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安全に使用するために、“福祉用具の事故”を知っておこう
介護用ベッドなどの福祉用具は、介護保険では貸与(レンタル)できます。介護が必要になったときに借りられ、必要な福祉用具を自宅まで運んでくれて、さらに福祉用具専門相談員(以下、専門相談員)が組み立てや設置・調整等をしてくれます。利用者は、282万人(出典:厚生労働省介護給付費等実態統計) で、デイサービスや訪問介護よりも多くの高齢者に利用されています。それだけ多いことから、また利用者は、介護が必要な高齢者が多いこと、使う側が操作に慣れていないこと等から、操作を間違えることもあります。残念ですが事故も報告されています。
今回は、どのような事故が多いのか具体的に紹介します。事故にならないようにするために、知っておいて欲しいからです。
重大事故は公表されている
治療期間が30日以上の重大な事故の場合は、法律に基づいてメーカーは、報告の義務があります。この対象には、福祉用具があります。消費生活用製品の重大事故として消費者庁から公表されています。消費生活用製品は広範囲なので、この中から福祉用具だけを抽出して厚生労働省は公表し、注意喚起をしています。都道府県のホームページにも掲載されています。
また介護保険では、レンタルする事業者に対して事故発生時の対応として、市町村、利用者家族と利用者の担当ケアマネジャー(居宅介護支援事業者等)に福祉用具貸与事業者は連絡を行うことと決められています。事業者は介護保険では、「常に、清潔かつ安全で正常な機能を有する福祉用具を貸与しなければならない」と指定基準で定められています。
そのためレンタルする介護用ベッド、歩行器、車いすなどは、レンタルが終了するごとに、消毒され、点検がされます。また、レンタル期間中は、事業者の専門相談員がモニタリングという状況確認を行います。そのときに、メンテナンスチェックもします。車いすならブレーキの利きや、介護用ベッドならリモコン操作や異音の有無などです。使用での困りごとや、使用の様子などを利用者・家族に聞き取ったりもします。
福祉用具そのものは正常であっても、「うっかりミス」等による事故・ヒヤリハットがあるからです。
実際の場面では、福祉用具の不具合という製品起因よりも、使う側に起因した、あるいは人と使用環境という2つの要因が重なるということもあります。
歩行器が路面の傾斜で片流れし、歩道から出そうになり、慌てて歩行器を捕まえた、というような事例です。路面の傾斜という環境があり、傾斜や坂道という環境では、力の弱い利用者は、ハンドルを取られやすいということがあるという事例です。
参考:日本福祉用具供給協会 事故の防止に向けた福祉用具専門相談員の留意点、モニタリング編
多い介護用ベッド柵の挟み込み
消費者庁から公表された福祉用具の重大事故を種類別に分類すると、介護用ベッド柵(サイドレール)の挟み込みが多いことがわかりました。手や足を挟むことによる骨折や、頭部の挟み込みでの死亡事故です。柵の隙間、あるいは柵と柵の隙間に挟む事故が多く報告されています。
メーカー団体である、医療・介護ベッド安全普及協議会によると、重大事故の件数別では、柵の隙間が最も多く33件、次いで、柵と柵の隙間が16件、柵とボードの隙間、柵とマットの隙間がともに11件となっていました。重大事故に至らない軽微な事故やヒヤリハットがどれくらいあるかは、わかりませんが、もっと多いことは十分考えられます。
リモコンを介護者が操作する場合、手足が柵の隙間に挟み込んでいることが見えないことが考えられます。挟み込まないように隙間にカバーをつける、操作時に手足の位置を確認する、また柵の隙間での重大事故を受けて、JISという規格が見直しされています。JISに適合したベッドかどうか、確認するとよいでしょう。専門相談員にお尋ねください。
ベッド周りでは転倒による事故のリスクもあります。ベッド柵はもともとベッドからの人や布団の転落を防ぐためであり、取り外しができます。体を支えるためではありません。柵に摑まってグラグラして、転倒ということもあるので、立ち上がりにはベッド用の専用の手すりがあります。特殊寝台付属品として、ベッド用手すりは介護保険でレンタルできます。
動画やイラストシートは、目で見てわかる
専門相談員はレンタルするときに注意事項の説明と共に、注意点を書いた福祉用具サービス計画書を渡してくれます。是非、注意点は読んで欲しいですが、聞いたり、一回読んだだけでは、わかりにくいと思います。
医療・介護ベッド安全普及協議会では、動画を作成し、ホームページで公開しています。使い方や事故事例と注意点などがわかりやすく解説されています。「介護ベッドを安全に使用するには?(15分)」と「医療・介護ベッドに潜む危険(9分40秒)」の2本があります。
テクノエイド協会では、事故・ヒヤリハット情報を収集し、福祉用具の種類別等に分類し、解説と、人・モノ・環境に分けて要因を記載したイラストシートを公表しています。例えば下記のようなものです。
Case:204
落ちた手元スイッチを拾おうとして、ベッドの柵(サイドレール)から腕が抜けなくなったり、転倒しそうになる
場面の説明
手元スイッチが落ちてしまったので、寝たまま腕を伸ばして取ろうとしたが、腕がベッドの柵(サイドレール)にはまり込んで抜けなくなり転落しそうになった。
出典:テクノエイド協会 福祉用具「事故・ヒヤリハット」情報
解説とともに、参考要因が書いてありますが何よりも、その場面のイラストが掲載されていることで、一目で状況がわかります。危険性がわかります。こうした事例ごとに、印刷できるようになっていますし、二次元バーコードで読み取ることも可能です。介護に携わる人には見てほしいと思います。専門相談員はダウンロードして、利用者の説明に使って欲しいです。
まとめ
危険だから使わないのではなく、こんな事故があると知っておくことで、安全な利用につながります。専門相談員は、どこで使用するのか、使用頻度や使用場面、利用者の状態状況に合わせて、どのような機能がよいかといった選定を行い、使用の説明や指導をします。レンタル後は、使用状況の確認をします。これらは、安全な利用のためです。
東畠 弘子
国際医療福祉大学大学院 福祉支援工学分野 教授
全国福祉用具専門相談員協会(ふくせん)理事
日本福祉用具供給協会顧問
2011年国際医療福祉大学大学院入職、2016年から現職。2023年度ふくせん老健事業「福祉用具専門相談員指定講習カリキュラムの見直しに向けた調査研究事業」の委員長をはじめ、数々のふくせん老健事業で委員長や委員を務める。 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の構成員でもある。



