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フレイルと転倒の関係と対策
フレイルは筋力や持久力の低下だけでなく、注意力・食欲・社会的つながりの弱まりが同時に進む状態です。これらは転倒の起きやすさに直結します。住環境の小さな段差や照明不足も重なりやすいため、体づくり・生活習慣・住環境などを並行して整えると予防効果が高まるでしょう。
フレイルが転倒に及ぼす影響
転倒はひとつの要因では起こりません。筋力・バランス・認知・栄養・住環境の要素が重なり、つまずきや立ちくらみ、判断の遅れとして現れます。特に夜間トイレや段差越え、立ち上がり・座り込みの瞬間に集中しやすいでしょう。
筋力・認知・栄養の視点
・筋力・バランス:太もも前(大腿四頭筋)とふくらはぎの弱りは歩幅を小さくし、つま先が上がりにくい=つまずきやすい状態を招きます。
・認知・注意:二つの作業を同時に行うと注意が散り、歩行中の電話・会話で足元への警戒が落ちることがあります。
・栄養:たんぱく質・エネルギー不足は筋回復を妨げ、低体重や脱水はふらつきの要因です。口腔機能の低下も摂取量に影響します。
・服薬:眠気や立ちくらみを生む薬剤があるため、気になる場合は主治医や薬剤師へ相談するとよいでしょう。
住環境要因の洗い出し
・段差・敷居・ゆるい傾斜、厚手ラグのめくれ。
・暗い廊下やトイレ、足元の影。センサーライトの未設置。
・浴室・玄関の濡れやすい床、雨天時の滑り。
・手すり不足、動線上の物の置きっぱなし、コード類。
・ベッドやいすの座面高が合わず、立ち上がりで前屈み+勢い任せになっている。
・靴のサイズ・ソールの硬さ不一致、踵が抜ける室内履き。
住まいは「最も躓きが起きた場所から順に」整えると効果を実感しやすいです。
対策の実践
体づくり・食事・外出の三本柱で進め、同時に住まいと見守り体制を整えます。
運動・食事・社会参加
・運動:椅子からの立ち上がり10回×2〜3セット、つま先上げ、片脚立ちの壁つき練習など短時間・毎日を合言葉にします。歩数は体調に合わせ、こまめに分割しても十分です。
・食事:毎食の主菜でたんぱく質(肉・魚・卵・大豆)を確保し、水分はこまめに。間食にヨーグルトやチーズ、豆菓子を使うと増やしやすいでしょう。
・社会参加:外に出る理由を作ると歩行が自然に増えます。地域サロンや短時間デイ、家族との買い物など“用事のある散歩”が継続のコツです。
見守りと記録
・転倒・ヒヤリの日時・場所・動作・履物をメモ化し、同じ条件を繰り返さない工夫へつなげます。
・夜間トイレの回数、起床直後のふらつき、服薬タイミングも併せて残すと要因が見えます。
・家族や支援者と共有する連絡手段(連絡ノート/アプリ)を定め、誰が・何を見るかを明確にします。
介護用品の活用
住環境のリスクを減らし、歩行の安定と休息の確保を両立しやすい代表的アイテムを紹介します。
室内歩行器
立ち上がり・座り込みの転倒を避けやすく、歩行のふらつきを抑えます。狭い動線でも小回りが利き、座面付きのものならその場で休息もできます。
手すり類・滑り止めマット
玄関・廊下・トイレ・浴室など“動作が切り替わる場所”に重点配置します。浴室や濡れやすい床は特に滑り対策が有効です。
まとめ
転倒予防は体づくりや住環境など様々な要素の掛け合わせが要です。筋力を底上げし、危険箇所から順に住まいを整え、動作のつなぎ目を安定させます。ヒヤリの記録を共有し、定期的に見直すことで、無理のない安全な暮らしへ近づけるでしょう。