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介護保険と医療保険の違いを整理|目的・対象・費用・手続きの要点
突然の入院や退院、在宅介護の開始時は「どの場面が介護保険で、どこまでが医療保険なのか」が最初のハードルになりがちです。両制度は目的も手続きも異なるため、境目を理解すると無駄な自己負担や手戻りを避けやすくなります。
本記事では両制度の基本、対象、サービス内容、使い分け、つまずきポイントなどを整理します。
基本の考え方(制度の目的と給付の枠組み)
まずは両制度の「目的」が違うことを押さえると、以降の判断がぶれにくくなります。
介護保険の目的:自立支援と生活機能の維持
介護保険はできることを増やし、暮らしを続けるための支援が目的です。入浴・排泄・食事など日常生活動作の支援や、福祉用具、通所・短期入所、施設サービスなどが対象となります。
医療保険の目的:疾病・けがの治療と療養
医療保険は病気やけがの診断・治療・投薬・検査が中心です。外来・入院・処方、医師の指示による訪問看護などが該当します。
対象者やサービスの違い
誰が、どの条件で、どちらを使うのかを理解しておくと迷いません。
介護保険:要支援・要介護認定が前提
原則として65歳以上(特定疾患等は40〜64歳)で、要支援・要介護の認定を受けた方が対象です。認定結果に応じて利用できるサービスや内容が決まります。
サービスは訪問介護(身体介護・生活援助)、通所介護(デイ)、短期入所、特定施設入居者生活介護などが中心です。福祉用具貸与・販売や住宅改修も含まれます。
医療保険:加入者全般が対象
国民健康保険や被用者保険の加入者であれば、年齢にかかわらず対象です。
診察・検査・投薬・手術・リハビリ等が行われます。訪問看護は医師の指示書に基づき、傷の観察や点滴管理など医療的ケアを担います。
費用負担と上限制度
自己負担割合は似ていますが、上限の枠組みが異なります。二つを混同しないことが大切です。
介護保険:1〜3割負担と高額介護サービス費
自己負担は原則1割(一定所得で2〜3割)で、世帯の月額上限を超えた分は高額介護サービス費として払い戻されます。対象は介護サービス自己負担で、食費・居住費などは原則対象外です。
医療保険:1〜3割負担と高額療養費・限度額適用認定
外来・入院の自己負担が所得区分別の上限を超えた場合に高額療養費が適用されます。事前に「限度額適用認定証」を医療機関へ提示すると窓口負担が軽減されます。
訪問系の使い分け
自宅での支援は、生活援助と医療ケアを目的で切り分けると整理しやすいでしょう。
訪問介護と訪問看護の役割の違い
訪問介護は入浴・排泄・移乗など日常生活の支援が中心です。訪問看護は医師の指示に基づく観察や医療的処置、療養上の相談を担います。両者を組み合わせると在宅ケアが安定します。
定期巡回・随時対応型や在宅医療との連携
夜間・早朝の不安が強い場合は、定期巡回・随時対応型の枠組みが有効です。通報機器での相談から随時訪問までが一体になっており、必要に応じて訪問看護と連携します。
福祉用具・住宅改修の扱い
転倒予防や移乗の安定に福祉用具は有効です。制度の対象と注意点を押さえておくと選定が進めやすくなります。
介護保険:福祉用具貸与・特定福祉用具販売・住宅改修
介護ベッド、車椅子、歩行器、手すり、スロープなどが代表的です。貸与(レンタル)と購入対象が分かれているため、ケアマネジャーに用途を伝えたうえで選びます。
医療保険:治療材料・衛生材料の位置づけ
創傷被覆材や一部の衛生材料は医療保険で扱われることがありますが、介護保険の福祉用具とは枠組みが異なります。
申請・利用の流れ
最初の窓口と必要書類を把握すれば、導入が滑らかに進むでしょう。
介護保険:申請→認定→ケアプラン作成→利用開始
市区町村へ申請し、認定結果を受けてケアマネジャーがケアプランを作成します。サービス事業所と契約し、利用開始となります。
医療保険:受診→医師の診断・処方→必要時に訪問看護指示
まず受診して診断・処方を受けます。訪問看護が必要な場合は主治医が指示書を発行し、訪問看護ステーションと契約します。
よくあるつまずきとチェックポイント
対象外費用や二つの上限制度の混同、退院直後の切り替え漏れに注意すると失敗が減ります。
対象外費用の見落としと重複利用の勘違い
介護保険の高額介護サービス費は食費・居住費の自己負担をカバーしません。医療の高額療養費と混同せず、双方の対象を分けて台帳管理すると良いでしょう。
世帯合算・入退院時の取り扱い
介護の上限は住民票上の世帯で合算されます。入退院で月途中に制度がまたがる場合は、領収書と明細を月別・制度別に整理しておくと申請がスムーズです。
まとめ
介護保険は暮らしの支援、医療保険は治療と療養の支援という役割の違いがあります。自己負担や上限制度、在宅での使い分け、福祉用具や住宅改修の扱いを理解すれば、必要な支援へ迷わずたどり着けるでしょう。まずは現状の困りごとを書き出し、ケアマネジャーや医療機関に共有しながら、両制度を無理なく組み合わせていくことをおすすめします。