更新日:
小規模多機能型介護とは?サービス内容やメリット・デメリットを解説
介護保険で利用できるサービスは、デイサービスやショートステイなどさまざまです。それらのサービスを利用する際は、サービスごとに契約をしたり、スタッフとの信頼関係を構築しなければいけません。そのため、サービスの追加や変更しようとした場合、利用者、利用者家族が「手続きが面倒くさい」と感じてやらないことがあります。
こうした負担を解消するために、「小規模多機能型居宅介護」が2006年に新設されました。
この記事では、小規模多機能型居宅介護サービスについて解説します。
小規模多機能型居宅介護とは
小規模多機能型居宅介護とは、介護保険サービスのひとつで、在宅介護をしている人向けの地域密着サービスです。最大の特徴は、1つの介護事業者が「通い(通所介護)」「訪問(訪問介護)」「泊まり(短期入所)」の3つのサービスを提供していることです。
住み慣れた地域で自立した生活を続けられるように、通いサービスを中心として訪問・泊まりサービスを組み合わせ、日常生活の支援や機能訓練を行います。
利用条件
小規模多機能型居宅介護を受けるための条件は2つあります。
- 事業所と同じ市区町村に住民票があること
- 要支援1~要介護5の認定を受けている人
小規模多機能型居宅介護は、住み慣れた地域で自立した生活を送れるようにする目標があるため、同じ市区町村に住民票があることが必要です。また、要支援1・2の人は介護予防小規模多機能型居宅介護を利用できます。
認知症の人が利用できるのか不安になるところですが、受け入れ可能な施設がほとんどです。利用前に事業所のケアマネジャーに相談してみるといいでしょう。
料金
費用は月額利用料金とその他料金の2つあります。
- 月額利用料金:基本料金(利用料)
- その他の料金:加算費用・食費・おむつ代など
施設やサービスの利用状況により異なりますが、数万円となるでしょう。
たとえば、要介護1の利用者において以下のケースであれば、費用は月額30,958円となります。
通いサービス:10回利用
泊まりサービス:2回利用
訪問サービスは適宜利用
項目 | 内容 | 費用 | |
---|---|---|---|
月額料金 | 基本料金 | 通い・訪問・泊まりのサービスを受けられる。(要介護1) | 10,458円 |
その他料金 | 加算費用 | 手厚いサービスや体制に対して加算される費用。施設により異なります。 | 4,000円 |
食費 | 通い・泊まりサービス利用の際にかかる食費 | 10,000円 | |
宿泊費 | お部屋のタイプや施設の立地などにより費用は変わります。 | 6,000円 | |
おむつ代など | 泊まりサービス利用の際に施設側の備品(おむつ、歯ブラシなど)を利用した場合にかかります。 | 500円 | |
合計費用 | 30,958円 |
小規模多機能型居宅介護のサービス内容
小規模多機能型居宅介護は1つの事業者で「訪問(訪問介護)」「通い(通所介護)」「泊まり(短期入所)」の3つのサービスを利用することができます。
「訪問・通い・泊まり」3つのサービスの定員数を超えなければ、24時間365日何回でも利用可能です。 体調が不安定になりやすい高齢者だからこそ、時間や回数を気にすることなく利用できるのはメリットでしょう。
訪問(訪問介護)
事業所の職員が利用者宅に訪問し、日常生活の介助をはじめ、安否確認や送迎の送り出し、服薬補助や散歩の付き添いなどのサービスを受けられます。
通常の介護サービスの訪問看護だと、たとえば身体介護の時間やサービス内容があらかじめ決められており、柔軟に対応するのが難しいです。
一方で小規模多機能型居宅介護の場合は、時間や回数を気にすることなく、必要な時に必要なケアを受けることができます。ただし、訪問だけではありませんが、訪問サービスに不満があっても、部分的に事業所を変更することができません。
通い(通所介護)
食事、入浴、排泄などの日常生活の介助や機能訓練等のサービスを施設を通うことで利用できます。小規模多機能型居宅介護での通いサービスは、各個人の体調に合わせることができるので、たとえば入浴のみの利用も可能です。通所介護は1日のスケジュールが決まっており、基本は1日利用しなければいけません。
ただし、事業所によってレクリエーションや行事イベントの充実度は異なります。事前によく確認しておきましょう。
泊まり(短期入所)
日常生活の介助をはじめ、就寝時の見守り・おむつ交換、安否確認などのサービスを利用できます。また、利用者および利用者家族の状況に応じて突然の宿泊も可能です。
さらに、通いサービスからそのまま泊まりサービスへ移行できるなど柔軟な対応ができます。短期入所の場合は、事前に予約が必要なため、予約ができない場合は他事業所を探すなど手間がかかってしまいます。
小規模多機能型居宅介護の利用方法
小規模多機能型居宅介護を利用する際は、その事業所専属のケアマネジャーと契約を結ばなければいけません。現在担当ケアマネジャーがいる場合、事業所専属のケアマネジャーに変更する必要があります。
さらに、デイサービスなど小規模多機能型居宅介護との併用不可なサービスを利用している場合は、解約しなければいけません。気心知れたケアマネジャーやデイサービスに通っている場合は、現在担当しているケアマネジャーとよく相談しましょう。施設によっては、見学や体験レクリエーションなど実施しているので参加し雰囲気を確認するのも1つの方法です。
担当ケアマネジャーがいない場合は、役所や地域包括支援センターにお問い合わせください。
他施設・サービスとの違い
小規模多機能型居宅介護が他施設やデイサービスとどのように違うのか解説します。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所で「通い」「訪問」「泊まり」のサービスを実施することができます。同じ場所で顔なじみのスタッフが地域密着でケアをしてくれるので、利用者は安心してサービスを受けられるでしょう。他の施設では「通い」と「泊まり」でも違う場所に行き、対応するスタッフも異なり連続性が保たれない問題があります。
とくに、認知症高齢者の場合、記憶や認知機能の障害のため、自分の居場所が分からなくなるなど、症状を悪化させることもあります。
デイサービス
小規模多機能型居宅介護の「通い」とデイサービスの違いは2つあります。
- 時間や利用回数に決まりがない
- 月額定額制である
通いでは、「昼食だけ」参加することや利用回数に制限がないため何回も通うことができます。デイサービスの場合は、1日を通してスケジュールが決まっており、基本は1日過ごす必要があります。また介護度によっては1週間の利用回数を制限する必要がある。
さらに、いくら柔軟に利用したとしても、基本料金は定額になっています。ただし、食事やレクリエーションなどの費用は基本料金とは別です。
小規模多機能型居宅介護を選ぶメリット・デメリット
小規模多機能型居宅介護のメリット
- 通い・訪問・泊まりのすべてのサービスを1つの事業所で契約できる
- 費用は定額制でありながら、状況に応じ柔軟にサービスを組み合わせられる
- 通いは「午前だけ」「午後だけ」など短時間の利用も可能
- 違うサービスであっても、顔なじみのスタッフが行う
などが挙げられます。1つの事業所で完結できるので、たとえば重度の利用者の場合は注意事項をスタッフ間で共有しやすいなどがメリットになります。
デメリットとしては、併用できるサービスに限りがあることが挙げられます。
たとえば、通いサービスがどうしても合わなかった場合、それだけを変更することができません。また、今まで通っていたサービスを解約する必要がでてくるので、小規模多機能型居宅介護を利用する場合は、体験訪問や施設説明をよく聞いて判断する必要があります。
まとめ
小規模多機能型居宅介護には、たくさんのメリットがありますが、ケアマネジャーの変更や併用できないサービスを解約する必要があります。現在担当ケアマネジャーがいるならば、しっかり相談したうえで決断しましょう。