多く、24時間体制で介護を受けられます。
特別養護老人ホームの種類
特養は大きく3種類に分類できます。
さらに、入居するタイプの特養にはユニット型(10名程度の入居者をひとつのグループとした少人数制のケア方法)と従来型(多くの入居者をケアする方法)があり、それぞれ大きく異なった特徴を持つため、利用する際は確認しておきましょう。
広域型特養
広域型特別養護老人ホーム(特養)は、全国で最も一般的な種類の特養で、全体の大半を占める施設です。令和5年時点では、全国に8,494か所が設置されています。
広域型特養の最大の特徴は、入居条件に居住地の制限がないことです。現在住んでいる市区町村とは異なる地域にある施設でも入居が可能なため、遠方の施設も選択肢に入れることができます。
そのため、家族の近くで暮らしたい場合や、希望する地域での生活を望む方にも適した施設と言えます。
さらに、広域型特養は入所定員が30名以上と定められており、100床前後の大規模な施設が多いのも特徴です。
地域密着型特養
地域密着型特別養護老人ホーム(特養)は、2006年の介護保険法改正で設けられた小規模型の特養です。施設が所在する市区町村に住んでいる要介護3以上の方が対象で、入居定員は29人以下とされています。
令和5年時点で全国に2,502か所設置されており、広域型特養と比べると施設数は少ないのが特徴です。
地域密着型特養には、「サテライト型」と「単独型」の2種類があります。
サテライト型
サテライト型は、地域密着型特養の一種で、本体施設と連携しながら別の場所で運営される形態です。本体施設からおおむね20分以内の距離に位置し、運営基準が一部緩和されている点が特徴です。
たとえば、本体施設が広域型特養の場合、サテライト型では「医師や栄養士、ケアマネジャーの配置が必須ではない」「簡易的な調理設備を設けることで調理室の代用とする」などの基準で運営が認められています。
単独型
単独型はサテライト型とは異なり、本体施設を持たない地域密着型特養です。この形態では、施設単独で広域型特養と同等の設備やサービスを提供しており、小規模ながらも質の高いケアが特徴です。
多くの単独型施設は、個室とリビングを組み合わせた「ユニット型」の居室を採用しており、少人数のアットホームな雰囲気の中で入居者が生活できる環境を整えています。
また、ショートステイやデイサービス、小規模多機能型居宅介護を併設している施設も多く、利用者の多様なニーズに柔軟に対応できる点も魅力です。
地域サポート型特養
地域サポート型は、在宅で介護を受けている高齢者を支援するためのサービスで、24時間体制の見守りや生活支援を提供します。
日常生活に不安がある方や、要介護認定は受けていないものの、見守りや援助を希望する65歳以上の高齢者が対象です。
地域サポート型の主なサービスには、生活援助員による日中の巡回訪問、看護師による夜間の相談対応や緊急時のサポートなどがあります。
また、在宅介護を行う家族の悩みや相談にも対応しており、在宅介護を支えるために活用できるサービスです。
ただし、地域サポート型特養は全国的にまだ普及しておらず、サービスを利用できる地域が限られています。
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特別養護老人ホームの入居状況
特養の入居状況については、国全体と各地域の2つに分けて考える必要があります。
調査結果をそれぞれ参考にしながら解説します。
空き状況・待機期間
厚生労働省による特別養護老人ホームの入所申込者の状況の調査によると、令和4年度で25.3万人が特養に入所を申し込んでいるものの、待機状態にあることが分かっています。
多くの方が入所を待っている状況に思えますが、介護保険法の改正が行われたことによって待機者数は以前より減少したと言われています。
実際、前回の平成31年度調査時では、待機者29.2万人でした。
2015年の法改正により、原則として要介護3以上の方でないと特養を申し込めなくなり、特養入所の待機者が減少したのです。それでも、申込者全体の数を見ると2016年以降は増加傾向にあります。
しかし、入所申込者数が増加しているからと言って日本全国で待機期間が長くなっている訳ではありません。地域によってかなりの差が生じています。
入居しやすさには地域差がある
入所申込者数が2015年以降に増加傾向にあることについては「令和元年度の特別養護老人ホームの入所申込者の実態把握に関する調査研究」で報告されています。
しかし、入所申込者数が増加傾向にある中でも、待機期間は同地域であっても大きく差が生じています。
例として東京都の入居待ちの人数を見てみましょう。
令和4年10月末時点で、東京都で最も待機者数が多いところは1,824人とされています。最も少ないところは3人です。
待機者数の情報は「【特養・老健】空床・入所待ち情報提供システム」で閲覧することができる地域もあります。各都道府県や市町村がデータを公表しているため、利用を検討している方は参考にしてみると良いでしょう。
また、入居待ち人数は地域差もあります。令和4年10月末時点で東京都の入居待ちの人数は最大で1,824人なのに対し、隣県の山梨県は最大で533人となっています。
待機期間の平均
「令和元年度の特別養護老人ホームの入所申込者の実態把握に関する調査研究」によると、特養の入所待ちの期間は3〜6カ月が最も多い値を示しています。
その次に多い待機期間は5年以上で15.6%です。
施設種別にみると、待機期間1年以内の方は広域型で43.6%、地域密着型は55.1%とされており、地域密着型のほうがわずかに待機期間が短くなりやすい傾向にあると予想されるでしょう。
しかし、地域や施設による待機期間の差は非常に大きく、平均とはかけ離れることも多いため、入所を希望される地域や施設を確認してみてください。
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特別養護老人ホームで行われるリハビリ
特養は生活の場を提供する施設です。介護を受けながらも、なるべく長く利用者らしい生活を続けられるように支援します。
老人保健施設(老健)のようにリハビリを積極的に行って在宅復帰を目指す施設ではないため、生活の場の中でのリハビリが主になります。
廃用症候群の予防
特養は、利用者のリハビリを担当する機能訓練指導員が必ず配置されます。
機能訓練指導員は、利用者に対して主に廃用症候群の予防を含めた機能訓練の計画を立て、他職種と連携しながら機能低下予防を図ります。
廃用症候群とは、活動量が低下したことによって身体にさまざまな不調を起こす状態のことを指します。
特養の機能訓練指導員の配置数は施設に対して一人以上とされており、老健などのリハビリ施設と比較すると少なく感じるでしょう。
そのため、他職種と連携しながら日中の生活支援、座った状態で他者と交流する機会を設けるなどの訓練を行い、今まで「していたこと」や「できること」をなるべく続けられるようにかかわることで、廃用症候群を予防します。
生活上のサポート
特養では個別で機能を維持・向上させるための積極的な運動をするよりも、生活リハビリと呼ばれる支援を中心に行うことが多い傾向です。
生活リハビリとは、日常生活の動きすべてをリハビリと捉えて支援する考え方のことを指します。
たとえば以下のような生活動作もリハビリと捉えることができるでしょう。
- ベッドからトイレに向かう
- お風呂に入る
- テーブルを拭く
それぞれの生活動作の中には、立ち上がりや歩行、段差の昇降、バランス保持などの動作が含まれています。
特別養護老人ホームのメリット
特養には以下のようなメリットがあります。
- 入居コストを抑えられる
- 終身利用が可能
- 24時間体制で介護を提供
それぞれ、非常に魅力のあるメリットです。以下に順を追って解説します。
入居コストを抑えられる
特養は入居できる施設の中でも比較的コストが安いというメリットがあります。その理由としては以下の3つの理由が挙げられます。
- 医療費控除が使える
- 公的な介護保険施設である
- 入居一時金がかからない
特養の利用料は医療費控除の対象となり、日常生活費などを除いて施設サービスに対する支払いの自己負担額の2分の1に相当する金額が控除されます。
また、公的な介護保険施設であるため介護保険サービスが利用でき、介護サービス費の自己負担額は1〜3割に抑えられます。
さらに、有料老人ホームのように入居一時金といった初期費用もかかりません。
終身利用が可能
特養は「終の棲家」の代表施設の一つに数えられ、終身利用が可能です。入所期限が決まっておらず、看取りまで対応することが可能な施設です(対応していない場合もあるため確認が必要です)。
終身利用を考える際は、以下の2点に注意する必要があります。
- 入所期限があるか
- 看取り対応が可能か
入所期限のある施設の例としては老健が挙げられます。
老健の基本方針として「その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない」という内容が記載されており、約3カ月を目安にして老健の利用継続の必要性が審査されます。
特養は入所期間に制限はなく、一般的に看取り対応を見越した施設です。
24時間体制で介護を提供
特養は夜間の人員配置基準についても決まりがあります。従来型、ユニット型どちらのタイプでも最低1名以上は夜勤職員が必要とされています。
また、入所者の人数にあわせて夜勤職員の配置数も増加する基準があり、24時間体制で介護できる環境にあることもメリットといえるでしょう。
施設によっては、夜間の職員配置が義務付けされていないところがあります。
たとえば、サービス付き高齢者向け住宅では夜間の職員配置は必須ではありません。
夜間に職員が配置されていることは、介護が必要な方にとって安心して暮らしやすい環境だと言えるでしょう。
特別養護老人ホームのデメリット
費用が安く、24時間体制で介護支援が受けられ、終身利用が可能という大きなメリットを持つ特養ですが、以下のようなデメリットもあります。
- ユニット型は費用が高い
- 手厚い医療ケアは受けられない
- 入居できないこともある
それぞれ見ていきましょう。
ユニット型は費用が高い
特養は入居コストが抑えられるというメリットを解説しましたが、ユニット型の施設の場合、介護保険施設のなかでも費用が高めになるため注意が必要です。
国は食費や居住費の標準的な金額を基準費用額として定めています。
基準費用額に含まれる居住費において、従来型よりもユニット型の金額が高く設定されています。
また、施設によっては特別室料を設けている施設もあり、1日あたり2,000~3,000円必要となる場合もあるため、利用前に確認しておきましょう。
手厚い医療ケアは受けられない
基本的に介護ケアを中心とした施設では手厚い医療ケアを受けることは難しいと考えましょう。
特養は「要介護高齢者のための生活施設」という特性を持ち、医療ケアを中心とした施設ではありません。
医師の配置基準については「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」とされており、常勤の医師が配置されなくてもよい決まりになっているのです。
看護師は必ず常勤で1名以上は必要とされていますが行える医療行為の範囲は限られます。
また、夜間の看護師の配置がない施設もあるため、緊急対応や常時の医療ケアについては病院との連携が必要です。
入居できないこともある
介護保険法では「正当な理由なく介護サービスの提供を拒んではならない」という提供拒否の規則が設けられています。
しかし、裏を返せば、正当な理由があれば介護サービスの提供を拒むことも可能ということになるでしょう。
正当な理由としては、手厚い医療ケアを要する利用者の対応が難しく安全性が担保できないために入居を断るなどが考えられます。
そのほか、感染症を患っていてほかの入居者にうつってしまう可能性が高かったり、認知症などの影響で周囲の方をケガさせたり、自身を傷つけてしまったりする方など、入居者本人やほかの入居者が安全に暮らせないと判断された場合には入居できないこともあるでしょう。
入居基準は施設によって異なるため、入居できない場合はケアマネジャーや地域包括支援センターと相談することがおすすめです。
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養護老人ホームとの違い
特別養護老人ホームと養護老人ホーム、名前は非常に似ていますが、それぞれまったく異なる性格を持っています。比較した表は下記のとおりです。
特別養護老人ホーム | 養護老人ホーム | |
---|---|---|
施設の性格 | 要介護者を養護することを目的とする | 入所者を養護し、社会的活動に参加するために必要な指導および訓練その他の援助を行うことを目的とする |
対象者 | 原則 要介護3以上 | 自立している高齢者 |
市町村の審査の必要性 | 無し | 有り |
費用 | 約8〜13万円(1割負担) | 約0〜14万円 |
利用できる介護保険サービス | 介護福祉施設サービス | ・特定施設入居者生活介護 ・訪問介護や通所介護など の居宅サービス |
出典1:厚生労働省「養護老人ホーム・軽費老人ホームの現状等について」
出典2:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
設備や居室のタイプについての違いはほとんどありません。ただし、上記のように対象者や入居の条件、サービス内容などに大きな差があります。
養護老人ホームは入居者の社会復帰を目的とする施設であり、長期間の利用は難しい施設です。
また、養護老人ホームでは基本的に介護サービスを受けられません。対象者は主に「自立している高齢者」であり、介護が必要になった場合には外部の介護サービスなどを活用します。
さらに、大きな違いとしては養護老人ホームには、「市区町村の審査」があり、行政が必要と判断した場合に入居可能です。
在宅介護との違い
特養のような施設介護と在宅介護の違いは、受けられる介護量や人的環境にあります。
施設介護の場合、24時間介護サービスを受けられるため、介護が必要な方でも安心して生活できるでしょう。
また、他の入居者もいるため、常に誰かと過ごすことができ、不安や孤独感の軽減が期待できます。
在宅では、一人になる時間も増え、住み慣れた住居で自由に生活できるでしょう。
しかし、他者とのかかわりが減ることで、認知症の発症や進行が懸念されます。介護サービスを導入することで、安心感は増しますが、24時間のサポートは不可能です。
家族環境や住宅環境によって選択肢は変わりますが、どちらが適した環境かをメリット・デメリットを理解した上で十分に検討しましょう。
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まとめ
特別養護老人ホームのサービスやメリット・デメリットを解説しました。
特養と言っても、従来型やユニット型、地域密着型や広域型など、施設形態はさまざまです。
職員の配置状況や病院との連携状況も異なるため、施設を選ぶ際は見学や相談をして疑問がない状態にしておきましょう。
特養は比較的安い費用で利用でき、24時間介護を提供し、看取り対応も可能な施設のため、申込者も多くなります。
すぐに入居できることは少なく、待機期間が発生することも頭に入れておきましょう。
施設入所について不安がある場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターで相談し、納得のいく施設を探しましょう。
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森田 亮一
理学療法士・ケアマネジャー
理学療法士10年目。山梨県内で新卒時点から介護業界で働き続けています。経験したことのある事業形態は、通所系・訪問系・入所系などさまざまであり、管理に携わったこともあります。 2021年から、資格と経験を活かして文筆業に挑戦し始めました。多岐にわたる経験から得た知見を活かし、悩みを抱えた方の問題解決のお役に立てたら嬉しく思います。