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嚥下食の種類と費用の目安
食べづらさがある方でも安全においしく食べ続けるには、飲み込みやすい硬さ・形に整えた「嚥下食」の工夫が欠かせません。家庭で無理なく続けるには、段階(やわらかさ)の理解に加えて、費用の見通しと調理の省力化が要となるでしょう。
本記事では嚥下食の基本、費用の考え方、食事環境づくりまで実践的に整理します。
嚥下食の基本
嚥下食は「むせにくさ・まとまりやすさ・のど通り」の三要素を満たすよう、食材の形状と水分量、粘度を整えた食事です。段階は一律ではありませんが、本人の嚥下状態に合わせた“その日の最適”を選ぶ姿勢が大切です。
嚥下食の段階と特徴
刻み食(粗みじん)/やわらか食(歯ぐきでつぶせる)/ムース・ゼリー状(舌でつぶせる)/ペースト(均一でまとまりやすい)など、段階が下がるほど均一でまとまりやすい形になります。
液体やサラサラの汁物は誤嚥リスクが上がるため、とろみ調整で粘度を付けるのが基本です。
肉・葉物・繊維の強いきのこ類はダマや筋が残りやすいので、裏ごし・二度攪拌・濾すなどの工程で粒感を消すと飲み込みやすくなります。
自宅で準備する際のポイント
水分・油分・とろみの三点バランスが口当たりを左右します。冷めると粘度が上がる料理(スープ・餡)や、逆に分離しやすいメニューは、提供直前の最終調整がコツです。
色味は一皿一色になりがちなので、盛り付けで色を分ける・香りの変化を付けると満足感が上がるでしょう。家族と同メニューで作り、仕上げだけ質感を変えると手間も減ります。
費用の考え方
費用は「食材費+調味・とろみ剤+調理の手間(時間・光熱)+市販品・宅配の活用度」で決まります。まずは普段の食費に、嚥下調整に必要な追加分を上乗せする発想で見積もりましょう。
市販品・宅配サービスの費用感
レトルトの嚥下調整食品(主菜・副菜パック)は、1パックあたりおおむね150〜350円程度が目安です。主食(やわらかごはん・粥)は1食100〜200円前後、とろみ付き飲料は1本120〜200円程度が多いでしょう。
宅配食(やわらか・ムース食)は1食あたり700〜1,200円程度が一般的で、定期便やまとめ買いで単価が下がるケースもあります。送料がかかる場合もあるので注意しましょう。
とろみ剤は200g缶で1,200〜2,000円程度。1回1〜2gの使用なら、1杯あたり6〜20円程度のコスト感です。
これらを組み合わせると、家庭調理中心+市販品一部併用の1食あたりは300〜700円、宅配食メインでは800〜1,300円と見積もると計画を立てやすいでしょう。
食材・調理でコストを抑える工夫
・まとめ調理→小分け冷凍:主菜(鶏そぼろ・白身魚ムース)・副菜(かぼちゃ・じゃがいもペースト)を週1〜2回で仕込み、1食分ずつ冷凍。ラップ平置きで薄く凍らせると解凍が速く、粘度の再調整もしやすいです。
・低コスト食材の活用:鶏むね・豆腐・卵・ツナ・豆類は、ペースト化しやすく高コスパ。出汁や牛乳で口どけを整えると満足度が上がります。
・主食をベースに味替え:粥ややわらかごはんは、餡だけ変えてバリエーションを確保。
・とろみ剤の一括購入:使用頻度が高ければ大容量で単価が下がります。片栗粉は粘度の安定性に欠けるため、飲料のとろみは専用剤が無難です。
・道具を味方に:ブレンダー・フードプロセッサー・裏ごし器の活用で攪拌時間を短縮。調理時間=光熱費・人件費と捉え、時間短縮も「コスト削減」と考えると判断がしやすいでしょう。
食事環境づくり
嚥下食は形状だけでなく、姿勢・一口量・見守りで安全性と満足度が変わります。費用をかけずにできる工夫を押さえましょう。
姿勢・一口量・見守り
姿勢は背上げ30〜60度・骨盤中立・顎は軽く引くが基本。足底が床やフットレストに接地し、体幹が左右に傾かないようクッションで支持します。一口量はティースプーン1/3〜1杯を目安に、飲み込む→呼吸を整える→次の一口のリズムを守ります。咳・涙目・顔色変化があれば中止し、姿勢と粘度を見直します。
食器は浅め・軽量・色のコントラストが見分けやすく、食べ進みも良くなります。温冷差も刺激になるため、主食・主菜・汁物で温度のメリハリを付けると満足感が上がるでしょう。
まとめ
嚥下食は、段階(やわらかさ)・粘度・まとまりを整えつつ、安全に・おいしく・続けられる費用感を作ることがポイントです。市販品や宅配を賢く併用し、家庭調理はまとめて冷凍・再調整で手間を抑えましょう。姿勢・一口量・見守りを合わせれば、無理なく長続きする嚥下食の体制が整うはずです。
まずは「いつものメニューを仕上げで質感変更」から始め、記録を取りながら自分たちの最適解に近づけていきましょう。