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片麻痺の住宅改修ポイント
片麻痺のある方が自宅で安全に動くためには、まず毎日必ず使う場所から順に整えることが重要です。玄関・トイレ・浴室の3領域で「向き直る」「つかむ」「座る」の手順を安定させ、麻痺側・利き手・主な動線に合わせてレイアウトを微修正していくと、転倒のリスクや疲労度は大きく下がるでしょう。
玄関・トイレ・浴室から整える
最小の改修で最大の効果を狙うには、毎日の移動で“止まる位置・つかむ位置・座る位置”が必ず発生する3か所を優先します。段差は“またぐ”ではなく“一度つかんで体を寄せる”動きに置き換え、可動域や筋力に合わせて高さ・向き・手すりの連続性をそろえると安定します。
利き手・麻痺側に合わせた配置
麻痺側で体重を支える時間が長いと疲労やふらつきが生じやすく、逆に健側に頼りすぎても偏りが強くなります。基本は「健側でつかみ、麻痺側で体重を“置く”」配置です。
玄関は上がり框の直角位置に手すりや据置き支柱を置き、健側が先に掴める角度をキープ。トイレは便器の斜め前にアプローチして、回転半径を小さくします。浴室は入口で向きを決め、洗い場で座位に移ってから次の動作へ。どの場所も“掴み替えの回数を減らす”と疲れにくいでしょう。
段差・手すり・スペース確保
段差越えは「踏み換え→寄せ→座る(または立つ)」の三分割に。上がり框や浴槽縁は、手すりの高さが肘軽度屈曲になる位置に設定します。トイレは前方・側方いずれの移乗も選べるよう、便器中心から左右に最小45〜50cmの空間が目安です(難しければ優先側だけでも確保)。
マットやラグはめくれを誘発するため極力撤去し、必要な滑り止めは薄手で段差を作らないものを選びます。動線は“角で体を回す”意識で、コーナーに支柱型手すりを置くと有効です。
介護用品レンタルの活用
住まいに穴をあけず導入しやすい据置き・クランプ式の介護用品の一例です。
あがりかまち用たちあっぷミニ
玄関の上がり框で“掴んでから一段”を作れる据置き支柱。狭い框でもベースが干渉しにくい薄型設計で、健側での把持→麻痺側荷重の順に動作を整えやすいモデルです。
項目 | 内容 |
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サイズ・重量 | ベース69×43cm/手すり高さ80〜85cm(ピッチ調整)/約21kg |
対応段差の目安 | 上がり框4〜18cm程度に好適(設置場所により異なります) |
介護保険利用時 | ¥408/月(レンタル・1割負担) |
自費 | ¥4,080/月(レンタル) |
主な特長 | 薄型ベースでつまずきにくい/握り径が手になじみやすい/工具不要の微調整 |
洋式トイレ用スライド手すり
便器を囲むフレームで立ち座りを安定化。前方・側方いずれの移乗にも対応し、左右高さを微調整して麻痺側・健側のバランスを取りやすい構造です。
項目 | 内容 |
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サイズ・重量 | 幅65×長さ46×高さ58〜74cm/約8.5kg |
対応便器 | 一般的な洋式便器に対応(後方タンク式・温水洗浄便座可) |
介護保険利用時 | ¥306/月(レンタル・1割負担) |
自費 | ¥3,060/月(レンタル) |
主な特長 | スライドで便器中心に合わせやすい/肘当てで起立動作を後押し/床を傷つけにくい脚キャップ |
ユニットバス対応浴槽手すり UST-130UB
浴槽縁にクランプ固定するタイプ。“またぐ”を“つかんで寄せる”に置き換え、片脚ずつ落ち着いて跨ぎやすくします。ユニットバスの縁に合わせた当たり面で安定性を確保します。
項目 | 内容 |
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サイズ・重量 | 手すりの高さ11~20cm(4段階)/適合浴槽縁幅4.5~13cm/約4.5kg |
取付条件 | 水平で強度のある浴槽縁に取り付け(R形状・薄肉は不可の場合あり) |
介護保険利用時 | ¥4,180(購入・1割負担/特定福祉用具) |
自費 | ¥41,800(購入・税込) |
主な特長 | 工具不要の固定ノブ/把持部は濡れても滑りにくい/撤去跡が残りにくい |
まとめ
片麻痺の住宅改修は、玄関・トイレ・浴室を優先し、麻痺側と利き手に合わせて“掴む位置・向き・高さ”を整えるのが近道です。段差は一気に越えず三分割、掴み替えを減らし、コーナーで体を回す導線にすると安全性は高まります。レンタルできる介護用品を組み合わせ、日常の反復動作を安定させれば、移動の不安は着実に小さくなるでしょう。住まいと体に合った設定を家族で共有し、少しずつ微調整を重ねていきましょう。