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整容とは?介助する箇所や手順のポイントをわかりやすく解説!注意点も
整容は、見た目を整え、清潔な状態を保つための行為です。
しかし高齢者や障がいをもつ方の中には、今まで当たり前にできていたことが難しくなり、整容に介助を必要とする場合があります。整容介助は単に外見を整えるだけでなく、その方の自信を取り戻すお手伝いでもあります。
今回は、介助者として習得しておきたい整容の基本的な考え方や、介助における手順などについて見ていきましょう。
整容とは?
整容とは身だしなみを整えることです。
外見をきれいにしたり、汚れを落として清潔な状態にしたりすることが目的です。
整容には以下の効果があります。
- 尊厳や自尊心の維持
- 生活意欲の向上
- 気分転換
- 社会性の維持
- 病気の予防
このように、整容には心身の健康を保つ効果があると言えます。
要介護高齢者は一般的には外出の機会が減少し、フレイルやサルコペニア等を引き起こします。
整容を通じて身だしなみを整えることで、一日中寝巻でいたり、離床の頻度が少ないことを減らし、外出等の機会を増やすことで身体機能の向上も期待できます。
また、高齢者や障がいをもつ方にとっては、介助者の支援を受けながら整容を行うことで、信頼関係を築くきっかけにもなるでしょう。
このように、整容はさまざまなメリットを得られる大切な行為と言えます。
清拭との違い
清拭は整容の一部ととらえる考え方があります。
身体を清潔にするための行為であり、タオルなどで拭くことを指します。清拭の対象者は、体調不良や感染症などの理由で入浴が困難な方です。
清拭の目的や効果は以下のとおりです。
- 皮膚を清潔に保つ
- 皮膚や爪の異常を発見する
- 心理的リラックス効果を与える
- 血液循環を改善する
- 拘縮や褥瘡を予防する
清拭によって、要介護者の状態把握や、より良いケアを提供するためのきっかけが得られるでしょう。
整容の箇所・手順
ここからは、整容を行う箇所ごとに必要物品を紹介したうえで、具体的な手順やポイントを解説します。
要介護者が気持ちよく介助を受けて前向きな生活を送れるように、整容の手順をしっかりと押さえて、スムーズに介助しましょう。
洗顔
必要物品:洗顔料、タオル、ヘアバンドなど
【洗面台で顔を洗う場合】
- 洗面所へ移動する
- 能力に応じて立位か座位いずれかで行うかを決める
- 泡立てネットで泡を作る
- ゴシゴシとこすらずに、泡でやさしく包むようにして洗う
【蒸しタオルで拭く場合】
- 電子レンジ、もしくはお湯でタオルを温める
- タオルに触り、対象者に温度を確かめてもらう
- 顔の上から下へと拭いていく(額、目、鼻、頬、あごの順)
- 汚れが目立つ箇所はひととおり拭いたあと、もう一度蒸しタオルを当てる
洗顔は、眼脂(目ヤニ)の色から健康状態がわかるため、体調を把握するうえでも重要です。
黄色や緑色で、ネバつきがある眼脂は、細菌性の結膜炎にかかっている可能性があります。
そのため、洗顔の介助をする際は眼脂の状態を確認し、体調を把握できるようにしておきましょう。
高齢者の皮膚はティッシュペーパーのように薄く乾燥しており、少しの摩擦で皮がむける『スキンテア(皮膚裂傷)』が起きやすい状態です。タオルでゴシゴシ擦ったり、無理に引っぱったりせず、常に『優しく包み込むように触れる』ことを意識しましょう。
整髪
必要物品:クシやブラシ、ヘアスプレー、オイル、タオルなど
- 蒸しタオルで頭全体を覆い、とかしやすくする
- 毛先からとかす
- からんでいる場合は根本を押さえ、やさしくとかす(無理にクシやブラシを通さない)
- 必要に応じてヘアスプレーやオイルなども使い、とかしやすくする
- 好みの髪型があれば、希望を聞いて対応する
- 終わったら鏡を見て出来栄えをチェックしてもらう
抜け毛を気にする方もいるため、やさしく行ってください。
クシやブラシについた抜け毛は見せないようにし、速やかに破棄しましょう。
爪切り
必要物品:爪切り、やすり、ティッシュ、ごみ箱、お湯や蒸しタオルなど
【手の爪を切る場合】
- 対象者の横に座る
- 介助者の腕で対象者の腕を固定する
- 対象者の指先を押し下げて、爪と指の間にすき間を作る
- 指先の肉を切らないように、慎重に切り進める
- やすりで整えて滑らかにする
【足の爪を切る場合】
- 介助者は対象者と同じ方向を向き、足元に座る(対象者は椅子に腰かける)
- 対象者の足を介助者の大腿部にのせて固定する
- 手の爪と同様の手順で切り進める
爪が硬い方は、事前に温めて柔らかくしておきましょう。
巻き爪防止のため、両角を切りすぎず、全体的に四角く切るのがポイントです。
介護職(ヘルパー等)が介助できる爪切りは『健康な爪』に限られます。極端な巻き爪、分厚くなった爪(肥厚爪)、周囲に炎症がある場合や、糖尿病で化膿のリスクが高い方の爪切りは『医療行為』に該当するため、無理に切らず訪問看護師や医師に依頼しましょう。
髭剃り
必要物品:シェーバー、蒸しタオル、ローションなど
- 蒸しタオルを当てて皮膚と髭を柔らかくする
- ローションを使ってシェーバーの抵抗を減らす
- シェーバーで毛の流れに逆らうように剃っていく
- 保湿のため、化粧水や乳液を塗って肌を整える
- 終わったら出来栄えをチェックしてもらう
高齢者の肌は傷つきやすく、飲んでいる薬によっては血が止まりにくくなる場合があります。
カミソリは出血するリスクがあるため、シェーバーを使ってください。
髭は人それぞれ好みが分かれやすく、生やしておきたい方もいるため、残す部分と剃る部分などの希望も聞いて対応しましょう。
口腔ケア
必要物品:歯ブラシ、歯間ブラシ、舌ブラシ、スポンジ、ウェットティッシュ、コップなど
- 口腔内の状態を確認する
- うがいをして食物の残りかすをきれいにする
- 歯のぐらつきや痛み、歯茎の出血などに注意しながらブラッシングする
- 口腔内を清拭する
- 舌の汚れを取り除く
- もう一度うがいする
義歯を使用している方の場合は、外してからブラッシングしましょう。
口腔ケアは歯の健康を維持し、おいしく食事するためにも大切なケアです。
口腔内を清潔にしておくと、誤嚥性肺炎のリスクも軽減できるため、少なくとも1日1回は行いましょう。
認知症などで口を開けるのを強く拒否される場合は、無理強いは禁物です。ご本人の手に歯ブラシを持たせて一緒に手を動かしてもらったり(残存機能の活用)、少し時間を空けてから再度声かけをするなど、ご本人のペースに合わせる工夫が大切です。
耳掃除
必要物品:綿棒、ガーゼ、ベビーオイルなど
- 耳の中を確認し、耳垢がたまっている場所を確認する
- 耳の穴から1cm程度まで綿棒を挿入し、やさしく拭う
- ガーゼを湿らせ、耳の外側を拭う
耳掃除は、入浴後に行うと耳垢が湿っているため、取り除きやすくなります。入浴前に行う場合は、ベビーオイルを塗って湿らせておきましょう。
綿棒を使う際は、奥の方まで押し込んで耳の中を傷つけないように、1cm程度の深さまでにしておくのが原則です。
耳垢が多く、耳の中をふさいでいる場合は無理に行わず、耳鼻科で対応してもらいましょう。
鼻掃除
必要物品:綿棒、鼻毛用のハサミ、蒸しタオルなど
- 鼻の状態を確認する
- 蒸しタオルで鼻を温める
- 湿らせた綿棒で鼻水をからめとる
- 鼻毛が伸びている場合はカットする
鼻の中が乾燥していると、綿棒で傷つけてしまう場合があります。そのため、蒸しタオルで温めたり入浴後に湿らせたりしてから行いましょう。
また、粘膜を傷つけないように、挿入する深さは1cm程度にしてください。
鼻毛をカットする際は、小鼻を軽く押し当て、鼻の穴からはみ出る分だけカットしましょう。無理に奥までハサミを入れないでください。
化粧
必要物品:化粧水・乳液・メイク用品など
- 産毛を剃る
- 化粧水や乳液で保湿する
- 好みのメイクを施す
化粧には、自分の顔が変化していく様子を見て、きれいになる姿を喜ばしく感じたり、化粧すること自体に楽しみを感じたりする効果があります。
これにより、リラックス効果、意欲の向上、社交性の向上、ストレスの軽減などが期待できます。
自分でできる部分をやってもらうことも大切です。口元や肌に触れ、手を動かすことで手指機能のトレーニングにもなります。
化粧と同様に着替えも効果的です。お気に入りの服を着ることで気分が良くなったり、体を動かすことで軽いトレーニングにもなります。
整容を行う際の注意点
整容介助をする際は、本人の価値観に合わせた関わりを心がけましょう。
相手に寄り添った介助をすれば、爽快感を得たり自信をもったりしやすくなるからです。
たとえば髭剃りでは、すべて剃ってきれいに仕上げたい方もいれば、部分的に伸ばして整えておきたいと思う方もいます。
整髪では、好みの髪型にしたり、お気に入りの整髪料を使ったりしたい方もいるでしょう。
これらは本人の価値観にもとづいており、寄り添った対応によってその方の生き方を尊重することにつながります。
提供する整容介助が、本人にとってどのような意味をもつのか考え、価値観を大切にしましょう。
まとめ
整容介助には、対象者の尊厳の維持や意欲・社会性などの向上、病気の予防といったさまざまな効果があります。
介助方法や手順には一定の決まりがあるものの、個々の身体状況や生活習慣、好みなどはそれぞれ異なります。人によって異なる状況を十分に把握し、個別性をもったケアを心がけましょう。
介助者は単に身だしなみを整えるだけでなく、相手とのコミュニケーションにも気を配ってください。
対象者が自信を取り戻し、前向きに生活できるように、適切な介助方法を習得しましょう。
整容は、ご本人の肌に直接触れ、至近距離で接するケアです。
そのため、普段服に隠れて見えない内出血(転倒の跡など)や、むくみ、皮膚の異常などを早期発見する『状態観察(アセスメント)の絶好の機会』でもあることを介助者は意識しておきましょう。
田中 紘太
株式会社マロー・サウンズ・カンパニー 代表取締役
平成23年に株式会社マロー・サウンズ・カンパニーを創業、代表取締役に就任。併設の介護サービスを持たない独立型の居宅介護支援事業所を7事業所展開している。 自身も主任介護支援専門員として現場の指導や教育を行い、現在も実践者として介護支援専門員業務に従事。 厚生労働省の数々の事業で委員を務めており、全国の自治体、ケアマネジャー関連職能団体、企業等からの依頼により年間50回以上の講演を行っている。







