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パーキンソン病に役立つ補助具の選び方
パーキンソン病では、日によって歩きやすさが変わり、すくみ足や前傾姿勢、転びやすさなど複数の課題が重なりやすいです。補助具は症状と生活動線に合わせて選ぶと負担が減り、外出・在宅の両方で安心が高まるでしょう。本記事では用具選定の考え方、屋内外の使い分け、導入時の注意点をまとめます。
症状に合わせた用具の考え方
選定は「姿勢を整える」「一歩目を出しやすくする」「減速と停止を確実にする」の三点で考えると迷いにくいです。握力や反応速度、認知面の特性も含め、誰がどこで使うかを具体化して見極めます。
姿勢・歩行・移乗の視点
・姿勢:前傾や突進傾向がある場合、ハンドル位置は「肘軽度屈曲・胸を開ける高さ」を基準にします。姿勢が崩れると視野が狭まり転倒リスクが上がるため、グリップ形状や左右の高さ調整も重要です。
・歩行:すくみ足には視覚・リズムの手掛かりが有効なことがあります(床の目印や一定テンポの歩行、狭い歩幅からの再開など)。ローラーの転がり抵抗やブレーキ感度が「一歩目の出やすさ」に直結します。
・移乗:立ち上がり・座り込みはもっともよく転ぶ場面です。座面付き歩行器は「疲れたらすぐ座る」逃げ場になり、安全に休息を挟めます。立上り補助の取っ手位置や、椅子・車いすとの距離の詰めやすさも確認します。
屋内外での使い分け
屋内は廊下幅や敷居の段差、家具との距離がシビアです。小回り・軽さ・静音性を優先し、壁当てやドアの通過を試します。
屋外は路面の凹凸・坂道・横断歩道での停止が課題になるため、駐車ブレーキの確実さ、ハンドル剛性、視認性を重視します。
導入時の注意
導入は「試す→調整する→慣れる」の三段階で進めます。症状の波を想定し、良い日・悪い日どちらの条件でも安全に扱える設定を探しましょう。
試用・サイズ調整・安全教育
・試用:自宅の廊下幅・段差・玄関の上り框・エレベーター・近所の坂道など生活実線で試します。すくみが出やすい場所(敷居・狭い出入口・人混み)を意図的に通って確認します。
・サイズ調整:ハンドル高は「肩がすくまない・肘軽度屈曲」を基準に、左右差も整えます。ブレーキレバーの引きしろやタイヤ空気圧、足置き板の高さ(車いす)を合わせ、靴底の厚みが変わっても破綻しない範囲に設定します。
・安全教育:停止→発進→曲がる→段差アプローチの順で練習し、坂では先に「止まれる」を確認します。カバンの位置や買い物荷重で重心が変わる点、雨天は路面抵抗が変わる点を体験しておくと実地で落ち着けるでしょう。
・維持管理:タイヤ・キャスターの摩耗、ブレーキワイヤの伸び、ボルトの緩みは定期点検の対象です。消耗品や破損は早めに交換すると故障リスクを下げられます。
・制度活用:歩行器や車いすは要介護度や状態に応じて介護保険レンタルの対象になり得ます。ケアマネジャーへ相談し、自己負担や短期・長期の使い分けを明確にするとよいでしょう。
まとめ
パーキンソン病の補助具は、姿勢・一歩目・止まるの三点が合えば安定します。屋内外で役割を分けると活動範囲が広がるでしょう。導入は生活実線で試し、サイズとブレーキを合わせ、練習と点検を重ねる、この積み重ねが安心と自立につながります。