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入浴介助で使うシャワーキャリーの選び方
濡れた床・温度差・狭い動線という条件下で入浴介助を安全に進めるには、シャワーキャリーの適合と動線設計が重要です。自走/介助、座面形状、耐水性とメンテナンスのしやすさを見極め、浴室の段差や回転スペースと合わせて検討すると、介助負担が軽減できるでしょう。
選定の基本を押さえる
シャワーキャリーは「誰が動かすか」「どこで使うか」「どこを洗うか」で大枠が決まります。本人の体格・関節可動域・座位バランス、介助者の身長差や浴室の幅・段差とあわせて総合判断します。
自走・介助と座面形状
- 自走型/介助型:自走型は大車輪で本人の主体性を保ちやすい一方、浴室の回転にスペースが要ります。介助型は小回り重視で、狭い脱衣所〜洗い場の取り回しに強いです。
- 座面形状:U型は前面からの洗身が行いやすく、陰部ケアの視認性が高い形。O型は面支持が広く座圧が分散しやすいです。長時間の利用や皮膚トラブルがある場合はクッション性も確認します。
- ひじ掛け・フットサポート:跳ね上げ式は移乗がスムーズ。足部はスイングアウト・着脱ができると、便座や浴槽への近寄りが安定します。
- 座面高と前座高:ベッド・便座・シャワーベンチとの段差を最小化すると、持ち上げずにスライドで移せます。靴底厚みも含めた高さ合わせが肝要です。
耐水性とメンテナンス
- フレーム材質:アルミ・ステンレス・樹脂は防錆性に優れ、軽量で取り回しが容易です。スチールは強度に優れますが、塗装の剥がれや錆に注意します。
- 金具・ベアリング:防錆処理やシール構造が施されているかを確認。毛髪・石けんカスが絡むと回転が重くなるため、使用後の流水洗い→水切り→乾燥をルーチン化します。
- 座面・背もたれ:PUフォームやソフトパッドは冷たさを軽減。取り外し洗浄可否、交換部品の入手性もチェックすると運用が安定します。
- 保守:キャスター摩耗、ブレーキ効き、ボルト緩みは月次点検を。異音・がたつきは事業者・メーカー窓口へ(ベッド購入後のメンテナンスは当店では行っておらず、メーカー対応となります)。
浴室動線と設置を工夫する
動線は居室(段差)→脱衣所(回転)→洗い場(停止)→洗身動作(姿勢保持)の順にボトルネックを解消します。実寸・写真・動画で現場を共有すると、選定が速くなります。
段差解消と回転スペース
- しきい段差:スロープや段差解消マットで2〜3cmでも解消すると押し込み力が大きく軽減。タイヤ径が小さい機種は段差に弱いので、事前実測が必須です。
- 回転半径:最低でもキャリー全長+30cm程度の余白があると向き換えが容易。介助者の退避スペースも確保します。
- 排水勾配:洗い場の傾斜が強いと自走・駐車が不安定です。停止位置は勾配上端に取り、車輪軸が直線になるように。
脱衣所・浴室の配置
- 脱衣所には手すり+着脱スペースを。衣類・タオルは手が届く高さの棚へ集約し、床の物品を減らします。
- 洗い場ではシャワーフックをやや高めに設定し、ホースが足に絡まないルートを確保。石けんボトルは壁面ラック等で上に逃がします。
- 便座兼用で使用する場合は、便座の高さとキャリーの前座高を合わせ、横移乗のスライド距離を短縮します。
介助のコツと安全確認
入浴時は普段より体温・血圧変動が起きやすい場面です。声かけ→ブレーキ→足部→姿勢の順に安全を固めます。
声かけ・ブレーキ・フットサポート
- 声かけ:「今から止まります」「右足上げます」など短文+結果で共有。反応が遅い日はテンポを落とします。
- ブレーキ:停止→左右ブレーキ確認→足台を跳ね上げる/外す→移乗、の一定手順を徹底。濡れた床での片輪ブレーキは滑るため、左右同時に。
- フットサポート:移動時は踵が確実に乗る位置へ。洗身中は足台を外し、足底設置で姿勢を安定させます。
- ベルト類:骨盤ベルトは前かがみでの滑り落ち防止に有効。皮膚トラブルがある場合はタオルを一枚かませます。
ヒヤリハットの予防
- 入室直後の立ちくらみ、洗い場の石けん残り、ホース・足台へのつまずきが典型です。チェックリスト化し、家族・事業所で共有します。
- 入浴前後のコップ一杯の水分、脱衣所の20℃前後維持、湯温は37〜40℃を目安に。
- 洗身は上半身→下半身の順で短時間に。疲労が強い日はシャワー中心へ切り替える柔軟さも大切です。
ヤマシタすぐきた掲載商品
商品名 | 主な特長 | サイズ | 介護保険利用時の負担額 |
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移動もできるシャワーチェア ウーゴ君 | 自在回転キャスターによりスムーズな移動や転回が可能 | 幅49×長さ74.5~80×高さ77~81.5cm | 9,680円 |
くるくるチェアD U型シート | 座面が360度回転し狭い浴室でも楽に介助ができる | 幅47×長さ85×高さ86~94cm | 26,600円 |
まとめ
入浴介助の安全は、適合したキャリー+整った導線+正しい手順で高まります。自走/介助、座面形状、耐水メンテの観点で機種を選び、段差解消と回転余白を確保しましょう。現場では「声かけ→ブレーキ→足部→姿勢」の順で確認し、疲労が強い日はシャワー中心へ切り替える柔軟さも大切です。道具と手順を整えれば、入浴の安心と楽しみを取り戻せるでしょう。