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認知症の帰宅願望への対応と見守り機器の活用
認知症の方が夕方になると「家に帰る」「仕事に行かなきゃ」とそわそわされる場面は珍しくありません。否定で抑え込むより、理由を探りながら安心できる環境と声かけを整えることが第一歩です。
本記事では背景理解から実践的な声かけ、そしてヤマシタすぐきた掲載の見守り機器を使った安全設計まで、今日から試せる手順をまとめます。
帰宅願望の背景理解
「帰らなきゃ」は危険のサインと同時に、安心を求める自然な表現でもあります。理由を短時間で仮説→検証の順で探ると対応が安定します。
原因の整理と声かけの工夫
・時間の見当違い(夕暮れ症候群)…窓際の照明点灯、時計・予定表の見える化。「〇〇時に一緒に△△してから帰りましょう」と約束表現が有効です。
・役割の未完了(仕事・家事)…簡単な役割を提案(食器拭き、タオル畳み)。
・身体要因(痛み・便意・口渇)…水分、トイレ、間食を先に整えます。
・感覚ストレス(騒音・寒暖)…静かな場所に移動し、上着や膝掛けで温度差を調整。
否定は最小限にし、共感→代替案→選択肢の順で。「心配ですよね。少しお茶を飲んでから駅まで一緒に確認しましょう。」など、歩調を合わせる言葉が落ち着きに繋がります。
環境整備で不安を減らす
出入口を強調せず視線を逸らす配置(玄関マットや靴箱の目立ち色を避ける)。外履きは見えない収納へ。日暮れ前に照明を早めに点け、昼夜の切り替えをはっきりさせます。家族写真や予定ボードで「ここが自分の居場所」という手がかりを増やすと、帰宅願望の立ち上がりが弱まるでしょう。
見守り機器
出入口付近やベッド周りの“動き出し”を早めに察知できる機器は、声かけと誘導の質を高めます。以下はいずれも介護保険の認知症老人徘徊感知機器に該当し、レンタル対象です。
出入口見守り
商品名 | 主な特長 | サイズ | 1割負担時のレンタル価格 |
---|---|---|---|
見守りSENSEα 赤外線タイプ | 赤外線で人の動きを検知して無線で受信機にお知らせ | センサー:幅13.5×φ4.5cm/電波の見通し距離約100m | 600円 |
見守りSENSEα フロアタイプ | 床に敷かれたセンサーを踏むと無線で受信機にお知らせ | 床センサー:幅100×長さ50×厚さ0.6cm/電波の見通し距離約100m | 600円 |
ベッドからの動き出し感知
商品名 | 主な特長 | サイズ | 1割負担時のレンタル価格 |
---|---|---|---|
家族コール2・Bタイプ | ベッド上に設置したシート状のセンサーで起き上がりを感知 | センサー:幅25×長さ80×厚さ1cm/電波の見通し距離約80~100m | 756円 |
見守りSENSEα ベッドタイプ | センサーから人が離れると無線で受信機にお知らせ | センサー:幅78×長さ28×厚さ0.8cm/電波の見通し距離約100m | 600円 |
機器導入と運用のポイント
誤作動を減らし、必要な時だけ確実に鳴ることが運用成功の鍵です。
アラート設定と動線設計
・まずは“立ち上がりの直前”で反応する位置に設置(ベッドサイド足元や玄関の一歩目)。
・赤外線タイプは検知距離と角度を調整し、扉の開閉軌跡は外す。家族の通行は検知しにくい角度に。
・フロアマットはめくれ防止と滑り止めを確認。夜間は足元灯でつまずき回避を同時に設計。
・通知先は一番近い人→二番目の人の順に複数登録し、音・振動の組み合わせで優先度を可視化。
・電池・端子・通信距離は週1で点検。作動テストを時間固定にすると忘れにくいでしょう。
家族・事業所との連携
ケアマネ・訪問介護・デイサービスと“鳴った後の行動”の標準手順を共有します。
(1)声かけ文例(「〇〇駅まで一緒に様子を見ましょう」)(2)玄関での座位休息(3)水分提供(4)5〜10分後の再評価。
「何時に・どの出口で・誰が対応」まで記録すると、帰宅願望の立ち上がりパターンが見え、配置や設定の見直しが早まります。プライバシーに配慮し、必要な範囲で最小限の見守りに留める視点も大切です。
まとめ
帰宅願望は不安の表現であり、環境と声かけで和らぎます。見守り機器を活用し動き出しを早めに察知できれば、穏やかな誘導と安全確保が両立しやすいでしょう。週1の点検と記録を続け、検知位置と文言を少しずつ最適化してください。家族だけで抱え込まず、専門職と連携しながら運用をアップデートしていきましょう。