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後縦靭帯骨化症の生活介助ポイント
骨化により脊髄や神経が圧迫されると、首まわりのこわばりやしびれ、巧緻性の低下、ふらつきが日常に及びます。頸部の屈伸やねじりを避け、体ごと向きを変える生活動線と、持ち上げない介助を徹底することが安心につながるでしょう。
頸部と体幹を守る動作
日常動作は首を動かさず体ごと向きを変えるを基本にします。前屈・反り・急な振り向きを避け、骨盤と肩をそろえて回旋すると頸部負担が減るでしょう。
起居・移乗の支え方
- 起き上がり:背上げ→側臥位→下脚を先に降ろし→前腕を支点に端座位へ。頸は中間位、枕や小クッションで肩の力みを抜きます。
- 立ち上がり:座面はやや高め、足底設置。上体を倒すより骨盤を前へ送る意識で。介助者は腋下を抱えず骨盤帯を軽く誘導。
- 移乗:持ち上げず横へ滑らせるが原則。ボードやシートを用い、座面高さを合わせます。ピボット回転は小さな角度から。
無理のない姿勢保持
- 頸の中間位:枕は低〜中程度で後頭部と後頸の隙間を埋める。視線は正面、高さは書見台などで補います。
- 上肢の預け先:前腕下にクッションを入れると肩のすくみが減り、頸の緊張が抜けます。椅子では背当て+ランバー支持で胸郭を開くと呼吸が楽です。
- 歩行:足元を覗き込まず5〜6m先を見る。狭所は“体ごと向ける”スペースを確保し、杖・歩行器は手で振らず体幹で押す感覚を。
入浴・排泄まわりの工夫
濡れた床や低い便座は頸の急な屈伸を誘発します。止まる位置・つかむ位置・座る位置を一定化すると安全性が上がるでしょう。
段差と手すり配置
- 段差を避ける動線:浴室入口で方向転換→洗い場で座位洗身へ。踏み台や風呂蓋は“乗り越え動作”を増やすため極力使いません。
- 手すり:角で身体を回せるコーナー手すりが有効。掴み替えが減るほど頸のねじれも抑えられます。高さは肘が軽く曲がる位置に。
- 照明・足元:明るさを均一にし、滑りやすい材質には薄手の滑り止めで面を広く。
座位安定と滑り対策
- シャワーは座って:背・肘付きの椅子で足は肩幅、シャワーヘッドは固定。顔や髪は上体を倒さず手元で扱える高さに。
- トイレ:便座高を調整し、立ち上がりは骨盤主導。紙や洗浄は前方・利き手側へ集約し前屈距離を短縮します。
- 夜間:足元灯で連続誘導。起床→端座位10秒→立位3秒静止→歩行の一定手順を共有します。
まとめ
生活介助の軸は頸の中間位を保つ・体ごと向きを変える・持ち上げず滑らせるの三点です。起居は背膝連動のベッドで段取りし、移乗は滑走具でねじれや前屈を避けます。入浴・排泄はコーナー手すりと座位洗身で“止まる・つかむ・座る”を一定化すれば、痛みや不安は和らぐでしょう。住まいに合わせた用具選定と手順の微修正を重ね、安心して続けられる形を家族で共有していきましょう。