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介護保険の申請手続きの流れ|窓口・条件・必要書類を解説
介護保険とは、高齢者や身体障害者が安心して生活できるように支援を受けられる制度です。
65歳になると届く介護保険証は、受け取っただけでは介護保険サービスを利用できません。
介護保険サービスの利用には申請が必要だからです。
介護サービスが必要になるタイミングは突然訪れます。
いざという時、介護保険の申請手続きを知っていれば慌てる必要はありません。
そこで介護保険の申請手続きの流れや、申請窓口、申請するための条件、必要な書類について解説します。
介護保険を申請する流れ
介護保険の申請の流れは以下の通りです。
- 申請書類の提出
- 介護認定調査(一次判定)
- 介護認定調査(二次判定)
- 審査結果の通知
介護保険の申請書類を窓口へ提出すると、申請者の要介護度について調査が始まります。
調査の結果、要介護度が要支援1から要介護度5までの7段階で判定されます。
要介護度が高くなるほど必要な支援が増えるため、介護保険を使って受けられるサービスの回数も多くなります。
65歳以上であまり介護を必要としない方でも要支援の認定を受ければ、介護予防サービスを受けることが可能です。
一方で、非該当(自立)と判定された場合は介護保険サービスを受けられません。
次に手続きの具体的な内容について詳しく解説します。
申請窓口
介護保険の申請窓口は、地域包括支援センターまたはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口です。
これらの窓口は、生活に不安を感じた際の相談窓口としての役割も持っています。
もし何らかの事情で本人が申請に行けない場合は、ご家族や親族が代理で申請を行なうことも可能です。
ご家族や親族による代理申請も難しい場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者、介護保健施設の職員が代行することができます。
申請できる人
介護保険の申請ができるのは、以下のいずれかに該当する方です。
区分 | 年齢 | 条件 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 65歳以上 | 日常生活に介助が必要 |
第2号被保険者 | 40歳以上64歳以下 | 16種類の特定疾病患者※ |
※【16種類の特定疾病】
- がん( ※医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
- 関節リウマチ
- 筋委縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
必要書類の準備
申請を行なう前に必要書類の準備が必要です。
申請に必要な書類は以下の通りです。
- 要介護・要支援認定申請書
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方)
- 健康保険証または医療保険省(40歳から64歳の方)
- 身分証明書(介護保険証や健康保険証とは別に必要)
- 診察券など主治医の名前、医療機関名が分かるもの
- マイナンバーが確認できるもの(写しでも可)
利用者や利用者のご家族以外の方が代理申請する場合は以下の3点が必要です。
- 委任状などの代理権が確認できるもの
- 代理人の身分証明証
- 申請者の印鑑
なお、自治体によって必要な書類が異なりますので、あらかじめホームページや電話で確認しておきましょう。
訪問調査(介護認定調査)
市区町村から委託された認定調査員が申請者の自宅や施設、病院を訪問して聞き取り調査を行ないます。
調査項目は以下の通りです。
- 身体機能、起居動作
- 生活状況
- 認知機能
- 精神、行動障害
- 社会生活への適応
- 過去14日間に受けた特別治療の有無
具体的な調査内容は次の通りです。
身体機能・起居動作
身体に麻痺はないか、立ったり歩いたりできるなど日常生活を過ごすための基本的な能力がどの程度あるかを調査します。
生活状況
移動や食事、排泄、更衣など日常生活に伴う行動がどの程度できるかを調査します。
認知機能
意思の伝達や現状把握、短期記憶など、記憶や意思疎通に必要な能力を調査します。
精神・行動障害
被害妄想や介護拒否など、認知症などによる問題行動がないかを調査します。
社会生活への適応
薬の服用や金銭管理、集団への適応、買い物など、社会生活に対する適応力を調査します。
過去14日間に受けた特別治療の有無
点滴や透析、人工呼吸器、導尿などの特別な医療行為を受けていないかを調査します。
一次判定
一次判定では、聞き取り調査の結果と主治医の意見書の一部の項目をもとに、コンピュータで分析し、全国一律の基準で判定します。
コンピュータで分析する理由は、客観的で公正な判定を下すためです。
要介護度は申請者の介護にどれくらいの時間がかかるかを算出して決まります。
この時間を要介護認定等基準時間と言い、5つの介護内容が対象になります。
- 直接生活介助
- 間接生活介助
- 問題行動関連行為
- 機能訓練関連行為
- 医療関連行為
二次判定
二次判定では、一次判定の結果と主治医の意見書をもとに、保険・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会によって要介護度が判定されます。
二次判定でチェックされる項目は次の通りです。
【一次判定の結果】
- 訪問調査票の特記事項
【主治医の意見書】
- 診療の状況
- 特別な医療
- 心身状態に関する意見(認知症の有無など)
- 介護に関する意見(医学的管理の必要性など)
要介護認定の通知
二次判定が終わると申請者に認定結果が通知されます。
申請から審査結果の通知まではおよそ30日かかります。
要介護認定を受けたら、次に介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要となります。
基本的には「要支援1~2」の介護予防サービス計画書は地域包括支援センターに相談し、「要介護1~5」の介護サービス計画書は介護支援専門員(ケアマネジャー)のいる、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)へ依頼します。
ケアマネジャーがご自宅を訪問、ご利用者本人やご家族の状況を把握してケアプランの原案を作成。サービス担当者会議にて各担当者と状況を共有し、専門的な見地から意見を聴取します。
その後、ご利用者の同意を以ってケアプランが完成し、各介護事業者ごとに個別に利用契約を結びます。
尚、介護事業所選びについてはよくケアマネジャーと相談し、ご利用者に適した事業者を選んでもらうのが良いでしょう。
介護保険申請が通らなかった場合の対処法
介護保険の申請が通らなかった場合の対処法は次の2つです。
- 不服申し立てをする
- 区分変更を申請する
順に解説します。
不服申し立てをする
認定結果に納得できない場合は、不服申し立てを行なうことができます。
不服申し立てをする場合は、結果通知の翌日から90日以内に各自治体の介護保険審査会に申告します。
ただし、結果が出るまで数か月かかることもあるため、急ぐ場合はお勧めできません。
区分変更を申請する
一刻を争う場合は、区分申請をした方が早いです。
区分変更申請にかかる期間は1か月程度と言われています。
区分変更申請の流れ
では区分変更申請の流れについて解説します。
手続きが煩雑なため、ケアマネジャーが申請を代行するのが一般的です。
- アセスメントの実施
- 申請書類の提出
- 一次判定
- 二次判定
- 認定結果の通知
順に解説します。
アセスメントの実施
利用者の身体状況を確認し、区分変更の必要性を検討します。
申請書類の提出
以下の申請書類を市区町村の窓口に提出します。
- 介護保険要介護(要支援)認定区分変更申請書
- 介護保険被保険者証
- 主治医意見書
- マイナンバーを確認できる書類
一次判定
コンピュータが介護度を分析します。
二次判定
一次判定結果をもとに介護認定審査会が介護度について話し合います。
認定結果の通知
認定結果は申請後30日以内に届きます。
介護保険更新の流れ
介護保険証には有効期限があり、更新を忘れて介護保険サービスを使うと全額自己負担となるため、更新手続きは非常に重要です。
介護保険更新の流れは以下の通りです。
- 申請書類を市区町村の担当窓口に提出
- 訪問調査
- コンピュータ処理による一次判定
- 介護認定審査会による二次判定
- 認定結果の通知および新しい介護保険被保険者証の配布
認定結果は申請日から30日以内に通知されます。
新規認定の有効期間は原則6カ月、更新認定の有効期間は原則12か月となっています。
まとめ
介護保険の申請手続きは複雑ですが、いざという時のために把握しておく必要があります。
分からないことがあれば、市区町村の担当窓口に確認してみるとよいでしょう。
介護保険の申請手続きについてのまとめです。
- 介護保険サービスの利用には申請が必要
- 申請から介護サービス利用開始までに1か月程度かかる
- 訪問調査にはなるべく同席する
- 申請が通らない場合は区分変更を試みる
- 有効期限が切れる前に更新手続きを必ず行なう
介護保険の申請手続きでは、必然的にケアマネジャーに委任する場面が増えるため関係性を良くすることが何より大事です。