更新日:
リハビリの目標設定と見直し
思い描く暮らしに近づくには、「測れる目標」と「続ける仕組み」が必要です。長期・短期・行動の三層で道筋を作り、日常のスケジュールに落とし込み、変化に応じて見直しましょう。この循環が回り出すと、回復の手応えは確かなものになるでしょう。
目標設定
目的は「何ができるようになりたいか」で、目標はそこへ向かう到達点です。曖昧な願いを、測定できる表現に置き換えると、関わる全員の足並みがそろいやすくなります。
長期・短期・行動目標
長期目標(3〜6か月):生活の質に直結するゴールです。例「杖で自宅周辺500mを休まず歩く」「一人で浴槽の出入りが安全にできる」。
短期目標(2〜4週間):長期へ向かう階段です。例「6分間歩行で420m」「椅子からの立ち上がり10回を60秒以内」。
行動目標(毎日〜毎週):具体的な実行内容です。例「朝昼夕に足首体操各20回」「火木は近所の公園まで往復」。
三層を“上から整合・下から実行”でつなげると、迷いが減り進捗が見えます。本人の価値観(外出、家事、趣味、役割)に根ざした表現へ言い換えると、継続力が高まるでしょう。
測定指標と期限
指標はシンプルで再現性が高いものを選びます。歩行なら歩数・歩行速度・連続歩行距離、上肢なら到達距離や操作時間、日常動作なら「入浴に要した手順・所要時間」など。
期限は“少し背伸び+現実的”がコツです。達成率が50%未満なら難易度を調整、90%超が続くなら次の段へ。達成/未達の二択ではなく、改善幅で評価すると前進が可視化されます。
日常に落とし込む
目標はカレンダー上の行動になって初めて力を持ちます。時間・場所・人を固定し、迷いを減らす仕掛けを用意すると続けやすいです。
スケジュール化と記録
・時間割:起床後・昼食前・就寝前など既存の習慣に寄り添う配置が効果的です。移動や準備が少ないメニューから据えると失敗しにくいでしょう。
・トリガー:歯みがき後にバランス練習、テレビの天気予報中に足踏み——行動連結で習慣化します。
・記録:チェック式カレンダーやアプリで実施/痛み/疲労度を1分で記せる形に。週末に合計回数と体調コメントを振り返ると、自己調整が進みます。
・安全:痛み増悪や息切れが強い日は量を半分に。眠気を誘う薬の後は転倒リスクが上がるため、座位中心のメニューへ切り替えると安心でしょう。
家族・事業所との共有
・情報共有:「今週の目標」「できた・難しかった」を連絡ノートやアプリで簡潔に。写真・短い動画は質の高いフィードバックに役立ちます。
・役割分担:家族は実施の声かけと環境整備、セラピストは負荷調整とフォーム確認、ケアマネはスケジュールとサービス調整——誰が何を支えるかを明確にします。
見直しのタイミング
見直しは失敗の証ではなく、次の適正負荷を探す作業です。定期点検と臨時点検を併用すると、無理なく前に進めます。
状態変化・生活変化への対応
・定期点検:2〜4週間ごとに指標を再測定し、量(回数・距離)と質(姿勢・フォーム・安全)を評価。達成が続く項目は負荷を10〜20%上げ、未達が続く項目は目的は維持・方法を変更の原則でメニューを組み替えます。
・臨時点検:転倒・入院・痛みの増悪、家族の支援体制や通所スケジュールの変更時は、目標を小さく分割して再設定します。
・季節・環境:猛暑や寒波、段差工事、家具の入替えは実行性に直結します。屋内版/屋外版の代替メニューを事前に用意すると中断を防げるでしょう。
・モチベーション:停滞期は“成果の見える化”を強化。回数より所要時間、距離より痛みの自己評価など指標の切り替えも有効です。達成ごとに小さなご褒美を設定すると続きます。
まとめ
リハビリは長期・短期・行動の三層設計で道筋を作り、測定指標と期限で進捗を可視化し、日常に載せて回し続ける営みです。無理のない負荷で継続し、生活の目標に寄り添って更新し続ける——その姿勢こそが最大の推進力でしょう。